第14回ウディコン全作品レビュー - Megalopolis
02. Megalopolis
ジャンル | 作者 |
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ノンフィールドRPGノベル | 冒険者@シロヰ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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2時間30分 | 1.2 | クリア |
良かった点
- 勢いのある良い文章であり、良いシナリオでした
- ノベルを阻害せず、かつ雰囲気を際立てる戦闘デザインでした
気になった点
- 進行の操作性がやや独特でした
- 慣れればあまり気にはなりません
- いきなり八人ぶんのパーソナリティを把握するのはやや難しいです
レビュー
暗い地底と光の行方
Megalopolis は、陰惨とした地底から地上を目指す八人の群像劇です。
それぞれの想いを胸に進む彼らの物語を、熱のこもった筆致で描き切った作品となっています。
物語は、飢饉による餓死や暴動により荒みきった地底の村から始まります。この末期の村から脱し、地上という光芒を目指す彼らの前には、様々な艱難辛苦が待ち受けていました。
このゲームでは、そういった苦難へと立ち向かっていく姿、試練へと向き合う形、そのドラマ性が存分に表されています。
この試練は、プレイヤーにとっては戦闘という形で現れることになります。地底には脅威となる敵が数多くひしめいており、地上に向かうほど強い敵と戦うことになります。一方で、キャラクター達のステータスは成長することがありません。
このギャップを埋めるためには、道中で手に入る装備やスキルを上手く使う必要があります。時々に合わせて装備を付け替えスキルを変えていくことが肝要となります。
そうして物語を進めていくと、折に触れて強敵や難敵との対峙を余儀なくされることもあります。
強敵との戦闘はシビアなものではありますが、敗北してしまったとしてもリトライは容易に可能となっています。
その先にある物語へと進むためにも、再挑戦して上手く脅威を突破していきましょう。
ノベルをめくり、その雰囲気をたたえた戦闘を切り抜けていくことで、このゲームの世界観、そして何よりもキャラクター達の背景を少しずつ知ることができます。
それぞれの過去を背負い、地底の脅威に晒されながらも歩みを進めていく人々が辿り着く結末を見届けてはみませんか。
Megalopolis の全体を貫く熱のある文体は、陰惨な世界と、何より強くも脆くもある人という存在をたっぷりと表現しています。
そういった文章の熱にあてられたい方にお勧めです。
感想
このゲームの感想を一言にまとめると「好き」なんですが、もうちょっと組み立てて話そうと思います。
まずこれは誉め言葉なんですけど、難しい言葉をとりあえずぶち込もうという意志を感じます。かなり強い意志を。
その分なのか、ちょくちょく誤用が見受けられるので、脳内の誤用警察がうるさかったんですが、文章は分かればいいんだよの気持ちのほうが強かったです。
例えば孤高は孤立していること以上に何か高いもの、志とか理想とかを持っていることを指すんですが、まあそんなものはどうでもよくて何かぽつねんと立っている一つのものとしての形容に使われていても伝わるからいいんですね。
何ならそこに孤立とか孤独とか使われるよりは孤高を使うことで見えてくる情景というのもありますからね、多分。
意識の流れのような観点に立てば、そも我々の意識というか思考も誤用をめちゃめちゃしていそうです。
それと、洋書みたいな言い回しになるのも割と好きです。
「まるで忠犬のようにどんな苦難にも立ち向かいましょう」あたり、どこかの洋書の翻訳っぽい。「like faithful dog.」って書いていそう。
そういった風に、全体的に粗削りだとは思いますし、中二病に近いものを感じるし、深夜テンションの勢いで書いたような文体しているんですが、そこがひたすらに良い。
こういう文章からしか得られない栄養がある。
感覚的には、筆者が赤坂アカさんのインスタントバレットを読んだ時の栄養分に似ていると思っています。
それに加えて、シンプルにシナリオ構成が良いから読めたという部分は間違いなくあると感じています。
暗い地底からの脱出というテーマをもとに、さらに暗くドロドロとした人間関係を見せつけ、それでも人の強さも弱さも描き切っているドラマ性は非常に良かったです。
まさかこんなに人がバタバタ倒れていくとは思わなかった。ある意味説明文がミスリード。
最終的にストーリアの話でもって終わる構成も良くて、モブというか最初の八人に含まれないところにある意味での主要人物を置くというのが好みです。ストーリアがちゃんと良いキャラしているのがさらに良い。
なお、キャラクターが結構いて、かつ顔グラフィックとの対応関係も覚えにくいので、序盤は覚えるのが難しかったです。5ステージ目くらいで大体の人物像と名前が把握できました。遅い。
個人的にはサイクロ君が一番好きでした。虚勢を張るお調子者、大体好き。表層的には一番いいやつだと思っています。破滅願望ありそう。
物語についてある程度話したので戦闘システムの話をします。
ノベル部分が主体な印象を受けるので、戦闘はある程度おまけという側面があります。やられても即時リトライができるので、ノベルの障害にはなりえません。
しかし、地下世界の陰惨な雰囲気、迫る強敵の存在、絶望的な状況、覚悟の上の戦い、それら全てを表現する上では最も適した表現であったように思います。
その上でテンポが良いので邪魔にはならない良いバランスでした。
ちなみに戦略的な話をすると、最初のメンバーが普通に強くて、Rainためつつ殴り続ければ割と勝てます。毒とかの状態異常は強いので、しばらくポイゾネスダガーを愛用していました。
全体を通しては、睡眠以外は対策なしでも割と戦えるバランスという印象でした。ただ、ちゃんと強敵は強敵として表現されているので、ストーリー上の納得感もあると感じています。
ともあれ、筆者がフリゲをやっている理由の一つの煮凝りみたいなゲームなので、大変に楽しめました。
結局上手く組み立てられていない気もしますが、これも意識の流れということで。