第14回ウディコン全作品レビュー - フォゲコマ!

46. フォゲコマ!

ジャンル 作者
コマンド忘却RPG Masaqq(マサック)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.053 ノーマルクリア

良かった点

  • コマンドを忘れるという仕組みを、上手くゲームシステムに落とし込んでいました
  • 制限されたリソースをやりくりする面白さがあります

気になった点

  • 仲間の呪文を使う時など、全体的に選択肢の階層が深くなりがちです
  • HPや状態異常の確認でいちいちメニューを開く必要があります

レビュー

コマンドがない、ということ

フォゲコマ!は、コマンドを忘却した状態から始まるRPGです。

このゲームにおいて、コマンドを覚えていないということは、攻撃魔法などのスキルが使えない、というレベルに留まりません。
応答のための「はい」「いいえ」や、果ては「どうぐ」といった大本の選択肢そのものすら存在しないという徹底っぷりになっています。

ゲームの進行としては戦闘をしつつステージを進行し、各所で失われたコマンドを取り戻しつつ、手持ちのコマンドを上手く使って攻略していくことになります。
どのコマンドを取り戻すかは非常に重要となるので、慎重に選択していきましょう。

また、戦闘システムは簡略化されており、ステージ上のシンボルに触れてコマンドを選ぶだけのものとなっています。現在のステータスやコマンドの状態を考えつつ、戦闘すべき相手も選んでいくことが重要です。
戦闘を有利に進めるには仲間を集めたり、攻撃魔法を強くしたりといった様々な方策がありますが、そのどれを行うにもコマンドが不可欠となってきます。戦闘も見据えたコマンド選びが大事になります。

加えて、そうして倒した敵は二度湧かないので、敵がドロップするお金も重要な要素となってきます。
お金の使いどころがゲームの行方を左右することもあるので、上手く使う必要があるでしょう。

そうして様々なリソースを管理しつつ、コマンドを適切に構成し直していく体験は、さながらパズルのようでもあります。
習得すべきコマンドを取捨選択し、仲間も上手く選び、リソース管理の果てにボスの元へと辿り着いていきましょう。

感想

コマンドを忘却しているので、色々もどかしい思いをしながら進めるRPGです。
ちゃんと覚えると一気にやれるようになってくるので楽しい。

コマンドを忘れているという発想およびシステムが秀逸で、それに応じた様々な問題が待ち構えているというのが面白いです。
例えば、はいといいえはセットで覚えておかないと、選択肢が出たら肯定か否定のどちらかしかできなくなってしまいます。不自由な二択どころか、不自由な一択というわけです。

このシステムに加え、触れたら即終わる戦闘システムも相まって、かなりパズル的な印象を受ける作品でした。
実際、そのままだと稼ぎのやりやすい仕様だからなのか、敵が消滅するようにな設計になっていて、この結果詰みが明確に発生しそうなデザインになっています。手順を大きく間違えると、取り返しのつかないことになりそう。
プレイ途中は、パズルに使っていた脳みその部分を多少使っている気持ちになりました。

またある意味では、コマンドとお金のリソース管理とみなすこともできそうです。
お金は一定量なので、これを上手くやりくりしつつ、コマンドの解放順序の優先度付けをしていくことで効率良く動くことができます。
なお、ノーマルでやる分には結構お金が余ったので、大きく外さない限りは恐らく問題がないように感じました。

ちなみに、システム的な罠の一つとして、アイテムの所持数制限があります。
所持数がいっぱいだと敵の落とすアイテムが無条件で捨てられます。ここでどちらかを選ぶ選択肢を作ると、それもコマンドになりそうなので撤廃されてしまったのかもしれません。
調子に乗って敵を倒しまくっているとすぐに限界まで所持してしまうので、逐一うまく対処する必要があります。あんまりサクサクやらないほうが恐らく安定します。

また、コマンド忘れの弊害として、選択肢がだいぶ複雑になる傾向にあるというのもあります。
例えば、仲間の呪文を使用したい時、なかま、仲間の名前、じゅもん、使う呪文の名前、とかなり長くなってしまいます。状態異常のたびにナオールを使うのが億劫になりがちです。
それ以外でも、連続で売り買いした時にいちいち選択肢まで戻されるなど、地味に面倒なポイントもあります。

中でも個人的に一番やりにくかったのは、戦闘後のHP減少がいちいちメニューを開かないと確認できないことです。後は状態異常。
回復するかどうかの判断のためには半ば必須なので、毎回いちいちメニュー開いて確認していたんですが、どうにか常時表示されないかなあという印象です。

通常のRPGなら戦闘が入るので否が応でもパーティメンバーのHP状態とかは分かるんですが、これは即終了する設計なので、目に入る機会が能動的にメニューを開くほかありません。
また、これに併せてダメージをどの程度食らったかが曖昧で、ちゃんと計算しないと敵の強さが分からないというのもちょっとだけ気になりました。

ともあれ、このゲームをクリアした後に改めて振り返ってみると、コマンドを忘れたことよりも、リソース管理と戦闘パズルの印象のほうが強かったです。
アイテムの所持数制限への対処、状態異常への対処、おかねの管理、このあたりに割いた時間のほうがコマンド吟味より長く、苦労したという印象もまたこちらの方が強くあります。なので、印象的にはリソース有限RPGのほうが近いように感じます。

多分、ハードでやると違う遊び味になるのかなあと思うので、慣れてきたらハードで遊ぶ想定なのかもしれません。初手では作者さんの規定した通常難易度であると勝手に決めているノーマルで遊ぶとしている身なので、そのあたりは深く知るところではありませんが。

ここからは大分余談なんですが、はい、チーズでこっちを向いてくれるという仕組みが、細かいながら割と好きでした。
たとえ対象が毒沼で暴れていようとこちらを向いてくれるあたりの芸が細かい。
あんまり意味が無くても、積極的にやってしまう魅力がありました。

はい、チーズ