第15回ウディコン全作品レビュー - ビャッコーギャモン

18. ビャッコーギャモン

ジャンル 作者
アクション こげ(ヒワイロボ)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
5時間 1.45 クリア

良かった点

  • ドット絵のクオリティが非常に高く、美しく世界とキャラクターが描かれています
  • 芝居がかかった台詞回しと、それに遅れを取らない熱い展開を持つシナリオでした
  • 適切なガン攻めが最適解となるアクションの設計のおかげで、ボス戦が非常に楽しいです
    • 回避によるクールタイムのリセットのおかげでガンガン前に出る意思が働きます

気になった点

  • 最初のネームドボスであるメズルが他と比してもかなり強い印象を持ちました
    • 何となくモーションからの猶予時間が長いために拍が合わない印象があります

レビュー

振りかざす太刀の下こそ地獄なれ 一と足進め先は極楽

ビャッコーギャモンは、熱いシナリオと高い難易度のボス戦とプラットフォーマーがないまざったアクションゲームです。
敵の攻撃にむしろ向かうような行動に対してリターンが大きいシステムが備わっているため、常にガン攻めし続けて脳内麻薬が出るような戦闘を味わえる作品となっています。

ゲームの基本的なデザインは、プラットフォーマーとボスを軸とした戦闘寄りのアクションです。雑魚敵を打ち倒しつつ進行していき、エリアの奥地で待ち構えるボスと戦うというのがステージの構成となっています。
ステージの道中で戦うことになる雑魚敵は雑魚と言えども癖がある敵も多く、ボスまでたどり着くにはそれなりに攻略法を見出す必要があります。加えて強化アイテムを見つける探索要素もあるため、ボスまでの道程も気を抜くことはできません。

とはいえ、この作品の圧巻は間違いなくボスとの戦いとそれを支えるゲームシステムにあります。
ボスが備えるバリアゲージ、プレイヤーが備えるヒートゲージとその取扱いによって、ボスとの戦いはスピーディーかつリスクとスリルのあるものとなっているからです。

まず、ボスのバリアゲージを全て削り切ると一定時間攻撃に対してノックバックするようになります。これを利用することで、手痛いダメージを一方t系に加えるチャンスが得られます。
バリアゲージは放っておくと回復するため、これを狙うにはとにかく攻撃を絶え間なく浴びせる必要がありますが、ただ攻撃ボタンを連打していれば良いというものではありません。ここで登場するのがヒートゲージです。

プレイヤーは三種の武器を使い分けて攻撃を繰り出していくことになりますが、この度にヒートゲージが溜まっていきます。これが最大まで溜まると一定時間攻撃ができなくなってしまいます。
ヒートゲージを適切に保つためには攻撃頻度を調整するのが安全ですが、バリアゲージを削り切るためによりリスクの大きい行動も取れます。相手の攻撃を上手くローリングで回避することで、ヒートゲージを減らせるというものです。

畢竟、バリアゲージを最大効率で削り取りたいのであれば、攻撃を間断なく加えつつ、適切なタイミングで回避行動をとって敵の攻撃をすんででかわしていくことになります。
もちろん機会を伺ってタイミングよく攻撃を与えていくのも良いですが、敵の攻撃は被弾せずに済ますのが難しい程度には苛烈です。戦闘が長引くほど不利になりやすいので、敵の懐に入り込んで息つかせぬ攻防を繰り広げることが攻略のカギとなります。一歩前に踏み出る方が、むしろ有利です。ガンガン前に出て戦っていきましょう。

このシステムの上で相対することになるボスは、その戦う地形から使ってくる技までバラエティに富んでいます。リトライ性は高いので、何度も挑戦して地形に即した立ち回りの学習や、それぞれの行動の予備動作の熟知、対する自分が行うべき攻撃パターンの用意をしていきましょう。
攻め続けていれば、一戦一戦の時間はそれほど長くなりません。テンポよく再戦し続けてコツをつかむのがお勧めです。

そして興奮が最高潮に達するような戦闘システムに相応しく、ステージ進行とともに紡がれるシナリオもまたテンションを最高潮に上げるものとなっています。芝居がかった台詞回しをもって進行していき、やがて全てを巻き込み雪崩れ込んでいくその展開は、否応なしに感情を掻き立て、強力なボスにリトライを重ねて打ち倒す原動力となることでしょう。
加えて、美しいドット絵とそれに裏打ちされた演出力をもが合わさることでシナリオはより高次元へと引き上げられ、大きく魂を揺さぶるものとなるでしょう。

とにかく、気持ちを最高の状態へともっていく熱いシナリオと、脳を焼き切るような戦闘が楽しめるゲームシステムにより感情を引き上げてくれる作品となっています。
並みいる強敵を打ち倒して、ぜひともそのシナリオの終わりを見ていただきたいです。

感想

全編通して素晴らしい作品であることはもはや疑い得ないんですが、私個人の感想であるならば、終盤のすべての展開と演出が最高の作品でした。終わりの方はずっとプレイできることに感謝しながらやっていました。序盤で洗脳能力で語尾がゾだと食峰っぽいですねとか考えていた雑念が全部吹き飛んだ。
本当に終盤のシナリオの運び方と演出に関しては、過去やったゲームの中でも一つの最高峰に位置しています。巧さも勿論あるんですが、何より熱さという観点では比肩するもののない物語でした。

このままシナリオについて無限に話す前に、アクションゲームとしての話をします。
プラットフォーマーのような側面は多少ありますが、基本的には差し合いが楽しめるアクションです。道中でも割と歯応えがあり、きっちり対処できる動きをマスターしていなければ突破するのは難しくなっています。
この当たりの難易度の塩梅は絶妙で、地理的要件で上手いこと雑魚を強くしている印象でした。落下一発死亡+竜は中でもだいぶ強敵で、忍者龍剣伝みたいなやられ方をします。

そうした難易度は高い一方で、長い面ではショートカットが開通するなど、ある程度のラインにまで習熟できていれば突破できるように上手く抑えられていもいました。稼ぎ要素もある程度の救済措置として機能していて、自機能力を引き上げればかなり有利に立ち回れるようになっていきます。
武器の変更は積極的に行ってスタンスに合う武器を見つけていったほうが良いですが、ある程度良い武器に出会えたら性能につっぱするのもアリです。

この武器のバラエティもかなり良く、それぞれがピーキーな性能を持ちつつも、どれも使いこなせば強力に作用するようになっています。どの武器も十分に一線で活躍できるがゆえに、プレイスタイルに合わせたチョイスが楽しめる作品でした。
個人的には近距離ガン攻めが好きなので靴と斧が好みで、ここに距離を取らざるを得ないところでちょっかいをかけられるアンカーを入れた構成を主に使っていました。

殊に斧は強武器だと感じていて、火力も反射も取れる優秀なパーツで色々と助けられました。その一方で、このゲームにおける最強行動のローリングに合わせるとやや弱体化するのが本当に良いバランスとなっていて、ローリング即攻撃でない最大を取りたい時は細かいテクニックを要します。
靴もそうですが、闇雲に振るとかえって不利状況に陥ることもあるので、近接でボタン連打するのではなく、ある程度テクニカルに立ち回る必要があるのが面白いところです。

他方で盾やバイクはあまり使いこなせませんでした。盾に関しては防御性能がある上に遠距離攻撃手段があり、一部ボスでは刺さったかなという印象ですが、どうも待つのもカウンターもあまり向いていないようで被弾が増えてしまっていました。難しい。
バイクに関しては移動特化の武器と思いきや割と実践的でもあって、上手く使えると割と重宝するところもあるのですが、使用難度が高い印象でした。これを上手く使える人は凄い。

そして、このゲームのアクションとしての圧巻であるところのボス戦ですが、どのボスも歯ごたえがありつつ、スピーディーで対応力を要求される戦いが堪能できるようになっています。
話が取っ散らかりそうなので、まずはシステムに即した話をしようと思います。

まずは武器の耐久制限があることにより、残数に応じて異なる立ち回りを要求されるのが面白いです。
残数を把握して打ち込みつつ、現在使える行動をもとにボスの行動に回答していくことで、早いゲームスピードのもとで常に思考を回した戦闘が楽しめます。耐久制限自体はそこそこネガティブな仕組みですが、比較的早く回復する点と、最後の一撃が強化される点で上手くポジティブな要素が混ぜられている印象でした。最後の一撃を上手く当てられると気持ち良い。

加えて、バリアバーの存在とヒートゲージの仕組みが、ボス戦における戦闘のテンポを劇的に上昇させ、密度の濃い体験を提供してくれます。
バリアバーを削り切れば特大リターンが待っているので、可能な限りコンスタントに攻撃を当てることに強いインセンティブが生まれ、思考が攻撃よりの構成に傾いていきます。結果、ある程度被弾しても上手く殴ることができればトータルで得なので、ガンガン攻めていく気持ちが形成されていきます。
一方で、闇雲に攻撃してもヒートゲージが溜まって攻撃できなくなってしまう都合上、どこかで攻撃を上手く避けて回復するタイミングも必要です。このため、こちらか敵の攻撃をローリングで迎えるように戦うのが良い選択となってくるため、前へ前へというモチベーションも作られていきます。
この二つの攻めることを肯定するシステムにより、否が応でも死線の中にいることになります。「振りかざす太刀の下こそ地獄なれ 一と足進め先は極楽」という宮本武蔵(もしくは柳生宗厳)の言を思い起こさせるゲームシステムです。一歩踏み込む方がむしろ生存率は上がる。

そうしてバリアゲージを削れば、相手をノックバックしてある程度ハメられるような攻撃優位な設計をしていながらも、立ちはだかるボスに勝つのは難しいという難易度もまた素晴らしい完成度となっています。
ボスごとにバリエーション豊かな攻撃手段とパターンを持っているため、それぞれに対するローリングや攻撃といった回答を用意しておきつつ、時には位置関係や武器の残数に応じたアドリブを上手くこなしていかないと満足に勝利することはできません。
敵の攻撃は苛烈を極めるため、攻撃に対する反応の精度を上げていくことが重要になってきます。ローリングは強いけど万能ではない。

個別具体のボスの話をしていくと、個人的に強かったのは最初のボスと最後のボスです。後は憤怒にやや苦戦したくらい。最初のボスで若干心が折られかけました。
なぜかメズルの攻撃に対する拍というか呼吸が合わず、攻撃に対するローリングのタイミングや後隙の狩り方を指が覚えるまでにかなり時間を要していました。後々のボスはある程度リズムが合ったことを考えると、単純にメズルのモーションと私の感覚との間にズレがあったような気がします。この辺はもはや個人の感覚ですね。

最後のボスは最後に相応しく強かったんですが、ここまでくるとシナリオの暴力により諦めるという選択肢が脳内から排除されていたので無心でリトライしていました。あそこまで進めてクリアしないのはノーだろうよ。
絶妙に戦いにくい地形をしているのもにくいところで、立ち位置に応じてかなりアドリブが求められるのが楽しかったです。攻撃手段のパターンだけでなく、どこで何をしてきたらどうするべきか、くらいの判断力と経験値が必要になります。

この辺りでグラフィックにも触れておきます。
ドット絵のクオリティについては比類無いといって過言とならないレベルで、精緻でもありながらアクションゲームとして落とすべきところはそぎ落とされて分かりやすく、外連味とは派手さを両立させた美しいものとなっています。
これを一言で言い表すなら商業レベルなんですが、その言葉に押し込めておくには役不足の凄まじい力を持った画で構成されていました。

開幕いきなりのアニメーションを伴った演出からステージを抜けた先の壮大な風景まで、圧倒的なグラフィックの力でもプレイヤーをけん引してくる作品でした。一切の隙が無いですね。
シナリオが良いことは言うまでもありませんが、そのシナリオの熱が十全に表現されたグラフィックと演出があるがゆえにその魅力が幾倍にもなっているであろうこともまた疑い得ないでしょう。
なお、FF6プレイヤーとしてキャラクターが高笑いするドット絵のモーションがある作品は名作だと思っているので、こ知らの作品は当然名作です。間違いない。

最後にシナリオに言及しておきます。
魂が熱くなるシナリオです。

もちろん、バディものっぽい雰囲気で進行していきながら適度に謎や伏線を撒いている序盤から中盤についても構成力が高い作品となってはいますが、何といっても圧巻は終盤の展開でしょう。
それまでに積んできた伏線を最大限に活用し、かつ最大限のテンションで収束させていった手腕には脱帽としか言えません。

そうしてメズルがその身一つで乗り込んでいく展開に至ってしまえば、そこからは常に最大の熱量をもって物語が展開していきます。
高難度のラストダンジョンを抜け、最後のボスを打ち倒すに余りある熱量を抱えたままエンディングへと流れ込んだ先でOPの反転を示し、ビャッコーを打破するその画の決まり具合といったら最高以外の言葉が見当たりません。
ナールジャメルの戦いも、虚数空間での流れも、そして最後にすべてが収束する流れまで、あらゆる面で完璧でした。拾い集めた虚飾がすべて反転して仮初の主が真なる主として帰還するのはあまりにも熱い。

ここに至るまでにメズルがめちゃめちゃ弱いことが分かるアクションパートが挟まれているのもシナリオに強い影響を与えていて、それがゆえに王の帰還に感情が乗ります。ゲームシナリオとして美しい設計をしていますね。
プレイ後の感覚としては、あまりにも良いものを見たという気持ちで支配されていました。

細かいシナリオというか掛け合いの話としては、言い回しが好きというのもありました。
個人的に芝居がかった語り口が好きなので、他愛ない幕間でも気分が上がります。この言い回しから展開される熱いシナリオを読むために、苦難に満ちたアクションに何らの躊躇なく突っ込めるというものです。

さらに細かい話をすると、武器に一つ一つフレーバーがついていたり、進行度に応じて拠点の会話が若干変化していたりと、細かい世界観の配慮も欠けていないのも良いゲームだなあと感じていました。神は細部に宿りますからね。

グラフィックは完璧でシナリオは魂を揺さぶりゲーム性は骨太のガン攻めアクションが楽しめる、何一つ抜けのないゲームです。難しいことは難しいですが、それを超えるモチベーションもあれば達成感もある作品となっているのでぜひともプレイしてほしいゲームですね。