Papers, Please: 楽しくないからこそ面白い

Papers, Please

値段 クリア状況 実績 プレイ時間
980 クリア 11 / 13 7時間
お勧め度 コスパ
★★★★★★★☆☆☆ ★★★★★★★★☆☆

多くの人々は不正を憎み、公正を尊んでいます。ただそれは、平和な境遇のゆえに抱いた傲慢なのかもしれません。

Papers, Pleaseは入国審査官となって、他人と自分の人生を決めていくゲームです。
共産国家アルストツカの入国審査官となり、朝令暮改で変わる政府の指示に対応しながら入国を許可するか、あるいは拒否するかを決めていくことになります。

貧困のスパイラル

最初は簡単(外国人は入国禁止のみ)

始めこそちょっとした規則を守り、少ないチェック項目を確認してさばくだけで給料の出る仕事をするだけです。国家への忠誠を胸に、公明正大に職務に励むこともできるでしょう。対応した人数分の歩合給は安いとはいえ、家族を養うに十分なくらいの給料にはなります。

しかし、それは始めのうちだけ。周辺諸国がきな臭くなるほどに、入国審査官の仕事は増えていきます。チェック項目はべらぼうに増えていき、さばける人数は日増しに少なくなっていきます。にもかかわらず給料は上がらず、ミスでもすればさらに下がってしまいます。だんだんと家族を養うのが大変になっていくところに、追い打ちのように勝手に居住地のランクを上げられて住居代でさらにカツカツになっていくことでしょう。

貧した家族

満足に食事や暖を与えられなければ家族は病気がちになっていき、その治療薬にお金を払っていればさらに貧していきます。それでもお上が給料は上げずに規則だけを増やしていくのを見るにつれ、最初に抱いた忠誠はどこかに行き、公正さは腐臭を漂わせることになるでしょう。

Papers, Pleaseは、ああ不正ってこんな気持ちで行われるんだろうなという気分にさせるゲームです。生活に窮するということと、国家に対する鬱憤をいやにリアルに感じさせてくれます。

複雑化する行為と構造

べらぼうな書類と規則

基本的なゲームシステムは間違い探しであり、パスポートをちゃんと見て変なところがあったり不備があったりするならば、入国を拒否すれば良いというものです。
夫婦で来たのに片方の書類が足りなくて懇願されることもありますし、わいろを渡されて見逃してくれということもありますし、妙な組織に勧誘されることもあります。それらに対し、政府の公僕たり続けるか、テロリストに身をやつすか、一市民としての安寧を願うかはプレイヤーの選択次第です。

ただし上述のように、入国の審査が厳しくなるにつれ、間違い探しの難易度は上がっていきます。
これに加え、昨日まで必要だった書類が今日は不要だったり、新しい書類が必要になったりと、目まぐるしく変化する規則にも対応する必要があります。
例えば、上記の画像のケースだと、氏名の一致、国籍とビザの一致、IDの一致、ISSが正しいか、滞在期間と目的に対する発言との一致、身長と体重は表記通りか、性別はどうか、顔の一致、指名手配犯ではないか、ワクチン接種は正しいか、各種書類の有効期間はどうか、あたりをチェックする必要があります。これだけちゃんと調べて得られる$5は一人当たりの食費分くらいです。世知辛いですね。
なお、このケースでは身長が170cmとなっていますが、実際は人物後ろの数字を見ればわかる通り180cmなので不審となります。

楽しくないからこそ面白い

Papers, Pleaseを究極に個人の感想として言うのであれば、今やってる仕事がいかに楽しいかわかるゲームだと評せるでしょう。
アルストツカに栄光あれ。