56. 棺ふる海
プレイ時間 |
プレイVer |
クリア状況 |
30分 |
1.02 |
完成 |
良かった点
- 色々な思考が誘引される良いテーマでした
- ダイスで緩めに制限が入る指向性のおかげで、ある程度まとめやすくなりました
気になった点
- ジャーナルをもう一回書きたくもなりそうなので、空のジャーナルを再度出力してほしくなりました
レビュー
棺ふる海に、あなたは何を見ますか
棺ふる海は、ソロジャーナルと呼ばれるジャンルのゲームです。
与えられたシチュエーションをもとに、自らの手で物語を紡いでいくことになります。
自ら設定と物語を組み上げていく土台は、海の底に住む海妖という設定と、海上から降る石棺を皮切りとしたいくつかの断片です。
海妖がどういった存在であるか、その場所はどういったものなのか、そして石棺は何故降り続けるのかという結末まで、プレイヤーは物語の語り手となって記述していかねばなりません。
いくつかの設定についてはダイスによってランダム性が与えられるため、プレイヤーによって、あるいはプレイした周回によって異なる物語が紡がれていくことでしょう。
設定という指向性のもと、自分だけの物語を構築できる作品です。与えられた設定における指向性の塩梅がちょうど良いため、ジャーナルを書いていくのはさほど難しくありません。設定から想像される情景を描いていきましょう。
あなただけの物語を紡いでみてください。
感想
これはゲームなのかと思いつつ、まあプレイヤーが楽しめる電子媒体はひっくるめてゲームだろうと思って楽しんでいました。ちなみに、物書きをごく軽くかじった身としてはすごく楽しいです。三題噺みたいなものなので。
ほぼ間違いなく創作者にしか刺さらないので、ウディコンという場だからこそ遊ばれるゲームな気もしています。
システムとしては、ある程度ダイスで物語に傾向が与えられるのが良くて、その時々に自己の方針とアドリブ力で誤魔化していく楽しさがあります。たまに以前書いた内容と矛盾が発生して大変になることもありますが、それもまた味です。
テーマ設定も良くて、よくわからないけど石棺が降ってくるというテーマ、色々書けそうないい塩梅の光景である気がします。なんとなく色々解釈が生まれそうなテーマを作るのって難しそうですが、かなりマッチしたお題という印象でした。
以下にざっと書いた筆者のジャーナルも載せます。
ただし、主観文章を書くのが苦手なのと、その時の気分と、ちょっとした誤読により客観文章で書いてしまっています。痛恨のミス。
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| 『棺ふる海』ver1.02 プレイ日時:2023/08/11 プレイヤー名:Narratology
○海妖について 容姿:人とかけ離れた姿
四肢と呼べるものはなく、球体と呼ぶにはあまりに体と外のあわいが流動的な生命体である。 その大きさは漂う中で常に変化しているものの、視認できる程度ではあり、決して大の人間より大きくはならない。
また、その海妖はあたかも呼吸かのように自分より小さい周辺の生命体を絶えず飲み込んでは排出しており、その過程で排出された生命体の塩基配列が変異することが確認されている。 飲み込んだ生命体の塩基配列を書き換えているのか、まったく別の生命体を生み出しているのか、その詳細は分かっていない。
○住処について 環境:都市群が沈む海底
主な生息地である遺構が残る海底では、一定のルートに基づくような巡回とも呼べる行動をとっている。 遺構の年代は正確に把握されていないが、現在測定された精度においても、我らの知る文明の中には該当するものが存在していない。 高さのそろった家屋のような遺構が立ち並ぶ中、一際目立つ摩天楼が海妖の巡回ルートの中心であり、最も多く通過する所でもある。
○石棺について 形状:人間の石棺/子供の亡骸
ある時から、この海域にて石棺が発見され始めたことが分かっている。 その際に、海妖が石棺を何らかの方法で開けて中身を確認している様が目撃されていた。 石棺の中には子供の亡骸と思しきものが認められた。 亡骸は年代にばらつきこそあれ、どれも身綺麗にされているという共通点があった。何が原因で死亡したかわからないほどに。
○海上の人々の反応について 反応:敵対的
そうした石棺が確認された際、海妖の行動に変化が生じた。 石棺ふる海流に逆らい移動を続け、ついには海上にたどり着くまでに至ったのである。 海上にはまさに石棺を流していた人物がおり、会敵でもしたかのような剣幕で発砲した。 鉛玉はそのあわいに飲み込まれたが、排出されることはなく、代わりに動きが鈍ることが確認された。 未知への恐怖に慄いたのか、その人物は脇目もふらず海上を遁走した。
○理由
この件が発生した際、海妖が遁走した人物が散らばせて残していった文書などを吸収し、これもまた排出しなかったことが確認されている。 後から判明したことであるが、この時残された文書は石棺を流した人物がその行動に至った理由を記述したものであり、それを海妖が理解したのではないかと推測されている。 海妖に子供の遺体を吸収させ、排出した生まれ変わりを回収することがその目的であり、古代の神話に基づいた儀式的なものであったという。 風土病により大勢の子供が喪われた折、発見された神話をもとに行動したという次第である。
○決断
この件の発生直後、海妖は都市群に戻ると、これまで通りの経路で周回を始めた。 石棺は未だに降るままで、けれど決して吸収されることはなかった。
○行動
いつしかその海域へ石棺を送り出すことは一つの習慣となり、その意味も、回収するという意識もまた失われていった。 もはや市井の民にとっては、ただ一度だけ起きた遭遇もまた神話となってしまったのだろう。 こうしていつまでも降る石棺は、いつしか海妖の巡回するルートを埋め尽くすかもしれない。
○結末
以上の調査結果を踏まえて、引き続き観察を続けるべきであるとの判断に至った。殊更に、海妖が石棺を吸収するかどうかは注視に値する。 海妖が巡回する海域を棺ふる海と名付け、厳重に警戒の上、航海制限をかけて隠匿すべきであると提案する。
1998/08/11 『棺ふる海』報告書
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