第15回ウディコン全作品レビュー - メリカと野菜の剣士たち

06. メリカと野菜の剣士たち

ジャンル 作者
デッキ構築ローグライト サカモトトマト
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間40分+3時間40分 1.01.0 全キャラクリア

良かった点

  • チュートリアルが手厚く、操作性も良好でした
    • 初見でも突っかかりなく最後まで進めました
  • デッキ枚数が固定かつ入れ替え自由のため、緩いデッキ構築ローグライクを楽しめます
  • 能動的な不運を引かない限りは負けなさそうな良いバランスでした

気になった点

  • タイトル周りのアウトゲームはややわかりにくい印象でした
    • 主に要素解放周りですが、やっていくうちに慣れるレベルです
    • 現状何が解放されていて、この解放にはどういった恩恵があるのかというのが不透明なあたりが一番気になっていました
  • 通信待ちが明示的に入るため、体験にロスを感じました
    • ウディタではできないのかもしれませんが、開発側のための情報収集は裏のスレッドで動かすのが体験に悪影響を与えなさそうです

レビュー

野菜を組み合わせてコンボを作ろう

メリカと野菜の剣士たちは、野菜をデッキに構築し、そのシナジーで敵を倒していくデッキ構築型ローグライトです。
伝説の野菜を求めて、パートナーと共に様々なエリアに挑んでいく構成となっています。

基本的な部分はノンフィールドRPGのような進行をしていきますが、戦闘面では野菜からなるデッキの構築が鍵となります。
エリアを進むと出現する雑魚敵や、最後に待ち構えるボスに打ち勝つためには、野菜同士のコンボを念頭に入れて上手くデッキを作っていく必要があるでしょう。

戦闘画面

戦闘では、まずデッキから野菜が5つ補充されます。この中から最大3つの野菜を選ぶことで、一ターンの行動が完了します。相手の行動は開示されているので、その行動や相手の体力なども加味して野菜を選んでいきましょう。
野菜には様々な効果がありますが、攻撃/防御の上昇と、SPの回復が基本となります。攻撃と防御はそのターンのダメージと被ダメージに影響し、SPは攻撃の度に消費されて0になるとピンチになってしまいます。上記の画像ですと、にんじんを食べればSPが10回復したうえで攻撃力が6上がります。一方で、斬撃という攻撃を行うため、このターンの終わりにSPが30消費されることになる、という次第です。

ただし、闇雲に野菜を与えていれば勝てるほど敵は甘くありません。そこで大事になってくるのが、野菜の特殊効果とそれを組み合わせたシナジーになります。
毎ターンそれ自体の攻撃力が3ずつ増えていく野菜に、そうして付与した効果を2倍にする野菜を重ねる、状態異常があるほど強い野菜に対して、自分が状態異常になる代わりに強い野菜を先に食べる、そういった自分なりのコンボを作り出していくのが肝要となってきます。
エリアのイベントでランダムで手に入る野菜から上手くピックして、その時々で強いコンボを生み出していきましょう。デッキが8つの野菜のみで成り立つことで回転率が良いのもあって、どんどんコンボを決めて楽しむことができます。

また、このゲームではエリアに挑む前にパートナーを選ぶこともできます。パートナーによってその特徴は異なるため、それぞれの性質にあった戦略を考えていくことも大事です。その人に合った野菜を模索していきましょう。

なお、デッキから外した野菜はロストせずに保持されるため、いつでも好きな時にデッキを組み替えていくことができます。
コンボしやすい野菜の性質、8つという少ないデッキ制限、いつでも見直せる構成など、あらゆる面で緩くローグライトを楽しむことができるため、デッキ構築型ローグライトに慣れていない方にもお勧めできる作品となっています。

感想

かなり緩めに振ったデッキ構築型ローグライトという印象です。カード制限による時々の取捨選択はなく、カード取りすぎてデッキが薄くなって弱くなることもありません。いつでもデッキを組み替えられるし、それぞれのシナジーを割と気軽に試せました。
その分難易度はだいぶ易しめになっているようには思うんですが、ラストダンジョンはしっかり難しいところも良かったです。まあこの調子ならいけるやろで進んでいたらボコボコにされました。最後がギミックボスとは思わなんだ。唐辛子はもらったそのターンに全部捨ててしまった。
後から実績の唐辛子の項目を見たらヒントっぽいのが書いてはあったんですが、クリア前にここは見ないので難しかったですね。

なおクリア時間は、ヨハンでクリアするまでに3時間弱で、そのあと全キャラクリアするのに4時間弱になります。ヨハンでクリアできたし、クレアなら2時間で行けるかなと思っていたら、想像より苦戦しました。クレアでの戦い方が苦手なのか勘所をつかめていなかったのか。
反対に、ペペロはものすごく手になじんで一度もゲームオーバーになることなく最後まで行きました。状態異常というデメリットをあえて背負って上手くコントロールするのが性に合っていたのか、たまねぎやにんにくを駆使してクリアまで漕ぎつけています。ある意味ではやるべきことが明確なので戦いやすいのかもしれません。

ローグライトとしての操作性は良好で、大体何をすれば何が起きるのかは分かります。
最初の内は慣れずにダメージ表記を信用しすぎて微妙に足りなくて焦ったり、さっき使った野菜を何故か忘れてこの睡魔消えたっけなと考えたりしていましたが、大体プレイしていくうちに慣れてきます。ダメージ表記、厳密には相手の防御値とかMissの存在があったり、相手の逆襲の関係で火力が伸びたり、こちらの調味料コンボで結界が張られて逆に落とせたりするので、最終的にはちゃんと計算してやる必要があります。

また、敵の行動パターンも色々とあって敵ごとのちょっとした攻略要素や手持ちのデッキとの相性要素もありつつ、ボスは特殊パターンなども散りばめられていて、全体的に丁寧なバランスに感じていました。
最初がだいぶチュートリアル風の簡単目なダンジョンで、終わりの方に行くまでは変わり種の要素はありながらも攻略的には何とかなるレベルに仕上がっていて、最後の方はちゃんと難しいという綺麗なレベルデザインです。

システム面で見ると、最初にも言及した良い意味での緩さのおかげでオレオレコンボが作りやすくなっています。
手札は常に完全補充、手札5枚に対してデッキ8枚なのでコンボを引けない確率の方が低いし、仮に引けなくても次には揃うバランスはかなりプレイヤー有利なんですが、その分自分の考えた最強のコンボを叩きつけやすいです。
もちろんそれだけだとプレイヤーが強すぎるので、左側の野菜を消したり全体を腐らせたり、長いコンボをする上での障害的な技が敵側に用意されていてバランスはとられています。丁寧。

デッキ構築ローグライトの一部というかカードゲームでは、デッキ圧縮が何よりも強いのはポケカとかをやっていると分かる方もいるとは思うんですが、このゲームではプレイヤー側が理解してそれをやるまでもなく、あらかじめデッキ圧縮されているようなものなので、初心者でも気軽にコンボが楽しめるようになっています。
反対に、デッキ圧縮やろうとしても圧縮されすぎているので、あんまり意味がないという、ドローソース方面にカードプールを広げられない設計にはなっています。デッキに一枚しかないナスを使ってナス引いた時は笑いました。これだとドローは基本的に弱いですね。一応、カードを育てるという面では選択終了時のカード枚数が多い方が有利になるケースもあるんですが、たいてい育てるのは一極集中なのでそこまで恩恵は無かったりします。

その分、カードプールは特殊な効果や状態異常、能力上昇に振られていて、その辺の効果を上手く扱えるかがカギになってきます。単独で強いカードはもちろんないわけではないんですが、それよりは組み合わせが意識されてるようなカードが多い印象です。やっぱり、コンボ推奨っぽいデザインなんですかね。自分だけのオリジナルコンボを見つけよう!と題されてますし。

その辺のインゲームの完成度は高いゲームで、個々のパートはずっと楽しく遊べるんですが、一方でタイトル周りのループの体験はやや険しいところがありました。
要素解放が奥まっている上に開放要素が分かりにくく、どう強くなったか判然としなかったり、そもそも開放しきってもグレーアウトしたりしなかったりで、何となく解放の楽しさが薄く感じます。多分、項目完了時にCompleteとついたり、横に開放したもののアイコンが並ぶなどのリアクションがあるだけでも楽しい気はします。

また、エリアアタック終了後にタイトルに戻されるのは多分新要素解放などのサイクルに入ってほしいからだとは思うんですが、再び同じパートナーをいちいち選択して始め直すのも若干手間です。パートナー選択くらいは記憶しているか、クリアできているなら強化は不要と見てそのまま次のエリア選択に行かせるなども良いのかもしれません。この辺は好みだとは思います。

エリア選択というかシェフスキル選択についても、エリア選択時に挑戦するの下にあるというのがあって、しばらくどこにあるか分かっていませんでした。
エリア選択でエリアを選択したときはほぼ挑戦する気持ちになっているので、そこで準備に当たるシェフスキル変更を行おうというモチベーションが弱いのが印象に残らなかった理由なのかなと思っています。とはいえ、パートナー選択とセットにするとエリア選択で思い立って変えたくなったら戻らないといけないし、エリア選択でエリア選択以外の項目を作るのもなんか気持ち悪いですし、エリア選択時に強制でシェフスキルを選ばせるのは冗長な感じもします。難しい。

あとこれは完全に筆者がせっかちだからなんですが、通信で微妙にプレイのループがシームレスにならないのがずっと気になっていました。
累計時間で言えばもう本当に微々たるものではあるんですが、ゲームをしているという気持ちが切れるところでもあります。これは多分、ロード中とあって何かアニメーションしていたら倍の時間でも気持ちは切れないので、作者さんが誠実に通信のことを説明してくれていることに起因しているのかなと思います。
一般に販売されているゲームでも開発側に情報を通信で飛ばすのは良い手法らしいので、バックグラウンドで隠蔽するとか、ロードと偽ってみるとか何か手を打った方がむしろプレイ体験は良くなるのかもしれません。
しかし誠実さによる信頼も得難いものなので難しい話ではありますね。ここまで行っておいてなんですが、黙って送信も先述の方法でやろうと思えばできるのに、ちゃんと諸々確認を取って行う誠実さそのものは好きです。悪いのは筆者がせっかちなことなので。

最後に1111を出した時のスクショ張って終わります。
これくらいの、ちょうど良くプレイヤーが上手くやってやった感のあるミニゲームを作るレベルデザインの妙が素晴らしかったです。鳩ノ巣原理はドツボにはまると20秒くらい本当に見つからない時がありましたが。上手く見つけると1秒くらいになるので楽しくなれました。

1111