第14回ウディコン全作品レビュー - ブラックレイン

28. ブラックレイン

ジャンル 作者
終末RPG 黒猫チルノ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間 1.003 クリア

良かった点

  • 良い世界観であり、良いキャラクターでした
  • 世界観を表現するための要素が凝られていました
  • 戦闘はやや歯応えのあるちょうど良いものでした

気になった点

  • 世界観表現のためではありますが、メニュー周りのUIは使いにくいです
  • 被ばくシステムがあまり有効に活用されていませんでした

レビュー

こだわり抜かれた世界観

ブラックレインは、第3次世界大戦で世界が滅んだポストアポカリプスめいた世界を巡るRPGです。
プレイヤーは少女二人の主人公を操作して、昭和275年の世界を舞台に探索することができます。

このゲームの白眉は、なんといっても演出からUIにまで凝られて練り上げられた世界観です。
遥か未来を舞台とし、実際にSF的な要素を盛り込みつつも、昭和275年という設定からも分かるようにどこか古式ゆかしいレトロな趣も湛えています。
メニュー周りの操作でさえ世界観に支配されており、途切れなくその独特な世界観を浴びることができるでしょう。

そういったレトロめいた世界観の中、プレイヤーは東京のあちこちを探索することになります。荒廃したかつての大都市を巡っていきましょう。
そうして、東京を巡るうちに大規模な対立と陰謀に巻き込まれていく物語が展開していきます。

その戦いの中では、消耗の激しい戦闘が待ち構えています。
攻撃するたびに武器や防具の耐久は減り、銃器を扱うなら弾薬も消耗していきます。消耗品は拾い集めたり、各所の人々と物々交換をしたりしながら補っていきましょう。雑魚との戦いで無駄に消耗しないというのも一つの手です。
その一方で、物語の要所で戦うボスは強敵となっているため、消耗を惜しまずに戦って全力で倒していきましょう。

昭和レトロフューチャーな世界観を体験しながら、少女たちの戦いの果てを見届けてみませんか。

感想

色々なものを犠牲にしてでも世界観に全振りしたゲームという印象です。メニュー一つとってみても世界観のために作られているという印象が強くあります。

世界観は核戦争後を描いていて、残された人類がギリギリの自治制でかろうじて存続しているようなものです。OZといい、とりあえず全人類の数パーセント残すには核攻撃と相場が決まってますね。
昭和275年という設定からうかがえるように、未来の世界ではあれど昭和っぽさが残る混ざった世界観が良いです。メッセージのウィンドウから、メニューを開く演出、メニューそのものの操作性まで、このゲームの世界観を表しているのは徹底しているなあと思っています。

物語もその世界観に合わせつつ、主軸はまた一つ別の概念に基づいて行われているので、結構ちゃんとした物語性があります。
中盤くらいで設定をちゃんと匂わせつつ、終盤には別の盛り上がり方でも演出してくれます。かつての敵との共闘ほど熱いものはない。あと最終盤の演出は割と好きで、やっぱりRPGなのでRPGでしかできない演出がされていると良いなあと感じてしまいます。

とにかく、システム面から、画的なところまで、細かい部分にまで世界観を徹底しようという強い意志を感じます。これだけちゃんと徹底されていると、どれだけ極端な世界観でも受け入れて楽しめるので良いですね。
昭和275年、冷静に考えると代替わりするはずの天皇が機械化でもされて不死身になったんですかね。そもそも改元は嫌なことが起きた時にも起きていたはずなので、単に改元できるほど支配的な存在がいなくなったと捉えることもできるかもしれません。

システム面で言うと、筆者はFall〇utを少ししか知らないので、どの程度似通っているかは知らないんですが、割といろんなシステムが使われている気がします。
ハッキング、物々交換によるリソースの取得、被ばく線量あたりはFalloutっぽさを感じました。

その中の物々交換によるリソースの取得のおかげで、戦闘にも緊張感が生まれます。ある程度は節約して戦いつつ、ボスでは色々惜しみなく使っていけます。
夢の島のおかげで詰むということはなく、そういった時間さえあればどうとでもなる救済措置があるというのも良かったです。

一方で、被ばく線量はあまりゲーム性に落とし込まれていなかった印象です。
ゲーム的に意味があるのは最初の方の水を渡るかどうかの違いくらいで、後はラスボスの特殊ギミックくらいなものです。実際、中盤くらいは殆どその存在を忘れかけていました。
にもかかわらず、キャンプで水たまりに入ると何か嫌な気分にだけはなるので、嫌なパラメータが増えたなあくらいの印象だけが残りました。
被ばく線量が高い代わりに良いアイテムが拾えるとか、除染することで入れるエリアとか、そういう広がりがあると嬉しかったかもしれません。

地味なポイントだと、銃弾が結構そこかしこにおいてあるにもかかわらず、大部分が拾えないのには違和感がありました。銃火器を使うゲームであり、かつリソースを消費していくゲームでもある上で、明らかに見えているのに拾えないのは、あまりにもご都合的に感じてしまいます。
一応、頭の中では口径に合わないのかなと変換しながら進めてはいました。

後は、世界観に全部りしているので操作性はそこそこ悪いです。
マウスとキーボードを併用する設計ですが、どちらか一方で動かすにも面倒で、かといって両方扱っても面倒みたいな類でした。マウスだけだと会話でEキーがいるし、カーソル操作はさすがにマウスが有利なので。

特にメニューがらみは、ボタンでメニューを開き、カーソルで操作し、閉じる確認ありのボタンで閉じる、と操作構造が割と複雑です。
その上で、このゲームでは銃を使うと物資がどんどん目減りしていくので、適宜物資補充のためにアイテム画面を開く必要があります。ここはそこそこ使うことの多い流れなので、クイックメニューなりで緩和されていると有難かったです。

ただし、この辺の不便さはUIに絡みついたものであって、かつこのUIは世界観表現のためにはかなり有用なものでもあるので、大分トレードオフになるんだろうなという気持ちです。
なお、セーブはESCからクイックに行えるようにはなっているので、そこは便利でした。

また、装備画面の空欄とか、明らかにオーバーな弾薬(大)の存在とか、そういった色々なものを見るに、もう少し規模の大きい作品を作ろうとしていたのではないかという気がしています。
ちなみに、全体で2時間程度のことでしたが、そこそこ寄り道して4時間だったので、正直2時間で終わるボリュームには感じませんでした。大体3時間くらいかな。

しかし、どうしても東方っぽい要素を入れたいんでしょうか。アリスマーガロイドにそれ以外の意味があるかは知らないですが。
あからさまではないので、分かる人に分かればいいくらいの塩梅だとは思います。