第14回ウディコン全作品レビュー - シヴァーラの塔

21. シヴァーラの塔

ジャンル 作者
RPG kaidenn
プレイ時間 プレイVer クリア状況
11時間 1.0相当 クリア

良かった点

  • キャラクターのカスタム性が高いです
  • 戦闘バランスがシビアで良かったです
  • シナリオは中編ファンタジーとして完成されていました

気になった点

  • ワールドマップをはじめ、鈍足表現が辛いです
  • 演出は若干間延びしている印象があります

レビュー

カスタム性の高い中編RPG

シヴァーラの塔は自由度の高いキャラクターカスタムができる中編RPGです。
自分なりのキャラクターを作成しつつ、強大な敵に挑んでいくことになります。

このゲームにおける戦闘メンバーは、全て人形兵です。この人形兵はプレイヤー自ら顔グラフィックからパラメータまで自由に決めることができます。
俊敏さを捨てて攻撃に全てを特化させた戦士を作るも、HPをひたすら鍛え上げたタンクを作るも、俊敏さで先手を取ってバフデバフを管理するエンハンサーを作るも、プレイヤーの裁量一つとなっています。
ただし、それぞれのパラメータ上昇などにはコストが生じ、メンバー全体で一定のコストに収める必要はあります。強力な一人を作り蹂躙するか、バランスよく六人揃えて立ち回るか、お好きなやり方で構成してみてください。

そうしたキャラクターのカスタム性の高さがありながらも、このゲームの戦闘バランスは良好なものとなっています。
連戦すれば消耗していく雑魚戦を抜け、強大な力を持つボスを下すためには、パーティ構成だけではなく戦闘中の立ち回りも重要になってきます。敵の行動を理解し、スキルで上手くいなしていきましょう。

また、ダークファンタジーめいた物語もこのゲームの魅力の一つです。
復活した強力な悪魔に立ち向かうべく各地を巡る主人公とその仲間による、王道な物語を楽しむことができるでしょう。
自分で作った編成を活かして強力なボスを倒しつつ、その物語を進めていきましょう。

感想

結構自由度が高い割には、最後までシビアな戦闘バランスを楽しめた作品でした。最後まで想定パーティに近いムーブをしていたのかもしれません。

最終編成は剣士3名、魔導師2名、詩人1名になっていて、Lv5が4名と、Lv10の剣士と魔導師がいます。編成自体はバランス型です。
詩人が色々バフをかけて、魔導師もデバフ/バフ/回復/ちょっとフレアで火力に従事し、二人の剣士が挑発してタゲをとりつつ、全てのバフを背負った剣士による狙う+5連攻撃で最大火力を叩き込むという流れで戦っていました。挑発が全体攻撃を拾えるのが偉すぎる。

能力のビルドはややピーキー気味で、火力に振ったLv10と、それ以外をある程度防御寄りに振ったLv5の構成でした。結構思い切って割り振っても装備である程度小回りが利くので、何ともならないということは無さそうです。

戦闘バランスの話に戻すと、雑魚でも結構火力が高く、それ以上にボスが強いまっとうに良いバランスです。
傷薬と毒消しが何かの間違いみたいな安さをしているので、序盤はいっぱい買ってちゃんと使わないと雑魚もきついかもしれません。
その分、宝箱から傷薬が出た時の嬉しさがだいぶ落ちてはいる印象です。

ボス戦が特にギリギリのバランスの印象で、最初の炎の巫女は手りゅう弾まで持ち出してようやく倒せました。
また、それぞれの悪魔ボスは割とギミック的で、最初のチャレンジで倒すのは若干厳しいレベルです。そういう意味では、マグモがノーセーブで結構戦った上でマヒと呪いのギミックボスなのはハードな印象です。
ラジンはさすがにギミックボスではないので、ちゃんと戦えば初見でも突破できます。良い緊張感のある連戦でした。

最後のボスラッシュあたりは良い復習戦闘でしたし、ラスボスまでくるとシンプルに強く、最後までちゃんと戦い抜ける楽しさがあります。

マップについては序盤から中盤にかけては、ちょうどいいサイズ感だと思っていました。
分岐路にお宝が用意されているのもあって、あんまり無駄足を踏んでいるという印象はありません。
また、いろんなロケーションのマップを作っている印象で、火山、雪山、砂地、といったように印象をちゃんと変えて構成されていたように思います。

ただ、その中でも海底ダンジョンはさすがに厳しいです。意味もなく遅く、セーブできず、20分くらい遅い海底をさまよい続けることになります。せめて最後は泳いで帰るのではなく、地上に戻してほしかった。
それ以外の終盤マップも若干戦闘が食傷気味になるレベルだと感じてはいましたが、消耗戦でヒリヒリするところもあるので難しいところです。ただやはり、同じ道を歩いて帰るのは面倒な印象があります。せめてキメラの翼が欲しかった。

あとは、ワールドマップを鈍足にするな教の信者なので、そこで少しずつストレスを感じていました。エリアを広大に見せる意図があるのは重々承知で、特別なギミックが無いなら省略してほしい気持ちがあります。めぐめぐのような、システムに絡む部分があるのであれば理解はできるんですが。

シナリオ面においては、割と容赦なく巫女が殺されていきます。なんとなくFF3を思い出していました。
まっとうにファンタジーをやっている感じで、死者がいっぱい出る世界観をうまく使って物語を作っている印象です。そして最後に死者の世界を持ってきているのが上手くて、そのおかげで色々な展開を再回収できていて良い物語になっていました。
キャラクターとしてはゴブリン一味が好きです。旅でちょくちょく出会うことになる、ああいう存在が良い。

一方で演出は若干間延びしている印象を受けています。
今何の時間だろうという疑問を多々感じました。ある程度絵による演出があれば間が持ちそうなんですが、そういう動きが無いので謎の間になってる印象です。
また最初のシーンの演出でいうと、無声劇をやるには解像度が低い気がします。そもそもオープニングについては、物語への解像度も低い状態なのでより顕著に感じます。

ここまでつらつらと書きましたが、まっとうにRPGをある程度自由度高くやれるので、好きな作品です。11時間やらせるだけのゲーム性はちゃんとあるので、中編をやりたい方には勧められると思います。