第14回ウディコン全作品レビュー - ソウテン鏡事件

06. ソウテン鏡事件

ジャンル 作者
探索ADV 天鏡伝承保存会
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.07 全ENDクリア

良かった点

  • 素晴らしいシナリオでした
  • 探索要素とシナリオが上手く調和しています
  • 導線が丁寧でした

気になった点

  • 序盤は決定キーを押さないと進行できない点がややわかりにくかったです

レビュー

至高のシナリオ

インタラクティブな性質を持つゲームという媒体の中で、シナリオをどのように組み込むかというのは一つの課題となります。ただ読み進めるだけならば、それは小説という媒体でも代替可能になってしまうかもしれません。
その中で、ソウテン鏡事件は探索アドベンチャーにシナリオを持ち込む、その一つの答えを表していると言えるでしょう。

この作品は、主人公のミライ、およびパートナーになるカコを操作し、閉じ込められた洋館からの脱出を図るゲームです。
この二人は十年の時を結ぶ鏡である『天鏡』越しに繋がっており、相互に影響を与え合う関係となっています。

プレイヤーはこの二人を操作して館を探索していくことになります。館を隅々まで探索し、脱出に関する手掛かりを探していきましょう。
会話やメニュー画面の導線はかなり親切なので、迷うことなく探索できること請け合いです。
また、各所にあるオブジェクトを調べればいくつかの小ネタが見つかることもあるので、色々と余計なものを調べるのも一興でしょう。

そうして館を調査していった先には、ある謎が隠されています。
その謎を解き明かし、さらに真実の奥のさらなる真実にたどり着けるかはプレイヤー次第となります。その真実にたどり着いた暁には、探索ゲームという形をとった良質なシナリオを体験することができるでしょう。

探索ゲームに溶け込んだ至高のシナリオを体験したい方にはお勧めです。

感想

最高に良いシナリオでした。推理小説好きとしてはその感想に尽きます。
伏線の張り方もミスリードの巧みさも素晴らしく、ストーリーラインがめちゃめちゃ綺麗にできています。探索ゲームベースで作っておきつつ、この完成度なのは恐ろしい。

最初の方に薄っすら感じた違和感の程度が絶妙で、しばらく動かしていると忘れるけれどちょっと引っかかるといういい塩梅でした。左眼ジャック事件でもそうだったんですが、最初に仕込む伏線の精度が高い。鳥籠さんの手腕という感じがしますね。人違いですが。

その後もソウテンのミスリードを絡ませつつ、違和感と納得感を小出しにして翻弄してくる様は素晴らしいの一言に尽きます。上手く掌の上で踊らされていました。

また、シナリオとはあまり関係なく、オブジェクトに対する反応も結構豊富で小ネタが詰まっています。灰原のなぞなぞとか、拾える人は拾えそうなので、実況とかにも向いてるかもしれません。

そういう意味でも、シナリオが素晴らしいのみならず、それを探索ゲームとして昇華させているという点においても良い作品でした。
単純に良いシナリオをノベルで読むのも良いんですが、探索していることに意味があるシナリオが構築されているのが素晴らしい。

大体1時間30分もあれば全部のエンドは見れて、そこから30分くらいで理解できたんですが、理解した時の気持ち良さは格別でした。なので、まだタイトル画面に二人いない人はこんな感想を読んでいないでさっさと遊びつくしましょう。

最後のあのギミックは、それまでの謎解きや探索の導線が完璧に近いがゆえに隠蔽される設計になっていて、最後までシステム的にも騙してくるようで最高でした。
基本的にシステムに従った移動と謎解きで全てをこなしていたところに、明確に追いかけるべき導線が提示されるという展開です。よほどの天邪鬼じゃなければ、そこで導線から外れるのは難しいだろうなと思っていました。
導線が上手いとミスリードがより効くということですね。

ちなみに、そうして色々分かった後に日記を読むと色々発見があるのでお勧めです。

なお、探索ゲームとしての導線はかなりちゃんとしているのでその辺は問題ないんですが、序盤あたりに決定キーを押さないと進行できないところがややわかりにくい印象はありました。
もはや難癖レベルですが、あまり褒めすぎるとサクラっぽいので一応。

返す返すもシナリオの出来が出色で、かつそれを探索ゲームという概念に高いレベルで落とし込んでいるというのが素晴らしいゲームです。
単純に良いシナリオと探索要素、というだけではなくて、この探索要素をもってさらに良いシナリオへと進化させているという印象があります。高い次元での融和が成っている作品は大体面白く、この作品も例には漏れないです。やりましょう。