第14回ウディコン全作品レビュー - 宝珠使いシズクのかえりみち

44. 宝珠使いシズクのかえりみち

ジャンル 作者
パズル風RPG はるしし
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.0.2 クリア

良かった点

  • いい意味で頭を壊すくらい忙しい戦闘システムでした
    • ルーチン化とアドリブ力が双方程よく求められます
  • 戦闘中のUIが発動スキルを見ることができるなど親切です
  • 緩い良い世界観でした

気になった点

  • スキルや装備の画面で名前も姿もなく色だけでキャラを判断するのは少し難しかったです
    • 特に慣れていない序盤の内は間違いやすいです

レビュー

頭を忙しなく使って強敵を打ち倒せ

脳みそを使い倒し、過負荷をかけ、そうして成し遂げた勝利の達成感には得も言われぬものがあります。
宝珠使いシズクのかえりみちは、その独特なパズル風コマンドRPG的なシステムにより、とにかく頭が忙しくオーバーヒートしていくことで、そうした達成感を得ることができるゲームとなっています。

このゲームの戦闘では、各ターンにおける制限時間の中、画面下のパズルのような画面で宝珠を揃えて消していくということが主眼となります。
消された宝珠の種類でキャラが決まり、その数で技が決まり、ターン終了時にそうして決定された行動がそれぞれ発動されます。
紫を2つ消せば単体回復、3つ消せば全体回復であったり、赤を消した数で攻撃属性が決まったり、どの宝珠をいくつ消すかというのは、そのまま取るべき行動の選択へとつながります。
このため、戦闘中は宝珠の数を上手くコントロールしていくのがカギとなるでしょう。

なお、揃えた数に応じたスキルは自由にカスタマイズすることもできます。
変化していく戦況に柔軟に対応できるようにスキルを選択するのも良いですし、そのステージに特化した編成にするのも良いです。自分好みのスキル編成を作っていきましょう。

また戦闘中は、相手の行動や自陣の状態を正確に把握して、最適な行動を考え、それを実現できるように消す宝珠を選んでいくということを、時間内に行わなくてはなりません。
こちらが2人のうちはまだ余裕がありますが、味方が増えるほど、どんどんと忙しくなってきます。そうなると、徐々に時間内に行動を確定させるのが難しくなってくるはずです。
攻撃モーションの時間、エフェクトの時間、敵の行動中も揃えて消す準備をするための大事な時間です。全ての時間を有効活用して、場を支配していきましょう。

加えて、このゲームはハクスラ的な要素も孕んでいます。敵を倒し、強力な装備を取得できれば、後のステージを有利に立ち回ることも可能です。
どうしても勝てなければ、前のステージに戻って装備を集めてみるのもありかもしれません。
たとえ要らない装備が手に入ったとしても、パラメータ強化のためのポイントに変換できるため無駄にはなりません。積極的に集めていきましょう。

頭をフルに使って宝珠を揃えて適切な行動を選択し、強敵相手であっても怯まずに場を制圧していきましょう。

感想

今ウディコンのめちゃめちゃ忙しい枠の一つです。ずっと頭を動かしてないとクリアできない。
そして頭を常にフルスロットルで働かせているのは楽しく、それで課題解決を完遂できるとより楽しいので、このゲームは楽しいゲームでした。

宝珠を単にいっぱい揃えればいいだけなら楽なんですが、このゲームはあくまで宝珠の揃える数で発動スキルが決定する仕組みなので、ちゃんと考える必要があります。
一応上の画面を確認して体力や有効打を見つつ、適度に回復や防御、有効な攻撃パターンを考慮し続けるのが難しい。

初期の頃こそ猶予時間に対してキャラ数が少ないのでいくらでも対策できるんですが、4人パーティあたりからはだいぶ忙しいです。スキル発動時のエフェクト中にも揃え続けて、とにかく手を動かし続けないと間に合わないレベル。
その分、敵の攻撃を捌き切って倒せると達成感があります。忙しくて楽しい。

殊に最終的な6人パーティはかなり忙しくて、少なくとも最初のターンでの期待通りの動きはある程度捨てる必要があります。落ち着いてパターン化しつつ、適度に状況に即した行動をとるしかない。
お勧めとしては、状況に応じたパターンを組んでおくことと、攻撃系はルーチンで揃えられるようにあらかじめ準備しておくことです。

例えば、全体回復したいならヒール3と癒しの舞1 を作っておくとか、そういうパターンを持っておくと、即応性が上がります。
一方で、エフェクト発動中には攻撃向けを揃えておくのが丸いです。可能であれば現在ターンで揃え終わった後、次回発動分も装填しておければより安全でした。

ただ、1手先まで見た宝珠配置やルーチン化も大事なんですが、後半の強敵にはアドリブ力が要求されるあたりは歯ごたえもあります。
敵の攻撃が結構苛烈なので、基本的には殴るための札を揃えつつ、パーティー状況を鑑みて回復を優先したりする判断が求められます。

筆者は回復については上画面を見て調整しつつ、常に癒しの舞1とガードを優先した立ち回りをしていました。
後はデバフを必ずかけ続けるのは大事です。タイミングを忘れていたのなら、二重になってしまってもいいからとにかくかけるのが肝要。

また、戦闘バランスが良い感じなので、あんまりレベル上げというか装備集めをしなくても突破は可能です。
明らかに強敵で、一撃でこちらの体力を刈り取るレベルであったとしても、ガードをちゃんとやれればかなり抑えられます。
加えて、最後のバハムートを含めて、強攻撃を一方的に打ってくるような設計にはなっていないので、態勢をかろうじて立て直すくらいの時間はあります。とにかく焦らないことが大事。

このあたりの戦闘バランスは難しすぎず平易過ぎない良いラインを突いていると感じています。
強敵を作りたいと思った時に、強い技だけではなくてシステムに即したクールタイムのような技も用意しておくことで、理不尽になりすぎずに強い敵を表現しているように思います。

個人的には宝玉をめちゃくちゃにするギミック技とかがあるとより頭を壊されそうなんですが、そこまでやると厳しすぎるような気もして難しいです。
やるなら対策可能な特定方向に強制的に寄せる大風とかそういう類でしょうか。

戦闘中のUIについては割と親切で、揃えた宝珠で何が発動するのかについてちゃんと下画面に表示されるというのはありがたかったです。
また、ステージ終了後にやり終わった選択肢に済マークがつくので、どの準備を終えたか分かりやすくなるのも地味ながら良い配慮でした。

一方で、スキルや装備でキャラクターの名前も姿も表示されず、色だけで判断する必要があるというのはちょっと厳しかったです。順番を何となく覚えるか、色を何となく覚えるまでは苦労します。
特に最初が橙とピンクで何となく似ているので紛らわしいというのがあって、赤と青みたいに明確に違う色が初期に来ないのも混乱の一助になっていそうです。

後は、ストーリーが緩めの会話進行なのも個人的には好きでした。戦闘はめちゃめちゃ頭を使って忙しいので、なんとなく和みます。
特に、魔物みたいな存在をケモノと称するのが世界観を構成していて良いなあと感じました。
こういった独自用語は、欠点としてはすっと文章を読めなくなるくらいだと思っています。ファルシノルシガコクーンデパージみたいな案件です。その一方で、 ケモノは聞きなじみのない単語ではないので、ある程度読みやすさも担保されていました。魔物みたいな漢字表記されているよりはかなり緩い世界観になっている気がします。

とにかく全体を通して、プレイ中の思考が良い意味で忙しいので楽しいゲームでした。
ガードして、ああ回復は全体か、じゃあ3つ作って、後足りないのなんだとりあえずマジックブレイクにしておいて、ああ魔法出来てないけど遠いから3で妥協して…、みたいなことをエンドレスに考えながらやることになります。楽しいですね。