第15回ウディコン全作品レビュー - Forcelagoon2 因果律の少女

04. Forcelagoon2 因果律の少女

ジャンル 作者
ファンタジーRPG レイディース
プレイ時間 プレイVer クリア状況
16時間+1時間 1.38 クリア/組手完了

良かった点

  • コインやアイコンを用いた誘導が常に丁寧な作品でした
  • オリジナルのグラフィックで世界観やキャラクターが生き生きと表現されています
  • キャラクター同士の会話劇により各々の魅力が増幅されています

気になった点

  • ヒールに対する攻撃魔法や、下位魔法と中位魔法について、消費MPとのバランスがやや悪く感じました
    • 上位を習得する終盤まで来ると、大きく気にならないレベルになります
  • 地名表示に文字送りが必要なため、微妙にテンポを削ぐところがあります
    • 地名自体は世界観を表す雰囲気として良いので、ピクチャなどを利用してモーダルっぽい動きにならなければ良いなと思っています

レビュー

掛け合いが楽しいRPG

Forcelagoon2 因果律の少女は、ファンタジー世界で因果をめぐる冒険が繰り広げられる長編RPGです。
主人公であるベヨネットは、ある時から見知らぬ少女の助けを呼ぶ声を夢に見るようになりました。その少女との因縁が、やがて大陸を越え世界中を巻き込む壮大な因果へと繋がっていきます。

ゲームとしては極めてオーソドックスなRPGであり、世界を巡って冒険していきながら敵と戦って物語を進めていくことになります。
その中でも特徴的なのは、レベルアップにより上がるステータスがHPとFP(MP相当)のみというシステムになります。このため、どれだけレベルアップしたとしても、その他の基礎ステータスはすべて武器や防具に依存することになります。その時々で上手く装備を取り換えつつ、効率よく敵と戦っていきましょう。

そうしてゲームを進めていく中で、ベヨネットは様々なキャラクターと仲間になっていきます。どのキャラクターも個性豊かであり、それぞれが思いをもって彼女の冒険に同行してくれるでしょう。
そんな仲間との掛け合いは、各所にある絆の種と呼ばれる地点を調べると見ることができます。キャラクター同士の関係性や世界のことを知りたいのであれば、積極的に見ることをお勧めします。

当然、仲間は戦闘においても心強い味方となります。それぞれには独自のスキルが存在し、これを上手く活用していくことで戦いを有利に運ぶことができます。パーティーの編成はいつでもできるため、適宜好きなパーティーや相性の良いパーティーで、ダンジョンや強敵に挑んでいきましょう。

主要キャラクターや敵グラフィックを始めとし、NPCまでもがオリジナルのグラフィックで描かれたこの作品は、魅力的なキャラクターの会話劇も相まってユニークな世界をいかんなく表現しています。
そんな世界の様々な地を渡り歩き、個性豊かで魅力的なキャラクターを仲間に加えて、はるか昔からの因果に決着をつけていきましょう。

感想

まずは20時間級のファンタジーRPGをシナリオ付きでまとめきったことに賛辞と感謝を述べさせていただいて、そこから感想に入りますね。
この規模となると戦闘バランスの調整、シナリオの不整合の確認、山とオチの配分、フラグ管理の整備、システム面での頑強化とか諸々の障害が立ちふさがるんでしょうが、それらを全て解決してこの精度で完成させたというのが凄いです。

とりあえずゲームシステム面について。
誘導をコインでこなすのはアクションではよく見る手法ですが、RPGでやっているのは初めて見たかもしれません。特に前半においてはプレイヤー利益の塊なので、良いシステムだなあと思っています。中盤だとさすがにそんなに利益はないんですけど、何となく取ってしまう魅力もありますね。
加えて、アイコンによる誘導がかなりちゃんと整備されており、話を若干忘れてしまっても進行に影響があまりないようになっています。特にこのレベルの長編となると一息にクリアするのが難しく、どうしても中断を挟んでしまうので、このシステムは大変ありがたかったです。やるべきことが思い出せる。

また、シンボルエンカウントの採用がなされているのも良くて、こちらでダンジョンのエンカウント率を調整できます。
戦って稼いでおきたいなら積極的に当たりに行きますし、そうでないなら上手く避ける楽しみもあります。マップによっては回避が難しいところもありましたが、多くは避けられるレベルになっているのも配慮がありました。
同じエリアにもう一度入り直すことも少なくない長編として、この辺の雑魚戦を無駄にやらせない配慮があるのも良いところです。

一方で、上述している地名表示に文字送りがあるのは若干移動のテンポを削いでいる印象がありました。
地名表示の雰囲気作り自体は大事なのかなと思っているので、プレイヤーの操作を奪わないのが理想なのかなと感じています。雑なイメージだと下記みたいな感じ。
フェードアウトまで勝手にやれば大体のケースで邪魔にならないと思いますが、上下で移動するマップだとたまに被る可能性はあります。難しい。

また、物凄く細かい上に好みのわかれるところとして、セーブの際にいちいち休憩を開く必要があるのがやや手間を感じました。
工程が一つ増えているだけではあるんですが、セーブ地点が用意されていると要素として分離できそうな印象はあります。世界観的にどうなんだという話はありそうですが。

最後の細かい点として、キャラクター編成時にメニュー画面上で変化がないことがうっすらと気になっていました。装備の付け替えとかをやり始めるとキャラクター自体は変わっていることが分かります。
多分メニューの更新が走ってないんだと思うんですが、ここでメニューを閉じる仕様とかにすると利便性を著しく削ぐので、可能なら即座にキャラクターの見た目の繁栄もされて欲しいなとは感じています。

続いて戦闘について。
戦闘バランスは全体を通してかなり良好で、様々なキャラクターを使い分けることが可能にもかかわらず、常に良いバランスで戦えました。
レベルはHPなどにしか影響がなく、装備で能力値がカスタマイズされるというのが良くて、装備の性能で上手く味方側の能力を調整していたのかなと感じています。
さすがに終盤になると装備が充実しすぎて回避100のタンクという最適解に落ち着きはするんですが、それでも攻撃側を詰めるなどの考えは残るので最後まで楽しむことはできました。

回避100のタンク (状態異常対策も完璧なので必中以外は脅威じゃない)

個人的にやや気になったのは中盤くらいの味方側のバランスで、中級魔法と初級魔法の間に消費MP比の火力差が出ていませんでした。これによりあまり中級魔法を使う機会がなく、初級魔法でちまちま削ることになるケースが多かった印象です。
加えて、ヒールの消費MPに対して攻撃魔法の消費MPが割高なのも影響して、魔法使いがMPを使って攻撃参加するよりMP消費を抑えてヒールしてもらう方がコスパが良くなってしまっている印象もありました。
もしかしたら、中盤はFP回復手段がそれほど潤沢に用意できないからこういう感想を抱いている可能性もあります。

終盤になってくると、敵の攻撃も強く、加えて固くもなっていることから上級魔法を使うモチベーションも増えてくるため、このあたりについては完全に中盤に限った話になります。
なお、終盤でもコスパを考えるとテレシコアがメガリバースした上で回復したほうがコスパが良いきらいはあるものの、こちらはリスクを取っていてかつコンボ技っぽいのもあってあまり気になってはいませんでした。

なお、このあたりの話はあくまで雑魚戦で中級魔法を使うモチベーションがないというだけで、全体を通した戦闘バランス自体は中盤でも良好に感じていました。上手く戦略を組み立て、各キャラクターの役割を機能させて戦うボス戦や強敵戦は歯ごたえがあって好きです。
あと個人的に好きなところは、前半は普通に殴る技が強く、中盤になると低コストで防御貫通できる弓に魅力を感じ、終盤になるとバフを乗っけた火力を好むようになるという変遷です。この当たりの火力の取り方の移り変わりが、上手くグラデーションしているような感じがありました。

やや戦闘の話から外れますが、ボスの好きな点としては戦闘前のカットイン演出もあります。こういうのがあるとテンションが上がりますね。

最後にめちゃめちゃ細かくて好みの話をすると、 敵の状態異常がメッセージでしかわからないのは若干辛めではありました。可能ならアイコンが欲しく、できれば継続ターンも欲しいですね。

続いて、シナリオとかキャラクターの話をします。
シナリオは一本筋の通ったハイファンタジーという感じで、この長編を最後まで貫き通す一本の柱として機能していました。謎の少女とその因縁を軸としつつ、上手く中心となる話題を入れ替えていきながら、最後までシナリオの牽引力を持たせています。
まず大前提として、このベースとなるシナリオが骨太に機能しているからこそ、以下で話す枝葉のキャラの関係性を成り立たせる会話パートが上手く働いているという面があります。

キャラクターについては、物語が進むにつれて愛着が湧いてくるタイプです。具体的に言うならスキットを通して少しずつ人となりを理解していき、キャラクター同士の掛け合いによってその魅力が増幅されていくイメージです。終盤まで来れば大体のキャラクターを好きになっています。
なお、個人的に好きなのはガントスでした。あのナリと軽薄さを備えていながら、常識人大人枠なあたりが好きです。苦労人ポジションが好みなのかもしれません。

ただ、キャラクター同士の掛け算で魅力が増していくタイプの良さをしているので、キャラクターの元の魅力値が分かっていない序盤ではまだキャラクターに魅力を感じにくいです。なので、どうしても立ち上がりよりは終盤のほうが面白いと感じてしまうゲームでもありました。レジギガスみたいな感じ。
全体16時間の私のプレイ時間のうち、すごく面白くなってきたなと感じたのは12時間時点くらいでした。そこから先は止まりませんでしたね。最後までやれば間違いなく面白いしキャラクターを好きになれるとは思うんですが、フックとしては弱いのかもしれません。

ただ、キャラクターが揃ってきた頃から始まっていく、相互にキャラクターを立たせ合うその関係はまさに関係性の神砂嵐みたいな感じがあります。つまりこれ
この辺のキャラクター同士の関わり合いは本当に良くて、エンディングまでちゃんと機能しています。何より、全員に愛着が湧くからこそ、最後にみんなで集まって敵を囲むシーンには熱いものを感じられました。

余談ですが、エンディングのグラフィックは立ち絵のそれに比べて解像度が高く、おかげで色々と知ることができました。個人的にはリク君が思ったよりイケメンなことに驚いていました。
特に立ち絵だと省略されたディティールが描かれているのが良かったですね。

なお、ここは個人差がある所かもしれませんが、折角ファンタジー然とした世界観を構成しているので、あんまりメタっぽいネタはない方が良いかもしれません。最初の最初に少しだけ離す程度なので気にならないレベルかもしれませんが。

あとは最後の話に入る前にめちゃくちゃ余談なんですが、宿屋で暗転が入る時に、おばちゃんがその前にいるので、暗転の中おばちゃんだけ見えているのが笑いを誘いました。なんかシュール。

最後に全体的な話を少しだけ。
最初にも触れましたがシナリオが一本通しつつ、10時間を優に超えるRPGを破綻なく築き上げているというのが素晴らしく、ここまでちゃんと作り込まれているなあと感じながら最後までプレイすることができました。
一切の手抜かりなく、徹頭徹尾RPGを遊ばせてもらえたのは感謝の念に堪えません。楽しかったです。