第14回ウディコン全作品レビュー - 刻と天賦の綺譚
54. ショートファンタジー 刻と天賦の綺譚
ジャンル | 作者 |
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RPGめいた探索ADV | テトゥルウイスキー蒸溜所 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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3時間30分 | 1.11 | END1クリア |
良かった点
- とにかく要素が詰め込まれながらも、破綻なく完成されていました
- フレーバーとしてRPGが機能していました
- カンノーリが良いキャラクターをしていました
- 全体的に演出が良いです
気になった点
- 拠点マップがやや歩きにくく感じます
- がれきに引っかかったり、導線がシンプルでなかったり、といったところが気になりました
レビュー
闇鍋ファンタジー
ショートファンタジー 刻と天賦の綺譚は、カイジ風のRPGめいた探索アドベンチャーのようなゲームです。
このように一口で説明すると纏まっていないように見えるほど、ミニゲームからダンジョンのRPG、アドベンチャーのようなパートまで、様々な要素が詰め込まれている作品となっています。
それと同時に、そうした要素のごった煮もさることながら、それらが一つのゲームとしてまとめ上げられた作品でもあります。
このゲームでは、命をかけた賭博場に足を踏み入れてしまった主人公、カンノーリを操作して、生き残るためにサブゲームに挑んでいくことになります。
挑戦したサブゲームの成否は、フォースと呼ばれる対価に影響します。フォースは生存に不可欠となるため、可能な限りサブゲームに挑んで入手しておきましょう。
また、一日に一度、ダンジョンに潜ってRPGを楽しむこともできます。
ここで戦って得た経験は後の力となるため、戦いを経験して対策しておくことも生き残るためには重要となってくることでしょう。
さらに、生存のためには仲間との団結も必要となります。時には入手したフォースを使いながら、ストーリー進行の過程で人々と交流を深めていきましょう。
そうして、サブゲームを攻略しつつ、仲間と協力し合って生き残っていくことで、やがて迫りくる脅威に立ち向かうことになります。
こういった様々な要素をまとめ上げているのが、ギャグパートでも心を動かすシーンにおいてもいかんなく発揮されている、高い演出力になります。
その道程で色々なイベントやシステムを体験していきつつも、終局へと収束していく中でストーリーを高める演出を通ることで、終わってみれば正統派のファンタジーを遊んだような爽やかな気分を味わえるでしょう。
様々な苦難を乗り越えて、強大な敵に挑んでいきませんか。
感想
作者さんがすっぽんクエストの方とショートファンタジーの方なので、闇鍋と王道ファンタジーっぽいものが良い意味で悪魔合体した作品です。
終わってみれば正統派のファンタジー作品をやった気分になれるのに、プレイしている最中の感覚はまごうことなきごった煮の嵐です。面白い感覚が味わえますね。
このゲームを闇鍋だと思っているのでどこから話すべきか迷っているんですが、とりあえずカイジから話しておきます。
作中には色々なミニゲームやらパズルが出てきて、良いアクセントになっています。筆者はスロットやブロック崩しをやった結果ぬめぬめレースに落ち着いたんですが、赤スロットって攻略できるんですか。
ブロック崩しをしなかった理由としては、反射角が確定しているタイプっぽいのであんまり面白みがなかったからです。あくまでミニゲームという感じがする。
それはそれとして、序盤の進行はカイジADV、RPGを添えてという感じです。それぞれの人々の現在の状態が表示されつつ、少しずつ何かが進行していく様を感じられます。
選択を誤ったり、ミニゲームに失敗したりすると何か良からぬことが起きそうな気配を感じつつ、ストーリーを進めていくことになります。
そんなADVパートで急に緩い下ネタが突っ込まれる当たりもすっぽんの方っぽいなという印象です。ひどい偏見ですね。
RPG部分については基本的にはダンジョンに潜るところになります。
ダンジョンパートは限定リソースで戦闘をこなすタイプで、上手く戦えばそれほど苦戦せずに攻略可能です。実際、ダンジョンの位置に気づかずに一日スルーしましたが、無事クリアまでたどり着けました。
最終盤の難易度だけ高めではありますが、そのころになるとこちらも強いので割と何とかなります。このあたりの戦闘バランスはざっくり目な印象でした。
そうしてカイジADVパートを抜けると、本編のRPGパートっぽいものが進行するようになるんですが、それでも依然としてカイジADVパートも継続して行われていきます。
このあたりのごちゃまぜ感が闇鍋らしさをより強くしている印象です。
ADVパートの大演目みたいなところのある人間カーリングの完成度はかなり高くて、これだけでもうまく作ればウディコンに出せそうなレベルです。
その上で全員生存を目指すならこうしなくてはならない、という制約もあって、メタ的な思考でも楽しめるゲームとなっています。生かそうとした時の立ち回りはやや難しいですが、相手がそれほど強くないので理不尽ではないレベルです。上手く守りましょう。
一方で本編RPGパートの戦闘バランスもざっくり目な印象で、ダンジョンでもそうなんですが、連続攻撃技をぶんぶん振るタイプの戦いになります。
こちらの取れるスキル構成があまり豊かではないので、回復するか殴るくらいしかなく、相性を突くとか状態異常を活用するとか、そういった戦略性はあまりありません。語弊を恐れずに平たく言えば、物語のフレーバー的な要素という印象です。
ただ、このRPGの戦闘があったからこそ活きる物語もあったので、フレーバーとしてはうまく活用されていた印象です。機械人形の下りとかラストダンジョンの表現としては、これ以上なかったように思います。
戦闘を楽しむためのRPGではなくて、物語を演出し、体験するためのRPGという印象でした。
その物語の話をすると、この作品は今ウディコンの熱いですわ担当だと思っています。コメディ担当でもあるかもしれないけれど。関西弁のほうはいったんおいてください。
やはりカンノーリが良いキャラをしていて、このキャラクターが主人公であるが故に面白い物語であるという風に感じました。
また、カンノーリがああいった明るいキャラクターだからこそ、エクレールのことを少しだけ好意的に見れるという側面があると思います。控えめに言ってもエクレール、自己中心的なクズみたいなところがあるので。この辺もすっぽんの方という感じがしますね。シュンリほどではないと思いますが。
全体的に演出能力が高いのも効いていて、見せの場面で魅せてくる能力の高さが光っています。
そしてそれと同じくらいに、ギャグパートでもその演出能力をいかんなく発揮しています。それをやりだしたらもうカイジなんですよ。
そういった展開を随所に挟みつつも、終盤の展開はまごうことなき王道ファンタジー然としたもので、主人公の精神的な強さも描かれるものとなっています。
誰一人失わせしめなかったという自信がカンノーリに力を与えたんでしょうか。やはり熱いですわだと感じています。
なお筆者は初手でTrueまで行ったので、残りのENDを回収できていないのですが、Normal回収はストンダを見捨てるのが一番楽そうで、Badはちょっとだけ面倒だなあと感じています。そもそも見捨てるのが忍びない。筆者はUndertaleも結局Gルートをやってないメンタルをしているので。
ちなみにどうでもいいんですが、ストンダについて、ドット絵の関係なのかずっと肌色の悪いおばあちゃんに見えていました。何となくそう見えませんか。
書きそびれていた話として、拠点マップがやや歩きにくいことだけ若干気になっていました。
全体を歩き回ろうとすると円形闘技場が直進を邪魔するところとか、がれきが落ちていて引っかかるところとか、そういう細かいところです。
なんとなく闘技場以南のイベントは限られているから毎回行く必要が無いんじゃないかなと思いつつ、律儀にも念のため足を運んでいたせいではあるんですが。
RiME なんかもそうだったんですが、リアリティというか雰囲気のあるマップ作りと移動の平易さは割にトレードオフになりがちな気がしています。