第14回ウディコン全作品レビュー - 家路~いへぢ~

11. 家路~いへぢ~

ジャンル 作者
ホラー探索 睦涼
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.00 全ENDクリア

良かった点

  • 良い恐怖を感じられました
  • 隠という存在がシステムをも巻き込んで表現されていました
  • 各ステージで異なるギミックを楽しめました

気になった点

  • Cキーを押すと一瞬だけ隠が見えます
    • 上手く使うと便利ではありますが、雰囲気的にはないほうが嬉しいかもしれません

レビュー

ひたひたとした恐怖

家路~いへぢ~という作品が描いているものは、そこにいるはずなのに見えないという原始的な恐怖です。

村外れの廃トンネルを訪れた主人公は、奇妙な手袋を見つけるとともにおかしな世界に迷い込んでしまいます。
この主人公を操り、家路をたどるのがこの作品の目的となります。

しかし、家への道は常に安全とは限りません。目には見えない隠(オニ)と呼ばれる存在がいくつも道中に存在し、これに触れると消えてしまうことになります。
この見えない隠を避けるためにも、しっかりと観測をする必要があります。隠の姿を見るためには、見つけた奇妙な手袋を覗きこんで付近を調べるしかありません。
場所を把握し、動きを把握し、隠から逃れていきましょう。

この隠という存在は手袋を覗かない限り見ることはできませんが、同じ領域に隠がいるとぞわぞわとした音が鳴り、その存在自体を知ることだけはできます。
そこに確かにいるものの、どこにいるか分からない、もしかしたらすぐ側にいるかもしれない、そういった恐怖を味わうことができます。

加えて、青を基調とした特徴的な空間表現もまた、その恐怖を彩る一つの要因です。
この世とのあわいにあるような、不可思議な隔絶した雰囲気を感じつつ、ひたすら路を辿ることとなるでしょう。

さらに、そういった家路の途中には様々な仕掛けが待ち受けています。
隠から逃れながらも、これらの仕掛けを突破しなくては家路を辿ることはできません。上手く隠を避けつつ進んでいきましょう。

より本質的な恐怖をホラーで体験したい方に、家路~いへぢ~はお勧めの作品です。
隠を避け、仕掛けを解き、恐怖の中で家路を辿りましょう。

感想

恐怖とは元来こういうものだよねという雰囲気でした。原始的な恐ろしいという感情が呼び起こされます。ぞわぞわする。

光というか闇の使い方が物凄く上手いので、それだけでもホラーとしての雰囲気は満点です。最初の閉そく感を少しずつ出していく演出なんかは、恐怖への準備体操という感じがして良い。
その上で、隠という存在をシステムをも使っていかんなく表現しているので、とにかくホラーとしての完成度が高いです。

筆者が青鬼をプレイしていた時一番驚いたもとい良かったのは、ピアノを調べた後のくだりでした。この、どこかにいるだろうとは思っていた存在がすぐそばに唐突に現れるという現象は、かなり強い恐怖値を持っていると思っています。感覚的にはホラー映画の振り向いたらいるやつに近いです。
このゲームはゲームシステムでそれをやってのけているので、もう当然のように怖いです。ぞわぞわする音とともに、覗き込むことで初めてそこに現れる隠の姿が良い。案外近くにいることが分かった瞬間に慌ててCキーを押して逃げる感じが最高。

なお、最初のうちは夜廻のプレイ感に近いのかなと思っていましたが、割といろんなギミックが用意されているのでそれほど近くはありませんでした。
各ステージのボリュームもそこそこで、大きすぎ小さすぎず、それぞれが相異なるギミックを持っているので飽きずに楽しめます。
夜廻っぽいと感じていたトンネルくぐると異世界は、それのみならず千と千尋とか色々な作品で普遍的に存在する概念ですからね。何か民俗学的見地からこういう概念を説明できたりしないんでしょうか。

個人的には、唯一葉っぱのギミックだけ引っかかりました。
先にあるのかと思って入ったら無限迷路に迷い込んで、結局やられるまで出れませんでした。葉っぱを持たないで侵入できなければ親切かもしれませんが、この辺は雰囲気との兼ね合いで難しいところですね。

それにつけても、後半の解釈はだいぶ難しかったです。
ヨモツヘグイのくだりがある以上、おにぎりを食った段階で終わってはいたのですが、そうであるなら手袋には何の効果があったんでしょうか。あの壊れた社が終点だったのであれば、それが何を意味していたのでしょうか。本当におうちだったのかもしれないですね。
それにしたってカイ逅は解釈できていないのですが。もしかして過去作品をやらないとダメなタイプかな。
このように解釈に惑うことはあっても、雰囲気は存分にホラーなので最後まで楽しむことはできます。

ちなみにマップも雰囲気が良く、白いと調べられるというシステムも分かりやすくていいです。青に白は映えるので、敵の識別も含めてかなりわかりやすくできている印象でした
ゲームの性質上やや歩行速度は遅いものの、マップは雰囲気を保ちつつ短めの構成になっているのでカバーできています。

なお、レビューで途中までギミックという呼び方をしていたんですが、なんとなく横文字が似合わないので仕掛けにしたのがハイライトです。
トンネルも隧道にしようかと思ったけど、さすがに意味が伝わりにくいというか情景がぱっと出てこないのでこのままになっています。