第14回ウディコン全作品レビュー - 畑から始める魔法薬学入門

69. 畑から始める魔法薬学入門

ジャンル 作者
農業合成RPG abon
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間30分 1.15 クリア

良かった点

  • 無心でずっとプレイしたくなる作品でした
  • 新しいロケーションの解放タイミングがちょうど良いです
  • それぞれのキャラクターのスキル構成の癖が強く面白かったです
  • 近づくとインタラクトできるものが光る仕組みは便利でした

気になった点

  • 畑の管理周りでいちいちメニュー画面を経由するのが煩雑でした
  • 芽吹きの間で毎回入り口に戻されるのは辛かったです
    • 以前の場所に戻れると楽そうです

レビュー

畑に学校に冒険に、好きなように過ごそう

導線が整備され、要素がうまく組み合わさり、配慮が行き届いたシステムの中では、得てしてプレイヤーはルーチンを自分で組み上げて黙々とプレイしてしまうことがあります。
畑から始める魔法薬学入門は、そんな黙々と遊んでしまう楽しさのあるゲームとなっています。

このゲームにおいてのプレイヤーの行動は、起床して畑のお世話をすることから始まります。
畑に種を植え、水をまき、実れば収穫していきましょう。雨が降っていればラッキーです。水をまかなくていいので、普段より時間をかけずに手入れが終わります。

続いて、学校に向かうのも良い選択肢です。収穫したアイテムがあれば、合成して薬が作れるかもしれません。
また、先生からレシピを学べば、新たな薬も作れます。あるいはレシピをアレンジして、より良い薬を作ることに挑戦するのも一興です。
食堂で依頼をこなしたり、図書館で調べ物をしたり、温泉に浸かったりと、様々な施設に立ち寄るのも良いかもしれません。

また、外で採集や戦闘をこなすのも良いでしょう。学校に行った後でも、時間があれば構いません。
採集すればアイテムや畑に植えられる種が手に入りますし、戦闘をこなしてレベルを上げていくのも大事です。ストーリーを進めるにも、外に行くことがカギとなっています。

そうして外で繰り広げられる戦いは、独特な個性を持ったスキルを活用していくことになります。
主人公は作った薬を活かして戦うことができ、仲間のキャラクターは被弾しなければ強化されていったり、ターンをまたいだスキルが使えたりと、それぞれ個性的なスキルを駆使することが可能です。
単独では癖が強いスキルでも、上手く噛み合わせれば何倍にも大きな力となっていきます。適切に戦略を立てて、強力なボスをも打ち倒していきましょう。

そうして採集や学習、戦闘などを終えて帰宅したら寝て、起きたらまた一日の始まりです。
時間の制約はないので、一つの行動が終わったら寝て時間を調整するというやり方でも構いません。自分のやりやすい過ごし方を模索していきましょう。

成長させて薬を作り、薬を活かして戦闘を有利に進めて物語を展開させ、そうして新たな地に足を踏み入れることで新たな薬が作れるようになる。このような、小さな流れとしての一日と、大きな流れとしての新要素の解放、双方の流れが完成された作品となっています。

自分なりの一日の過ごし方を立ててみて、黙々とプレイしてみませんか。

感想

畑で作り、学校を基点に冒険する良いゲームです。
これを先に書くと若干印象悪くなりそうなんですが、あえて書くと、細かい不満点は色々とあったかもしれないけれど最後まで楽しめる作品でした。手元のメモにはいろいろと書いてあるんですけど、それはそれとして何故だか、ずっとプレイできる作品です。

ゲームは楽しめればそれが最高なので、多少の不満点は最終的にはあんまり気になっていません。
枝葉末節はともあれ、楽しさのコアは外していないということだと思うので、主要なルーチン周りのコアがしっかりできているゲームなのだと感じています。

特に自分なりに行動のルーチンみたいなものが固まると、無心でずっとやってしまう感じがあります。
畑を使ってアイテムを取得しつつ、ダンジョンで採集がてら戦いつつ、ちょくちょく授業などもこなしていく、という導線があるおかげで、程よく新鮮味のあるものが見えつつ進行していくので、飽きずにどんどん進められます。

また、時間である程度の行動制約がつくので、これもルーチンを組む導線になっています。
時間という概念が無ければこれを繰り返しやるだけ、といった行動が強くなってきて飽きが早そうなのですが、適度に違うことが混ざってくるので常に変化のあるプレイが楽しめます。
ある程度プレイを続けていくと少しずつ全体の動きそのものは固まっていくんですけど、そこが慣れてくるころには、ロケーションの解放が楽しみになってきます。

新しい場所に行けるというのはそれだけで楽しいのですけど、このゲームはそれがさらに良いものになっています。
まず、新しいロケーションを見る楽しみというのがもちろんあります。ただそれだけではなくて、新しい敵や、新しい素材、そういったものが新しい薬へとつながっていくのが良いです。ストーリーも展開します。
こういったように、ロケーションの解放はいろいろなものへと連鎖していくので、飽きずに楽しみやすいところがあります。

枝葉末節の話をすると、細かい配慮ポイントと、細かいやりにくいポイントが混ざっている感じです。
特に、近づくとインタラクトできるものが光る仕様は地味に嬉しくて、ボタン連打する必要がないんですが、やらされている感も薄れる良い塩梅でした。

一方で、やりにくい感覚を多く受けたのは畑の管理回りです。
農具の切り替え及びシード選択がメニュー画面形式なので、手数がどうしても多くなります。畑がゲームの基点になりやすく、操作頻度も多いのでここは若干煩雑ではありました。
畑内部だけ専用操作キーを割り当てるなどが自然な気もしますが、筆者があまりこの手のゲームをやっていないので最適解は分かりません。牧場物語とかルーンファクトリーあたりが近いんでしょうか。
一方で、歩く必要が出てくる水やりなどは時間の概念があるので制約として受け入れられるレベルでした。

また、 芽吹きの間はそこそこ連続でやることになるので、逐一入り口に戻されるのも煩雑な印象を受けます。
特に後半は解放済みスキルツリーを巡ることになってしまうので、前回居た位置に戻されるなどでもいいかもしれません。スキルツリーとはいえ、基本的には以前いたところのほうが根よりは目的の場所に近そうです。

また、これはアップデートによって変化があったのではないかと思っているんですが、やたらに雨が降ります。
雨がキーとなるものがあったり、雨そのものが水やりが不要になる良い天候ではあるんですが、あんまり降り続けるのも変化がないなあという気持ちでいました。
雨乞いみたいなアイテムがあればバランスが取れるのかもしれません。一方であまりやりすぎると、天候操作する効率を極めてしまってランダム感が薄れてしまう懸念もありますが。

あと、このゲームはちゃんと薬を集めて戦闘するという面白さもあります。
RPGとしては結構まっとうなレベルデザインがなされているので、ストーリーの要所要所のボスにはそこそこの歯ごたえを感じることができます。
難易度は易しめでバランスがとれているんですが、各キャラクターの性質が尖っているのも面白いところです。戦闘も楽しいゲームでした。

ちゃんと畑や探索で手に入れたアイテムから作った薬があれば戦況を有利に運べますし、有利に運んだ上でのライダーズハイがめちゃめちゃ強いので爽快感もあります。アクセル付ければ火力が異常の域に達します。
占星術師も技の癖が強いんですが、上手く扱うと強い技が多くて楽しい。因果律で下地を整えて繰り出すライダーズハイが一番楽しいまであります。

全体を通した個人的な感想として、大きくタイムリミットで区切られていなかったのも良かったなと感じました。
設定的には学年で区切るなどのリミットを作ることもできそうなんですが、そういう区切りが存在しないおかげで、あんまり焦らずに色々と試せて良かったです。
とはいえ、筆者は制約が無くても効率化を目指したくなってくるので、結局は良い感じのムーブを模索してはいました。マージン広めのリミットがあったカミヤセツナでもそんな感じでしたので。

とにかくプレイ中はいろいろやりながら、ちょくちょく新しい場所が出てきて新鮮味を覚えつつ、全体としてはのびのびプレイできたので良い作品だったと思います。のんびりしていなかったのが雨判定のバグの検証時くらいでした。
色々やりながらRPGも楽しみたい人にはお勧めできると思います。