第15回ウディコン全作品レビュー - 睡蓮

35. 睡蓮

ジャンル 作者
ノベル リュース
プレイ時間 プレイVer クリア状況
12分 1.23 読了

良かった点

  • 良いボーイミーツガールでした

気になった点

  • タイトルが睡蓮である理由が気になりました

レビュー

掌編ボーイミーツガール

睡蓮は、掌編のノベルゲームです。
ある少年とある少女の出会いと交流が、率直な筆致で描かれている作品となっています。

作中の舞台とも言える夏という季節に相応しく、夏、浴衣、花火という黄金比でもって構成されており、その空気を感じることができるでしょう。
また、ごくごく短く後味の良い物語でもあるため、掌編として気軽に読むこともできます。
ぜひ手に取ってみて下さい。

感想

ごくごく短いボーイミーツガールでした。夏、浴衣、花火、ボーイミーツガールは、黄金比ですね。
短編として、そしてその短い物語として良く心に残る作品でした。

個人的には、主人公の生気の落とし方が割とリアリティあるのが良いなと思っています。明らかに気落ちしているし気力はないけれど、外食のためにちょっと出かけるのに躊躇はないし、おいしいと評判のうどん屋は知っている、それくらいの感覚です。
気分が底に落ち続けているというよりは、常に逃げ続けてる方に近いというメンタルに対してかなり正鵠を射た描写なんじゃないかなと思っています。それなりに生活はしているけど、生活そのものの充実性はなく、友達がいるかは不明だけど、評判のうどん屋の話を聞くないし耳に入れて覚えておく程度の余地はあります。
こういう極端な人間の話ではないという表現が良かったです。真白はあまりにも救いとして極端な光ではあったかもしれませんが。

主人公の行動様式については、最悪を想像しているというのもあるかもしれませんが、それ以上に己の罪悪感があまりに救われたくすらなさそうな状況であり、そのあたりを曲げて仮託して逃げるというのは心の防御行動なのかもしれません。
向こうから連絡してこなかったあたり、向こうは向こうで主人公のこの辺の心理はよく理解していそうではあります。主人公側から連絡させないと、この心の影はずっと落とすという判断なんですかね。正しそうですが、このミーツガールが無ければ成立しなさそう。もっとも、最悪ケースでも来年会うことで帳尻を合わせようとしていた可能性はあります。

こういった、どこまでも悪人がいないストーリーなのは個人的には好きなのでプレイできて良かったです。
そして、これは本当にどうでもいい感想ですが、かき氷のシロップはおおよそ味が一緒なことでお馴染みですが、夏味はちゃんと味変わってるんでしょうか。