第16回ウディコン全作品レビュー

前書き

注意

  • このレビューは、筆者個人の独断と偏見によって書かれています。筆者の好みが多分に影響していますことをご了承ください。
  • 出来る限り気を付けていますが、一部ネタバレを含む可能性もあります。問題がある場合は、プルリクやTwitter等にてご指摘いただけると助かります。
  • レビュー内容は主にプレイ当時のバージョンに基づいています。最新バージョンと動作などが異なる場合がありますが、ご了承ください。

初めに

WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)は、ウディタ製のゲームを競う、年に一回開催されるコンテストです。

今年で第16回を迎える中、71作品ものゲームがエントリーされました。ウディタというツールの発展性がゆえに、今年もまたそれぞれジャンルも異なればテイストも異なる様々な作品が出展されており、多くのゲームを楽しむことができる場となっています。

今年は全作品を遊びつつ、クリアできる範囲では全ての作品をクリアすることができました。心動かされる作品、仕組みの秀逸さに感心する作品、時間を忘れて執心する作品、様々な作品を遊び尽くし、大変楽しむことができました。このささやかな返礼として、プレイ作品のレビューをしていこうと思います。

なお、筆者は漫画で言えばARIAが好きで、最近の推しなら運命の巻戻士で、小説で言えば米澤穂信さんが好きで、好きなゲームはFF10で、最近やったゲームではHades II、アフターイメージ、A Monster’s Expedition、ベオグラードメトロの子供たちあたりが好みです。プレイ時間で言えば、未だにスマブラをやりすぎています。前回のウディコンで一番好きだったのはビャッコーギャモンです。
加えて、筆者自身はゲームプログラマーを生業としています。その辺りを評価から差っ引いて考えると、より公平に感じるかもしれません。

ネガティブな感想を見るのが不快という方は、こちらのボタンを切り替えてください。ネガティブな感想を含む項目が隠れます。

補記。投げ銭もあるので開催者の方に遠慮なく還元していきましょう。

凡例

良かった点

  • 筆者が良かったと思う点を書き連ねています

気になった点

  • プレイ中に気になった点を書き連ねています
  • 必要ない方は上記のボタンを押して消してください

レビュー

  • レビューの文章を書いています

感想

  • ネガティブ/ポジティブにかかわらず感情側に寄った感想を書きます
  • より直截的な表現およびネタバレが多いので、基本は非表示にしてあります。読みたい方だけ都度ボタンを押して読んでください
  • ここの文章の推敲は甘めです、不適切な表現があるかもしれませんがご了承ください

レビュー

01. 勇者不適伝

ジャンル 作者
RPG すたーあいす*
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間 1.11 全END

良かった点

  • 物語や世界観と上手く調和の取れたシステムでした
  • 様々な点で早めに対処することを誘引する戦闘システムとなっています
    • このため、序盤から意識的にテンポ良く戦えます
  • 良く構成され描かれたシナリオでした

気になった点

  • シナリオ中に使われる単語に違和感を覚える部分がありました

レビュー

和解の旅路

現実的な作品であるという言葉は、シニカルにあるいは斜に構えたように受け取られることもあります。一方で、勇者不適伝もまたある種の現実的な面を描いた物語ではありますが、それは自身の正しさを常に見つめ、降りかかる艱難辛苦を乗り越えていく現実を見せつけてくれるものです。
シニカルとは対照的なその作品性の中で、現実と戦っていく現実的な物語を味わうことができるRPGであると言えるでしょう。

勇者不適伝はゲームとしてはシンプルな設計であり、ノンフィールドのダンジョンを攻略しつつ町を巡り、目的に向かって進んでいくオーソドックスなRPGの形式を取っています。
しかし、和解を目指す彼らの戦闘は一風変わったものです。和解を目指す以上、彼らにHPを削り切って倒すことは許されません。それぞれのスキルを上手く使い、HPではなくIFと呼ばれるパラメータを削って、相手の戦意を削いでいくことが肝要になります。
ただし、HPを半分以上削ることで相手の攻撃力を落とすこともできるので、時にはダメージを与えることも戦略の一手となり得ます。相手の行動パターンやスペックを鑑みて、適切に対処していきましょう。

そうして戦いをこなしていくことで和解を進めつつ、ダンジョンの最後に待ち受けるボスとも戦うことになります。ボスは強力な性能を秘めているため、相応のステータスとスキルを持たなければ太刀打ちできないでしょう。
ステータスの上昇およびスキルを習得していくためには、道中に遭遇する魔族と和解を続け、レベルを上げていく必要があります。積極的に和解を目指していきましょう。
また、ボスと戦う場合は、取り巻きの魔族と早めに和解するのも重要です。IFを削り切った魔族はこちらを回復してくれるようになるため、相手の手数が減る上でこちらを利する形ともなるためです。積極的に和解を仕掛けていきましょう。

そして、様々なダンジョンを攻略しながら和解を進めていく旅の中で、主人公とその仲間たちのシナリオが紡がれていきます。
敵対する魔族との和解という道を選択した主人公の前には、様々な困難と試練が立ち塞がっていきます。綺麗事だけでは済まない世界の中で、苦しみながらも懸命に初志を貫徹していく姿が克明に描かれています。
そうした困難の果てに宿命の敵とも言うべき魔王と相対し、主人公が何を思いどう行動するかを見届けるためにも、物語を進めていきましょう。

感想

色々と特殊なRPGでした。一番特殊なのはほとんどいつでも主人公が上裸になることができて、その会話差分が無数に用意されていることなんですが。個人的には楽しかったので話しかけまくったんですが、どこからこのよく分からない執念が出てくるのかは分かりません。
それをおいても会話差分はそこそこあって、ちゃんとストーリー進行と共に会話の変わるキャラクターがいます。たまに戻って話しかけるなどしていました。

RPG、ことに戦闘面で見ると、HPがIFになって、本来のHPが特殊パラメータに挿げ替えられることで面白い仕組みになっています。
ある意味ではパラメータ名のラベリングを変えただけではあるんですが、これによってパラメータに対しての説得力が生まれています。HPを減らすと攻撃力が減る、でもやりすぎるとダメというのが分かりやすくなっています。
また、シナリオとの連関性も同時に担保されていて、ストーリーにシステムを融和させる役割も果たしていました。

加えて個人的に面白かったのはIFを削り切ると仲間になるあたりで、これは戦略的にも幅を持たせています。敵をスピーディーに処理することのメリットは当然手数を減らせるところなんですが、このシステムにより、それに加えて少量の回復が得られるというインセンティブも生まれているためです。
3体からの同時攻撃は特に終盤は致命傷につながりかねないので、いかに素早く敵を説得するかというスピード戦と、どこまで味方の被害を回復させるかという駆け引きが生まれています。いくら敵を早期に説得できても、味方に戦闘不能が出るとそれはそれで苦しいので、適度なバランスが保たれている印象でした。

なお、HPを下げると攻撃力が下がる仕様もあるので、HPをひとまず削って耐えやすくする、みたいな戦略も取れそうではあったんですが、筆者は結局それをしていませんでした。大体のケースは素早くIFを削った方がトータルの被害が抑えられそうな印象を受けたためです。思ったよりもHPが多い。
また、プレイヤーサイドにHPへ大きく干渉できるキャラが中盤まで現れないので、この恩恵を受け取りに行くハードルが高いのも一因としてありそうです。よほど強く挫折するか、強力な誘導がない限り、序盤にやらなかったことを終盤でやり始めることはないので。

後は、細かい個人的に好きなところとして、最後にSP最大技を大盤振る舞いさせてくれるところがあります。
ゲームのシステムの都合上、最大技は特定キャラクターを除けばあまり使える機会がなく、実際に最終戦に至るまで使わずじまいで進めていました。そして、そこでちゃんと日の目を見る舞台が用意されていることに感心しました。心残りなくラストバトルを終えられます

シナリオは個人的にはだいぶ好きで、予定調和や綺麗事を描かないで、なるたけ主人公の心を折ってやろうという気概を感じます。幾人かの周りのキャラクターの助けがなければ、実際にへし折れてそうな勢いはありましたね。
なんとかなりそうなところに、どうにもならないものをねじ込んでいく話と、それでも抗う人々に人間讃歌を見るタイプには刺さる作品です。平たく言えば筆者に刺さるタイプ。

ただ、序盤から中盤にかけてはワードの選択で妙に引っかかることもあり、若干没入感が削がれるきらいもありました。是が非でもとか催促の使い方とか、重視的、需要性あたりの言い回しとか、統治権の主体が島であるという規定の仕方とか、細かいところで意味は伝わるけれど、表現的にモヤっとするポイントがそこそこある印象です。権利主体が島、ある種のアミニズムっぽい。
ただ、終盤にかけての盛り上がりの展開ではその辺が無かったのか、単にシナリオが良いから気にならなくなったのか、言葉に引っ掛かることはなくなりました。体験としてのピークではこれらの引っ掛かりがなく、最後まで没入して楽しめたのは良かったです。

終盤のひっくり返し方も個人的には満足していて、さすがにあからさますぎるから素直にリュウセイを持ってこないだろうとは思っていましたが、ちゃんと理由を付けた上で綺麗に裏切ってきたので良かったです。
最終盤の展開自体も良く、その選択に対して少なくない被害が発生することが双方のエンディングを見ると分かります。魔王が消えないルートでは1割が2割に増加し、それぞれの生死や容態に変化が生じるので、何が正解かを定めるのが難しいところとなっていました。そうした中で、選択はあくまで神に委ねられるという形を取っています。そして、その神というのがほぼ即ちプレイヤーではあるんだろうなとは思っていました。すなわち、プレイヤーが魔王を許すかどうかに帰結します。
最後に決断する主体がプレイヤーであって主人公たちでないあたり、主人公たちの思想そのものは決してプレイヤーのそれとは混じらないことが強く感じられて良かったです。

キャラクター造形としては兄を失わせしめる直接的原因であろう魔族などの対象に対して、何の恨みも抱いていないかのような振る舞いをする主人公がさすがに聖人にすぎやしないかという気持ちはあります。特殊なバックグラウンドがあるわけではないので、根の根から善人というかそういう性格なんだと思います。そして上裸になるのは抵抗がない。解釈にノイズが混じりましたが、この造形故にプレイヤーが感情移入するタイプの主人公というよりは、物語を導く主人公という印象を受けました。ドラクエよりFFっぽい。
そして、そういう造形であることからも、前述のプレイヤーの決断に委ねるという切り離し方が良い設計に思えます。さすがにプレイヤーがその決断を決めるには、あまりにも同一視しにくい主人公ではあるので。

後は、シナリオとは直接関係ない細かい好きなところとして、いじめっ子が改心すると接頭辞が元いじめっ子になっているあたりの細かさです。こういう細かいところのフレーバーがそこかしこにあるので、活字中毒の身としても色々調べて楽しんでいました。
なお、その過程で出てきた魔物と魔族の表記違いがあるのは若干気になっているんですが、意図的なのか表記ゆれなのかは微妙なところに感じます。あんまり使い分けている印象はありません。なお、このレビューおよび感想では魔族に統一していますが、特に意味はありません。雰囲気です。

理想を描いて達成しつつある青少年期の万能感と、それが粉々に砕け散るところからの再生という物語を、半ば米澤穂信さんのせいで好んでいるので、シナリオとして個人的に好きな部類に入る作品でした。
かといって単に露悪的なわけでも、過度に絶望に叩き込むでもなく、あくまでもベースを調和の物語として描いているので、読後感は爽やかなものとなっています。いくらかの犠牲は発生していますし、それがしこりにならないかと言えば微妙なラインですが、いなくなってしまった人たちのことを時々で良いから思い出すことになる世界へと進んでいくんだろうなという感じがしました。

02. LIGHT OF MANA

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG LAKO
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.8 クリア

良かった点

  • グラフィックは素晴らしいの一言に尽きます
    • 演出もまた良く、高品質なグラフィックが最大限活用されていました
  • 麻雀をベースとした斬新な戦闘システムが楽しめます
    • ある程度の運に翻弄されつつ、準備と状況判断で打ち勝っていく楽しさがあります
  • ゲーム設計、シナリオ、UIから演出と全ての面で高い完成度のゲームでした

気になった点

  • 選択について、前半が選択後キャンセル不能、後半が選択後キャンセル可能なので、ごくたまに前半をミスってキャンセルできないことがありました
  • こちらの手牌に干渉する敵が多いため、大技にあまり価値が無いように感じました

レビュー

役を揃えて一発逆転

LIGHT OF MANA は、麻雀ライクな戦闘システムで戦うノンフィールドRPGです。
雑魚戦とイベントがミックスされたステージを攻略し、最奥のボスを撃破する流れで進行していくことになります。

このゲーム最大の特徴である麻雀をベースとした戦闘システムは極めて独特なものとなっており、運に左右されつつも戦略を練っていく面白さを包含しています。

戦闘画面

まず、色と数字が描かれた牌がターン開始時に配られます。続いて、これを単独で使う前半フェーズと、いくつかの組み合わせで使う後半フェーズの二つを行うことになります。
単独で使う場合、威力は抑えめになりやすいものの、色に応じて攻撃や回復、ドローなどの行動をその牌に書かれた数字ぶんの強さで行うことができます。組み合わせを作る必要がないため、ここでは柔軟な行動が選択しやすくなっています。例えば、上記の赤9を選択した場合、高い攻撃力で通常攻撃を仕掛けられます。
一方で組み合わせにおいては、連番や同色など、一定の法則で牌を揃えることで単独よりも強力な効果を発動することができます。その分、揃える難易度は高く、消費する牌も多いため、ここぞというところで使いましょう。

この時に使える組み合わせのパターンは、攻略の過程で手に入るスペルと呼ばれる役を装備すると増やすことができます。例えば上記の例では、同色3つを揃えるだけで威力3の攻撃が発生し、それが赤3つなら威力5の攻撃が追加で発動します。
一ターンに複数の牌を消費して多数のスキルを発動することはできますが、ターンの開始で引ける牌や、ドローできる牌は限られます。加えて、雑魚との戦闘の場合、牌の状況は引き継がれてしまうため、あまり使いすぎると後の勝負に尾を引く可能性もあります。
敵の体力などを見ながら、どの牌を単独で使い、どの牌までを組合わせで使っていくか、それぞれの牌の切り所を考えることが重要となるでしょう。

また、こうした独自なシステムを採用しているにもかかわらず、操作は驚くほど直感的に行うことができます。これは洗練されたUIの巧みさによるものであり、この作品が持つ高品質なグラフィックがなせる業の一つと言えるものでしょう。
オリジナルの様々なグラフィックで彩られた画面全体は常に華やかさに満ちており、短編ながらも完成されたシナリオを引き立てるイベントの数々も、素晴らしいスチルで構成されています。
このハイレベルなグラフィックもまた見どころの一つと言えるでしょう。

斬新な戦闘システムを圧倒的な完成度で仕上げつつ、高いレベルのグラフィックにより遍く要素のクオリティをも引き上げている、全体を通して高い完成度を持つ作品となっています。
特殊なゲームが遊びたい人にも、堅実に良くできたゲームが遊びたい人にも、どの需要にも応えること請け合いのゲームと言えるでしょう。

感想

グラフィックと良い演出といい、ゲームUIの洗練され具合といい、異常なまでに高い完成度を誇っている作品です。Steamのディスカバリーキューに流れてきたら目を止めるレベル。フリーゲームにこれを言って賞賛になるかは分からないんですが、良い意味で商品レベルのクオリティというものに達している作品であると言えます。

殊にグラフィック面は終始高いクオリティのまま最後までずっと画面を豪華に彩っており、ゲーム全体に華やかさをもたらしています。
単純な画力の高さ、アセットの圧倒的なクオリティもさることながら、それらを効果的に運用する演出や、煩くならないように配置するセンス、動と静のバランスなど、使いこなす腕前もまた一流のそれとなっています。
個人的にはステージ入りの演出が好きです。

その上で、戦闘システムはかなり斬新であり、かつ楽しいものにもなっています。
麻雀ベースではありますが、上手く揃えて攻撃を通していく、どこまでをキープに回して先を見通すかを考える、といったあたりの戦略性も高く、単なる運否天賦に留まらない奥行きがあります。
その上で特殊役をスキルとして用意することで、大枠の戦略の方向性を自分のやりたいように組み立てられるようにもしています。

とはいえ、個人的な所感としては、大きめのスキルは発動条件が難しいので厳しいところはあります。さすがに手元の牌の数は心もとなく、ちまちま集めていくよりは、少しでも殴った方がトータルの効率は良くなりがちです。
特に、早めに決着をつけつつ消耗も抑えたい雑魚戦も戦い抜く上では、大技を振る機会はほぼありませんでした。
加えて、中盤くらいから敵の行動にこちらの牌への干渉を含むものが出てくるため、なおのこと状況をキープし続けることが難しくなっていきます。このあたりの理由もあり、長期的な戦略の目線に比べて、短期的な目標の立て方の方が重要になってくる印象があります。

ただ、それでも消耗戦になりがちな雑魚戦を勝ち抜いていくためには、牌のバランスを考えたスキルの戦略は必要であり、ここに関しては長期的な視点も必要になることが大いにあります。
あんまり単独で使わない1の役目として、1から成立するスキルを用意して上手く消費していく、色を固めることで強力なスキルを出せるようにしておき、消耗戦に備えたり、ボスへの初撃として温存しておいたりする、といったようにスキルを軸にある程度のプランは立てられます。

個人的には回復が強いなと感じていて、最終的にはほとんど回復ビルドのような構成になりました。なんでも緑6つ、緑3つ組による回復力で継戦能力を高めていくことで、ラスボス以外には回復薬を消費しないレベルの運用が可能になります。
一方で、相手の回復がある場合はジリ貧にもなりがちなんですが、そこは1の刻子などの火力となる手段を用意しておき、その分の上乗せで押し込むことを目論んでいました。

なお、装備はマナの腕輪が最強です。他を大して使ったわけではないんですが、ノーコストで1ターン3枚引きできるのが弱いわけがない。かつてはサイバー・ブレインが殿堂でしたからね。
牌が攻撃にも回復にも使える以上、その手数が単純に増えるという効果は絶大であり、これを使うだけでぐっと戦闘が楽になってきます。
このマナの腕輪のおかげでスキルや回復も安定するようになり、回復ビルドはだいぶ動きやすくなりました。

こうして、最終構成は以下の通りになりました。
順子と刻子はさすがに汎用性が高いので入れていて、1が3つは前述の通り余らせがちな1を上手く運用するのに取り回しが良かったので入れていました。そして、単純に回復能力の高いスキルを二つ入れることで、緑さえ安定して供給できていればほぼゾンビみたいな立ち回りができます。
単独で使う場合は、高火力の赤がない限りはドロー安定で、そこから順子や刻子で殴る形がメインでした。

最終構成

また、戦闘システムのみならず、道中にある薄っすらローグライトっぽいダンジョンも楽しさに寄与しています。
ノンフィールドとして戦闘をメインに楽しみつつも、ミニゲームとしてきっちりミニなサイズのゲーム性を持つ遊びが加わることで、適度に空気を変えてくれました。ダンジョン限りの効果についても、個々人の戦略性に基づいた決定ができて良い。
オマケとしてローグライクも用意されており、戦闘システムとの噛み合いが良い設計だなと感じていました。

加えて、これらの様々なシステムを補助するUIの素晴らしさも良いところで、かなり独特なゲーム性をしていつつも、すんなりと操作を飲み込めるデザインとなっています。
恐らくもっとUIが洗練されていないようなデザインであれば、これほどすんなり楽しむことはできなかったであろうなと感じさせるものに仕上がっていました。情報の配置が上手い。
たまにどっちのターンか分からずに3つ使うつもりの牌を普通に攻撃で使ってしまうことはありましたが、これはだいたい筆者の凡ミスと言えるものです。個人的には、片側がキャンセル可能なのにもう片方がキャンセル不能な非対称性は若干気になりもしますが、設計上避け得ない部分なんだろうなとも思います。

シナリオ面についても軽く触れておくと、短編として起承転結の定まった良いものとなっています。伏線っぽいのもある。そしてどうしても入れたいのであろう、ケモノとスケベもある。そういうもの。
この容姿でドワーフとエルフの種族に分類されるパターンは初めて見たと思いますが、よく考えたらドワーフやエルフをああいうものと捉えているのも現代的な作品に慣れすぎたせいかもしれません。トールキン的にどうかは知りませんが。
閑話休題。物語展開自体は比較的王道であり、道中の様々な交流もあってゲームを進行させるための動力として機能しているように感じていました。

しかし、最終的にやろうとしていたことを鑑みると、坑道を塞いだのは彼の仕業ではないということで良いんでしょうか。焦って報告をしていたようですし。姉がそこにいた理由がそっちという可能性もあるかもしれませんね。
後はどうでも良い話なんですが、この世界、どこでもドアがある世界なんですね。この世界で放映されているドラえもんはどんな姿なんだろう。独眼竜みたいな野暮な話ではあるんですが。

03. Revive

ジャンル 作者
RPG ケモプレデーションゲームス+MON&Mr.H(共同制作)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.w2 クリア

良かった点

  • シビアな世界観の中で、ドロドロのシナリオが描かれています
  • 敵を赦すかどうかで役割が変わるシステムはユニークでした

気になった点

  • システム面がゲーム仕様に最適化されていない印象を受けました
    • 主にゲームに不要なパーツが多い印象です
  • シナリオの状況描写が弱く感じました
  • ラスボスのイベント戦はトラップになりうると感じました

レビュー

各々の感情が入り乱れる群像劇

Reviveは、3Dのダンジョンを進み、敵と戦闘しつつシナリオを進めるRPGです。

その戦闘を有利に進めるためには、敵に有効打を与えるように弱点を突く必要があります。ただし、弱点をいちいち調べる必要はありません。オートAIによる攻撃に委ねることで、自動で判別して最適な行動を取ってくれるためです。回復アイテムのタイミングだけ見計らっておきましょう。
そうして攻撃を重ねて敵を倒すと、対象を赦すかどうかを選ぶことができます。赦した場合は何度でも戦えるほか、その敵シンボルに話しかければアイテムを購入できます。その一方で、赦さない場合は敵シンボルが消滅して体力が回復します。シチュエーションに応じて選択していきましょう。

そうした戦闘を繰り返し、乗り越えていくことで進行するシナリオがこのゲームの主眼となります。
様々な登場人物が織り成す物語は、キャラクターが増えていくほどに混沌を極めていきます。各々の思惑、感情、それぞれの想いが交錯していくシナリオは、やがてそれぞれの決断を描き出します。

障害となるボスを戦闘で撃破していき、それぞれの登場人物がこの世界で何を思い、どう決断したのかを見届けていきましょう。

感想

相変わらずだいぶシビアな世界観の作品です。それぞれのキャラクターの関係性の混線具合もさることながら、各々の置かれた環境だとか、そもそもの弱肉強食の話だとか、そこで行われる決断だとか、諸々がしっかり重いです。
その分登場人物もプレイアブルのキャラクターも多く、予定外の登板と降板があるのはゲーム的には辛いところで、それの影響で難易度が上がっているきらいはあります。

そのシビアなシナリオ自体は良くて、それぞれの抱える思いとか矛盾する気持ちとか、それでも進まざるを得ない背水の行動とか、諸々が良い味を出しています。いわばダブル主人公みたいな状態なので、そこもまた良い。
個人的には悪役がもう少し芯の通った悪役だとより好きではあったんですが、全ての存在が弱さを抱えているとみなしているストーリーラインとの整合性を考えると、こっちの方が良い気はします。

ただ、イベント、特に連続で思っていることを語るシーンが入るとテンポが悪く、フェードアウトとフェードインが余計に繰り返される羽目になるのはシナリオの阻害要因となっている印象でした。無法地帯あたりで特に顕著です。
また、心情描写が主体となっている都合上、状況描写に割かれた文量が少なく、状況描写なしで場面転換が行われていき、頻繁に回想が入り乱れるので、かなり読みにくいものとなっています。ノベルゲームのような立ち絵や背景もあまり無いので、今どこにいて、誰がそこにいて、どういう話を行なっているか、が事前に提示されないケースが多い印象でした。

ゲームシステムについて触れておくと、端的に言うとゲーム全体に対して不要なシステムの占める割合が多いなという印象を持ちました。
メニュー一つとってみると、移動中にスキルを使わないのだから一覧にまとめれば良いですし、ジョブチェンジやJPといったよく分からない仕組みはそもそも不要です。
ゲームの大枠の流れで見ても、一瞬しか仲間にならない対象も多い上に、ボスが原則イベント戦でメンバーが固定化されるのもあって、基本的に大多数の味方の存在が意味をなしていません。事実上、編成がほぼ不要な機能になっています。

せっかくメニューシステムを大胆に改装し、戦闘システムもデフォルトから一新しているのに、ゲーム仕様に合わせたものになっていないので、デフォルトの方がまだ慣れていて使いやすかったなという印象に陥りそうな感覚を受けました。

またゲーム中にも記載があるんですが、3Dにおけるレスポンスもそれほど良くはなく、たとえDキー押しっぱなしで移動していたとしても、回転操作への反応が遅れているという印象自体はどうしても拭えません。
おそらく誤動作防止の機能なんだろうなとは思うんですが、誤動作以上に体感が阻害されているような気もします。これがない場合の誤動作を体験していないのでなんとも言えませんが。

戦闘面については、おおむね強いキャラが頑張って殴るゲームです。攻撃力が足りないとジリ貧になるので、それなりのレベルにしておくのが無難にはなります。
雑魚敵を倒した時に許してアイテムを買うか、許さずに回復するかを選べるのはユニークで、必要な時に回復を選びつつ、アイテム購入対象を兼用することができています。あれだけやられても向かってくるその意志は凄い。

ただし、イベント戦たるラスボスはまあまあ初見殺しなので、悪いことは言わないから魔法薬と毒消しを買うのをお勧めします。
そのままだと、サシで魔法弱点の相手に魔法を封じられる泥仕合が始まります。相手の攻撃力は1ダメージ程度なので、負けるのも難しいです。
封印に毒消しが通ることは筆者の見た限りではゲーム中に記載がなく、掲示板でミスリードの一環として触れられていた程度でした。ここは明確に厳しい点で、攻略における重要情報がゲーム中に存在せず、揮発的な掲示板で語られている、というのはまあまあしんどいです。
そもそもリードをミスする対象もないのでミスリードでもありません。ミスリードついでに話すと、紹介文でミスリードに次ぐミスリードとあるんですが、あんまりミスリードが良い意味であるイメージがないので違和感を覚えました。誤解させる、誤らせるぐらいのニュアンスという気がします。

ただ、戦闘周りはフレーバーで、シナリオが主体みたいなゲーム性ではあるので、昼ドラもかくやという感情の混線を見るなら良い作品です。各々が色々と抱えつつも、各々にとっての決断を行なっていきます。
それらの決断が正しいものであったのかと客観的に判断を下すべきかという問いすら生まれうる、良い意味でぐちゃぐちゃとした感情の中で描かれた作品でした。

04. るぐれて

ジャンル 作者
探索ADV ディッシェ大関
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 2.0.4 全END

良かった点

  • 細やかな演出で雰囲気を作っています
  • 身近なものを想起させる良いシナリオでした

気になった点

  • 森の探索面の因果関係がやや分かりにくく感じました

レビュー

るぐれての話

るぐれては、遊びに行ったおばあちゃんの家の周囲を舞台とした探索アドベンチャーです。
毎年恒例のはずだけれど、やや様相の異なる世界を探索し、物語を進めていくことになります。

この作品が描いている世界はまさに夏という季節を余すことなく描写しており、色々な演出やイベントも相まってその空気感を存分に感じ取ることができるようになっています。
描かれる物語も併せて、夏という季節と帰省というイベントをプレイヤーに強く想起させることでしょう。

また、全体を通して短編に相応なボリューム感であるため、探索すべきマップはそれほど広くなく、気軽に遊ぶことができます。
アイテムを見つけたり、イベントを起こしたりして、どこかがおかしい場所で目標を目指して歩き回りましょう。

感想

ウディコンは夏に開催されるのもあって、夏を感じさせる作品が良く出展されるんですが、この作品もそのタイプに属しています。他にもいくつかあるんですが、帰省という行為の卑近さもあって、個人的には一番夏を感じさせるものでした。

全体を通してみると、細かいところも含めて、諸々の演出面が凝ってるのが良いところです。
タイトルからシームレスに開始する演出から始まり、季節を感じさせるゴッドレイや、雰囲気を感じさせる森といったその場の空気感の演出がしっかりと行われていました。ゴッドレイは暗転時に残るので、うっすら気になりながらプレイしてはいましたが。
個人的に好きな演出というか手法は、散歩のタイミングで犬の操作に切り替わるところです。散歩は犬に連れられるものでしかなく、人間主体のものではないということが強く表現されていました。そもそも小さい子が主人公なので制御するのも難しいんでしょうね。

また、マップ自体は決して広くないんですが、狭い所では寄った画面にすることで上手くカバーしているのも面白いです。画面に映る対象が減るだけでも、結構世界が広く感じました。
マップが狭いおかげで探索面もそれほど探し回る必要がなく、短編としてちょうど良いサイズ感の探索要素に収まっているというメリットもあります。

シナリオ面は作中でも言及されていた通りに、バッドルートを基軸にした世界が中心になっているように感じました。これは悪い意味ではなく、グッドエンドルートがかなりとってつけたような幸福で良かったです。ベオグラードメトロの子供たちの終わりとか、シンフォニック=レインのグランドエンドとか、あの辺りにおける、でもそうはならなかったんだよという感じのエンディングが個人的に好きなので。
そもそもオマケを経由させている以上、そこからどういうエンディングを迎えても良いところなので、諸々を振り切って最大限のグッドエンドに到達するのは良いことな気がします。筆者はバッドだけでも満足しますが、グッドがある方が多分読後感は良いでしょうしね。

そして、全体パート的に、おばあちゃんが会いに来てくれたのに見ず知らずの子供たちとかくれんぼしてる時間の方が長くなってるのは、ある意味では不幸な話なのか、おばあちゃん的には遊んでいる姿が見れて嬉しいのかどちらなんでしょう。後者だと良いですね。
後は振り返ってみると、あれは未来の自分の墓参りまで幻視したという解釈になるんでしょうか。ここまでくると、過去も現在も未来も他人も肉親もごっちゃになった結構カオスな世界だったのかもしれません。

05. ラピッドスティール3

ジャンル 作者
シューティング またび
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間20分 3.2.0 全ステージクリア

良かった点

  • テンポ良く楽しめる堅実なシューティングでした
  • 多様な武器をとっかえひっかえ使っていく楽しさがあります
  • 背景やボスなどのグラフィックと演出は細部まで凝られています

気になった点

  • 武器と弾幕をたまに見誤るケースがありました
    • アイテムと弾幕についてはその限りではありません

レビュー

細部までこだわりの込められたシューティング

ラピッドスティール3は、装備を使い分けて敵機を撃墜していくシューティングゲームです。
システムは一般的な横スクロールのシューティングを踏襲しており、要所のボスを倒していきステージを攻略することになります。

横スクロールから迫りくる敵機を上手く捌くには、3種の攻撃を使い分けるのが重要です。
連射していくメインウェポン、ここぞという場面で使う消耗の激しいサブウェポン、チャージが必要ながら反射も可能な特殊装備のそれぞれを、適切なタイミングで活用していきましょう。
それぞれの武器は出撃時に性能の異なるものへと変更もできるので、色々な武器に手を出してみるのも良いかもしれません。

また、一部の敵機を倒した際にドロップする武器を拾うことで、メインショットに追加の攻撃を一定回数加えることもできます。追加攻撃は武器によって様々ですが、どれも大きな消耗なく強化が可能なので、見つけたら積極的に拾って試していきましょう。
かなり頻繁に様々な武器がドロップするので、色々な武器をお試しで使っていく楽しさを味わえます。

そして、これらの攻撃手段を駆使してステージを進み、最後にはボスに挑むことになります。
ボスは多種のパーツが複雑に動き、各々が弾幕を張ってきます。上手く部位破壊することで戦闘を有利に進めるも良し、一気にコアの破壊を目指すも良し、自機の攻撃性能とプレイヤーの回避能力と相談し、適切な行動を取っていきましょう。

また、そのボスの複雑なパーツ挙動も含めた、グラフィック面の様々なこだわりもこのゲームの魅力の一つです。
シームレスに遷移していく背景の演出といったダイナミックなものから、細かいカーソルの物理挙動まで、様々な面でこだわりの見える表現が散りばめられています。
シューティングに集中していると気を配るのは難しいですが、余裕がある時に観察してみるのも乙なものでしょう。

難易度は決して低すぎることはないものの、リトライ制限がないため、カジュアルに楽しむこともできるシューティングです。
良くこだわられた演出と手触りを感じつつ、様々な武器を使い分けていくシューティングに興じていきましょう。

感想

数字を追うごとに完成度が増していくシューティング、その3でした。特に今作はかなりシューティング然としています。
特殊攻撃による反射はだいぶ抑えられたように感じる一方で、特殊武器とメインショットはだいぶ豊富になり、これを上手く活用していくシューティングとして堅実な設計になっています。
反射メインでもやれなくもないんですが、そのためにオーバーライドウェポンを棄てるのを若干ためらいがちだったので、筆者はあんまり使ってはいませんでした。

基本的に弾幕がまあまあ早いのも特徴的で、おかけでかなりテンポよく動き回りながらスピーディーな殲滅ができるようになっています。敵も矢継ぎ早に出現していくので、暇な時間はほぼなく、常に何かしらのアクションを取り続ける楽しさがありました。
ここに加えて、武器の回転率が良いのも面白く、敵機から武器を分捕ってどんどん入れ替えながら戦うことができます。武器はだいぶカジュアルにドロップしていくので、入れ替える分にはあんまり気負うことはありませんでした。テンポ良く様々な武器を扱っていくのは楽しいです。

その動きの速さの分、難易度は高くなりそうですが、そこは上手く抑えています。敵機の数や性質で道中は抑えめにしつつ、ボスについてもかなり抑えた性能をしており、早いが故に難しすぎるということはありません。
苛烈に感じつつもある程度は避けやすい調整になっている弾幕や、耐久のもろさでリスキルも容易な敵機性能など、細かいところの難易度バランスはかなり良いように思いました。
加えて、何度でもリトライが可能なので、シューティング初心者でも安心です。一方で、玄人は多分リトライせずにスコアアタックして楽しめると思います。リトライはスコアが棄損されるため、実質ノーコンクリアが前提となるので。

また、玄人向けにはエクストラにボスが用意されており、ここはかなり難しく感じました。筆者のレベルでは避けられなくないかな、くらいの弾幕を平気で放ってきます。弾が高速であること自体は健在なので、反射神経で対応するにも限界があり、それなりにパターンを組んで上手く倒してやる必要がありました。
筆者はやっとこさ1体倒せるくらいではあったので、そこそこシューティングできる程度の腕前だと、なかなか歯応えのある戦いが楽しめるんじゃないでしょうか。本気で調整されていたらこれがストーリーのレベルだったのかと思うと戦慄します。

個人的にシステム面で気になるのは武器と敵の視認性くらいで、これも慣れると判別できるようになってきます。弾がいっぱい撒かれているとたまに誤認する程度です。また、アイテムと弾丸の視認性は取れているので、そこで間違うことはほぼありませんでした。
後はキーコンの初期状態だけ慣れられませんでしたが、これもキー設定があるのでセルフでカバー可能です。細かいところにも手が行き届いていました。

さらに、凝ったグラフィック表現もこのゲームの特徴の一つと言えるでしょう。
まず背景が凝っています。ステージ間がシームレスに繋がって場面転換していく演出の完成度が高く、こだわりを強く感じました。シンプルな演出の中では、移動要塞の背景が回っていくのがお気に入りです。
弾幕が苛烈なのもあって、背景を楽しんでいる余裕があんまりないのは嬉しいような悲しいようなところなので、人がプレイしているのを見るのも面白いかもしれません。

キャラクターの動きもだいぶ凝っていて、それぞれが感情豊かに動いてくれます。
作品が出るたびに増えていくキャラクターも健在で、これまたアクの強いオアシスが増員されました。その出自故に戦闘能力に長けていればと思っているところがありそうですが、それはそれとしても単純に戦闘訓練狂なキャラクター性をしています。
各々のキャラクターが機械なのもあり、機械的なボイスが違和感なく受け入れられ、単純にプラスの働きをしているのも面白いところでした。

そして、ボスの動きは本当に凝っています。絶え間なく様々な部分が動いており、それぞれの部位破壊もちゃんと用意されていました。
しかもこのボスは非常に多く、全部で3つあるストーリーの要所で、それぞれオリジナルにボスが出現していくことになります。このクオリティをこの数用意するのは恐ろしい話です。
それぞれがシューティングの山場であるボス戦を飾るに相応しく、ゲームの起伏としての役割の一つを完璧に担うことができていたのも、この複雑に良く動くグラフィックが一因となっているであろうことは想像に難くありません。

また、細かなところの演出というかこだわりについても結構好きなところの多い作品でもありました。
個人的に好きなところを挙げると、最後に行われるハッチの演出とか、カーソルについたストラップが動かすと自然に揺れる演出あたりです。お洒落。
こういった細かい良さみポイントがいろいろ詰まっているゲームでした。

これは余談になりますが、製作の闇を見る限り、やはりウディタ3は結構強力になっているみたいで面白かったです。こういう処理をいっぱい使う系は割と恩恵が大きそうですね。
そして、バグが出ない方が不安というのは、分かりすぎて首がもげそうなくらい首肯したい話です。割と複雑な実装をして、一発でコンパイルが通った時の得も言われぬ不安があります。

06. デスペレートホープ

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG ケイ素
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.19 NORMAL

良かった点

  • スロットに作用するマス取りゲームから成る戦闘システムが秀逸です
    • きちんと考えて戦略を選んでいく奥行きがありました
  • コンパクトに遊ばせることに特化したゲームデザインで通貫されています

気になった点

  • 一度戦略が固定化されるとスキルを変える動機が弱い印象があります
    • 全体として短いので固定化されてだれるほどにはなりません

レビュー

自分に有利な盤面を作り、相手に不利な盤面を押し付けよう

デスペレートホープは、戦闘メインで進行していくノンフィールド型のRPGです。
いくつかの雑魚敵との戦闘やイベントを経た後、ボスに挑んでいく一方通行の流れとなっています。

遭遇する戦闘、とりわけ強力なボスとの戦闘に勝つためには、その戦闘システムを十全に活用する必要があります。
このゲームの戦闘システムはスロットをお互いに奪い合い、スロットが埋まった時に埋めていた数に応じてスキルが発動していく、マス取りゲームのようなものとなっています。

戦闘画面

スロットは上記のように二つの盤面に分かれており、敵味方にかかわらず4つのスロットが埋まった時にそれぞれの配置数に合わせたスキルが発動します。
プレイヤーはターンごとに装填されるSPを消費し、このスロットをチャージして埋めることになります。例えば、このターンで下の盤面のスロットに1つチャージすれば、こちらのスロット1つのスキルであるブラスター、相手のスロット2つのスキルである体当たり、などが発動することになります。
一般に多くのスロットを埋めることで強力な攻撃が発動するため、一つの盤面を埋め続けて高火力で攻め立てるのは有効な戦略となるでしょう。その一方で、敵に多くスロットを埋められると、こちらに強力な攻撃が飛んできてしまいます。発動させたくない攻撃を妨害するためにスロットを埋めるというのもまた重要です。
二つの盤面の状況をよく見極め、それぞれの状態や敵の攻撃に必要なスロット数を見て、上手くSPを割り振っていきましょう。

加えて、特定の位置のスロットに状態異常を付与することもでき、これにより次にこのスロットにチャージした対象に一定のバフやデバフをかけることができます。上記の画像を例に取ると、上の盤面の最初の二回ぶんのチャージをすると性能低下のデバフを受けてしまいます。
上手く使えば自分にだけ有利なバフを乗せることもできますし、相手に目いっぱいのデバフを吹っ掛けることもできます。スキルを上手く駆使しつつ盤面をコントロールし、状態異常を押し付けることができれば、戦闘を優位に進めることができるでしょう。

こうした戦略に欠かせないスキルは道中のイベントや戦闘後に取得することができ、各スキルが発動するスロット数に応じて一つだけ保有することができます。
自身の戦略の要となるものを残しつつ、より良いスキルが手に入ったらどんどん乗り換えていきましょう。

これらの戦闘システムと得られたスキルを活用し、ボスを倒していくことでプレイヤーはクリアを目指すことになります。しかし、このゲームにはもう一つの側面として、スコアアタックというシステムが兼ね備えられています。
スコアを稼ぐには高難度モードに挑むことに加え、経過ターンを少なくしたり、被ダメージを多くしたりと、よりリスクの高いことに挑む必要があります。腕に覚えのある方は挑戦してみましょう。

感想

戦闘システムが面白い作品です。前作からすでに面白かったんですが、マスに対して効果が付与されるようになったおかげで、よりこちら側から取れる選択肢が広がって奥行きが増しています。
また、前作だとあんまりプレイヤーキャラの入れ替えを積極的に使う旨味が無かったんですが、今作はスキルが制約される都合上、コスト1とコスト2の同時発動をしたいケースも間々あり、キャラを変えて取るメリットも強めに出ています。

また、ゲーム性はデッキ構築型ローグライクっぽくなったというか、スコアアタックに寄った設計になっています。とはいえ、スコア要件がだいぶ特殊な性質をしているので、玄人はスコアを追求し、それ以外はとりあえずクリアを目指せる良いバランスに落ち着いてるような印象です。
難易度もそれほど高くはなく、NORMALであればHPを半分割ることすらなく終えることもできます。リソース管理を適度にやる必要がありつつ、あんまり厳しくもない良い塩梅でした。

マス取りゲームの戦略性自体は良い一方で、スキルの取得は戦略が固まってくると固定化しがちなところはありました。そもそも取り換えても活躍するか分からない上、枠が狭いので戦略の核としてるスキルとの取り換えを要求される場面も多いです。こうなってくると、安定戦略を捨ててまでお試しをするのはだいぶハードルが高くなります。
個人的には強制差し替えぐらいやっても良いんじゃないかという気がしますが、それだとスコアアタックとの食い合わせが悪そうです。スキル取得選択肢が地雷選択肢になりかねないというのも気になります。

そういう意味では、当意即妙に手持ちのカードで戦うというよりは、ちゃんと組んだ戦略でプレイヤーがやりたいことをやらせてくれることを優先した設計なのかなと思っています。
スコアアタックによって何度も挑戦することを推奨するデザインでもあるので、違う戦略を試すのは次の周回、くらいの感覚なのかもしれません。

シナリオについてはかなり簡略化されたというか、ある程度サクサク進めるために芯だけ外さずにほかの要素をそぎ落としたようなものとなっています。
何となくいつもなら依頼者あたりが黒幕となり一波乱あるような展開がありそうなところですが、そんなこともなく普通に良い人として終わります。疑ってごめん。
この辺もスコアアタックによる周回を念頭に置いたゲームの設計っぽいなと感じていました。

なお、NORMALクリア時の構成は以下の通りです。
1個で撃てるシンドロームが強く、ダメージ以上にHP減少を相手に押し付ける運用でだいぶ戦えました。メインの攻撃択はセパレーションで、付加無効をついでに拾えるとボス戦で安定します。
道中や長期戦の戦闘中はリペアミストの性能に頼りきりで、ここを外す選択肢は最後まで生まれませんでした。生命線です。
G・ダイナミックは発動機会に恵まれなかったですね。ミアズマはもともと回復枠でしたが、終盤にボス戦に向けて攻撃枠に挿げ替えました。結局シンドロームの方が強かったような気もする。

クリア画面

とにかく、全体的に短くコンパクトに遊ばせつつ、スコアアタックで何度も挑めるデザインに、システムやシナリオを合わせに行ったような作品でした。

07. イマジナリーディストピア

ジャンル 作者
RPG/ADV 銀ノ薺道
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間 1.03 クリア

良かった点

  • 個性的なキャラクターによるシナリオが楽しめます
  • RPG要素が上手く演出に絡んでいました
  • 世界観を表現するグラフィックが良かったです

気になった点

  • 特にラスボスにおいて、リトライ性がやや悪いです
    • イベントスキップか戦闘直前でリトライしたい気持ちがあります
    • また、リトライ時については前回選択したセーブ位置に戻っていると助かります

レビュー

[イノル先生]を始末せよ

イマジナリーディストピアは、シナリオがメインのRPGです。
アドベンチャーゲームのようなイベントパートとRPGのような探索と戦闘のパートが交互に行われることで、シナリオが進行していく流れとなっています。

そのシナリオの軸となるのは、舞台である空想世界と、主人公である先生たちです。とある事件をきっかけに混乱に陥った世界の中で、生徒を救うためにもそれぞれの思惑と共に行動していくことになります。
その特殊な世界観と、生徒も含めた個性的なキャラクターたちがシナリオを盛り上げてくれることでしょう。

ただし、その物語を進めるにはRPGとしての戦闘を避けて通ることはできません。この戦いで勝利を収めていくには、キャラクターの編成とそれに伴う各々のスキルの使い方が重要になります。
ボスの性質を見極め、その攻撃手段や弱点を踏まえつつ、上手くスキルを使って戦闘を有利に進めていきましょう。
なお、レベルの概念がないため、無理に雑魚と戦う必要はありません。シナリオに集中したい場合は、適度にシンボルエンカウントの雑魚を避けていくのも良いでしょう。

世界観を上手く表現するグラフィックから、RPG要素である戦闘まで、全てを演出へと組み入れたシナリオは最後まで目が離せません。
主人公、そして生徒たちの行方を見届けるためにも、歯応えのある戦闘に打ち勝ち、シナリオをエンディングまで導いていきましょう。

感想

RPGなんですけど感覚的にはだいぶアドベンチャーでした。所々避けられない戦闘を乗り越える必要はありますが、雑魚戦はおおむねシンボルから逃げるのが安定なのと、シナリオパートの尺がしっかりと長いので。
その分、色々と世界観を広げたりキャラクターごとの特徴を描写していたりと、シナリオ重視感のある作品になっていました。

ひとまず戦闘面に触れておくと、キャラクターの入れ替えが激しいのもあり、そこにある手札で上手くいなす戦闘をやることになります。
アドベンチャー主体とは言っても戦闘は意外と歯応えがあり、適当にプレイしているとまあまあピンチに陥りやすいです。バフデバフや弱点、回復周りは注意深くケアしておく必要があり、なかなか気の抜けないレベルデザインになっています。

特にラスボス戦は初見殺し度合も高く、そこそこ難易度は高めでした。一応セーフスペースにおける会話にヒントがあるとはいえ、それだけで戦略を組み立てるのは難しそうです。筆者は二度目で通しました。
そういうこともあり、ラスボスのリトライが結構長いのは地味にしんどいところはあります。メンバー選択直前から始めるか、せめてイベントスキップがあると助かるだろうなとは思います。ラストイベントが結構長いので。

ちなみに、本当の意味でのラスボスで挑むメンバーがああなるのは割と好きな演出ではあり、それぞれのスキルを上手く活用するのも面白そうだなと思っていたんですが、ヘッドショット一発で沈めてしまいました。これが運を天に任せたということでしょうか。
直前のボスにも何度か一を引きに行ってはいたんですが、まさか最後の最後に一回で決まるとは思っていませんでした。豪運なのかそうでもないのか。

シナリオの面はむしろこのゲームの主眼ともいえるところであり、前述の通りかなり尺を取っています。
筆者はウディコンを遊んでいる都合上、前々作にあたるゲームはプレイ済みで、そこから拡張された世界を味わっていました。前々作はぷるあに焦点が当たる都合上、ほかのキャラクターたちはフレーバーくらいの印象しかなかったんですが、今作ではそれぞれのキャラクター性が割と掘り下げられていたのが良かったです。
ただ、前々作をやった記憶も相まって登場人物の把握ができたきらいもあるので、初見でこの人数を把握するのは割と難しいかもしれません。各々特徴的なキャラクターをしているので、プレイしているうちに覚えていけるとは思いますが。

キャラクターの個性もさることながら、世界観とそれを活かしたシナリオも良く、様々な場面で山場もあって盛り上がりもします。
この手のゲームとしては宿痾に近い、序盤のほのぼのパートに尺を取らねばならない問題についても、おおむね30分程度で収めているのでなんとかなっていました。
世界観については前々作をやった経験で多少なりとも世界への理解がなされているから把握できた側面を否定はできませんが、ある程度説明もなされているので多分理解はできるものだと思っています。

しかし、ラスボスの末路はまあそうなるだろうとして、真相を知って消されたっぽい3人は気になる上で、どうしても後味の悪さは拭えないではいます。かなりどうしようもない事態に陥っていた側面はあるんですが、微妙に主人公側の手落ち感が否めない幕引きになってる気もします。
まあそれも含めた人間臭さは、フィジカルつよつよメンタルよわよわの先生らしいところではあるんですが。

08. チーターは無理ゲーを走る

ジャンル 作者
RPG なごみやソフト
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 1.06 クリア

良かった点

  • パズル的な戦略が楽しめる戦闘でした
    • その上で、チートによる回答の幅も感じさせるデザインとなっています
  • 特に各々のボスの攻略法が個性的です
  • ヒントが充実しています

気になった点

  • ラスボスだけ唐突に攻略の雰囲気が変わった印象を受けました

レビュー

無理ゲー攻略の鍵は戦略性

チーターは無理ゲーを走る は、無理ゲーの戦闘をチートでクリアしていくRPGです。
ゲームの舞台となるのはAI製のVRMMORPGであり、ここに閉じ込められるところから物語は始まります。主人公はハッカー集団のメンバーと共に、AIの暴走により無理ゲーと化したゲームのクリアを目指すこととなります。

無理ゲーの名に恥じず、敵の攻撃力がカンストのため一撃で倒してきたり、防御力がカンストなので攻撃が通らなかったりと、通常ならクリア不可能なゲームを攻略する羽目になります。
そんな雑魚敵ですら規格外のステータスを持つこのゲームにおいて、戦闘に勝利して攻略を進めていくには味方のチートスキルが不可欠です。
味方となるキャラクターにはそれぞれ、1%でも確率があれば必中になる、ターンの終了時に全回復で蘇生する、といった特殊な性能が備えられています。これを最大限活用し、上手く相手の攻撃をいなしつつ、こちらの攻撃を通すパズル的な思考が攻略の糸口となります。
そうして、これらの強力なスキルと状態異常を武器に、様々な無理を押し付ける敵を撃破していくことになります。

また、各ステージの最後には、とりわけ強力なボスが待ち構えています。理不尽な性能を誇るボスに対して勝利をつかみ取るためには、より重点的に相手の行動を観察し、適切な行動を見つけ出し、きちんと対処していかなければなりません。自身のスキルをよく見て、相手の行動に刺せそうな戦略を構築していくことが肝要となるでしょう。
また、場合によっては、チートの力でごり押すことも不可能ではありません。ボスを倒すことで得られる素材から、こちらもステータスのカンストを始めとしたチートスキルを獲得することができます。
ボスに負けた際に閲覧できるようになるヒントもまた充実しているため、これらを活用しつつ何度も挑戦して突破口を見つけていきましょう。

感想

戦闘というかだいぶパズルめいているんですが、そこそこチートによるゴリ押しも効くタイプの戦略性をしています。ラスボスはほぼ完全なるパズルですが。なお、ラスボスについては想定解以外でも回復アイテムでゴリ押せそうに見えるんですが、筆者は上手くいきませんでした。なんとなくできそうな気配だけはあります。

戦闘のデザインはシステム自体を乗りこなすギミックバトルという空気感があり、手持ちの札をどこで切って対応していくかを求められるような印象を受けます。
数値やらスキルやらぶっ飛んだシステムではあって、ともすれば大味な戦闘が繰り広げられることもあるんですが、大まかには相手の攻撃を封じてこちらの行動を通す繊細さで中和されていたような感じがします。

そういった戦略性が重視される設計でありながら、チートを題材にしていることもあって、上述の通り色々とゴリ押しが通るのも面白いところです。
特に雑魚戦はそれが顕著で、チートパワーが高まるまではある程度ちゃんと処理する必要があるんですが、チートパワーが充分あればなんとでもなります。ぶっ壊れスペックは正義。
ボス戦においてもあえて別解を許容していそうな緩さがあり、こちらのチートパワーによっては難なく撃破できてしまうこともあります。考えても無理なら稼ぎましょうという向きに感じました。

また、ボスについてはおおむね初見クリアはできるようになっていない気配を感じはしますが、そこは作中でも言及のある通りに、死んで覚えるデザインを徹底した結果なんだろうなとは思っています。
実際、リトライに特別なペナルティはないので、それほど気にすることなく再戦できます。試行錯誤はかなりしやすい部類に感じました。個人的には3戦もすれば大体突破できる難易度かなと思っています。
ただ、魔導王のところだけチートパワーが高まりすぎて負けにならず、突破口も見えないから回復もされ続けるデッドロックめいた状況になってしまいました。耐久タイプのボスなのでそういうものだとは思いますが、制限ターンあたりでゲーム側から諦めさせられる方が親切な気もします。

なお、前述のように結構緩めのボス攻略設計ながら、ラスボスだけはガチガチのパズル設計になっています。ここだけ毛色がだいぶ違うなというレベルであり、ギアが一段どころではない水準で上昇します。この間くらいのボスは感触としてはいないので、完全に一人隔絶したデザインとすら感じました。
ラスボスの立ち位置を考えるとある種当然なものではあり、シナリオ上の要としては納得感はあると思うんですが、ボスを連なりで見るとやはり浮く存在であるとも思います。
個人的には緩くも厳しくもどちらも好きなので、どちらでも良いんですが、一つの作品内でのスタンスとしては若干ブレているような印象を受けていました。

シナリオ面ではちょっとしたどんでん返しを用意しつつ、作品規模相応のサイズ感に収まった良い塩梅のものとなっています。ただ、ひっくり返す過程で大体納得のいく説明がなされるんですが、それでもやや解釈できていないバックグラウンドもありました。
AIゲームを作ったのが父であり、AIプレイヤーを作ったのも父である、AIプレイヤーはAIゲームを遊ぶために作られたプレイヤーである、あたりまで来て、では今幽閉されているこのゲームの立ち位置がどこになるのかというあたりが判然としません。
作中序盤はAI製のゲームという説明がなされていますが、そうだとするとクリア可能なゲームにしておく理由があんまりない気もするので、AIプレイヤーに恨みを持ったゲーム制作者による行動あたりが落とし所な気がします。ラスボスをどう捉えるかという話も残りますが。
なんかこの辺の話をしていたような記憶もあるので、もしかしたら筆者がラスボスの攻略に頭を悩ませている間に頭から消し飛ばしてしまっただけかもしれません。その場合はごめんなさい。

なお、これはどうでも良いんですが、タイトルから主人公が一人ハブられているのには涙を禁じ得ません。シナリオ上の要請からというわけでもなさそうなので、ごく単純に花を重視したのか和服を重視したのでしょう。かわいそう。
ハッカーっぽくのオーダーでも和服を合わせることを忘れない作品なので、和服が全てに優先されるのはさもありなんというところでしょうか。

09. イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi-

ジャンル 作者
アクションRPG わたえもん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.13 クリア

良かった点

  • 手触りの良いアクションが楽しめます
  • 合成システムを始めとした、自分なりのビルドを構成する楽しみがあります

気になった点

  • エフェクトと攻撃判定間の納得感が薄めでした
  • ゲーム規模に比してシステムがかなり複雑です

レビュー

自分なりの戦い方を模索しよう

イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- は、二人のキャラクターを切り替えて戦う見下ろし型のアクションRPGです。
攻撃やジャンプ、スキルを駆使して上手く立ち回っていくアクションを楽しむことができます。

敵と対峙するにはそれらのアクションを上手く扱うことはもちろん大事ですが、それ以上に重要となるのは様々なビルドの構成です。
とりわけ、レベルアップで得られるポイントから習得することになるスキルをどう構成していくかは、その要となります。パッシブスキルに振って立ち回りを強化するも良し、攻撃スキルに割り振って早期決戦を挑むも良し、特殊なスキルを習得してトリッキーに戦うも良し、自分なりの戦い方を構築していくことができるでしょう。

さらに、敵を倒したり、マップに落ちているものを拾ったりすることで得られる素材を集め、それらを基に装備やアイテムを合成することもできます。
こうして得られた素材にはランダムでそれぞれエンチャント効果が定められているため、素材の組み合わせ次第では強力な装備を作り出すこともできます。エンチャントの種類はステータスの強化のみならず、詠唱速度の加速やHPの吸収などの特殊な効果の付与にまで及びます。
自分の戦い方に合わせて、最適なエンチャントを持つ装備を作ることができれば、戦いを優位に進められるでしょう。

そうして組み上げたスキルと装備を活かし、シナリオ進行の障害となる強力なボスに挑むこととなります。ボスの攻略法もまた様々であり、敵の行動を見切って的確に攻撃を当てていくプレイングで挑んでみたり、装備を固めてハメてみたりと、好きなやり方で挑むことができます。
自分なりの戦い方とビルドを基に、マップを縦横無尽に駆け巡り、ボスを打ち倒していきましょう。

感想

割とずっと言っているんですが、ジャンプで飛び回って戦うのが楽しい作品です。でも多分、一番強いのは法陣を敷いて殴り続けることなんだろうなとも思っています。事実上のゾンビアタックなので。
マップの段差がちょうど良い感じにあるのもミソで、とにかく飛び回りたくなります。そして、だいぶ奥まった所にもちゃんと素材が落ちてるので、適当に飛び回りながら深いところに入り込んでは、ここにも落ちてるんだと拾い集めている時間が長めでした。おかげですぐにアイテムがいっぱいになります。

アイテムの所有限界については結構大変で、本当に拾えなくなるまで何の警告もしてくれない上、捨てることも原則できないので、最悪ケースだとボスのドロップが拾えなくなります。筆者はこれで滋養のために二回倒す羽目になりました。無念。
多分、強制的に帰還させるための仕組みだとは思うんですが、せめて残りちょっとになったら警告が欲しいところではありました。こんなに一杯拾い集めている奴が想定外と言えば、そうなのかもしれません。

アクションについては、おおむねヒットアンドアウェイや回復からのごり押しも通じる幅のあるデザインです。
装備とかビルドによっては色々とやれることはあって、上手く作ると延々回復しながら殴ってくる永久機関みたいなキャラクターが出来上がります。でも、たまに毒にやられて戦闘不能になる。
筆者はヒットアンドアウェイが好きなのでチマチマ殴ってましたが、回復能力を相手取ると持久戦になりがちなので微妙ではありました。短期決戦には脳筋戦法が良いのかもしれません。

アクションの手触りは上記の感じで良いのですが、エフェクトと攻撃判定の関係の納得感の薄さや、マップ上にある引っかかるオブジェクトの多さや分かりにくさなどが、若干ストレスを生んでいるようには感じました。
特にエフェクトはほぼ消えていても判定が残っていることがあり、そういうエフェクトのある大技が総じて火力が高いのもあって、理不尽な戦闘不能につながりがちでした。片側が戦闘不能になるとぬるっと相方が出てくるのも相まって、あれいつの間にやられたんだろう、みたいな状態になることが多かったです。
引っかかりは主に雑魚戦で致命的で、マップのオブジェクトの物理衝突を理解できていないと、ジャンプの判断が遅れて袋叩きになるケースが間々あります。慣れるまでは割と初見殺しみがある。
また、扉系の場所も結構引っかかりやすいポイントで、1マス幅しかない所に急いで入ろうとするとそこそこ失敗します。1.5マス幅なら救われる命も多分ありました。

また、システム面で言うと、プレイ時間に比してかなり重厚なシステムが構築されています。
スキルの付与から始まり、装備合成、それによるエンチャントの厳選、継承、といったようにかなりカスタマイズ性の高い仕組みとなっています。これ自体の完成度は高く、色々と自分なりに作る楽しみはあるんですが、その楽しみが十全にできる頃にはほぼクリア目前になりがちでもありました。
10時間くらいあるゲームのシステムが3時間のゲームに積まれている印象で、尺があればもう少し色々工夫して楽しめたのかなと感じています。性質を理解するための時間があんまりありません。

なお、個人的に好きなビルドはHP吸収メインで、回復のハードルが若干高いところに効いてきます。上手く戦えば、少なくとも雑魚相手には敗北しにくいところもあり、好んでエンチャントするものの一つとなっていました。

個人的に気になった点としては換金アイテムがほぼないところで、本を買うためにはある程度素材を売ってやる必要があります。
ただ、素材一つ一つにエンチャントがあり、それぞれの効能がテキスト上でしか示されず、良く分からないうちから取捨選択を迫られるので、このあたりの換金作業が非常に手間でした。一発で売り切ってしまうのが思考的には楽なんですが、レアっぽいアイテムもちらほらあるのと、合成に必要なアイテムがあったりするのが難しいところです。
足切りが簡単にできればもう少し考える時間を減らせそうなんですが、かなり複雑なのですでにあるソートでも如何ともしがたいところです。いっそレアリティくらい分かりやすい概念がないとどうにもならない気もします。

シナリオ面では分岐がそこそこ中間のところにあり、見事に外したために正史ルートには入れませんでした。終わってそうな出来事がずっと残り続けていたのでそういうもんかと思っていたら、一つだけちゃんとルートにかかわることができていなかったようです。凡ミス。
シナリオ自体はアクションゲームとして考えるとかなりボリュームがあり、町で色々とイベントを起こすこともできるので楽しかったです。意味もなく、シナリオが進行していそうなタイミングで町に戻って色々と話しかけるなどしていました。

10. ±0 -Black Rain-

ジャンル 作者
アクション/探索ADV 氷瀬るん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.09 NORMAL

良かった点

  • 美麗なグラフィックと高い演出力からなるカットシーンは圧巻でした
  • キャラクターがダイナミックに動く迫力のある戦闘シーンを楽しめます
  • 戦闘パート以外にもバリエーションがあり、飽きにくい設計になっています

気になった点

  • 戦闘パートは防御と必殺技優位なバランスとなっていて、攻める理由があまりありませんでした
  • ダッシュジャンプ地帯について、ダッシュジャンプするとむしろ突破できなくなるミスリードに感じました

レビュー

死を齎すもの

±0 -Black Rain- は、美しいグラフィックに圧倒される演出が特徴的な、アクションと探索を合わせたようなゲームです。
探索パートを適宜挟みつつ、要所では戦いに挑むことになる流れとなっています。

ただし、一口に探索と言っても、プラットフォーマーめいたものから謎解きチックなものまで色々な試練が待ち構えています。時にはアクション性を要求され、時には思考を要求されつつも、上手くそれらを処理し、物語を進めていきましょう。
また、ただの探索パートでも、場合によっては後の分岐にかかわることもあり得ます。様々な場所を見て回ることも必要かもしれません。

そうした探索を経て、シナリオの関門として設定される戦闘へと突入していくことになります。戦闘パートでは、その圧巻のグラフィックによりダイナミックに動くキャラクターに圧倒されることは疑い得ません。
ゲーム性としてはチャンバラに類するものであり、タイミングよく攻撃し、相手の行動に上手くタイミングを合わせて防御するのが基本戦略となります。
敵の動きをよく見て、適切に守りつつ相手に攻撃を加えていきましょう。

探索、戦闘を通じて、そして何よりもシナリオにおいて発揮されるグラフィックの圧倒的な美麗さが、やや暗さをはらむ物語を美しく表現した作品となっています。高い演出力に裏打ちされたカットシーンもまたシナリオを彩り、より没入できるものへと昇華させてくれること必至です。
美麗な世界に足を踏み入れましょう。

感想

画の力が凄いゲームです。そしてそれは、もちろん要所におけるスチルの上手さや、立ち絵の綺麗さもあるんですが、特に戦闘シーンにおける画面の圧を絵の圧倒的な美麗さによる迫力で表現しているところが圧巻となります。

ひとまず戦闘シーン以外の画の強さに触れておくと、細かいシーンの表現力が抜けて高い作品となっています。絵による表現力がずば抜けて高いのはもはや見ずとも分かるとして、カメラワークや細かい尺など、カットシーンにおける演出力も極めて高い水準にあります。
ここに天元突破の画の力が入ってくるので、画面に込められている力のかかり方は尋常でないものになります。圧倒的と言って遜色ないレベルです。
もちろんよく動く立ち絵もクオリティが高く、それぞれの感情や機微を細かく表現するものとなっています。

そして何といっても印象に残る戦闘パートですが、各々のグラフィックが大きく映り、ダイナミックに動きます。これだけで迫力が出ています。凄い。
プレイフィールはチャンバラに近いですが、大写しとなったキャラクターの動きと大胆なエフェクトでかなり見目映える戦闘シーンへと昇華されています。あまりにエフェクトと動きが強すぎて、下手に攻撃するとガードモーションと予兆モーションが被って被弾しがちなのはご愛敬。

なお、そういう面があるので、戦闘パートはゲーム性的には全段弾いて必殺を叩き込むのが安定行動にはなりがちでした。下手に殴るとガードされ、手痛い反撃をもらうことも多いので、ガード貫通の必殺に集中する方が色々と楽です。突発的な処理落ちにも対応しやすいので。
ただこのやり方だと相手の必殺技が見られないことが多いので、とりあえずは全力で挑むのも良いと思います。せっかくなら相手の必殺技も見たいですからね。

戦闘パート以外は主に探索パートで構成されており、ややアクション性があったり、シンプルな探索要素があったりと、ちょっとバリエーションを変えることで上手く間を持たせている印象でした。
個人的にはつくね選びが難関で、クリアした時点でさえ、何体か見分けのつかないつくねが混じっていました。最奥にいるだろうというメタ読みが無ければ危なかったです。翻って支部長はあまりにも解釈違い過ぎて一瞬で分かりました。

シナリオ面で言うと、最後の時計塔に見覚えがあるなあと進めていたらプルートニオンを思い出し、そこそこ暗い気持ちになりながら最終戦を迎えていました。プルートニオンそれ自体、あんまりにもあんまりな結末の多い印象がありましたが、ここに加えてなおあんまりな結果になっているあたりは残酷ですね。あの人たちは一生くだらない漫才やっていて欲しかったです。
まあまあなことをしでかしてるラスボスではありつつ、その時の記憶から肯定はできないまでも納得はできる自分がいました。彼ならやる。

なお、このゲームは今ウディコンにおける飯テロゲームの一つでもあります。絵の上手いゲームは飯を上手く描いてお腹を空かせてきがちですね。

11. 水底の記憶

ジャンル 作者
ADV EHS(イースターハイスクール)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.0.5 全END

良かった点

  • 豊かなアニメーションによる演出が強く印象に残りました
  • 短編として完成度の高いシナリオでした
  • イベントとミニゲームの塩梅が良いです

気になった点

  • 初期マップにある自販機がミスリードに感じました
    • ここで水を取得して使うと、アイテムの効果が無いものという誤解を招くかもしれません

レビュー

記憶の奥底から繋がるもの

水底の記憶は、短編のADVです。
夏祭りを謎のお面の少女と共に回っていきながら、記憶の奥底にある出来事を追憶していく物語となっています。

プレイヤーは射的や千本つりといったミニゲームを通して夏祭りを体験しつつ、そこで得られたものから過去を回想していくことになります。
こうした昔日の回顧は、幾枚ものスチルから成る叙情豊かなアニメーションの演出によって構成されており、強く印象に残る情景が描かれるものとなっています。
この在りし日の場面において交わされる短いやり取りの中で、主人公、あるいはプレイヤーは過ぎ去った日々の一幕の想いを選択していくことになるでしょう。そして、その選択次第で、二つのエンディングの内のどちらに決着するかが決まります。
過去の選択と共にその出来事を追体験していき、やがて至るそのエンディングを見届けましょう。

一つのエンドに到達するのには10分強程度しか必要としないため、手軽にプレイすることができる作品となっています。加えて、その短い中には充実した演出とシナリオが詰め込まれており、プレイ後の満足度が非常に高い作品でもあります。
ぜひとも、ある日を追憶し、その選択を重ね、真のエンドへと辿り着いてみてください。

感想

良い短編のADVでした。要素一つ一つを拾ってどこが良いか語るのも良いんですが、とりあえずまずはその一言に尽きます。
情景が豊かに描かれるアニメーションスチルの印象強さや、そこから数少ないやり取りで想像させる物語性の妙が素晴らしく、また好みのものでもあるんですが、筆者が一番好きなのは真エンドへのヒントの出し方にありました。

それはいったん後述するとして、やはり触れなくてはならないのは細かいスチルの多さ、あるいはアニメーションとしての多様さです。
入りからして雰囲気最高の導入を演出していますが、その雰囲気を崩すことなく、抒情溢れる演出と共にゲームが進行していきます。それぞれのイベントが適切に印象に残る形で現れていき、全てがきちんとした意味をもって最後へと繋がっていきます。
なお、グラフィック面で個人的に好きなところは目の描き方と、気の抜けた表情の描写あたりです。内心気を抜いているかは分かりませんが。

探索ADVではないのでマップは一本道で、移動速度は演出の都合上なのかまあまあ遅めです。ただ、マップは狭いので、そこまで気にはなりませんでした。
分岐は入りさえすれば選択肢が出るので自明なところですが、イベントを起こすのにアイテムを使わないといけないことに気付かないと、何も見ずに終わることになります。筆者はここで一敗しています。
通常プレイなら最初に手に入るアメをとりあえず使うので分かるだろうという話なんですが、筆者は適当に歩き回った結果、自販機で水を購入して飲んでしまったため、何も起きないという学習をしてしまいました。それにしてもアメぐらい使えという気もしてきますが。
この個人的な体験をもとにすると、変なミスリードになる恐れがあるので自販機を撤去しても良い気はしています。必要なのはだいぶ先ですし。

このため、二週目でアイテムをようやっと使い分岐に気付き、最後の言葉で別の分岐に到達して全エンドクリア、という流れになっています。
このように3周やって30分、1周10分ちょっとくらいの本当に短めの短編ではあるんですが、先述の演出の力も相まって印象にはきっちり刻み込まれる作品でもありました。

前述したシナリオの話、あるいは分岐についての話にも触れます。
シナリオに触れる前に分岐に触れた方がスムーズなので、まずは分岐の話をするんですが、心理的に選びにくい選択肢をもって構成しています。
この手のADVにおける分岐というのは、慣れてくるとおおむねグッドエンドに結びつきそうな選択肢が見えてくるものが多く、またそれがある程度は正しい様相でもあります。それっぽい選択肢がそのまま正解であるというのは、プレイヤーが持つ期待を裏切らないということであり、それが自然であるということも示すことが多いためです。これを裏切るにはシナリオ上なり構成上なりゲームシステムなりに、強いカロリーを要求することになり、一歩間違えると単なる不親切へと作品を貶める結果にさえつながりかねません。
前置きが長くなりましたが、この作品は心理的に選びにくいその選択肢をもって真エンドへと導くため、別の熱量を必要とする後者の方に位置すると言えます。その上で、きっちりと選択自体に意味を持たせ、そのハードルを飛び越えた作品となっていました。

まずシナリオ面で見ていくと、これはある記憶の場面における自身の感情への追憶です。
良く知られている通り、記憶というのはかなりいい加減なものなので、ちょくちょく都合よくその時々を改ざんすることがあります。あの選択肢を選ぶということは、その時の自分を都合の良いものへと改ざんする行為であり、そうして形作られた都合の良い自分では、最後の行為の際に過った感情にラベルを付けることができません。
それはある意味では自己のどこかを喪失するようなものであると解釈でき、最後のエンディングに繋がることに何の不思議もありません。シナリオ上の意味合いで取れば、振り返ってみればあの選択肢は明らかに失着であることが分かるようになっています。
不合理な選択肢の自然さはこのようにして担保されることになります。

次いで、ゲーム的な面で見ると、あの選択肢に反する理由付けが必要です。とはいえ、露骨にヒントを出すのも興が冷めます。
そういう難しい場面において、真エンドでない時に提示されるのは、ただ、難しいよねという共感とも無念とも取れる一言のみとなっています。そして、この一言が非常に良いヒントとして作用しています。
この状況下における難しかったことをイメージすれば、選択肢をどの方向に見定めるべきかが明瞭になり、また先述したような背景までがクリアに認識できます。
この一言は、ゲームの雰囲気を一片も崩すことなく、極めて示唆的であり、かつそれを解すること自体がゲームに奥行きを与える値千金の言葉だなと強く感じ入っていました。ルート示唆のヒント界隈で一番好きかもしれない。

そうして理解して初めに戻り、全てを自覚して進めていくことで、手をつなぎ、手を離れ、また改めて手をつなぐことで終わるまでの綺麗な流れを十全に堪能することができます。加えて、このあたりの機微をエモーショナルにグラフィックで表現しやすい、ADVという分野の良さが如何なく発揮されている作品でもあったと言えるかもしれません。

なお、何故か選択肢の構造とヒントの言葉にばっかり文字を割いてしまってはいるんですが、全体的な短編としてのシナリオやシステムのバランスも良くできている作品です。この短さの中で、お祭り感のあるミニゲームも差しはさんでイベントとのバランスを取りつつ、上手く気分を切り替えさせています。
シナリオの構成についても要点を絞ったイベントに集中し、その関係性を必要十分に表現した上で最後へとつなげていく短編として良くまとまったものとなっていました。

12. 魔女にお菓子を届けましょう

ジャンル 作者
魔塔 ちぃ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.02 全END

良かった点

  • 1周30分程度で気軽に遊べます
  • やや平易ながら程良いバランスの難易度でした
  • HPとSPの二重リソース管理が上手く機能しています

気になった点

  • ☆3装備の有用性が薄い、あるいはピーキーに過ぎるように感じました
    • デメリットが強すぎる、あるいはメリットがその割に実感できるほど強くない印象があります

レビュー

当意即妙にルートを決めよう

魔女にお菓子を届けましょう は、魔塔系と呼ばれるパズル的なRPGです。
ランダムで生成されたマップをパズル的な戦闘を経てクリアしていき、塔の頂上を目指すことになります。

ただし、戦闘と言ってもその戦いは触れただけで終わる簡単なものとなっています。双方の攻撃力と防御力をもとに相手のHPが削り切れるまで殴り合い、その分のダメージを受けて戦闘を終えるという流れです。このため、3回の攻撃で倒せる敵と戦う場合は、その敵の攻撃力2回分のダメージを負うことになります。
そうして敵を倒すと経験値が得られ、一定以上蓄積するとレベルアップでステータスが上昇します。また、マップ上にあるアイテムを拾うことでもステータスを上げることができます。ステータスを上げることで、より強い敵を相手にしても被弾を抑えて戦えるようになっていくことでしょう。
これをひたすら繰り返し、HPなどのリソースが枯渇する前に塔を登り切ることができればクリアとなります。

リソースを使い切ることなくクリアするためには、敵をどの順番で倒し、アイテムにどの順番でアクセスしていくのかが肝要です。
塔の一つのフロアは5x5のマスで構成されており、全てのマスは敵やアイテムなどの何らかのオブジェクトで埋まっています。これらをどう巡回するかをパズル的に考え、最適な動きを取っていきましょう。時にはあえて戦わない選択肢を取ることも必要になるかもしれません。

ただし、HPだけに気を配っているのではクリアは覚束無いでしょう。このゲームにはもう一つ、SPというリソースもあるためです。SPもまた、枯渇するとゲームオーバーです。
SPは階層ごとに消費され、主にアイテムの取得で回復していきます。また、敵に対して先んじてダメージを入れることのできる魔法を使う際や、一部の障害物を破壊する際にも消費することになります。
有利状況を作るためには、ためらわずSPを消費する方が良いこともあります。しかし、場合によってはHPを犠牲にしてでもSPを回復しに行った方が良い場面もあります。双方のパラメータを注視し、最適な行動を選択する必要があるでしょう。

25マスで構成される一つの盤面を効率良く回るためには、短期的な視点で思考を巡らせていくことになります。その一方で、頂上に到達するためには、成長戦略を含めたやや長期的な視点に基づいた思考を必要とします。
こうした、短期の戦術を積み重ねて長期の戦略へと積み上げる作品でありながらも、一つ一つの盤面が短いゆえに頂上まで気軽に遊べる作品ともなっています。軽く思考を回して、頂上まで駆け上がっていきましょう。

感想

WWAあるいは魔塔系です。説明文に沿って、ここでは魔塔系と呼ぶことにします。
いわゆるこの手のゲームはあらかじめ見えている事柄から、中長期的視点をパズル的に突き詰めていくことが主眼になります。このため、最後の状況からの逆算と局所的最適解を見つける技能の双方が求められるゲームになりがちです。
これはこれで楽しいんですが、めちゃくちゃ頭を使うのと、大体一発で上手く通すのが難しいというのがネックでした。

このゲームでは、毎回ランダム生成される階層を攻略し、66Fを駆け上がるというものなので、最終的な状況というものは見えません。
プレイヤーが分かってるのは、敵がだんだん強くなっていくであろうことと、現在のフロアの配置だけです。このため、ぼんやりとリスクを取って進める中長期的視点と、現在のフロアのルートを考える視点だけが必要になってきます。
先ほどの例で言えば、極めて狭い局所的最適解を考えることに多めのリソースを使い、中長期的視点はなんとなくでもカバーできるようになっています。
このため、かなりカジュアルに魔塔系を楽しむことができます。

その分、難易度は恐らく低く、筆者は負けイベントを抜けばどれも一発で最後の階層まで到達しています。途中HPやSPが危ない状態にはなれど、ある程度ゲーム性を理解してさえいれば、上手く回避できるレベルでした。
ただ、そもそもランダムなのもあって、あんまり難しくはできないでしょうし、カジュアルに楽しめる点を踏まえても、個人的にはこれくらいの難易度が好みです。ちょっと頭を使って気持ち良くクリアできるレベルです。

また、クリアの度にローグライト風に能力値の向上や初期装備の取得もできるため、どんなに失敗してもいつかはクリアできるようにもなっています。
この辺のサポートもあるので、あまりこの手のゲームをやったことが無い方でも遊びやすいんじゃなかろうかと感じています。

なお、個人的には装備のバランスだけはそこそこ尖った印象を受けました。特に☆3の最高レアリティの装備の癖が強く、正直☆2の装備をデメリットなく使った方が優秀なんじゃないかなと思いながら使っていました。
このゲームは長期的なプランがあまり正確に立てられないので、そこそこプランが固定化される制約を持つ☆3を採用するのは中々勇気がいります。そのリスクに対してのリターンも実感を得られる程に高くはないので、結局☆2の装備に落ち着きがちでした。
完全上位互換を出すのは芸がないというのは凄く良く分かるんですが、装備レアリティを上げやすくする装備がある以上、もう少しご褒美的な強さがあっても良いのかなと感じていました。

装備についてもう一つ付け加えておくと、いつでも装備を拾えば付け替えられるのも面白いところです。その時その時に強い装備を選んでいくこともできるため、フル装備状態でも宝箱を空けるかどうかの葛藤が生まれます。
序盤は魔法出力を上げて体力を温存したいとか、後半は体力を増やして逃げ切りたいとか、その時々に有効そうな装備が用意されているのも好きです。

システム面でもう一つだけ言及すると、リソース管理としてHPだけでなくSPがあるのが、このゲームをやや複雑にしつつも、奥深さを出しているところです。
階段を下りるごとに減るため、ステージ内を歩き回ってSP回復アイテムを取得するモチベーションがちゃんと出ます。このため、できるだけ敵を倒す導線が自然に生まれていました。加えて、後半に行くにつれ宝箱のSP回復量が多分上がっていくため、鍵の価値が後半に上がっていくというのも面白い点です。どこまで温存するかのチキンレースができます。

その上で、どこでHPを犠牲にしてでもSP回復アイテムを取りに行き、どこでSPを犠牲にしてでも魔法を使ってメリットを享受するか、という駆け引きが生まれるというのが良いポイントです。
この時、SPはおおむね先行投資として機能していて、特に序盤はこれで本来取りにくいアイテムにアクセスしやすくなります。また、その敵を突破すると手に入る諸々のリターンも加味して後半でも振ることはあり、残HPとの相談も含め、思考に一段階奥行きが増す要因となっています。良くできたシステムですね。

最後にシナリオについて触れるんですが、だいぶふんわりとしたものなので、かなり解釈によるところだと思います。
割とスムーズに攻略したせいなのか、目に思い入れができる前に亡くなったのはちょっと残念でしたが、それ以外はある程度キャラクターも把握できて良かったです。
記憶の断片とEND2から一人分の魂と思っていたものが二人分の魂であることくらいは分かるんですが、そこもだいぶ曖昧なので解釈に迷っています。だからこそ干渉を受けないんでしょうか。
ENDについてもう一つ追記しておくと、光のおかげで勝てたようなもんだと思っていたんですが、光単独で挑むと相打ちになるのが意外でした。主人公の果たしている役割があるということでしょうか。謎は尽きません。

難易度に物足りなければチャレンジもあるので、カジュアルに楽しみたい場合もある程度ちゃんとやりたい方も楽しめるんじゃないでしょうか。

なお、筆者のクリア状況は以下の通りです。
3回目については、休息の宝石の効果でSPがみるみる減っていった時はだいぶスリルがありました。諸刃のパワーでアイテム回収をごり押してなんとか薄氷の勝利です。
4回目はさすがに慣れたのか安定していて、装備を割と雑にとっかえひっかえしていてもなんとかなりました。HPもだいぶ余っています。

END1 END2

13. アンブレラブレイバー

ジャンル 作者
ノンフィールドADV (影)苅田町役所
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.05 全END

良かった点

  • ラストに向かって良く演出されたアドベンチャーゲームでした
  • 良いBGMが演出を盛り上げてくれました

気になった点

  • ノンフィールドパートにおいて特別に意味を持たない歩みが多く感じました

レビュー

その手を取って歩もう

アンブレラブレイバーは、シナリオに重点を置いたノンフィールドアドベンチャーです。
主人公は廃墟の洋館の中で不思議なお姉さんと出会い、その廃墟からの脱出を目指すことになります。

その脱出のためには、ノンフィールドRPGのようなパートを通して、幽霊との戦闘に勝利する必要があります。
戦闘における幽霊の行動はあらかじめ明示されているため、プレイヤーはその情報を勘案して適切な行動を選択していくことになります。基本的には相手の行動を封じつつ、こちらの攻撃を通していく、特殊なじゃんけんのような戦略を立てることになるでしょう。

そうして戦闘を攻略していき、洋館の出口にまで辿り着くことができればクリアとなります。
しかし、このゲームはノンフィールドRPGではなく、アドベンチャーです。本当の意味でクリアするのであれば、戦闘以外にも目を向けましょう。ゲーム内にもヒントはあるので、その達成はそれほど難しくはないはずです。
是非とも手を取り合って、洋館の脱出を目指していきましょう。

感想

ノンフィールドRPGかと思ったけど、ノンフィールドADVでした。紹介文にもRPGって書いていないですしね。ノンホラーアドベンチャー。
ノンフィールドRPGとして見るなら割と無駄に思える部分はあるんですが、この辺は恐らくADVとしての演出の意味合いが強いんだと思います。空気感の醸成のために、この設計になっているような印象でした。

戦闘はかなりフレーバーであり、タイミングを取って殴るゲームになっています。大きくランダム要素もなく、固定行動しかないので対処も楽です。
そういう意味でも、ここもまた演出でしかなく、どちらかと言えば会話の方に重きが置かれた設計となっていました。一応何も考えないとマズい状態にはなっているので、適度に別のことを考えてリフレッシュする要素として機能しているのかもしれません。
どうでも良いですが、行動予測について、初めはUIを見てアメリが教えてくれていたのかと思っていました。しかし、終盤パートで普通にコウ一人でも敵の行動が見えているあたり、どうやら違ったようです。もしかしたらそういう能力を会得したのかもしれませんが。

また、ノンフィールドパートはそこそこ何もない歩みが多いんですが、ここも演出の都合上っぽい印象でした。会話のこともありますし、単純に二人で歩む道であることに意味があるという面もあります。
若干演出はもっさりしているんですが、そこはスキップもあるので周回時に気になるレベルにはなっていません。

反応範囲は、何もしなければ初手にビターへ行くようになっている印象で、ちゃんと全てのイベントを初見で進行するのはあんまり想定されていなさそうな気配はあります。好奇心旺盛なら触れそうですけど、それはそれでビターが見れないのがもったいない気がする。
一歩ごとに確認する手間は発生しますが、全体の歩数が短いので事なきを得ました。これが100歩とかだったらさすがにしんどかった。

シナリオについても言及しておくと、筆者はなんやかんやボーイミーツガールを好む向きにあるので、シンプルに好きでした。
シナリオ構造的には少しひねったことをしつつも、物語そのものは結構直球ストレート勝負なのも良くて、単純にラストバトルは心熱くなるところがあります。王道は外さないから王道足りうる面があるので。

なお、筆者は最初の方で見た、アレを幽霊と思いこまないと云々で若干混乱していたんですが、主人公は普通に生者と察していたということで決着しています。ビターというかあの辺の表現上、幽霊ルートもありそうに見えはしたので。
それはそれとしても、外に出れない理屈は未だ良く分かっていません。父の力なのだとしたらどういうスペックなんでしょうか。あるいは父の制約すらも自身の意志の発露でしかなく、勇気をもらうまでは外に出ることすら叶わなかったと捉えるべきなのかもしれません。

しかし幽霊食、栄養とか大丈夫なんだろうか。

14. Inifis

ジャンル 作者
マルチエンドRPG 逃げ足
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分+2時間 1.09e 全END

良かった点

  • マルチエンドRPGとして全てがちょうど良いサイズ感に収まっています
    • 物語の尺、マップのサイズ、戦闘のバランスなどが丁寧に作られています
  • マップ間の接続やイベントの配置を軸に、探索しがいのあるマップが構成されています
  • 周回に向けたサポートが手厚く、別エンドを見に行きたくなる設計でした
    • シナリオ面で動機付けをし、システム面で上手くサポートしています

気になった点

  • 特にありません

レビュー

思うままに行動したその先を見届けよう

Inifis は、様々な選択からマルチエンドへ分岐していくことを特徴とするRPGです。
主人公の神官を操作し、聖者の依り代に選ばれてしまった彼女を救い出すため、戦闘やイベントを通じて行動していくことになります。

彼女を救う方法、あるいはエンディングに辿り着く方法は多種多様にあります。
それらを発見するには、様々なエリアに繋がるマップを探索して、アイテムを収集したり様々な人々と会話したりすることが大事になってきます。特に誰かとの会話の中でアイデアを思い付くことができれば、それが彼女を救うヒントになるかもしれません。
マップを隈なく調べ尽くしつつ、積極的に話しかけていきましょう。

また、そうした探索の中では、敵との戦闘が避けられないこともあるかもしれません。
戦闘は標準的なターン制のシステムを採用しており、テンポ良くやや歯応えのある難易度のものとなっています。そのため、雑魚との戦いはともかくとして、一部の強敵を倒すには主人公一人で戦うには厳しい場面もあり得ます。
そうなった場合は、様々な場所を訪れて人々に話しかけていき、仲間を得ていきましょう。複数人で挑むことができるようになり、強敵と戦う時の助けとなります。

こうした探索と選択の果てに取る行動によって、物語は多くのエンディングへと分岐していきます。そして、それぞれによって判明する真実もまた多様に存在します。
少しずつ明らかになっていく真相を知るためにも、様々なエンディングを周回して見ていきましょう。強敵を実質スキップできるアイテムなど、周回をサポートする機能も充実しているので、気楽に挑戦することができるはずです。

感想

短いマルチエンドRPGかくあるべしみたいなゲームです。こういうタイプの作品としての一つの頂上というか完成系みたいなゲーム性をしています。
マップの広さ、分岐の数、分岐に至るまでのイベントの数、と言ったところの塩梅が本当にちょうど良く、それでいて周回をサポートする機能もあるので、自然にマルチエンドを回収しようという動機が生まれました。

個人的に一番好きなのは、探索している感を出しつつも、実際にマルチエンドのために走り回ると意外と狭いマップになります。
まず、マップそのものがいろんなところで接続していて、いくつかの隠し道まで用意されているおかげで、実際の広さ以上に探索している感覚を演出することに成功している気がします。意外なところが接続する驚きもあって良い。
加えて、慣れてくると周回時にショートカット的にルートを選択していくこともできるようになるので、周回のサポートにもなっています。エンディング回収の最後の方では勝手知ったる庭みたいに歩き回っていました。

また、マップにあるイベントの密度も探索感の増大に寄与しています。程よくイベントのある町、戦闘をメインとしつつイベントもある墓地といった具合に、メリハリを利かせつつ、各所にちょうど良い具合にイベントが配置されています。
イベントの発見それ自体が探索の目的ともなりうるので、このあたりが充実しているおかげでだいぶ探索している感覚を覚えるようになります。
さらにシステム的に、イベントを経て大事なメモが手に入ることで行動に広がりが出ることもあり、大きな目的の観点でも発見に繋がるようになっています。

そして、これらのマップのサイズ感、イベントの尺や密度感が探索している雰囲気を残しつつ、周回において手間に感じない程度に収まっているのも良いところです。このあたりのバランス感覚が優れていました。
制限時間下でギリギリ調べ切るのは難しいが、ある程度次の周回に向けての情報も入りつつ、といった状態でエンディングを迎えられるようなレベルで調整されていました。時間制限もだいぶ良い調整で、筆者はいろんなところに顔出しした結果、魔界の家に行けないまま誰も倒さずに導師を倒すエンディングを迎えています。

戦闘についても割と難しいながらも、周回に向けたサポートもある良い塩梅です。
戦闘自体は人数が揃ってないと大変ですし、人数が揃っていても回復できていないと怪しいくらいのバランスです。ラスボスはそこそこ強く、全体攻撃手段の確保と仲間の確保が重要になる程度にはちゃんと歯応えのある戦いが楽しめます。装備も大事。
その上で、周回においては個数制限のある即死アイテムをどこかで切ることができるので、一度倒した敵と再戦することは基本的にありません。この辺の割り切り方が好みです。あくまでこれは主体ではない。
ちゃんとレベルデザインされた歯応えのある戦いを演出した上で、手間の観点からそれをスキップできる選択肢を残すというユーザーフレンドリーはコンコルド効果的にも中々選択しにくそうですが、この作品はそちらに振られています。

シナリオ面については、エンディングを明かすにつれて、それに付随するイベントも含めて主人公やその周りの状態が分かっていく形式が良いです。この事実の開示そのものがマルチエンドを探し当てる原動力ともなり、世界観の掘り下げにもつながっています。
色々なルートが見られるからこそ、作中で主人公が取った選択を振り返ることもでき、全滅はさすがにやりすぎたかなという気持ちにもなれます。しかし一度殺すって選択肢が日常に入り込むと、全員殺してしまいますからね。筆者が最後に殺したのは忘れてた金髪の元生贄でした。彼女もカウントされるんですね。

しかし、人の身でネームドの悪魔を倒せる主人公、だいぶ強い気がします。
一応、作中で倒すには精霊と悪魔の協力が取り付けられるとより楽なはずなので、それが大きいのかもしれません。とはいえ、試してはいないですが、もしかしたらソロ討伐できるかもしれず、そうなるとだいぶ強力な力を有していることになりそうです。
実質悪魔との協力関係に元からあったのだから、そういうことなのかもしれませんが。

15. 箱庭ドールメーカー

ジャンル 作者
すごろく×デッキ構築育成RPG こよる
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10時間 1.1.0 エンドロール

良かった点

  • システム同士の親和性が高い作品でした
  • 状態スロットの押し出しを軸に、高い戦略性を持つ戦闘が楽しめます
    • それに向けたドール育成によるパーティー構築もまた戦略的に挑める課題となっています
  • 個性的なボスを攻略していく面白さがありました

気になった点

  • 過去に育成したドールがほとんど無駄になるような印象を受けました
  • 育成に時間がかかるため、新規のドールに手を出しにくいきらいがあります

レビュー

状態異常を制する者が戦いを制す

箱庭ドールメーカーは、ドールを育成し、すごろくライクなステージを攻略するRPGです。
ゲームの構成は主に、ダンジョンによるドールの育成と、そのドールを運用したフィールドの攻略に分かれます。

まず、ステージを攻略するにはドールを育成していく必要があります。
ドールの育成は、素体を決めて、ダンジョンに潜り、敵と戦いレベルを上げ、スキルを習得し、ダンジョンをクリアすることで完了となります。こうして、そのダンジョンで獲得したレベルとスキルを備えたドールを使えるようになります。
すなわち、育成のためにはダンジョンで効率良く敵と戦いレベルを上げつつ、スキルを習得していく必要があるわけです。

ダンジョンはそれぞれクリアまでの階層と、所要ターン数が決まっています。この中で、ターンを消費してダイスを回してマスに止まりイベントを起こしていく、すごろくのような構成で進んでいくことになります。
敵シンボルに接触すれば戦いになりますし、宝箱に接触すればスキルやアイテムが手に入ります。ダイス目というランダム性を上手く御しつつ、効率良くマスを巡っていきましょう。

さらに、成長をより加速させるためには、敵と戦った後にキャリーオーバーを行うという方法を取る必要があります。キャリーオーバーは3回まで行うことができ、その間に獲得経験値を徐々に引き上げる効果がある一方で、キャリーオーバー中はHPを回復する休憩コマンドが使えなくなります。
これを上手く活用し、可能な限りキャリーオーバーし続けてから最後に強敵と戦うことができれば、大きくブーストされた経験値が手に入ります。リスクはそれなりに高いですが、強いドールを育成するためにも挑戦してみましょう。

こうしてダンジョンを上手く活用し、ステータスとスキルを育成したドールによってパーティーを組んで、フィールドに挑むことになります。
フィールドもまたダンジョンと同じくすごろくのような構成となっており、基本的なルールはダンジョンと変わりません。ただし、レベルを上げることによるステータスの向上は、前述で育成したステータスに依存するものになります。そのため、きちんと育成していないと強さにキャップがかかりますし、育成していてもフィールドでレベルを上げないと十全の強さとはなりません。
フィールドにおいても、上手くマス目を巡回し、効率よく成長していくことが大事となるでしょう。

上述の通り、育成、攻略ともに立ちはだかることになるのは、敵との戦闘によるレベル上げです。そして、その戦闘を有利に進めていくためには独特かつ戦略的な戦闘システムを理解する必要があります。

戦闘画面

戦闘においてまず重要となるのは、育成で習得したスキルです。スキルは10個まで習得可能であり、戦闘開始時にその中から4個のスキルがランダムに配られます。上記の例では、攻撃スキルが3つ、スラッシュが1つ選ばれた状態です。
こうして配られたスキルを使うには、素早さに依存して蓄積するAPを消費する必要があります。上記で言うと、50APを消費すれば攻撃ができますし、75AP消費すればより強力なスラッシュを発動できます。
こうしたスキルの発動タイミングは完全にプレイヤーに委ねられています。短期決戦を仕掛けるためにAPを全て消費して攻めるという手もありますし、APやスキルを温存し、次の行動に備えるという手もあります。その時々の状況を見つつ、柔軟に対応していく必要があるでしょう。

なお、覚えていくスキルのタイプは、個々のドールによって特徴があります。その傾向はドールの装備系統に依存しており、オーソドックスな攻撃スタイルの剣、バフを盛れる扇、守りを主体とする盾などから、戦略をもとに選択していくことになります。
また、同じ装備でもドールごとに異なる部分はあるため、気になるならば試してみるのも一興です。どんなドールを選んでパーティーを構成するか、といったところからすでに戦いは始まっています。

加えて、戦闘を進める上で欠かすことができないのは、状態異常とそれを管理するスロットという概念への理解です。
バフデバフにかかわらず、状態異常は全て最大5個からなるスロットで管理されており、5個を超えると古い状態異常から消えていきます。上記の画面では、敵に攻撃低減のデバフと、攻撃強化のバフが入っています。ここに状態異常を4つ積むと、一番古い攻撃低減のデバフが取り除かれるという次第です。
強力なバフを5個重ね掛けすることで絶大な火力を得ることもできますし、相手に5個のデバフを重ねることで相手のバフを全て取り除くといった芸当も可能です。攻防両面において非常に重要であるため、常に彼我のスロットを確認し、上手く活用していきましょう。

ドールを軸にした育成システムと、育成したドールを用いて攻略に挑むフィールドという二重のデッキ構築システムのようなデザインが特徴的な作品となっています。
この斬新な設計に、多様な戦略が生まれる戦闘システムが取り入れられることにより、無数のドール育成戦略が生まれ、それぞれのプレイヤーごとに異なる攻略スタイルが生まれていくことは疑い得ません。
あなたのお気に入りのドールと戦略をもとに戦闘の場を制圧し、フィールド最深部で待ち構える様々なボスを撃破していきましょう。

感想

じっくり育てるデッキ構築という感じで、割と斬新に遊べた作品でした。デッキ構築というと、とにかくカードを切り替え続けて己のやり方へにじり寄っていく感じのものをよく見ていて、それゆえにローグライトと相性が良いところがあるんですが、この作品はデッキパーツ一つ作るのにまあまあ時間がかかります。
そのために、一回でかなり方針を固めて進めていく必要があり、アドリブ性もありつつも、かなりの部分でプレイヤー自身の戦略方針を問われているような印象がありました。

戦闘システムも面白い作品ではあるんですが、ひとまずは全体のシステムについての話をします。
個人的な印象としては、二重構成になったデッキビルド系のシステムと捉えています。ダンジョンによる強化で作ったドールがそもそもデッキな上に、それをベースにステージの成長を重ねることで、もう一つ構築要素が追加されています。
成長面においても、デッキ構築ゲームをやりつつデッキ構築用のドールを作る二重構造になっているあたりが面白いです。

一方で、ドール育成は特に後半になるにつれてカロリーが高くなるきらいはあり、1時間近くかかるダンジョンでようやく1体作れる中、それを4体用意するような状況になってきます。こうなると4時間近くかかりかねません。
深層を攻略した印象では、恐らく全員を最新のレベルに追従させなくても、一人二人入れ替えれば充分に対応できそうな気配はありましたが、少なくとも突入前にそれを知るのは不可能なので、全員最新ダンジョンで鍛え直してから挑戦させていました。
もっとも、準備自体がゲーム性を持っていて、戦闘システムが結構面白く、成長システムがスリルを持ったリスクリターン形式であるおかげで、中だるみするというレベルまではいきません。システムが秀逸ゆえに成り立っているバランス感といった印象です。

成長システムについても軽く触れておくと、まあまあに運要素がありつつ、自分で選択できるリスクとリターンによりメリハリがちゃんと付いている良いシステムでした。
キャリーオーバーは必ずやった方が良いという前提の元、想定外のことが起こった時にちゃんと損切りできるか、最後の最後に強敵を倒すためにどういうプランで敵を倒すか、など即時性も先を見通す戦略もどちらも要求される良い塩梅の仕組みとなっています。
その一方で、技の取得などはかなりランダム性が強く、想定するビルドに至るにはそこそこの運も要求されます。そもそもダイス運もありますしね。このあたりのおかげで、一本道をただ辿るようなゲーム性が回避され、上手く対応してプランを適宜修正しつつ、できるだけ理想に近付けていく楽しみがありました。

なお、戦闘後に連打する癖があると、キャリーオーバーを止めてしまうことがあるので、ここは注意が必要です。筆者は何度かやらかしています。キャリーオーバー継続の方がよくやる選択肢なので、それが上に来ているとより有難かったかもしれません。

ドールの種類については割と豊富に用意されており、それぞれの性能についても特色があって面白いです。自分が得意とする戦略に沿ったドールが選べると、ぐっと戦いやすくなります。個人的には雑魚の処理性能が高い銃を気に入っていて、ライラがほぼずっと活躍してくれていました。
ただ、上記の育成に時間がかかるという話もあって、中盤以降はあまり新規のドールに手を出す余裕はありませんでした。面白そうなドールはちらほらいるんですが、素養を磨き、1時間かけて育成しないとその性能が真に確認できない以上、どうしてもすでに上手く運用できている戦略に固執してしまうところがあります。
ドール入手時にテンプレのドールが手に入ってお試しできると色々試せて楽そうだなとは思っていましたが、成長要素との噛み合いはだいぶ悪そうなので難しいところです。レンタルドールのような形式の方がまだ自然かもしれません。
恐らく、ほかの人のドール育成を観測して、互いに情報交換し合っていく昔ながらの攻略スタイルがだいぶ向いているゲーム性な気がしています。攻略Wikiが作られるタイプのゲーム。
なお、時間がかかるのは悪いことばかりでなく、そうして作ったドールには結構愛着が湧きます。残りターン数オーバーでHPギリギリの中、ダイス5でゴールにたどり着いて作り上げられたドールとか、ユニークボスを3回目に激戦の末倒して急激に成長したドールとか、各々のドールにストーリーが付随されているのが良い。

なお余談ですが、古いドールの記憶が何の役にも立たないのは若干悲しかったので、せめて金策に役立つくらいはしてほしい気持ちはありました。
割とちゃんと頑張って作ったとしても、序盤から中盤、あるいは後半ですら最新ラインに乗ってないドールは使えないので、結局余らせがちです。そこそこ時間をかけていることもあり、かなり勿体ない精神が働く結果となりました。
そもそもお金がまあまあ足りなくなるデザインになっている印象もあるので、ちょっとカバーして欲しい気持ちもあります。衣装を売るだけだとかなり早く限界が来る印象があるので。

そういった過程を経て、ストーリー最終ダンジョンに挑んだパーティーは以下の構成でした。
雑魚の一掃性能が高く、ボス戦でも強力な破壊力を生みやすいライラを軸としたパーティーです。雑魚戦はライラで片づけられる場合はそうして、そうでない場合はジャンヌが被害を抑える方針でした。
パラメータの都合上、ジャンヌとライラのHP差はえらいことになっていたので、ジャンヌに上手く引き寄せられないと事故る恐れはあったものの、ジャンヌがだいぶ優秀なおかげで助かりました。さすが残りターン数ギリギリまで稼いだだけのことはある。
ボス戦ではドロワの手数の多さでデバフをばら撒きつつ、ローズマリーがバフを積んでいく方針でした。ドロワはサブアタッカー的なこともこなしてくれていて、地味に助かる場面も多かったです。回転率だけで見ると、ドロワの与えた毒ダメージの方がライラより上だったかもしれない。

パーティー構成

個人的に一番好きな戦闘システムの話もします。バフデバフ、状態異常をフルに活用できる楽しい戦闘ができます。こちらのデッキ構築次第では、バフを積みに積んで、相手にデバフを与え続けられれば、一撃でボスの体力の5分の1くらい持って行ける楽しいバランスでした。
また、全体を通して、相手の行動をいかに上手く止めて、こちらがいかに効率良く攻撃するかを考えながら進める、戦略性の高い戦いができるようになっています。
ボスが特に顕著で、一部の行動に関してはきちんと動きを掣肘できていないと、高い火力で一気にパーティーが壊滅状態に陥るヒリヒリ感があります。常に守れる状態をキープできていることがかなり重要です。
雑魚戦についても適度に難しく、強いシンボルに軽率に触りに行くと消し飛ばされることもあります。そもそもゲーム性の都合上、雑魚戦はできるだけ被弾しないのが好ましいため、瞬殺するための戦略を練りつつ、カバーとして被弾を最小に抑える退路を確保していく必要があり、また違った面白さがありました。

そして、特にこの戦略性を担保しているシステムとして、状態スロットとその押し出しシステムが挙げられます。このシステムは色々な面においてかなり秀逸なシステムとなっており、殊にこの作品のゲーム性との親和性が異常なまでに高い代物です。
まず、状態を押し出せるという仕組みは、相手のバフを消す手法としてデバフを重ねる手法が提供されていたり、重複を許すことで強力なバフを込めることができたり、連続攻撃スキルの価値を高めたりと、様々な面で戦略性を高めています。
ランダムでスキルが配られるシステム上、どうしても発生するであろうバフスキルの重複を明確なメリットにしている面が特に秀逸で、戦略の再現性のために同じようなスキルで固めることがむしろ推奨され得るデザインとなっています。

また、単純にボスの性能も面白く、それぞれ特色が合って攻略しがいがあります。
個人的に一番デザインとして好きであり、戦っていて面白く、同時に嫌いでもあるボスは木でした。こっちのバフを利用して攻め立ててくるわ、多重攻撃に相性の悪い防御性能しているわで、かなり苦戦しつつも突破した記憶が鮮明に残っています。最後にこちらの主力以外が全滅した状態でとどめの一撃が入ったのはある意味では奇跡に近い。
充分準備したせいか、ストーリー上のラスボスはそれほど苦戦しなかったものの、きちんと形態変化があるのは好きでした。前段をほぼ無傷で倒して、さすがに強くしすぎたかなと思ってからの真打登場はやはり良いですね。

なお筆者は、100階層育成ダンジョンがその1枠で出てきたあたりから10時間近くの育成が視野に入り、クリア後ダンジョンは断念しています。1時間強の育成を繰り返すのはさすがに堪えそうなので。
現パーティーで攻略するプランもありはしそうなので、気が向いた時にでもやる予定ではいます。

全体のシステムと戦闘システムが上手く回るようにできていて、長期的なパーティー構築と短期的な成長戦略のサイクルが良く動いている作品でした。割と大事なところを運に任せているような設計に見えて、その実プレイヤーはだいぶ堅実に立ち回れば運をほとんど気にすることがないあたりも秀逸です。

16. 瓶詰の誕生日

ジャンル 作者
謎解き クリムS
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 2.02 全END

良かった点

  • 緩く暗号解読を楽しめます
  • いざとなれば総当たりからヒントを探れる設計となっています

気になった点

  • 解が一意に定まらなさそう、ミスリードがありそうな問題などがありました
    • ただし、いずれも試行すれば解けるレベルです

レビュー

少し頭の体操をしよう

瓶詰の誕生日は、暗号解読を通して進めていくゲームです。
暗号を解読して必要なアイテムと次の部屋を突き止め、その先で再び同様のことを行う形式を取っています。
解くべき暗号の中には、閃きが必要なものから、ある程度調べることが必要なものまで様々なケースが存在しています。時にはゲーム内を離れてみて、色々なものを駆使して解いていきましょう。

そうして暗号を全て解読し、所定のアイテムを持って最後の部屋に辿り着くことで、開催者の弟の誕生日を祝うことができます。
全ての謎を解き、最後の部屋で盛大に祝いましょう。そこで得られる日記を読めば、あるいはこの暗号解読イベントの背景を知ることができるかもしれません。

それに思いを馳せるでも、暗号を解いて終わるでも、どうするかはプレイヤー次第です。
ひとまずは暗号解読を楽しみましょう。

感想

軽く謎解きができて良いゲームでした。頭を使うというよりは、直感を信じるか調べるかのどっちかの選択肢を取ることが多かったです。
以降は謎解きの話をするので、まだやってない方は見ないことを推奨します。

逆立ちについては、色々逆さっぽいことをして何も分からなかったので、後ろ読みと解釈した上で1-3に行きました。実はこの時点では「をもって1-3へ」までは解読していましたが、Amdzdkeが分かっていませんでした。これは後の問題を解いているうちに、この出題者が「a」の反転を「d」っぽく書いてることに気付いたことで、甘酒とようやく理解しています。後発的な気付き。
個人的にはここが一番の難問で、ヒントを読んでいてもaと解釈せずに反転時のdとpの話をしているのかなと解釈していました。あんまり悩まずに先に進めば、どう考えてもaと解釈しないといけない場面が出てきていたので、さっさと進めれば良かったですね。

また、あかさたなの問題については、右並べか左並べかが不明であり、わをんの扱いも場合によるなあと思いながら解いていました。をの6があることである程度フェアになってる気もしますが、それでもどちらになるかは分かりません。解いていれば分かる話ではあるんですが。
このあたり、探索ゲームでこの辺の謎解きがあるとあいうえお表がどこかにあったりしがちですが、このゲームはそういう知識をゲーム外に移譲する構成なので、この辺の曖昧さは避けられていませんでした。ただ、曖昧でも解けるようにはなっているので、筆者のような解の一意性にこだわる変人以外は気にしないとは思います。

また、謎解きのことは考えなくても虱潰しができるのは面白い仕組みとなっており、その気になれば3分半くらいで全部屋を周れるし、何ならゴールまで行けます。
ここについては持っていくアイテムを謎解きに含め、アイテムの種類を増やすことで総当たりを避けている仕組みになっているのも面白かったです。事実上、答えにどうしても詰まったのであれば部屋の位置だけは分かるのでヒントになります。

物語は軽くホラーというか地獄ではあるんですが、部屋の数が足りないという部分だけ少し解釈に惑っていました。
暗号は確かに5個あり、部屋もまた5個あるので足りないことはないと思うので、個人的にはそのうちの2個をどう調達したかという話なのかなと解釈しました。そして最後の話を察するに、その2つの部屋は両親のものであると結論付けていました。それならば、やっぱりクローゼットは開けるべきじゃありませんね。

17. 魔族倒しFINAL

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG/ADV プルゲーム
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.01 TrueEnd

良かった点

  • 壊し要素もありつつ考える余地のある、プレイヤー優位なレベルデザインとなっています
  • 渾然一体となったカオスな体験ができます

気になった点

  • 相性表の記載がデッキ構築時にもあると有用そうでした

レビュー

迸る思想と安定したゲームデザイン

魔族倒しFINALは、カードを集めて敵と戦うノンフィールドのデッキ構築型RPGです。
ステージの節目ごとに長尺のイベントも挟まれていくデザインのため、アドベンチャーゲームと捉えることもできるかもしれません。

ステージを攻略するためには戦闘を効率良くこなし、敵を上手く倒していくことが求められます。
戦闘はカードゲームのような形式で行われており、自身のデッキに組み込んだカードが勝敗を左右します。カードは敵を倒すことでランダムに選ばれた3枚から1枚を取得できるため、何を選択して組み入れていくかによって戦略は変化します。
回復を主体として立ち回ることもできますし、コストを抑えめにして手数を増やすでも、重いコストの攻撃で一気に仕留めるでも、戦略はプレイヤーに委ねられています。状態異常や相性による弱点も勘案しつつ、戦略を練って上手く敵を倒していきましょう。
また、敵と戦う際は連戦における最後の敵を強力にする代わりに報酬を引き上げることもできます。現在の状況と相談し、できるだけ報酬を増やしていけると後々有利になるでしょう。

そうして敵を撃破し続け、ステージ最後のボスを倒すことによって、シナリオもまた進んでいきます。
このゲームのもう一つの本丸とでも言うべきその物語は、主に主人公の語りという形式で行われます。その語りとイベントから生み出される、余すところなく敷き詰められた思想の発露と奇妙なMVのような動画のコンボにより、未だかつてないような体験が提供されるでしょう。

優秀なカードを多く取り揃えることで、難易度をプレイヤー優位とした安定的なレベルデザインのステージと、圧倒的な混沌に叩き込まれるアドベンチャーパートの対比は鮮明であり、渾然一体とした独自の空気感を醸成しています。
カオスな世界へと足を踏み入れてみましょう。

感想

ここまで問題作というか怪作と言いたくなる作品は他をおいて無いんじゃなかろうかという作品でした。淡々と進むゲームデザインからいきなり繰り出される迫力のある論理展開、そして唐突に流れ出す動画と、あらゆるものが凄まじいパワーを持って迫ってくるような作品です。

作品性は後に話すとして、ひとまずゲーム性について話しておくと、システムとして安定していて、ある程度デッキ構築していく楽しみもあります。
強敵を倒すと二倍の効果が得られるので、できるだけ強敵を撃破しつつ、回復も加味して引き際を見極めるのも大事になってきます。
体力と精神力が分かれているのも面白く、被弾を拒否して強いカードを使って精神力を消費しに行ったり、最後のトドメを弱いカードに任せて温存したり、細かい戦術の立ち回りが効くようになっています。

ただ、この辺の繊細なムーブが必要なのは序盤だけで、ルーナスカーレットを引けると色々考えずに済むようになります。彼女は体力と精神力の双方を回復するので、最後にこれで締めることができれば、それまでのダメージも精神力の消費も無かったことになるからです。
その他にもいくつかかなり優秀なカードがあり、これらが揃ってくると負けるイメージが湧かなくなります。報酬で体力を上げていければより万全で、妙な状態異常を通されない限りはピンチに陥ることすらありませんでした。

ただ、このルーチンが構築された後でも、そこに持っていくまでのカード回しなどの概念は残るため、戦闘はある程度面白さを保ち続けるのが良いところです。
スカーレットに被弾少なく繋ぐためにも、どこで稼ぎ、敵の攻撃のどれを防ぎ、どの状態異常を通すかの駆け引きは依然あります。
特に、状態異常をつけて敵を倒すと2体目にそれが引き継がれる仕様なのか分からない現象を上手く活用するのが楽しく、強力な最終の敵に最初から行動不能を押し付けて場を有利に展開できるようになります。

全体的にプレイヤー有利っぽいバランスに見えるので、この辺の壊れカードも意図したバランスなのかもしれません。必ずもらえるカードも割と強いですし。

なお、相性表については戦闘中表記されているので覚える必要がないと思いきや、戦闘前には見えないので弱点をつく気なら覚えておくのが無難です。デッキ構築する際にも欲しい情報な気がする。
特に序盤は相性次第ではかなり大変なので、覚えておいて損はありません。

では、ゲーム性以外の部分について話します。割と明け透けに話すので、あんまり見たくない方はここで見るのをやめて下さい。隙自語でもあります。
ゲーム内でも明け透けなのでおあいこということで。

まず全体的に整理すると、資本主義社会への怨嗟と、ジェンダー論と、排斥的な集団に対する意見、活力に対する持論、和を以て尊ぶところからベーシックインカムの話につながる、くらいの構成になっています。
そこに遍在するのは競争というものへの強い忌避感であり、なにゆえ最大に繁栄した霊長類ともあろうものが競争で食い潰し合わねばならんのかという協調主義的なところを感じました。

その競争の最たるものである資本主義への憎悪は、その意味では妥当なところだと感じていて、そこから出発したものが共産主義と今日呼ばれるに至ったものへと繋がっていくのかなと思います。
ただし、競争の徹底的な否定は一歩先にポルポトがいたり、別の方向にはキムさんなどの独裁への道が開かれていたり、割と茨の道ではある気がしています。
競争のない世界というのは言い換えると下克上のない世界なので、独裁に都合が良いんじゃないかなと思っています。これを避けるのは富の再分配などの格差是正策だとは思うんですが、それをやれる人材が競争のない世界でどう生まれるのか、あたりに自己矛盾を抱えそうではあります。あるいはプラトンの哲人政治に回帰するべきなのか。
その辺を鑑みると、競争原理を適用しつつ、こぼれ落ちるものをできるだけ拾い上げる現在の仕組みの妥当性をある程度は評価したいなと考えています。塩梅が難しそうですけどね。

ジェンダー論はおおむね体験ベースで語られている印象があり、根拠がよく分からないグラフも出てきます。
原則的には女性が同質性を求め、男性が異質であろうとすることを基軸とし、それぞれがそれらに邁進する競争を嫌っているという印象でした。
これらの競争はモテに繋がっていく、あたりは論理が追えていなくて、そのまま論理を適用すると同質性のある男性、異質な女性がモテそうな気がします。このあたり、自分にないものを求めている、と解釈すべきなのか、反対に女性は異質を求め、男性は同質性を求めるからそれに準拠している、と考えるべきなのかは難しいところです。
いずれにしても、魅力的であろうとする努力というものの存在は分かるところなんですが、筆者個人はここをサボってるのであんまり言えることはありません。
感覚的には競争の行き着く先はルッキズムではないか、という問題提起っぽいなとは思っていて、そこ自体は大きく外していない気はします。努力は認められるべきであっても、それを他者に要求し出すと厳しいことになるので。
競争があくまで自己研鑽に留まるのであればそれは個々人の自由と信条であり、他者をも秤にのせて蔑むのであればルッキズムの発露に他ならないと思うので、要は程度問題かもしれません。あんまり行き過ぎると確かに怖いですね。なお、要は程度問題、便利すぎて議論じゃ使っちゃいけない言葉なんですが、まあこれは語りなので見逃してもらうとします。

排斥的な集団についての意見に関しては、そもそもの発端からしても完全に体験ベースです。
自己を高めるばかりに他者を蔑ろにしているのではないか、競争という場は余所見を許さずに、そこで楽しもうとしてるものを見落としているのではないか、あたりの怒りと解釈しています。
TCGはDMとポケカを多少嗜んだ程度で良く知らないので言及を避けますが、一応ウディコンはプレイヤーとしてちょっとだけ見てきたので、多少話します。
作中でウディタ界隈の部員、という表現が出てきたあたり、ウディコンという場自体をそういった界隈のお祭りと捉えていそうな気がしていて、そうだとすれば割と解釈違いではあります。
ウディコンという場はふらっと出現する新規の方の作品も面白く、ある程度参加回数を重ねた歴戦の方の作品も面白い、結構バランスの取れた場だと感じているので。今後過疎化が進み、ある程度内輪っぽくなる可能性は否定しませんが、現在のところはそこまでの空気は感じません。
なので、排斥するも何もそもそも集団として構成されているものなのかというレベルで疑問には思っています。横のつながりのある作者さんも多数いらっしゃいますが、それはそれとして持ち込んでワイワイやってる感覚が一番近いです。
この作品がウディコンに出て恙なく評価を得て終わるあたりからも察せられる程度に、規約にさえ違反しなければなかなかフラットな場なんじゃないかと思っています。まあ、筆者はここにゲームを出したことがないのでこの感想はまあまあに空虚だとは思いますが。

活力が地球温暖化につながる、あたりは風が吹けば桶屋が儲かる的な意味合いでは間違ってないんだろうなとは思っています。人間の飽くなき経済活動こそが温室効果ガスを生んでいる面は否定できるものではありません。
ただ、これは国家単位、あるいは種全体のレベルの問題なので、個々人がどうにかできるようなものはあんまりなさそうです。
いわゆる持続可能な社会の構築を個々人が目指していき、全体の流れを少しずつ変えていくのが筋が良いんだろうなという肌感覚を持っています。そういう意味ではSDGsは思想自体はそこにいるんですけど、EUの環境ビジネスが絡んでいるせいなのか、揶揄の対象になっちゃう現状はあんまり好ましくないのかもしれません。

和を以て尊ぶ国民性については筆者はだいぶ懐疑的ではあります。聖徳太子の時代からあるそれが論拠の出発点になりそうですが、ルール化したということはルールで縛らねばならないものであったとも解釈できます。性悪説じみてますね。
そもそも平安時代を除いてほぼ戦乱の絶えなかったわが国がそれほど競争しない人種であったのか、というあたりから疑問符が点灯するかもしれません。平安時代ですら都における政治闘争は激しかったようですしね。創作になりますが、ドリフターズでアナスタシアに寝ても覚めても互いに殺し合うことしかしない連中と言われるだけの存在ではある気がします。

そして、そこからつながるベーシックインカムの話も難しいところです。生活保護がかなりベーシックインカムに近い存在ではありそうで、ここが広がった状態をぼんやりと考えるなどはしています。
市場クロガネは稼ぎたいでも取り上げている通り、一律配ることにすれば諸々の手続きが簡素化して良くなるといったメリットもあるので、ある面においては生活保護を超える働きを示すだろうなとは思います。
これは本当にどこかで社会実験でもしない限り成否の分からないところであり、手を出すのはだいぶギャンブル性が高いんじゃないかなとは思います。人間は所与で充分であったときに、なおも求め続けるものなのか、その答え自体は見たいのでどっかでやってくれないかな。

ただ、その前提としてある団結せよ、というあたりは若干主張の中でのブレを感じました。
それを可能とするのは弛まぬコミュニケーションの結実に他ならないと思っていて、そしてそれらは集団に対する苦言と表裏一体なところがあります。
TCGの件でもそうなんですが、集団に属し、集団の中であるいは集団を通して行動するというのは声をかけるといった初手から始まる一連のコミュニケーションから始まるものだろうと思います。
これは筆者の苦手とするところなので良く分かるんですが、コミュニティの輪に入るというのは棒立ちしていれば勝手に入れてくれるものではなく、積極的な行動の向かうところにあるものと解釈しています。
そういう意味では、団結せよというその団結の輪に入るには、前段でそこはかとなく否定している集団への帰属努力が必要になる行為なのかなと感じていました。

後、これは至極個人的かつ論拠のない意見なんですが、何故ネアンデルタール人が滅亡したのかということを引き合いに出す論理は大体疑ってかかるようにしろとばっちゃが言ってました。
あの辺のことは分からないことが多いので、偽を根拠とした推論はどんな結論であっても導くことができるように、あんまり信用できる論ではないんだろうなという印象です。ちゃんとしてたらもっと論拠のはっきりしたところから引用するはずなので。
さらにもっと個人的な話をすると、人間と本能を論じるのも割と変だと思っていて、人間は社会的動物であるという言葉をだいぶ傲慢に解釈したものなんじゃないかとは感じています。
我々はいわば社会性という本能を抱えているだけというか、動物のなす行為を全て本能と片づけているだけというか、そういう傲慢さを感じます。まだ感情と論理と呼んでくれた方が飲み込みやすいです。

唐突にこのゲームの良いところの話をすると、上記で綴ったようなこの作品の主張は、けれど押し付けてくるものではありません。あくまでも作中人物を介した表明にとどまっており、いくつかの例外はあれど、原則的にはそれを否定するものに対する人格的な攻撃はそんなにありません。全体を通して、陽の存在にはだいぶ辛辣ではありますが。
なので、対するプレイヤーもまたそれらの諸問題に対して自己の認識を整理し、こうして己の中にある曖昧な部分を明文化できる良い機会が得られるという寸法になります。
他者からの忌憚ない意見の表明をもって、自分の意見を見つめ直せる良い機会になる、そういった作品です。みんなも5000字くらい感想を書こう。

18. 赤の騎士と青の魔法使い

ジャンル 作者
RPG ろくぞう(n2_063)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 1.07 全END/イベント

良かった点

  • 人間らしいキャラクターによる良いドラマ性があります
  • イベント色強めでRPGを楽しむことができます
  • ゲーム性に緩急が付いていました

気になった点

  • サブシナリオの謎解きがやや理不尽です
    • ただしその分、解かなくても影響がないようになっていました
  • 人狼化の戦闘がやや大味すぎるように感じました
    • あるいはアンが役立たずに過ぎるように感じました

レビュー

シナリオメインのRPG

赤の騎士と青の魔法使いは、探索要素やイベントが豊富なRPGです。
ゲームの進め方は、ダンジョンで戦いを潜り抜け、階層ごとに発生するイベントで物語が進行していくオーソドックスなものとなっています。

攻略にあたって避けては通れない戦闘はシンプルでありながらも、多勢に無勢となると攻撃の受け方を考える必要のある難易度となっています。敵の種類やその行動を勘案し、上手く受けるか攻めで頭数を減らすかを適切に選べなければ、集中攻撃を受けて敗北を喫することもあります。
ゲームが進行して主人公たちが充分強くなるまでは、彼我の戦力差を見極めて気を付けて戦う必要があるでしょう。

そして、このゲームの主眼は、そうした戦いを経て進行していくシナリオにあります。
主要なキャラクターたちが織り成す物語はドラマ性のあるものとなっており、ゲームの進行を強く牽引していきます。加えて、物語における関係の変化はゲーム性それ自体にも影響を与えていくため、相互作用的なゲーム進行を味わうことができるでしょう。
なお、シナリオは過去作の続き物という形を取りますが、必要な情報はあらすじとして開示されるため、この作品から始めても問題はありません。

また、メインシナリオもさることながら、サブイベントが充実していることも見どころの一つとなっています。
王都の様々な場所で巻き起こるサブイベントは推理要素や探索要素が強めとなっており、王都中を奔走してその解決を目指すことになります。
メインシナリオの箸休めに見てみるのも良し、発生した瞬間から挑むも良し、自分の好きにゲームを進めていきましょう。

感想

RPGって別に戦闘だけが主役じゃなくて、イベントを通した体験もまた本願だよね、という気持ちにさせてくれるRPGです。
メインルートでも戦闘が絡まない長期間のイベントがあり、探索っぽい要素と戦闘で進んでいくダンジョン要素が交互に発生します。
サブイベントもそこそこあり、王都を隈なくうろつくことで進行していくこともできます。メイン進行やエンディング分岐に影響しない設計なので、本当に好きな人だけリーチすれば良い設計なのも良いところでした。

ひとまずシナリオ面の話をします。前作の内容があるらしいとはいえ、ある程度のあらすじと情報の開示は行われるので、それほど気にはなりません。
内容としては、かなりちゃんと人間ドラマを描いていて、だいぶ人間らしいキャラクターたちの物語を味わうことができます。特に主要キャラクター群の人物描写がだいぶ人間臭いことが作用して、ドラマ性が上手く演出されていました。

エンディング分岐の内容も含めて、最後どうなったと解釈すべきかは人によるところがありそうには感じます。筆者個人の感覚的には、人格の統合というか受容が行われた形なのかと思ってはいました。
胡散臭いおっさんの言とはいえ、一応人狼病は治った扱いになっているので、それは人狼ではなくただの彼という状態に落ち着いたのかなという解釈です。治ったことを全面的に信用した上で、ラストバトルの演出を加味した考えなので、どの辺の情報に信頼を置くかで解釈は変わりそうですね。

後はサブイベントなんですが、全体的に難易度の高い謎解きになっています。
というか、ボールス氏殺害は本当に分からなかったのでヒントを全部見ましたし、見た上で何も分からないので全探査しました。クリアした今でもピンときてません。何ならベールしていることが不審でない占い師が犯人なのかとにらんでました。
超甘党くらいの癖なら町中のそこかしこにいそうなので、せめてボールス氏がその人物を飲食店で見つけたと思しき情報くらいはないと一意に定まらない気はします。見逃していただけであったのかな。
また、運が悪くて癖の強いおじさんも、最初は迷宮でずっと魔物に襲われていたハゲだと思っていました。運悪いし口調の癖が強い。

残りの戦闘や探索パートについては、途中まではそこそこリスクのある戦いができます。ただ、人狼化が入ったところから、割と大雑把なバランスになっていきました。
作中でも言及されるんですが、ランダムで出てくる人狼頼みの戦いにどうしてもなりがちで、ひたすら防御をし続けて人狼待ちにするのが最適解になってきます。
こうなると、せっかくアンが仲間になっても邪魔な印象を受けてしまいました。正直、超回復してくれていた時の方が役に立ちます。ただ、そこはシナリオ側の要請で氷を解かすフェーズを作ることでちゃんと意味を持たせているのが上手いところでした。RPG的には弱くなりましたが、必要な行為ではあるという納得はできます。

個人的に好きなところとしては、後半のステージをぶっ壊して進められるところです。
最初は少し入り組んだ洞窟を緊張感をもって敵を倒しながら進んでいたところを、後半は敵を無視して掘り進み、敵は人狼化でなぎ倒して進んでいくことになります。この緩急が良い。
そうなってくると、人狼化の導入で大雑把になる戦闘も緩急の一つとしてみなせるのかもしれません。

しかし、自由の民、その思想だと子孫繁栄しなさそうなんですが、どうやって存続してきたんでしょうか。
それとも存続は半ば絶望的で、ゆるゆると絶滅に近付いているんでしょうか。何となく後者な気もします。

19. 鶏空を舞う

ジャンル 作者
シューティング スミスケ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.03 クリア

良かった点

  • 付かず離れずの空戦という独特なシューティングが楽しめます
  • 緩いグラフィックと世界観がユニークでした

気になった点

  • 被弾や攻撃のエフェクトが分かりにくく感じました

レビュー

感じるままに逃げ、感じるままに撃ち落とせ

鶏空を舞う は、回避を主体とした空戦を行う独特なシューティングゲームです。
移動と加速を駆使して敵機の攻撃を凌ぎつつ、全機を撃ち落とし切るとステージをクリアしたことになります。

敵機を安全に撃墜していくには、自機と敵機のスペックを大まかに把握することが重要です。
敵機は一定範囲内に入ると迎撃を始め、その範囲から更に近付くと自機に弾が届いて被弾してしまいます。このため、無傷で仕留めるためには、付かず離れずの距離を保ち、相手の弾が切れたタイミングで攻撃を仕掛ける必要があります。
なお、プレイヤーが駆る機体もまた一定範囲内に入ると自動で迎撃を行うものとなっているので、これらの駆け引きは移動と加速による彼我の距離調整だけで成り立っています。加速はリソースを消費するため、緊急脱出や引き離しなどの使い所を上手く見極めていきましょう。

そうして敵機を撃墜してステージを攻略するごとに、自機のパラメータを強化することができます。
速度を上げて回避しやすくするのでも良いですし、攻撃範囲を広げてより安全に戦うことを指向しても構いません。徐々に難易度の高くなるステージに対応するためにも、自分のプレイング、あるいはステージの傾向を見極めて、より良いカスタマイズを目指しましょう。

そうした独特なゲーム性に加え、空戦を彩る緩く特徴的なグラフィックもまた魅力の一つです。
その緩い世界観とグラフィックの中で、苛烈な攻撃を凌いで敵機を撃墜していきましょう。

感想

どうでも良いことから感想を始めるんですが、最初はこのタイトルを「けいくうをまう」と読んでいました。しかし、タイトルを見た限りでは「にわとり、そらをまう」と読みそうだなと薄々感じて、エンドロールで確定するという運びになりました。よく考えたら鶏空なんて言葉は造語であっても意味分かりませんね。鶏に毒されていました。

閑話休題。シュートしなくて良いシューティングというかなり特殊なタイプのゲームです。かといって、全部オート追尾弾で回避に集中するタイプでもなく、攻撃範囲と起動範囲が事前に双方定まっていて、そこの出入りによるヒットアンドアウェイを繰り返す、というアクションっぽい仕上がりになっています。
ただ、筆者がこれに気づくのは割と遅れていて、ステージ2の途中でうっすらと把握し、最終ステージ間際でようやく戦い方をマスターしました。遅すぎる。ステージ1ではアクセルで逃げれば攻略できてしまうこともあって、最初はそういうゲームと勘違いしていて、ステージ2でひたすら逃げまくっていたあたりからおかしいとようやく感じました。不覚。

ただし、ルールが分かっているからといって簡単なわけではなく、相手の攻撃範囲も索敵範囲も分からないどころか、こちらの攻撃範囲すらも表示されません。なので、なんとなくここまで近付いたら撃ってきそうだなあたりへのチキンレースと、その時の距離を感覚的に把握する能力が必要になってきます。
パラメータからして具体的な数値は全く登場しないので、全てがフィーリングで完成されているようなゲーム性でした。考えるんじゃない、感じるんだ、を地で行くゲームです。何となくこんくらいの距離で加速ボタンをこれくらい押してると良い感じに空撃ちしてくれる、を探りましょう。

グラフィックについてはかなり良く、緩い世界観と無骨な戦闘機が共存しています。かなり唯一無二な雰囲気が醸されていました。
個人的に好きなのは撃墜された自機を必死に修理して直す絵面で、連打して必死に耐えようとする自分とシンクロするのが良かったです。連打しつつ頑張れという気持ちになりますね。
後は、映画の最後みたいなエンドロールの終幕がだいぶ良くて、雰囲気が最後にビシッと締まったような印象を受けました。演出も含めてそういう銀幕っぽさがすごい。

ただ、エフェクトとSEがどちらの攻撃結果であり、どちらの被弾結果なのかが一瞥して分かりにくいのは気になっていて、ここの分かりにくさが仕組みの把握の阻害をしていたような印象を受けました。
細かいところだと攻撃エフェクトが前方にあるのに、システムの都合上大体後ろに攻撃することになってしまうあたりの不整合も気になります。機銃は戦闘機なら下にありそうなイメージもあるんですが、元ネタが違うんでしょうか。

個人的には、割と変わったシューティング体験である上に、その要素一切がパラメータっぽくなくフィーリングで作り上げられているというのが人によってはとっつきやすく、人によってはとっつきにくいものとなっているんだろうなとは思います。
数値に安心感を覚える筆者のようなタイプは明示されていない仕様を探ろうとして変に苦労すると思うので、本当に何も考えずに感覚的にプレイするのが良いのかなと感じています。最後はちょっと苦戦するかもしれませんが。

20. 装甲断姫_肆_デュアルタスク

ジャンル 作者
マルチタスクSTG/計算 水弐
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10分 1.0 1397/1230/1242/422

良かった点

  • 真にデュアルタスク能力を問われる面白いゲーム性でした
  • 最高難易度が絶妙に難しいです
  • 左右に表示する画面を切り替えられる親切さがありました

気になった点

  • 特にありません

レビュー

マルチタスク適正テスト

装甲断姫_肆_デュアルタスクは、一度に二つの画面で別々のゲームを行うデュアルタスク体験型ゲームです。
それぞれを並列で行うか、順番に対応していくかはプレイヤーに委ねられています。

片方の画面で行われるのは簡単な計算です。四則演算の問題と、その答えの選択肢が表示されるため、これを矢印キーで回答することになります。
もう片方の画面で行われるのは、シューティングです。マウスで射線を決めてからクリックで射撃し、敵を撃ち落としていくことになります。

それぞれのゲームはシンプルなものであり、単独でやればそれほど難しいものではありません。しかし、この作品ではこれを同時に、かつ時間制限内にクリアすることを目指します。
計算を頭の端でやりつつシューティングするにせよ、計算に集中してシューティングを大雑把にやるにせよ、あるいは双方のバランスを上手く取るにせよ、情報を並列的に処理する能力が要求されます。

難易度は四段階あり、最後の難易度は中々の並列処理能力が問われるものとなっています。また、スコアを記録することもできるため、最高難易度で物足りない人はより高みを目指すことも可能です。
デュアルタスクに挑み、自らのその適正を知っていきましょう。

感想

マルチタスクの難しさと、慣れると割とできるなという感覚の双方を味わうことのできるゲームでした。
この手のゲーム性だと、片方のゲームがもう片方に影響を及ぼすような形式にしたくなりそうなところを、完全に分離しているあたり、ゲームのテーマが首尾一貫しているのが良いところです。本当に本当のマルチタスク能力が求められます。

筆者の初期の基本戦略は、数字を計算しながら目の端でシューティングするものでした。計算は見ないと始まらないので、目線を数字側に寄せつつ、シューティングをある程度大雑把な狙いで突破する作戦です。
この戦略はシューティングの難易度が低い内はある程度成立するんですが、からいのシューティングになると破綻します。からいにおけるシューティングは、正直シングルタスクでやってもクリアするのが少々難しいレベルであり、片手間に雑にやってクリアできる類のものではありませんでした。
とにかくこの鈍足弾、手前に来ないとほぼ当たらない性能に感じています。もしかしたら出現を目の端で捉えて逆サイドに当てるゲームなのかもしれませんが、これはこれで反射神経が問われます。

このため、からいだけ戦略が異なり、シューティングの比重をかなり上げた上で、空いた時間で問題に意識を割く配分となりました。それでも問題が先に終わるレベルではありましたが。
シューティングをこなしつつ、脳みその空いたスペースで雑に計算を回し、適当に選んでいくのは中々マルチタスクをやっている感覚があって良かったです。計算がだいぶ雑に行われているので、たまにミスるのはご愛敬。

また、個人的に好きなところとして、左右画面の切り替えが存在するところも挙げられます。筆者はデフォルトよりも、左に計算がある方がやりやすかったのでそうしたんですが、そういうことに気が回っている細やかさが嬉しいところです。
なお、左右逆にした理由は、筆者は右手にマウス、左手でキーボードを操作していたので、それぞれに対応する画面が同じ方向にある方が対処が楽だったためです。位置が逆だと脳みそが定期的にバグります。

後は、世界観も何もない中での説明だけのキャラクターがいるというのも良いです。これは本当に何もなく、からいをクリアしても特に何もありません。真にフレーバーという感じです。もしかしたら作者記録を抜いたら何かあるのかもしれませんが、この感じなら何もなさそうだなとも思います。

なお、筆者はシングルタスクも試してみたんですが、かなり優位にスコアが落ちていったので、まず間違いなくマルチタスクの方がやりやすく感じるタイプの人間でした。皆さんはどうですか。

21. ジャンクエデン2

ジャンル 作者
ロボアクション たがや
プレイ時間 プレイVer クリア状況
7時間 1.20 クリア

良かった点

  • 良いゲームサイクルの中で熱中できました
  • 豊かで広大なフィールドを探索していく楽しさがあります
  • 機体をカスタムして自分なりのビルドを組み上げることができました

気になった点

  • 収集物の管理、展示がやや手間でした

レビュー

ジャンクを組み上げ自分なりの機体を動かそう

ジャンクエデン2は、自分でカスタマイズした機体を駆って敵機を倒していく、オープンワールド2Dロボアクションです。
広々とした世界を縦横無尽に駆け回り、ミッションの成功を目指すことになります。

ミッションのクリア条件はシンプルで、エリア上方にあるボスの撃破となります。
しかしエリア上方は様々な機能により固く守られており、そのまま向かって攻略するのは至難の業です。この機能を無効化あるいは低減させるためには、四隅にあるエリアのボスと向き合い、そこにある装置を破壊する必要があります。
腕に覚えがあるのであれば、すぐに上方のボスに向かっても良いでしょう。しかし、ひとまずは四隅のボスを倒すことを目標にするのをお勧めします。

四隅のボスを倒すには、まずそこに至るまでのエリアを探索していく必要があります。
広々とした世界には敵の拠点と、ワープポイントにできる塔が点在しています。基本的には道なりに進んで敵の拠点で戦闘を繰り広げつつ、ワープポイントを増やしていくことになるでしょう。
さらに、敵機を撃破することで手に入るパーツを使えば、自機を自分なりにカスタマイズすることもできます。攻撃手段や移動性能、機体のスペックを見つつ、お気に入りのパーツを使って優秀な機体を作っていく楽しさがあります。

ただし、探索中は回復の手段がないため、連続して戦い続けると機体は疲弊していきます。大きく消耗している場合は、リスクを鑑みて早めに自分の拠点に戻るのがお勧めです。
そうして拠点に戻ったら、時間経過に応じて機体を回復させることができます。この時間を利用し、手に入れたパーツを確認して吟味し、獲得した収集物を展示するなどをやっていきましょう。そうしている間に回復は終わり、また出撃する準備が整います。
この探索、戦闘、帰還、吟味、出撃のサイクルが心地良く、気付くと延々とプレイしてしまうこと必至です。

そうして何度も出撃し、エリアボスに辿りつくころには、自身の機体もグレードアップしていることでしょう。しかし、それでもボスとの戦いは苦戦すること間違いありません。機体の力とプレイヤースキルをフル活用し、上手く勝利をもぎ取っていきましょう。
場合によっては、次に出撃する機体をあらかじめ別に用意しておき、交互に間断なく出撃することで相手の体力を削り切るという手法も取れるかもしれません。
どちらにせよ、ボスを倒すには入念な準備が必要です。敵機を倒しパーツを集め、良い機体を作り上げて挑んでいきましょう。

極めて広大ながらエリアごとに特色があり、起伏のある地形を巡る探索の楽しさ。飛び回り続けて敵機を打ち倒していく戦闘の楽しさ。戦いの中で得られたパーツを上手く組み合わせて戦術を練る楽しさ。これら全てが組み合わさり、ゲームループの中に組み込まれることで、終わりまでノンストップで楽しめる作品となっています。
自分なりの最強の機体を作り、敵機や強力なボスに挑んでいきましょう。

感想

めちゃくちゃ広大な空間をひたすら巡っているという体験は、割に飽きやすそうに感じるんですが、このゲームでは全然そういう感情を抱きませんでした。何か特殊な味付けがしてあるというわけでもないので、本当にゲームサイクルがものすごく綺麗に回っているということの証左なのだと思います。
この規模の作品で途切れることなく遊び続けてしまう牽引力を最後まで保ち続けているというのは、かなり得難いものがあるなと感じていました。めぐめぐの作者さんなのでさもありなん。

ひとまずアクション面の話から始めるんですが、多分丁寧に立ち回るにはある程度のプレイヤースペックが必要で、ごり押しで行くならジャンプと移動性能と誘導ミサイルがあればなんとかなります。
悪条件でなければ、おおむねプレイヤー側の方が強いこともあり、とりあえず一機から二機倒すことを目標に世界をうろつくレベルのバランスなんだろうなと思っています。

ただし、ボス戦となると様相が変わり、ちゃんとアクションするか、ちゃんと準備する必要が出てきます。
というのも、ボスは明確に自機よりスペックで優れているので、ちゃんとアクションして削る必要があるからです。アクションで足りない分は、ボスの弱点を突くパーツを集めたり、自機を増やしてゾンビアタックし続けたりと、そのボスに向かうための準備で補う必要があります。
アクションがそこそこ苦手でも、最悪ゾンビアタックでなんとかなるバランスなのは、そういう意味でもありがたかったです。ゾンビせずに倒せたボスは、たしか左上だけでした。

ボス戦について、個人的な印象としては、左上 < 右上 < 左下 < 右下くらいの難易度に感じていて、右下に関してはラスボスより苦戦しました。
左上は避けることが容易な上に固定しているから楽で、右上は単体性能がそこまで高くありません。左下は大量の雑魚を上手く避けて捌ければなんとかなります。一方で、右下は未だに攻略方法が定まっていません。弱点を突こうにも三種の敵がいて、高速で動き回るから一体一体に狙いを付けに行くのも難しく、多対一の常としてみるみるうちにこちらが消耗していきます。
結局ボスを打ち破ることなく、扉を打ち破って無理矢理クリア要件だけ満たしました。これが通るのもありがたい。

ラスボスについても割と強いんですが、そこに挑むまでにはある程度整っているので、マシンガンを積んだ四脚足を5機用意する力押しで突破しました。倒しても倒しても似たような機体が襲ってくる様はどっちが敵か分かりませんね。こちらは国を滅ぼそうとしてますし。

アクションついでに武装の話もしますが、個人的にはラスボス戦でも使っていたマシンガン系と四脚足が好きです。サブは誘導性能が高いのがお気に入り。
避けようとすると相手への射線も切ることになるので、自然と数撃ちゃ当たる方式にシフトしていきました。また、基本的にずっと移動性能が低い状態で探索も戦闘も進めていたのもあって、終盤に四脚足を手に入れてぬるぬる動けるようになるのが気持ち良すぎてハマってしまいました。四脚足最高。
それでいて、四脚足は割と厄介な慣性が付くので、めちゃくちゃ強いというわけでもないのも良い塩梅でした。慣れないと戦うこと自体が割と難しいです。

さらについでに捕虜の話もするんですが、最終的には捕虜5人の構成でしたが、ほとんどメカニックとして運用していました。
二機目を用意してしばらくは相棒のネコを僚機に暴れまわっていたんですが、ボスに挑んでいる最中にネコがそこそこ瀕死になって命からがら帰ってきたあたりで慎重になり、ある程度制御できる探索の範囲内以外ではメカニックに回ってもらうことにしました。いのちだいじに、です。
一応二人目のパイロットであるマンドラゴラも育成し、ネコの体力が充分でない時は二号機として運用していましたが、大体のケースでは幽霊二人に混じってメカニックに従事してもらっていました。
おかげで我々の部隊の回復能力は高く、ある程度のボス相手であれば二機用意すれば充分ゾンビアタックを仕掛けられるレベルとなりました。
しかし、ネコ、マンドラゴラ、幽霊x2と、明らかに変な部隊になりました。最後の最後に滑り込みで入ったウルファールさんにはさぞ肩身の狭い部隊であったことでしょう。プレイヤーキャラを魔法使いっぽい見た目にしていたのもあって、実験動物を使役しているようにすら見えていました。

閑話休題。続いてフィールドについて、冒頭でも触れましたが、本当に広いです。ちょくちょく戻りながら進めていたとはいえ、10日目達成時点でも3ボスの所に行くのが精一杯でした。道なりにある程度埋めながら進めていったとはいえ、だいぶボリュームがある印象です。
しかし、ただ広いだけのオープンフィールドではなく、起伏を設けていたり、場所によっては見目が変わっていたり、穴が開いていたり、川が流れていたりと、少しずつ変わっていく地形の影響もあってか、全く間延びせずに巡りつくせました。

また、プレイ感が間延びしないのには、恐らくゲームサイクルの秀逸さもあります。
よほど上手く立ち回らない限り2機も倒せば帰還するバランスのため、ずっと徘徊しつくすということがまずありません。適度なタイミングで必ず戻ることになります。加えて、帰還すると必ず回復のフェーズがあるため、この時間を利用して色々やることになります。
それは収集物の配置であったり、獲得物の吟味であったりします。配置物をとりあえず適当に並べ、装備の数値とにらめっこして変えて、また出動です。この時、大体装備が換装されることが多いので、新しい装備を携えてまた新鮮に出発できます。
このサイクルが非常に良く回っており、少なくとも全換装を終えるまではこのサイクル下の中で探索と接敵を楽しむことができます。

加えて、このサイクルがある程度落ち着いてくると、今度は二機目の作成や、捕虜の獲得が大体のケースにおいて発生します。
捕虜は上手く使えば僚機として戦闘をサポートし、さらに探索の幅を広げてくれます。そうでなくても、二機目を作成できれば、回復のフェーズをある程度飛ばしてすぐに探索に移ることもできます。
やることがある程度固定化したところに、今度はそのサイクルをより早め、より探索に重きを置ける状況へと進化するこの仕組みのおかげで、ある程度上達してきたところで探索をハイペースで楽しんでいけるようになっています。

最初からこのペースで探索できると情報量が多すぎて疲れますし、かといって最初のサイクルだけ推し進めるにはいくらか冗長です。このバランスの加減こそが、ゲーム全体を通じて間延びを生まないレベルデザインに強く寄与しているのではないかと考えていました。

個人的には、配置物のレイアウトをもう少し凝りたいところだったんですが、収集物の展示周りがやや面倒だったので手を付けていませんでした。
ただでさえ時間に追われる設計なので、展示に割いている時間があまりなかったのも寄与しています。時間停止して飾りつけタイムになっていたら、もう少し凝ったデザインにしていたかもしれません。
もっとも、会話と同じように時間停止すると不具合の温床になりそうですし、前述するサイクルの内、回復フェーズでやることの一つでもあるので、時間経過が存在する理由も分かります。難しい。
後は、展示物がらみでポスターを張り付けられることが途中まで良く分かっていませんでした。厳密には、置けそうなボタンがあることまでは認識して、実際にボタンを押してみたんですが、微妙に置き方が違うので失敗して以降しばらくノータッチだった、というものです。
平たく言えば、サブ要素に留まる展示物くらいにしか不満を覚えない程度に、ゲーム本編はずっと楽しめたということです。

自機をカスタムして敵機を撃破していくサイクルをひたすら回し、少しずつできることが増え、探索してきた領域も広がっていき、関門としてのボスもきちんと配されている隙の無い作品でした。今にして思えば、四方向ボスといい、ボスを倒さなくても厳密には良いことといい、割とBotWっぽいかもしれません。次作があれば、さらに空島と地底が拡張されるんでしょうか。地底っぽいのは既にありますが。

22. 雪山道

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG WAIT
プレイ時間 プレイVer クリア状況
9時間 1.02 クリア

良かった点

  • ゲーム全体を通しても各階層においても秀逸なレベルデザインでした
  • 戦略性の広がりとボス攻略に向けた対応が綺麗に符合します
    • 複数の手札から成る様々な戦略を組み立てる楽しさがあります
    • 各階層のボスもまた個性的なデザインでした
  • 軽妙な会話劇で描かれるキャラクターが魅力的でした

気になった点

  • 10階層までの設計はやや容赦がありませんでした

レビュー

多様なボスを多様な戦略で打倒し、雪山を歩もう

※この作品は、ウディコンのエントリーから外れています。

ノンフィールドRPGというゲームジャンルの多くは、リソース制約の中で即応的な戦術をもって対処していくゲーム性となっています。
そのやや強い制約の中でプレイヤーの行動を変容させ、バリエーション豊かな戦略を取らせて楽しませるのは難行であり、それを成した作品は名作と言って差し支えないでしょう。
雪山道は、そのゲームシステムとレベルデザインの力によりこれを成立させた作品となっています。

このゲームにおいて雪山を登り、踏破していくためには、他のノンフィールドRPGの例に漏れずリソース管理が重要となってきます。
リソースの中でも、特に重要なのはHPです。戦闘を重ねて経験値を貯めるとレベルが上がり、最大HPが増加していきます。そして、この最大HPを消費することで、ステータスを上げることができるようになっています。
当然、耐久を落としてでもステータスを優先するか否かの判断も重要となりますが、ステータスを上げるべきタイミングの判断もまた重要です。最大HPを消費しても残りHPは減少しないため、全回復の直後などが狙い目となります。機を伺いつつも、適切なタイミングを計る駆け引きを楽しんでいきましょう。
また、経験値目当てに敵と戦いすぎると消耗し、ゲームオーバーのリスクは飛躍的に高まっていきます。強力な敵や厄介な敵と対峙した際は、時には逃げることも重要です。
HPを軸にしたリソース管理をもとに、こうした様々な判断をこなして上手く戦っていくことが肝要になるでしょう。

しかし、リソース管理だけを気にしていては、雪山の頂上に辿り着くことはできません。
階層を進むにつれてプレイヤーは最大HPを含めた様々なリソースを消費し、魔法という新たなダメージソース、スキルという拡張性、さらにはパッシブスキルから特殊な効果まで、様々な選択肢を得ることになります。
これらを吟味し、現在のリソースの範囲で適切に構築することができなければ、道中の雑魚にすら苦戦を強いられることでしょう。いわんや階層の最後にそびえ立つボスに勝つことは困難です。
現在使える手札を最大限活用し、時にはメタをとって戦闘を優位に進める戦略を考えていきましょう。
これらのシステムから成る戦略性の広がりと、それを余すところなく活用して挑まねばならないレベルデザインは極めて秀逸なものとなっています。階層を進むごとに様変わりしていく敵のスタイルに翻弄されつつも、その攻略を楽しめること請け合いです。

加えて、そういったシステム面も秀逸な作品ですが、シナリオもまた良い作品でもあります。
超然としつつもどこか人間らしくもある魅力的なキャラクターたちによる、軽妙洒脱な会話劇によって構成されるシナリオがテンポ良く進行していきます。雪山の激しさや回想の場面を強く印象に残すスチル、それらを効果的に使いつつ展開していく世界観、キャラクター同士の関係性、それぞれの魅力は雪山を歩む原動力の一つとなるでしょう。

リソース制約の中での組み立てと戦略の幅広さを両立させたシステムに加え、それを十全に活かすステージ設計により、最後まで試行を楽しみ続けられること間違いない作品となっています。
是非とも雪山の登頂に挑んでみてはどうでしょうか。

感想

端的に言うと好きな作品なんですが、感想として文字に起こすとあんまり芯を食った感想にならなさそうな気配も感じています。
何が好きかを表明するだけの文章にならないように、とりあえずはゲームシステム、シナリオ、そしてレベルデザインに触れることで体裁を整えていこうかと思います。

ゲームシステムについては、オマージュ元らしい雪道を遊んだことが無いので確かなことは言えないんですが、とりあえずいくつかの点を置いておけばまっとうにノンフィールドRPGです。
いくつか得られるリソースを管理し、その時々の戦闘を上手くいなし、都度待ち受ける障害たるボスをどう攻略するかを考える体験はオーソドックスなものになっています。このおかげで、基礎要となるところはかなり太い柱によりできている印象があり、面白さの強度を上げています。ありていに言えば、ある程度は巨人の肩に乗ったデザインです。

しかし、ただありふれたリソース管理体験に留まらせず、それをよりユニークなものへと昇華しているのは、魔法を始めとしてゲームを進行するにつれて増えていく変わった手札の数々です。
ノンフィールドRPGはリソースで殴り合うゲームなので、ある程度まで進むとやることが固定化されるきらいがあり、その前に終わらせるか、何かアクセントをつけて延長させるパターンが割と多い印象があります。
この作品は後者の極致とでも言うべきものであり、先に進むにつれて増えていく手札と付き合い、少し変わった思考を随時要求されつつビルドを進めていくことになるため、常に変化を楽しむことができます。なお、これは後述のレベルデザインによっても補強されることなんですが、ひとまずは割愛します。

オーソドックスな殴り合い、MPと捏造MPを駆使して安定したダメージソースを稼ぐ魔法、SPを消費して物理にバフを乗っけるスキル、あるいは優秀なパッシブスキルの数々から、EPを消費する特殊行動まで、広がっていく選択肢に目を通して戦略を組み立てていく楽しみがあります。
やれることがとにかくどんどんと増えていくので、色々と組み合わせたり、その時々の敵に向けてチューニングしたりと常に考えて試行していく体験が用意されていました。拠点でおおよそのポイントをいくらでも振り直せるのも非常に良く、カジュアルにいろんなビルドを試して挑戦することができました。

試すという観点で言うと、攻撃性能やスキルの詳細について、ある程度は説明しつつ、ある程度は省略するという設計もまた絶妙な塩梅で完成されています。全てを説明すると試行錯誤の意識を削ぎ、説明しなさすぎるとそもそも試行錯誤もできないんですが、その中間択を綺麗に突き抜けた設計となっていました。
例えば魔法を得られた時、この作品では魔法のダメージ計算はある程度予測を付けて行い、その結果を元に効果を推定して効果的な対象を考えることになります。これを序盤で積み重ねていた経験があればこそ、中盤から終盤にかけての敵に対して魔法を使ってみるアイデアが手の届くところにあるという寸法です。
説明の省略をもってプレイヤーに学習を促し、それにより思考の中に選択肢を住まわせる手腕がとにかく絶妙な作品だと言えます。

リソース管理の中で行われる豊富な手札からの構築、その構築を自然に行わせる省略の妙、それをもって己から発する戦略性の広がり。
雪山道というゲームのシステムが持つ裾野はあらゆる挑戦を受け入れてくれる度量があり、その中で試行錯誤をのびのびとすることができるようになっています。

続いてシナリオ面の話になるんですが、ここは完全に好みです。筆者は、無駄っぽい話を織り交ぜながら軽妙に会話が進んでいく会話劇を好むところにあるので。全体的に見ると断章を繋いで会話のみで世界観からキャラクター性まで描写していくタイプなので、そういったものが好きな人は間違いなく好きだと思います。
言い回しが全体的に上手いのも良いんですが、それ以上に断章として抜き出す会話の流れが良くて、全体を通せばかなり少ない会話量に感じるんですが、各々の性格や関係性の変化から、それぞれの妙な歪み方まで綺麗に描写されています。

後は、主人公含めて周りがまあまあに変人でありつつ、きっちりしたところでは常識人の顔を見せるバランスも良いところです。魅力を感じる偏りを見せつけつつも、人間として外れすぎない良い塩梅の描写によって、人間っぽさとキャラクターとしての魅力が両立されています。人間と呼んで良いのか分からない登場人物もそこそこいて、そこは神性と俗さが共存しているあたりも良い。

また、シナリオ中に度々差し込まれるグラフィックについても、この良い意味で簡潔と言って差し支えないシナリオ性にマッチしたものとなっています。テンポ良く進んでいく物語を止めることなく、その場において印象に残る情報に先鋭したスチルは会話劇同様に軽妙に、しかして強く心に残るものです。
後は単純にレクサールが可愛い。

そして何よりも、終わり方が秀逸であり、安寧にいないというか、心の半身が常につんざく世界の天辺にあるあの空気感は最高と言って良いものでした。
願わくはAnother行きたかったんですが、筆者のプレイヤースキルの都合により断念しています。その先にある別の可能性を覗きに行きたい気持ちはあるので、ちょくちょくチャレンジはしようと思います。
しかし、掲示板を見てたら縛りプレイじみたクリアしてる人もいるので世界は広い。

最後にレベルデザインの話もします。システム設計が抜群に良いのは前述した通りなんですが、これを補強するレベルデザインの良さもあって、このゲームの体験はより強固なものになっているという面があるように思います。
大枠におけるゲーム設計全体におけるレベルデザイン、そして階層ごとのテーマに沿ったレベルデザインのどちらも秀逸なんですが、とりあえず前者について触れます。

このゲームはおおむね、10階層までがチュートリアル、18階層までがボスチュートリアル、そしてラストバトルに向かうという構成に感じていました。
特に10階層到達にあたっては、リソース管理の殴り合いから魔法を習得した別次元の戦略の広がりをマスターしないと攻略できない難易度になっています。後々9階層にナーフが入ったらしいので今そうなっているか分かりませんが、少なくとも筆者のプレイタイミングではそういう設計でした。
なお、魔法無しで突破していた筆者はここでつまずいたので再走しています。
これは、ともすればスパルタと言って良いレベルの設計なんですが、これのおかげでこのゲームは多様な戦略をとって幅をもって戦うゲームということを叩き込まれます。少なくとも第二の札を持っていないと、まともな勝負にさえならないこともあります。
この10階層までの道筋は、このゲームにおける表明のレベルデザインであり、戦略の道筋を提示するものとなっています。若干選別のレベルデザインに片足を突っ込んでいる感じもしますが、その辺は9階層のナーフで緩和されているかもしれません。

10階層へ到達した先に待ち構えているのは、これまでのリソース管理による切り詰めた戦いから一転して、1階層ごとに全力を出せる設計に切り替わります。同時に取れる選択肢の広がりの可能性もまた提示されることもあり、切り詰めから解放される安心感も得られます。
そして、Anotherを目指すならともかく、本質的には負けても問題ないデザインに切り替わることで、ここからは攻略に向けたレベルデザインに変化していきます。10層までの場当たり的故に限られた戦略性から脱し、より幅広い選択の中で攻略の糸口を見つけ出す戦略性へとシームレスにつながっています。

ここから18階層に至るまで、途中の雑魚や中ボスですらも、ある程度特徴を持ち、どうやって上手く攻略するかを考える必要が出てきます。いわんやボスはどれも個性的であり、それぞれがそれぞれの攻略法を要求し、あるいは固定的な攻略法を封じる性能を秘めています。
このため、ボスごとに戦略をある程度様変わりさせていく必要が生じていき、階層ごとの色を適切に捉えて現状の手札からの戦い方を試行し、攻略していく楽しみが味わえました。
そして、この土台となっているのは間違いなく先行して体験した10階層までの経験です。おかげで、その経験に立脚し派生していく思考を基に奥深い戦略を突き詰めていくことができるようになっています。

そして、それらを総括するようなノエル、あるいはラスボスの設計は見事というほかになく、まさしくこれまでの戦略の総決算として挑むことができます。ボスごとの固有能力に対応してきたこれまでの経験を総動員し、めくるめく戦況に対応しつつ戦っていく感覚は得難いものがありました。

また、レベルデザインとは直接関係ありませんが、各階層におけるボスの特異性というか、デザイン的な面でのネタへの走り方もまた良く、次の階層で出会うボスを楽しみにする牽引力ともなっていました。
もっとも、ここが原因でウディコン的には停止になってしまった部分でもあるので、あんまり色々と言うのもアレではありますが。ただ、Cross Fait Battleでは笑いましたし、地獄を見せてあげるで終わりかと思ったらまだまだ終わらずに続くマトリョーシカには思わずおいという声が出ました。

また、もう一つレベルデザインとして秀逸な点として、確かにインフレしていくように設計しつつも、戦いになる程度に抑えられているところがあります。
リソース管理を軸とするノンフィールドRPGにおいて、成長は明確には数値でもって表されるものであるため、数値のデザインはかなり重要です。そして、この作品では、この数値のインフレ具合と、一部パラメータにおけるインフレしない具合が絶妙にコントロールされています。
特に、各パラメータが関わり合った結果のダメージは確かにインフレを感じ、大きく成長を感じていく一方で、コストとして使うポイントの多くはそれほどインフレさせられません。
ゲームシステムを崩壊しない範囲で成長を実感させつつ、絞るべきところはきっちり絞られた設計に感じていました。

そしてこれは筆者がAnotherをクリアできてない立場で言うのは大変に烏滸がましいんですが、Anotherに向けての0回死亡クリアという導線が引かれているのも極めて良いところになります。
ここまでで段階的に引かれてきたレベルデザインに対し、さらに上級者向けに一本筋を通して新たなる試行を行わせしめるものとなっています。挑戦のレベルデザインとでも言いましょうか。
ある意味ではチュートリアル的にクリアに向けての導線としての役割を担っていつつも、それ全体を一貫してより大きなチャレンジへの布石となしている、この分離と統合のデザインは一粒で二度おいしい設計として完璧に機能しているように感じました。

長々と書いてはきたんですが、端的に言えばめっちゃ面白いのでやれば良いと思います。
筆者はノンフィールドRPGが下手ではありましたが、何度でもやり直して戦略を練り直せるので、不屈の闘志で挑み続けていくことでクリアまで到達できました。雨垂れ石を穿つです。そういう意味でも、9階層さえ抜けられれば誰でもクリアできるようにはなっていると思います。

なお、この作品とは直接関係ないんですが、オマージュ元らしい雪道の作者さんの新作がSteamに出ていたので買おうと思っています。雪山道をやったら滅ぼし姫をやろう。

23. 魔王復活物語

ジャンル 作者
メタ謎解き かげろう
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 1.5 クリア

良かった点

  • 常に発見のある良い謎解きの体験でした
  • ゲーム内のらしさの完成度が高いです
  • ヒントの塩梅がちょうど良かったです

気になった点

  • 特にありません

レビュー

あんまりネタバレしたくないのでここに書くことが無い

初めに断っておきますと、この作品を十全に遊ぶ上では、あまり情報を入れずに起動することを強く推奨します。
もしもあなたが謎解きを好んでいたり、発見を伴うパズルを気に入る性質の方であれば、ここから先を読まずにプレイしてください。素晴らしい体験になることだけは保証できるでしょう。
とはいえ、事前に情報を仕入れても楽しめることもまた確実ではあります。そういう方のためにも、少しだけレビューを書き留めようと思います。

魔王復活物語は、メタ的な要素を活用して進むパズル的な謎解きを主体としたゲームです。
ゲーム内ゲームを進める上でぶつかることになる、主に不具合を起因とした障害に対し、あの手この手ですり抜けてゲームを進行していくことを目的としています。

様々な形で発生する障害を上手く回避するために必要となるのは、プレイヤー自身の閃きと発想です。
ゲームシステムを上手く運用するなり、最終決戦前にあるデバッグ用のセーブデータを上手く活用するなり、あるいは注意深く周りを見渡すなり、様々な要素を隅々まで観察し、思考し、使い尽くすことによって、初めてその問題を解消することができます。
物語中のイベントから示唆される導線を上手く使い、時にはヒントシステムにも頼って思考を補助しつつ、適切な手段で対応していきましょう。

そうして謎解きを進めてゲームを進行させる毎に、回想の形でそのゲームの作者とのかつての交流が描かれていきます。ゲーム内の展開とも密接にかかわり続けるそれらの記憶は、やがてシナリオの本流へと回帰していきます。
謎解きの秀逸さもさることながら、そうして語られたゲーム製作にまつわる物語もまた良質なものとなっています。その誘引力は間違いなく、最大の難易度と呼ぶにふさわしい最後の謎を解く原動力となってくれることでしょう。

あらゆる困難を発見を伴う知恵と工夫で打破し、ゲーム内の要素を全て拾い上げ、その物語のエンディングを迎えていきましょう。

感想

最後があまりに綺麗に作られているので、それだけでも最高のゲームです。おまけに、そこに至るまでのメタ的なパズルの設計も秀逸なので、全体を通しても最高のゲームでした。
第四の壁のないメタゲーとしての新鮮味と、それだけに頼らない謎解きというかパズルの強度の点において、ここしばらくやったメタゲーの中では指折りに好きな作品です。OneShotとかアトペス以来くらい。
最後がどう良いかを追々記述していくので、まだやってないのに感想を読んでいる人はとりあえずやってからお願いします。何ならやったら以下の感想は読まなくても良いです。

いったん別の話をすると、ゲーム内ゲームのらしさを突き詰めているのも良くて、確かにこういう作り方しますよね、というところを適切に突いてきます。
バグ発見ゲーム系は割とあるあるのバグを出すためのバグというパターンが共感性のためにか強めになりがちなんですが、このゲームのバグは本当にそうなっていそうな印象があります。ちゃんとエミュレートされた不具合という感じ。
加えて、そういった不具合以外においてもゲーム内の要素がきちんとそろっていて、魔法復活物語そのものが活きた作品のように思える出来となっています。ちなみに、ここで言う魔王復活物語はゲーム内ゲームの話です。

そして圧巻であるセーブデータを活用した謎解きというパズルの設計は絶妙であり、常にそういう視点もあるのかという発見に満ち満ちています。
つづきからというギミックから出来得る全てのことをやったんじゃないかという程にバリエーションに富んでいて、そこから生み出される発展性とどこまでも伸びていく斬新さは10点以外何を付ければ良いのか分からないレベルです。これだけは迷うことが無かった。
終わりから始まる物語、バグを活用したクリア、みたいな系譜のゲームの先例は様々にあれど、ごり押しによる突破、存在しない情報の活用といった異なる視点からの活用を主眼としたパズルというのは目から鱗のシステムでした。

そしてこれは何度でも擦るんですが、最後の謎解きは完璧です。
連携、レベルによって到達する奥義、武器による技の追加、全ての説明された要素を余すところなく活用した上で、タイトルを叩きつけるという設計はあまりにも美しく完成されています。カタルシスがある。
筆者は王復活を構成した上で、それぞれを探し出していくという理想ルートの体験を通ったというのもあるかもしれませんが、とにかく得難い体験だったように思います。発見をベースに置いたパズルの体験の美しさという面において、The Witnessをやった時のレベルで感動を覚えました。

その分、とりわけ最後の謎解きの難易度は充分に高いようには感じています。分かる人には一瞬で分かりそうですが、筆者は30分くらい彷徨っていました。どうやらプレイ前のバージョンではタイトルのヒントもなかったようなので、世の中には勘の良い人もいるのだなと思っています。
連携+タイトルと了解してさえ、タイトルがタイトルそのものなのか悩みながら進めていたところもあり、迷走してこねくり回してルーズソックスを作ろうとしている時期もありました。とはいえ、王復活が見えるあたりでほぼ確信が取れるので、野暮にならない範囲では絶妙のヒントだとは思います。

ヒントについてもう少し触れておくと、最後以外のヒントについてもかなりちゃんと作られています。
筆者はあまり見ないで進め、大体分かった後に聞くようにしていたんですが、かなり良い塩梅の情報となっていました。雪のヒントは特にちょうど良い塩梅であり、戻るアイデアへの導線も、戻った後に何をすれば良さそうかの導線もきちんと完備されています。
一方で、エニムへのミスリードは若干ズルいところもありそうには感じました。筆者はなんとかして一番下の街を消す方法を探していました。

また、システム面においてはセーブが限定されているのも良いところです。おおむね、ここであなたをハメますよという意思表示になっています。その上で、ボスの前に置かれているなど、あまり作為的になりすぎないようになっているため、このあたりのバランスもとられています。
謎解きによっては明確に詰みもありうる中、そこを上手くカバーしたデザインになっている印象がありました。
セーブデータを残さないタイプの人向けにも塞がれているなど、細かいところのケアも良く整備されており、謎解きに集中できるような環境が完成されている作品となっています。

筆者はパズルだけで感動できるんですが、そういうタイプでない人向けにも、シナリオもまた良いものであったということも付記しておきます。
ずっとノリの良いコメディ調のストーリー展開で明るめにテンポ良く進めつつ、終わりに向かっては制作にまつわる熱をもって物語の強度を補完してきます。
殊に、筆者の記憶している限りでは往年のRPGの主人公よろしく一言も喋ることのないヒロが、最後に語りかける演出が良いです。それまではあくまでもヒロとしてのロールプレイであり続けたところに、最後にhiroとしてというかその人そのものとして作用することで、物語が綺麗に着地していました。パズルもそうなんですが、構造的に秀逸なところがあります。

加えて、個人的に好きなのは、魔王がエアロブラストを使ってくるし、ブラインもやるし、何なら形態変化後はちゃんとマオになっているあたりです。
別段それが強くシナリオで主張されることは無かったと記憶していますが、このゲームそれ自体の持っている意味をシステムで上手く主張しているあたり、これもまた物語の一つなのだろうと思います。

返す返す最後が秀逸なんですが、最後が秀逸であることを説明しようとすると強烈にネタバレになるので、とりあえずやってと言う他無い作品です。
最後に至るまでの謎解きも当然素晴らしく、やるたびに新たな発見があって好きだったんですが、あまりに最後が美しすぎて、そっちのインパクトにだいぶ持っていかれつつ、この感想を書いています。

24. なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる?

ジャンル 作者
ノベル カッパ永久寺
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.00 TRUE END

良かった点

  • 不安定な中で描かれる物語を楽しめます
  • 日常パートとそれ以外の配分がちょうど良かったです

気になった点

  • 回収されない要素があるような印象を受けました
    • そういうシナリオであると解釈することもできる作品ではあります

レビュー

なかよしな日常

なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる?は、ホラー要素を含む短編のノベルゲームです。
記憶喪失の主人公を中心とした、いつもの日常が描かれていきます。

主人公は、記憶喪失の前から友達だった3人と共に、以前のような日常を送るために学校生活を進めていきます。
何か不穏なことがちらほらありますが、それはそれとしてなかよしな日常を見ていきましょう。

恐怖を与える表現はもちろんのこと、あらゆるものを疑いたくなる不安定な描写の中で紡がれていくシナリオが特徴的な作品です。
何かがおかしい日常を覗いていきましょう。

感想

終始信頼できない語り手をやるので、ずっと不安定な足場の上で組み上げられた作品を読んでいるような印象の作品でした。ホラーにぴったり。
どこまでの情報を真実とし、どこまでの情報を誤りとみなすかによって色々解釈は変わりそうではあります。個人的にはある程度第三者視点を信じるのが良さそうだなと感じたので、おおむね刑事さんの推測を当てにしていました。

こういうタイプの作品は日常パートをどれくらい描くかが割と難しく、長すぎるとだれる一方で、短すぎると日常の浸食を充分に表現できないままホラーに突っ走ることになってしまいます。
一度ホラーパートに入ると日常パートに戻ってもホラーの残滓が残り続けるので、自然に最初にやる日常パートの尺が大事になります。
この作品におけるその辺りの塩梅はちょうど良く、ギリギリだれない範囲で日常パートを描いていたように思いました。そもそも最初にホラーを突っ込むことで助走をつけていたというのもあります。まずは死体を転がせというのは、ミステリー小説の基本みたいなところがありますね。

一方で、解釈の幅を広げるためなのか、最終的にあんまり回収されない宙ぶらりんな要素もそこそこある印象がありました。
顔のない追跡者、突き落とした気になっている理由、京先輩周り、この辺の掘り下げはあまりなされません。あくまでも、主人公の周囲に発生する事象がメインなので、世界や他者にまつわるあたりは突っ込んで話されないというのはあります。
全部妄想にすぎませんでした、もまた解釈の一つではあるんでしょうが。

中でもメモ書きは誰が残したのか、はどう解釈するべきか迷っているポイントです。あの時点では恐らくループが始まっていないはずで、そうだとすれば誰が書き残したんでしょうか。犯人がいるとして、書き残すとは思えません。
それともループが実はもっと早くから始まっていて、無間地獄の後にアレを残すフェーズがあったんでしょうか。真相がどこに辿り着くにしろ、基本的には気にしなければ何も起きないことは事実ですからね。

京先輩周りについての解釈も難しく、冒頭はほぼ間違いなく京先輩を指しているはずですが、その場合でも解釈は分かれます。おおむね、京先輩は普通に自殺し、この件とは無関係であってアレはただの演出である、という解釈と、京先輩は入れ替わったが記憶が無いので無間地獄に囚われている、という解釈の双方が可能です。
どっちに転んだとしても、その自覚がないものが過去の所業に囚われて無限の苦しみを味わい続けているので、ある意味ではどっちでも変わらないとも取れるかもしれません。

こういう要素について、もやもやとするとか、考察の余地とするかは人に寄りそうですが、個人的にはややもやもやよりなのかなと感じています。視点がそもそも信頼できない語り手の時点で、曖昧な部分が発生するのはやむを得ないところではありそうです。
ただ、メインの主人公の境遇と末路に関しては解釈が分かりやすく二分され、そのどちらかは分からない、という終わり方をするので、ある意味ではこのような事実の重なり合いを観測するという旨のゲームとも言えるかもしれません。

ちなみに余談として、筆者はホラーにはそこそこ耐性があるんですが、カッターみたいな現実的な痛みを読んでると若干むずむずして辛くなります。あのシーンは、どのシーンよりも目を細めてしまいました。多分想像できる痛みがしんどいんだと思います。

25. At End of the World

ジャンル 作者
RPG エルトン
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間+1時間 3.4 クリア+

良かった点

  • 技を入れ替え己の戦略を追求していくハクスラが楽しめました
    • 新陳代謝が終盤まで充分に続くバランスとなっています
    • 戦闘システムそのものがシンプルなため、技のデッキ構成だけに注力できます
  • 手に入れた技が無駄にならないシステムが完備されており、安心して技を集められます
  • 終末的な世界観が印象的に表現されており、シナリオに良い影響を与えています

気になった点

  • スキル構成について、簡単なソートや保存がしたい気持ちがありました

レビュー

技を組み立て自分なりのビルドを作り上げよう

RPGというジャンルの戦闘における楽しみの一つとして、用意した戦略が上手くはまって敵を倒す楽しさが挙げられるでしょう。戦略を練り、手札を準備し、それが上手く運用されて敵を圧倒していく達成感は格別のものです。
At End of the World は、技をハクスラで集め、その技のみで戦闘を行うゲームです。ゲーム中のステータスの強化は限られているため、プレイヤーはほとんど技の構築だけを考えることになるでしょう。それゆえに、そうした戦略を準備し、練り上げて攻略していく楽しさを十全に味わえるゲームとなっています。

戦闘画面

このゲームの戦闘は、ランダムで4個の技が配られることから始まります。
この技の中から消費するHPやSPの許す限り技を選択し、攻撃を繰り出し続けることになります。そうしてターンを終了したら相手から攻撃を受け、これをどちらかのHPがゼロになるまで繰り返すというものです。
例えば、上記の戦闘の例ではSPが10あるため、消費SP1のダガー、SP3のスラッシュ、SP2のソードの全てが発動可能です。HPを消費して良ければ、ナイフを発動することもできます。
SPはターン毎に一定値だけ回復していくため、最後に残るSPや残りHPに気を配りながら、各ターンで適切な消費量に基づいた技選択をしていく必要があるでしょう。

ただし、戦闘に出てくる技は、あらかじめ自分で構築した20個の技のみから選出されます。このため、戦闘は事実上戦う前のデッキ構築から始まっているとも言えるでしょう。どういったプランで戦いを進めていくかを考え、持っている技の中から選りすぐりの20個を決めていきましょう。
ここで選び出す技を決める上で重要になるのは、その技に付与されたオプションです。状態異常の付与からカードのドローまで、技には様々な性能がランダムでいくつか付けられています。例えば上記の画面のうち、ダガーは防御力を上げるバフを持ち、ナイフは回復できるバフを持っています。
バフを盛って戦いを有利に進めてみたり、デバフで相手を封じたり、ひたすら同一ターンで回せるようにドローを積んだり、戦略は様々です。自分が思い描く戦略を実現するためにも、様々なオプションが付与された技を集めて構成を練っていきましょう。

なお、技に付与されるオプションはレアリティが上がるほど強力になっていきます。このため、プレイが進む度により強力な技へと入れ替えられていくため、常に新鮮なデッキで戦いに臨むことになります。技を常に更新していき、戦略の理想を追い求めていきましょう。
とはいえ、そうして手に入れた古い技も無駄にはなりません。合成の素材として別の技の生成に用いることもできますし、オプションが気に入っているならアイテムを消費してレアリティを引き上げれば前線に復帰させることも可能です。
あるいはデメリットだけが目立つ技でさえも、そのデメリットを変質させ、別のデメリットに変えることもできます。いまいちだった技が化けることもあるわけです。
どんな技を手に入れても無駄になることは無いので、ガンガン技を手に入れていき、デッキをどんどん進化させていきましょう。

このようにデッキ構築を進めて強敵と相対せるようになっていくと、より奥地へと足を進めることができるようになります。
そうして次々と探索していくことになるマップはどれも終末感の漂うものであり、そこで描かれていくシナリオもまたどん詰まりのような暗さを抱えています。そんな終わりの世界の空気の中でも歩みを止めず、強敵を打ち倒して最奥まで進んでいきましょう。
また、マップには時折NPCがいるので、積極的に話しかけてクエストを行ってみるのも良いかもしれません。報酬となるアイテムは便利ですし、この世界の終末的な空気感に触れることもできるでしょう。

技を手に入れ、デッキを強化し、さらなる強敵に挑んではより強い技を手に入れていくハクスラを楽しめる作品となっています。
たとえデッキが完成したと思っても、オプションの吟味や安定性の向上、あるいは別の戦略の試行など、ブラッシュアップの余地はいくらでもあります。技を入れ替え最強の戦略を目指していきましょう。

感想

筆者は軽戦士を選んでいたので、ずっと俺のターンができるゲームでした。最初にゲームシステムと、職業のデザインを見た時から使おうと思っていたので、上手く運用できて楽しかったです。上級者向けとか関係ない、この手のゲームは行動回数が正義なんだという思想があります。
手に入る技を吟味し、理想に一歩ずつ近付けながらデッキを構築していくのは大変に楽しかったです。

このゲームのメインはやはり戦闘システムと、それを左右する技の数々だと思うので、そこに触れていこうと思います。
まず、戦闘システムは状態異常の多彩さ、技の豊富さをいったん考えないでおくと、かなりシンプルです。特殊な行動はそれほど多くなく、シンプルにHPの削り合いの勝負に終始します。
特殊な戦闘システムで戦うところはさておき、基本的な設計がごくシンプルであるがゆえに、状態異常とそれを操る多様な技にじっくりと目を向けることができる設計でした。ベースの簡単さから戦闘自体は飲み込みやすく、すぐに特殊な異常仕様への慣れや、各種技性能の強さの吟味に注力できます。

また、20枚というデッキ構成のサイズ感、ハクスラで手に入る技のランダム感がちょうど良いために、クリアに至るまでかなり新陳代謝が激しいのも好きなところです。
筆者はほぼラスボスに到達するくらいまでは頻繁に技を入れ替え、理想に向けたビルドを行うことができていました。方向性の完成は中盤くらいにある程度整っていましたが、事故率を下げたり、細かいところをブラッシュアップしたりと意外とやれることは多く、終盤まで強い技を追い求められます。

そして最終的には、ラスボスだろうと裏ボスだろうとワンターンキルできる圧倒的な手数の多さを手に入れることができました。HPの続く限りほぼ無限に行動し続けるマシーンの完成です。
そんな最終構成は以下の通りになりました。
オメガはあまり使わず、ドローソースを大量に仕込みつつ、威力増加と鋭刃で単価を引き上げ、手数でごり押すスタイルです。SP消費技の数を抑えてHP消費技主体で戦うため、HPさえ持っていれば絶大な火力を叩き込むことができます。道中の雑魚にすらHPを消費しないといけないのは若干ネックですが、回復をちょっとだけ混ぜて保険としていました。
そして、強力な技に必要となるデメリット効果はどうせワンターンキルするならと、毒や傷をふんだんに癒しています。どうせ相手のターンになることはほとんどないので。よく考えれば、傷を避ける必要もなかったかもしれません。
これでも色々と妥協して組んだ部分も多く、まだまだブラッシュアップの余地はあります。ドローソースが初動に関しては100%安定するわけではないですし、SP技についても強力なものは残ってしまっているので、この辺も可能ならHP消費技に切り替えたいところでした。

ついでに、以下のスキルの中でも特に強力でお気に入りだったものをピックアップしてみようと思います。
まず、問答無用でナイフドローは強いです。消費HP2程度でドローソースになってくれます。このため、カタストロフと一段階落ちてはいますが採用に至っています。もう少し時間を遡ると、普通にブレスでも採用されていることがありました。
続いて、ドロソ+威力増加+鋭刃を全て兼ね備えたサイズが強力です。SP消費無しでやりたいことが全部できます。しかもデメリットが弱い。
また、ドロソではないものの、威力増加9+4、鋭刃6のソードや、威力増加合計17のソードは手数の多さで戦うこのデッキにはかなり刺さっています。後者に至ってはハザードのレベルですが採用されています。
ただ、ソード/スラッシュともにSP消費対象ではあるので、できればナイフ、あるいはサイズあたりで揃えたい気持ちはあります。また、ドロソだからという理由だけで入っているブレスのソードなど、やはりまだまだ改善の余地は残されていますね。

最終構成

閑話休題。この辺の技のハクスラを進める際に、合成やアイテム消費による上書きである変性、あるいは進化など、技を余すところなく活用できるシステムについても上手くできています。
全く不要な技は合成に投げ込むことで二回目のチャレンジを獲得できますし、ある程度強いけどデメリットや一部スロットが気になるような技は、変性で最強の技に生まれ変わらせることもできます。序盤に拾って性能と使い勝手が良いために愛用していた技を、進化を繰り返して常に最前線にレベルアップし続けることも可能です。
どんな技であっても何らかの方法で活用したり、上手く使っていたものをそのまま継続させられたりと、無駄がありません。このおかげで、技を取得した際に残念な気持ちになることがありませんでした。

一方で、技はかなり手に入ることになるので、適時整理していかないと、だぶついて調整が難しくなります。せめて、デッキの種別ソートくらいはしたい気持ちもないではないですが、ソートすべき対象の多さを鑑みると難しそうです。種別、コスト、あるいは効果スロット、レアリティ、いくらでもソートしないといけないものがあります。
一応保有スキルはレアリティソートされていて、これは結構便利なので、このままでも良いかなという印象はありました。かなり過積載気味のソート機能がないと満足に使えなさそうなので。

シナリオ面というか、世界の空気感も素晴らしく、まさしく世界の終わりと言った退廃的な世界が強く演出されています。
NPCの数は決して多くありませんが、世界を物語るに足るようにはなっており、各々のクエストも良い味を出しています。やればやるほど人が死んでいく。何だったら何もしない方が良かったのかもしれない、と感じたところからの最後です。

そういう意味でも、ラストバトルは本当に清々しい気持ちで挑めるものであり、これまでずーっと暗かったぶんを全て吐き出した晴れやかさを感じることができるものでした。
廃村はちゃんと村になり、最終ステージの元あった黒々しい靄が晴れ、ここまで澄んでいたのかと感じさせる青空をバックにラストバトルです。演出としては完璧と言って良いでしょう。
この明るさを取り戻すための物語として、綺麗に結末まで導かれています。

なお個人的に気になっているのは、アルフォンソが狂ったのかそうでもないのかといったところです。プレイヤーというか主人公ですらも、何度か終わらせてしまおうかということが頭をよぎり続けているので、これの果てがアルフォンソであるということなのかもしれません。あるいは主人公になれなかったものとしての位置付けなんでしょうか。
そこに至るまでの物語が詳しく描写されることはないので、真実は闇の中です。

余談ですが、筆者は初見時に完全に教団エリアを見逃していたので、いきなり始まった教団の話には若干ついていけませんでした。それがヒントになって発見できた側面もありますが。
まあプレイヤーはともかく、主人公はこの1000年で色々と見てきたのでしょう、多分。

ともあれ、ずっとスキルを入れ替えて、己の理想を追求しつつ、現実として手に入った性能も強いなこれと思いながら使っていく、非常に楽しいハクスラ体験ができる作品でした。
ここではあんまり触れていませんが、変な戦闘システムの中で戦える場所もいきなり用意されていて、ただ戦うだけでなく、制限の元戦いに挑む楽しさも担保されています。奥が深い。手数ゲームしていると特殊ルールには相性が悪いこともあり、遊んでいる最中は複数のデッキを登録できる仕組みが欲しくなっていました。

26. カニハザード~カニ滅外伝~

ジャンル 作者
アクション sugo-rock
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.1.1 49260

良かった点

  • 終わりのある中のスコアアタックであるため、明確に目標をもってプレイできました
  • 差し合いを意識する立ち回りが求められます

気になった点

  • カニのステップが場合によっては理不尽に感じました
    • 攻撃予兆前のバックステップからの差し返しがかなり厳しいです

レビュー

カニを100匹滅せよ

カニハザード~カニ滅外伝~ は、次々と出現するカニを倒していくアクションゲームです。
それに加えて、カニを100匹倒し切るか敗北するまでのスコアを競うこともできます。

絶妙なステップと特殊な行動で攻めてくるカニを上手く倒していくには、いくつかのアクションを使いこなす必要があります。
中でも基本となるのは通常攻撃と回避です。通常攻撃は発生時に向いていた方向にだけ攻撃するタイプなので、良く狙いを澄ませて当てましょう。連続で攻撃すれば範囲と威力が伸びるため当てやすいですが、その間は移動ができないので当然隙も大きくなります。適宜使い分けていきましょう。
また、攻撃後の後隙に被弾しそうになった場合は回避が便利です。回避で行動を上手くキャンセルすることができれば、ぐっとダメージを抑えられるようになります。
その他、回転切りや遠距離攻撃などの特殊な攻撃も駆使しつつ、上手くカニを捌いていきましょう。

しかし、漫然とカニを倒しているだけではスコアは伸びません。スコアを伸ばすには、コンボを意識する必要があります。
コンボを伸ばすためには、カニを一定時間内に継続して倒し続けることが重要です。制限時間内に次々と倒していければ、その倍率はどんどん高くなっていきます。このため、後半にスコアの高い強敵を倒すほどコンボによる上乗せが入りやすくなっていき、ますますスコアが伸びていくでしょう。
時にはあえて強い敵を残したまま戦いを進め、リスクを背負うことでスコアを伸ばすこともできます。慣れてきたら狙ってみるのも一興です。

アクションを使いこなしカニをひたすら滅し続け、コンボを伸ばしてスコアを稼ぎ、100匹捌いていきましょう。

感想

いわゆるスコアアタック系のミニゲームでした。さっと遊べます。
個人的には100体という明確な終わりがある中でスコアを稼ぐというのが好きで、きちんと制限がかけられた中で上手くやることが求められるので、だれにくい設計になっているんだろうなと思います。
100体というやや多めの目的に対しても、少しずつ性能の違うキャラクターを出していき、ボスのような巨大な敵を用意することでさらに大きく盤面を変化させることで、その目標値を多すぎないように感じさせています。

アクションの面で見ると、自機の攻撃性能はかなり低く、爽快感を求めるタイプというよりは、ずっしりとしたアクションという感じがしました。鎧を着込んだソウルライクみたいな遊び味であり、軽快なプラットフォーマー系アクションみたいな遊び味ではありません。
特に攻撃後に即時向きを変えられないので、かなり窮屈に戦うことになります。軽快に捌いていくというよりは、相手の動きをある程度読んで一撃を当てに行くという遊びになっていました。持ってるのはショートソードっぽいですが、挙動は完全に大剣のそれです。

とはいえ、即時転換が可能になるとそれはそれで簡単そうなので、これくらいの窮屈さによって難易度をある程度担保しているんだろうなという感触でもあります。
プレイ中の被弾は、おおむね前隙の初見殺しか、攻撃方向のミスによる後隙を狩られるかでしか発生しないので、リスクをちゃんとつけるならこの要素がないと困ります。後隙は上手く回避でキャンセルしましょうね、というデザインだと解釈していました。
ただ、大剣のような性能の割にリーチが短いのは若干辛く、特に初撃はかなり心もとない印象を受けました。敵のステップが予測不能なことも相まって、噛み合うと最近接で振っても空振る可能性があります。リスクを取って近付いて攻撃したのに避けられるのは、後隙も込みでリターンが見合ってないなという印象を受けました。

また、敵のカニの挙動はかなり独特で、攻撃予兆直前ですらステップを踏むので、結構攻撃を当てにくいです。連続攻撃で範囲をとるか、回転攻撃でケアするかしないと、上手く当たらないことが間々あります。
ステップのタイミングを読むのはかなり慣れが必要で、適当にプレイしているとバックステップによる回避から差し返しを食らってダメージを受けやすいように感じました。ここはプレイヤーの慣れが必要です。慣れても大量のカニの動きのテンポを把握するのは割と難しいですが。
また、攻撃判定は思いのほか残っているので、下手に近付くとダメージを受けることもあります。攻撃間隔がつかめないうちは、あまり積極的に攻めない方が良いのかもしれません。

カニをバシバシ倒していく爽快感というよりは、立ち回りをちゃんとして、倒す敵もちゃんと選んで、上手い人はハイスコアを目指しつつ、そうでもない人は生き残りを目指していく、そういった堅実な方に振ってあるアクションというイメージです。
漫然とプレイせず、クリアに向けてちゃんと動きを覚えていくことが求められるあたりは楽しかったです。カニに適応していく。言わばAnother Crab’s Treasureのようなヤドカリソウルライクよろしく、ソウルライク・カニアクションなのかもしれません。

27. 不思議な世界の観光日記Ⅱ

ジャンル 作者
オムニバス nananana
プレイ時間 プレイVer クリア状況
5時間 1.06a クリア+全隠し実績

良かった点

  • 多種多様なゲームが遊べます
  • 個々のゲームに良い意味で突っ込みどころが満載です
  • 比較的高難度なゲームには救済措置がありました

気になった点

  • 続編のためか、キャラの名前やストーリー進行でやや追いてかれがちです
    • 必要な範囲では情報が開示されるので致命的ではありません

レビュー

吹き荒れるオマージュの嵐

不思議な世界の観光日記Ⅱ は、様々なゲームジャンルのごった煮となっているオムニバス形式の作品です。
ミニゲームや音ゲー、レース風ゲームからアクション、果てはクリッカーまで多種多様な形式のゲームをクリアして進行していくことになります。

各々のステージをクリアしていくためには、それぞれのジャンルのゲームに適応することが肝要です。各ゲームの特徴を捉まえ、プレイを通して学習していくことで、適切に対処できるようになっていきましょう。
そうしてあるゲームに適応してクリアできたかと思えば、次から次へと全く異なるジャンルのゲームが矢継ぎ早に現れていきます。新たなゲームにどんどん対応し続けていくような、めくるめくゲーム体験を味わうことができるでしょう。そこには、たくさん遊び、たくさんクリアしていく楽しさがあります。

また、そのいくつものゲームを遊ぶ中で出会うことになる、様々なところにまで散りばめられたオマージュは、このゲームの最大の特徴と言えます。
あるいはオムニバスとなっている多様なゲーム群よりもさらに高い密度で繰り出され続けるオマージュと、それに合った個性的なキャラクターたちが織り成す物語のテンションにより、常にピークを記録するようなノリの良さが続いていきます。
こうしたノリに感化され、オマージュネタの宝庫に浴した最高潮のテンションをもってプレイし続けられること請け合いです。

加えて、それらのオマージュは細かい言い回しに留まらず、ゲーム性そのものであったり、グラフィックであったりにも強く影響を与えています。
オムニバスにより七変化し続けるゲーム性同様に、そのオマージュに基づいてゲームの雰囲気そのものもまた多種多様に変容し続けることになるでしょう。絵柄の統一感をある程度崩すことなく、オマージュ元を想起させる手腕は見事の一言に尽きます。

様々なゲーム性、そしてオマージュの嵐に身を委ね、怒涛のゲーム体験を味わっていきましょう。

感想

オマージュに次ぐオマージュの雨霰が降り注ぐゲームです。キャラクターのインパクトの強さもあって、常にハイボルテージが維持され続けていて、オマージュに対して○○じゃねえかと突っ込み続けられる活力も得られます。
各ステージにおいて様変わりし続けるゲーム性もまた良く、次は何が来るのかずっと楽しみにしてプレイできるゲームでした。

ゲームセンターCXもやるし、メイドインワリオもやるし、ロックマンもやるし、Papers, Pleaseもやるし、パワプロもやるし、Undertaleもやるし、他にも色々なものが詰まっています。多分拾えていないオマージュも大量にあると思います。悪魔城ドラキュラっぽいのも多分あった。
よくもまあこれほどまでに詰め込んだなあというレベルのパッケージであり、いつ何が出てくるか分からないドキドキ感はなかなかのものがあります。
加えて、グラフィックのレベルが高く、きっちりとオマージュ元に寄せ切っているのも良く、それぞれに対して安心して心の中で突っ込むことができます。絵柄の幅が広いというか、その絵柄に寄せつつ作者さんの画っぽさを出すのが上手いというか。

ゲームの難易度についても、幅広いながらそこそこ難しいものと平易なものが上手くバランスして配置されており、ここの緩急の付け方についても完成度は高いです。
難易度が高いものが連続しないように、アクション性の高いものの後は別種のもので味を変えるように、そして最後に向けてはきっちりテンションを上げられるジャンルのもので固めるように、上手くデザインして巧妙に配されたステージ構成に感じました。
なお、個人的には最初にクリッカーをもってきているのだけ解せないところはあります。メイドインワリオの方が、ゲームの雰囲気的にも尺的にも導入っぽいんですが。いきなり1時間近くクリッカーをやらないと始められないゲーム、とも言える状態にはなっています。

それではせっかくなので、各ゲームについて触れてみようかなと思います。

クリッカー、筆者はクッキークリッカーを手焼きで恒河沙枚焼く程度の嗜みなのであんまり玄人ではありませんが、良い感じに拡大を楽しめるようにはなっていました。
とにかく客単価を上げてぼったくり続けるのが楽しく、店が完全に軌道に乗ると異様なペースでお金が膨れ上がっていきます。
前述の通り1時間くらいで全実績達成できるレベルで、クリアだけならもう少し短縮できるとは思います。これはクリッカーとしては短く、オムニバス形式としては割とちょうど良いかなと思うんですが、筆者がクリッカーに毒されているきらいもあります。時間だけ見ると、最初に遊ばせるゲームとしては長いような気もします。どうなんだろう。

音ゲー、だいぶ苦手だったんですが、判定が中心でなくて前にあることを理解してからは割とスムーズに進みました。また、ボタンの対応に慣れる必要もあって、Xと書いてあるところでZを押す能力が求められます。脳みそバグりそう。
また、音ゲーだけでなく釣りゲーでもあるんですが、こちらはこちらで変なものが釣れて楽しいです。正直最高レアよりも、その一つ前の方が釣りにくいんじゃなかろうかという気がしていました。単純に出現率が低いんだろうか。

メイドインワリオ、このゲームらしさであり、ここの主役であるリョーさんらしさが存分に出ていて好きなところです。このゲームのステージで好きなところのトップ3に入るかもしれません。
オムニバスゲームの中にオムニバスゲーム入っているが入れ子構造を作り上げ、その中でもちゃんと完成度を担保しているミニゲームが矢継ぎ早に出されるのは贅沢だなという印象がありました。

元ネタが分からないアクション、ここはシンプルにアクションとして楽しいところです。ここまでのゲームジャンルの流れから、ちょうどアクションがやりたくなりそうなところに差し込まれるアクションというのが良いポイントです。給水所みたい。
難易度についても、後半のステージの難度を考えるとステージ4に相応しいちょうど良い塩梅になっていました。ここで詰まるのは時期尚早ですが、簡単すぎても面白くはないところ、その中間をきっちり抑えています。

Papers, Please、元ネタ通りにやらねばならないポイントが増えていくあたりのオマージュが光ります。単純なトレースでもなく、逆側というか元ネタとは別種のポイントで判断することを増やしているのも、ただのトレースになっていない感じがします。
なお、筆者は「昨日のセジカ様」と言われて、5-3の情報を聞かれてるのかなと思って1回誤答しました。不覚。

パワプロ、適度に攻略しがいのあるRPGとしても面白いです。ステータスを上げたり能力を取得したりして挑み、足りない部分を補強してまた挑み、を繰り返して突破口を見極めていく様はローグライトっぽさもあります。
この建付けで1本ゲームが完成しそうなレベルで完成度が高く、個人的にも全ステージでトップクラスに好きなステージとなっています。適度に運ゲーなのも本家っぽくて良い。

単純作業、難しいというよりは大変です。ミスると厳しいので。筆者は隠し実績を継続していたので詫び石を使わなかったのですが、多分使えるなら使った方が楽です。
それでも人間は慣れるもので、なんとか条件反射が完成した後に来るリバース30という設計も巧妙というか嫌らしいというか良くできています。実は難易度はそれほど高くないんですが、パブロフの犬を押さえつけてやるのが結構大変でした。

ここで再びアクション、これ以降はクライマックスに向けて、だいぶアクション性の高いステージが続きます。締めがアクション性の高いステージで構成された上で、きっちり難易度を右肩上がりにしていくことで、ゲーム的な盛り上がりも作られている綺麗な構造になっています。
また、ひとつ前の単純作業の繰り返しで疲労していた脳みそをアクションで活性化させることにもつながっていて、交互浴みたいな感覚で挑むこともできました。配置の妙としても、このステージは割と好きです。

SIBLINGSっぽい何か、そこそこ難易度は高いものの、慣れれば突破できるラインに収まっています。連続切りを二連続で出されると、スタミナが足りないんじゃなかろうかとは思っていますが。
きちんと覚えて対応できればクリアはできるけど、そう易々とは突破できない絶妙な調整のおかげで、最終戦に向けて良いテンションで攻略できます。

Undertale、筆者はGルートをやらないことを決めているのでサンズ戦は詳しく知らないんですが、ほぼサンズ戦です。ちゃんと短時間の切り替わり行動までやってきます。
ここは最後の山場だけに、さすがの難易度になっていて、オマージュ元を考えてもさもありなんという苦戦を強いられます。とはいえ恐らく本家ほどは難しくなく、冷静に対処すれば突破可能になっているのは親切なところです。

以上、これらのオムニバスがそれぞれ手抜かりなくクオリティ高くお出しされ続けるのは、楽しい体験でした。

シナリオ面にも軽く触れておくと、前作引継ぎのキャラがいるからなのか、細かいところはちょくちょく置いていかれるような展開は多めになっています。とはいえ、全体のノリはコメディなので、その勢いに乗れるのであれば細かいことは気にしなくても楽しめます。
なお、隠し実績ヒントで知らない名前をクリックしろと言われた時はさすがに焦りましたが、ちゃんと名乗ってくれたので事なきを得ています。
せっかくだし、前作のSteam版もやろうかな。

28. 神殺しの聖戦

ジャンル 作者
RPG shot.arrow
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 4.3 クリア

良かった点

  • リソース制約の中で緊張感をもってダンジョンに潜れました
  • ある程度早く魔王のもとにも辿り着けるような自由度のある世界でした

気になった点

  • レトロ風のためか、プレイヤーに不親切な仕様が散見されます
    • もちもの制約が通知されない、前触れなく宿屋で現金をスられる、などです
  • シナリオを自由に進められるため、重要イベントを十全な状態で受けられない可能性があります
    • 各イベントが簡素であることも寄与しているかもしれません

レビュー

レトロなオープンRPG

神殺しの聖戦は、レトロ風味なRPGです。
そのゲームの特徴として、かなり自由な順序で攻略できることが挙げられます。プレイヤーは始まりの村の周辺をうろつくでも、いきなり奥地に向かうでも、好きな形で冒険していくことができるでしょう。

ただし、奥まったエリアには相応にやや強めの敵が待ち構えています。
これらに対応するためには、装備とアイテム、そして魔法を整えていく準備が不可欠です。このゲームには基本的にレベルの概念がないため、それらの準備が勝敗を左右します。
装備は回数を消費して敵にダメージを与える消耗品であり、敵からのドロップや店の購入により補充できるものです。強力な装備は高価であったり入手困難なものが多いので、価格などのバランスを取りつつ揃えていきましょう。
また、奥地に向かうには雑魚との消耗戦を戦い抜くことになるので、回復アイテムも欠かすことはできません。アイテムは8個までしか持てないので、こちらもバランス良く揃えておく必要があるでしょう。

しかし、こうした消耗品に頼るだけではジリ貧になりかねません。これを打破するには、魔法の力を借りて活用するのがお勧めです。
魔法は各地で習得でき、MPを消費することで強力な攻撃を浴びせることができます。雑魚散らしにもボスへの痛打にも使えるため、事前に習得しておくと役に立ちます。

これらの準備を上手く整えることができれば、どこにでも行ける開けた世界を思いのままに冒険していくことができます。様々な場所を巡り、世界を旅して各地でイベントを進めていきましょう。
その中で記憶を失った主人公の正体と目的、そしてやるべきことが少しずつ明らかになっていきます。
やがて立ち向かうことになる強敵に消耗戦を乗り越えて挑むためにも、各地を巡って準備を万全にしていきましょう。

感想

この後で感想を書くダーゴラスとはまた違った方向性でレトロの空気感を醸成している作品です。
モンスターの性質もだいぶ違っていて、こちらはなんとなく洋ゲーの敵っぽい印象を受けるモンスターが多めでした。スライム、あの見た目だと強そうですね。実際D&Dでは強かったらしいです。このゲームではドラクエのスライムポジションではありますが。

個人的には、開始1時間で魔王のもとに辿り着けるような自由度のある世界が良くて、いきなりちょっと難しい砂漠越えにも気軽に挑めます。
というのも、このゲームは武器や魔法の概念はあれどレベルの概念が無いので、ある程度の武器と魔法が揃えばそれなりの相手でも戦えてしまうからです。あえて全体的な戦闘バランスをそこそこ均しておき、その分で自由度が確保されている印象でした。
それでも魔王を始めとして関門にはきちんと強敵を配しており、ある程度準備をしないと負けるようにもなっています。良いバランス。

戦闘バランスについてもう少し言及すると、武器より魔法の方がコスパが良い世界です。
武器は攻撃回数が決まっているので、何度か殴ると壊れる消費アイテムになります。一方で魔法はMPを消費すればアイテムの消費なしで行うことができ、HP回復ついでに宿屋に泊まればMPも回復します。さらに威力もおおむね魔法の方が優秀です。
具体的には、魔法はMP全快から11発撃てて、宿屋は20Gなので単価2G未満に対し、武器はグラディウスを最低限度に据えても40Gで15発です。しかも大体火力が二倍くらい違う。
魔法が通りにくいモンスターもいるにはいるんですが、そういう相手は殴ってもコスパが悪いので逃げるのが得策でした。ただ、逃げるのも絶対安全じゃないので、割とヒリつきます。特にリソースが厳しくなりやすい井戸は中々の緊張感がありました。

なお、ラスボスはある意味イベント戦なんですが、割と体力があります。裏ボスっぽいのを倒したおかげでHPが半減していたんですが、それでも結構時間がかかりました。ここだけは魔法より物理をどうにかした方が良かったかもしれない。

話を変えてシナリオについてですが、かなり情報量が少なく、淡々と進んでいくのがレトロっぽくて良いです。長いイベントなどほとんどなく、自由に歩き回っては思い通りにサクサクとイベントをこなしていけます。
その分、ストーリー性というかキャラクターへの記憶はだいぶ定着しておらず、仲間になるキャラに最初どこであったかしばらく思い出せないほどです。最初に会ったところに行こうと言われたんですが、本当に分からなくてだいぶ彷徨い歩いていました。

また、自由シナリオ的な動かし方ができる弊害で、ある程度重要なイベントを後ろ倒しにできてしまいます。これもあって、仲間キャラ加入が遅れ、即座に離脱イベントが始まったので覚悟を問われても感情が追い付いていませんでした。思い入れができるほどには、一緒に旅ができませんでした。残念。

後は、全体的に許容できるギリギリのラインの不親切さをしています。
例えば、もちものを8個まで持てるんですが、これは持てなくなるまで分かりません。今もちものがいっぱいであることは、ドロップや宝箱を開いて初めて分かります。
また、宿屋に泊まるとランダムで金をスられます。3Gで泊まれる明らかに劣悪な宿ならまだ分かるんですが、開始地点近くの宿屋ですら確率でスられます。せめて誰かその情報を伝えておいてほしい。
他にも、狭いとはいえキメラの翼もなく、ダッシュしてなおやや遅い行動速度を持ち、聞き逃すと致命傷になる重要な会話がそこそこあります。
この辺は良い意味でも悪い意味でもレトロっぽく感じました。

レトロな雰囲気を味わいつつ、そこそこシビアな戦闘とリソース管理もやれる良い作品でした。魔法を撃ち尽くして辛くも勝利するのが一番楽しいですからね。
しかし、性質が違うとはいえ近い印象のダーゴラスと並んでしまったのは奇跡的ですね。近い作品が出ることは間々ありますが、綺麗に連番で出てるのは中々見ません。

29. ダーゴラス

ジャンル 作者
RPG げむつくマン
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.10 全END

良かった点

  • レトロ風を保ちつつ、利便性の面が現代ナイズされています
  • モブも含めたキャラクターの台詞が良いです
  • 割とスリリングな戦闘を楽しめます

気になった点

  • 不運が重なると、ミスなしでも負ける戦闘バランスに感じました
    • ただし、リカバリーがノーリスクなのでストレスはそれほど感じません

レビュー

現代的レトロRPG

ダーゴラスは、ドット絵で描かれるオーソドックスなRPGです。
あまり情報を開示することなく進行していくシナリオや、ゲーム全体に漂う空気感は往年のRPGを彷彿とさせます。

しかし、この作品は単にレトロなRPGを再現するに留まるものではありません。
移動速度を速めて操作感を快適にし、重要な情報は常にメニューから参照でき、死亡に大きなペナルティもありません。ゲームをプレイしている時の感覚は、現代風の快適さでコーティングされています。

それでもレトロな空気感を崩さないのは、必要な情報を足で稼ぐ往年のスタイルを取るゲーム進行や、短いセンテンスでパンチを効かした様々な台詞回し、サシで殴り合う原始的な戦闘システム、といったようなコアな部分を崩していないためです。
核にレトロ風の要素を据え、その印象は確かに往年のものであれど、触ることで感じる遊び味はとにかく快適といった仕上がりとなっています。

レトロな空気に浸りながら、サクサクとプレイして楽しめるRPGです。
手に取ってさっぱりと遊びましょう。

感想

レトロっぽいゲームなんですが、だいぶ現代ナイズされたゲームでした。レトロ風ゲームは空気感を演出するためにあえて不便さを含めるところが多々あるところを、このゲームでは、ドット絵の風味やキャラクター数の少なさ、センテンスの短さで空気感を作り出し、システムはかなり現代風に作っています。
それでいて、許せる範囲ではレトロ風の理不尽さも内包しているような印象も受けました。この辺が摂取限界というあたりの見極めが上手いです。

理不尽さの大きなポイントとしては、戦闘における敵行動のばらつきを挙げたいところです。要素が少ない一対一構造であるがゆえに、敵の特殊攻撃のバリエーションは少なめで、単純に振られると辛い技が多めになっています。この行動が偏ると、こちら側が一気に瓦解していくバランスになっています。
一対一ゆえにリカバリーを利かせるのも難しく、強行動を引かれ続けないように、できるだけ早めに決着を付けに行くのが理想の展開となっています。

ただし、ゲームオーバーになっても大して問題はなく、ロスト無し、何なら何故かちょっとお金をもらって復帰できます。このため、ある程度ラッキーパンチで負けたとしても、そこまで苦ではありません。
むしろ、これくらいのリスクがあるバランスになっていないと、シンプルな戦闘なので刺激が少なめになりそうです。スリリングさを求めるためにはこの程度のバランスが必要で、その天秤がハードラックで変に傾いてしまったのであれば、そこはシステム側で救済しようという設計になっており、トータルではかなり良いバランスになっていると思っています。

特に個人的に良かったのは、回復ギリギリの状態でひりゅう戦前に到達し、抱えていたアメを2つ舐めて突撃したところ、残りMP8で薄氷の勝利を掴んだあたりです。このギリギリの戦いをしたという感覚が好き。
ラスボス周りもちゃんと強く、乱数行動でピンチに陥る前にボーボーヤで焼きにいく必要のあるスリリングな難易度でした。適当に殴っているとすぐに負けが近付きます。

また、救済措置なのかチーズバーガーで能力値を上げることもできるので、あんまりリスクを取りたくない場合はレベリングしていくことも可能だとは思います。筆者はチーズバーガーの存在にクリア後に気付きましたが、うろうろと探索している方は早々に見つかると思います。
ちなみに、実はかなり早く場所については見つけていたんですが、あれとチーズバーガーがすぐに結びつきませんでした。反省。

そして、レトロっぽさというかこの空気感を演出してる最大の要因は、短いセンテンスにパンチのある言葉を詰め込んでいるセンスだと思っています。
長々と説明もしないし、情報がやたら精細すぎたりもせず、しかし情報として不足しない程度に、かつユーモアを伴って構成されています。各々が短く、面白くもあるので、モブに積極的に話しかけに行く誘因ともなっていました。
原則プレイヤー側に通知してくれることは何もないので、自分から積極的に話しかけに行って足で稼ぎ、情報を手に入れてはそれを基に行動する、という古き時代のRPGの構造をなぞりつつ、きちんとその導線が引かれている作品となっています。

ちなみに、クリア時の状態は以下のようになりました。
いくつか盗めそうなものはありましたが、それらをできるだけ盗まなかったので、衛兵にお世話になることはありませんでした。次やるのなら悪人プレイをやるべきでしょうか。
敗北については、最序盤とラスボスの2回です。それ以外は割と安定していました。

クリア画面

30. 早咲飛立Presents ウルファールの短編集

ジャンル 作者
オムニバス 早咲飛立
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 8/15 全メダル

良かった点

  • サクッとミニゲームを色々と楽しめました
  • オムニバスを緩くつなぐ要素もあります

気になった点

  • 黒文字がやや読みにくさを覚えました
    • ただし、その分強調色の文字は読みやすかったです

レビュー

短編ゲームオムニバス

早咲飛立Presents ウルファールの短編集は、様々なミニゲームが遊べるオムニバス形式の作品です。
いずれも短い時間でさっと遊べるゲームが収録されています。

ゲームの種類は謎解きのようなものからアクション性を求められるものまで様々であり、色々なミニゲームを遊ぶことができるようになっています。
難易度はどれも抑えめなので、サクッと遊ぶことができるでしょう。
ただし、ノーミスでクリアすると得られるパーフェクトメダルを始めとした、裏ミッション的な要素を集める場合は一筋縄ではいきません。それらを達成したいプレイヤーは、断続的に配置された要素に目を光らせつつ、そこそこの緊張感のもとで挑むこともできます。

サクッと短いゲームを遊ぶも良し、パーフェクトにこだわって慎重に目ざとく進めるも良し、お好みのプレイスタイルで挑みましょう。

感想

サクサクとミニゲームがやれる作品です。オムニバスの中にオムニバスが入っているような入れ子構造をしていて、色々なネタが詰め込まれています。
一つ一つはシンプルなのでさっさと次に行けて、破綻も瑕疵もないのでサクッと遊ぶのにちょうど良い作品でした。清涼剤みたいな感じ。

それでいて、パーフェクトメダルがあるので程々にミスしたくない緊張感はありますし、隠れウルファールという遊び要素も入っています。
ちょっとだけ気を配る対象があると、本来繋がりのないオムニバスの合間も引き締まるので良い要素でした。意識の端に常にウルファールがいる。ただ、Aのウルファールは初見で見つけるのは困難な気がしています。あのウルファール以外は全部初見で見つけられましたが、アレだけはもっと気を配ってても無理筋っぽいです。

個人的に好きなミニゲームはニワトリ操作で、もう一つ二つギミック足せば一本できそうな良いアイデアでした。Aを遊んでいて時間制限タイプでも良さそうだなと感じていたらCで近いのが来たのも良くて、順序通りに遊ぶとちょうど基礎、応用の順序で遊べます。
また、念のため最終ステージについては大幅に割愛するんですが、個人的にはBが割と難しい印象でした。ギリギリ一発で通せた。

個人的に遊んでいて気になったのは文字がずっと黒文字なことなんですが、これはだいぶ人によるところなのかもしれません。
筆者だけの可能性もありますが、黒文字は白背景以外で読んでいると何故かめちゃめちゃ読みにくく感じます。何故。ただ、おかげで白寄りの強調色が目にものすごく入ってきやすいので、特に謎解きやギミックの作用としてはかなり良い効果を発揮していました。多分これは白字だと薄まりそうです。一長一短。
これを書きながらスクリーンショットを見て感じた印象としては、文字のドロップシャドウが黒いのかもしれません。それで滲んだ印象があるのかも。

何にせよ、色々やれて楽しかったです。

31. アルバトロス新聞社

ジャンル 作者
アドベンチャー みずゆ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 8/6 終了

良かった点

  • 独特な世界観がシニカルに描かれています

気になった点

  • 特殊な用語を検索できますが、そこそこ対応していないものがあります

レビュー

ただ何もせずとも低きに流れる

アルバトロス新聞社は、記事編集を繰り返す日々を送るアドベンチャーです。
プレイヤーは記事を編集し、就寝するという一連の流れのみを行って日々を過ごすことになります。

記事の編集においては、ほとんどプレイヤーの意思が介在する余地はなく、ただそこにある悪意へと流れ続けていきます。
そうしてひたすらに流れていく日々と時々に起こる時事を眺めつつ、気になるものがあればちょっとだけ外の反応を伺ったり、検索することができたりするだけです。
無為の中の悪意に身を浴しつづける、奇妙な体験を得られることでしょう。

多くの時事ネタはどこかで見たようなものでもあり、それに対する反応もまたどこかで見たようなものとなっています。
どこかで見たようなその何かを、改めて眼前に晒してはみませんか。

感想

毎度のことながらこれはゲームなのかと思いながらプレイしています。やりたいことと胡乱な情報を詰めて、一定の法則で飛び出すようにした装置なんじゃないかという気すらしてきました。
飛び出してきたそれに意味を見出して物語を構成しても良いし、そのまま漫然と受け入れて咀嚼することなく飲み込んでも良いような作品です。筆者はこれを後者で解釈したので、追体験のようなゲームだと認識しています。

タイトルなどを見た印象はHEADLINERっぽいのかなと思ってはいたんですが、実態はだいぶ違っていて、時事を操作するというよりは時事を眺めるゲーム性をしています。時事ネタ盛り盛り。日本に住んでいれば分かる時事ネタだけで構成されている、と言っても過言ではないかもしれません。
一応チャンネルを変えることによるルート分岐などもありはしますが、おおむね単純に日々を消化し続けることになるゲームでした。選択肢はほぼなく、どっちのルートに入ろうとも、ほとんど分岐することなく進行していきます。
情報の空虚さや行為の無為性をもって表現された世界観という感じです。

時事の取り上げ方は皮肉っぽいというかシニカルな感じで、冷笑系に近い温度感が表現されています。これは何もゲームの主張そのものが冷笑系というわけではなく、ゲーム内でトレースする世界が冷笑系という話です。
そうした世界を鋭くえぐって批評するでも、声高に批判するでもなく、その行為やそれを行う人々をひたすらトレースし続けることで表現しているのかなという印象でした。有体に言えばTwitterの悪意の再現度が高い。

なお、ちょくちょく特殊な用語が出てくる上に、全部がちゃんと検索で出てくるわけではありません。イノチの木って何ですか。また、検索したら検索したで、知らない言葉を知らない言葉で説明されることもあります。Wikipediaの解説みたいですね。

32. チリガミの塔

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG Masaqq
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.2 NORMALクリア

良かった点

  • 緩く協力できるオンラインのシステムが機能しています
  • ボムを基点とした思考を回せる、独特な戦闘システムが楽しいです
  • 武器のサイクルが上手く回るデッキ構築型の仕組みが整備されていました

気になった点

  • 攻撃のアニメーションが冗長に感じました
  • UIの主にドラッグ周りがやや使いにくかったです
    • 現行バージョンでは改善されている可能性があります

レビュー

チリも積もれば何とやら

チリガミの塔は、独特なシステムで構築されたノンフィールドRPGです。
回数制限付きの武器を上手く運用しつつ戦闘を進め、一定階層ごとのボスを撃破していくことになります。

戦闘において雑魚からの被弾を抑え、ボスを効率よく攻略していくためには、その独特なシステムを理解して上手く立ち回る必要があります。

戦闘画面

戦闘は上記のようなヘックスのマスの中からターゲットがランダムに選ばれ、そのいずれかに手持ちの武器で攻撃することで進行していきます。
武器には攻撃力が設定されており、各マスにある数値をこれで削り切ると、その色に応じて敵にダメージが入ります。赤は5、青は3、灰は1ダメージとなっており、加えてそれぞれの色の弱点となる武器属性で攻撃するとより多くのダメージを与えることができます。
さらに武器には攻撃する範囲が設定されており、上記の斧であれば、縦一直線の範囲を攻撃できます。
これらの情報を踏まえ、相手の体力、マスの位置や色などを勘案し、手持ちの武器から適切なものを選択して、効率良くダメージを与えていきましょう。例えば、上記の例では攻撃力6の武器で縦に全てのマスを削り切ることで、17のダメージを与えられますが、相手のHPは5なのでオーバーキルであるとも考えられます。

かてて加えて、思考を複雑にするのはボムの存在です。
これに触れてしまうと敵の攻撃力が上がり、ゲームの難易度によっては追加でダメージを受けてしまいます。ボムを受け入れてでも相手へのダメージを優先するか、ボムを避けてリスクを防ぐべきかどうか、現在の状況と敵の性能を加味して適切な判断が求められるでしょう。

こうした様々な情報が絡み合う複雑な戦闘システムとなっているため、ともすれば全てを把握できるか不安になるかもしれません。
しかし、使用したい武器の攻撃ボタンを右クリックすることで、その武器を使用した時に起こる結果の予測を、上記の画面に示されるような形で簡単に出すことができます。運用上は、こうして出た予測の中から適切な選択を見つけていくのが便利です。

そうしてこちらの攻撃を終えると、相手からの攻撃を受けることになります。この時、敵からのダメージを一番上に置いた武器の使用回数を消費して受けることもできます。
受け性能の高い武器を装備の中に含める、使う予定のない武器を上において消費する、あるいはあえて空にして攻撃を受けるなど、どうやって敵の攻撃を受けるかもまた戦略の一部となるでしょう。

これらのシステムを前提として、どんな武器を手に入れるか、どの武器を残して攻撃を選ぶか、プレイヤーはそういった時々に応じたリソース管理を重ねていくことになります。
このため、雑魚との戦闘であっても気を抜くことはできません。最後に待ち構えるボスを効率良く倒すためにも、道中の戦いにおける武器の選択は妥協せずに、リソース管理を徹底していきましょう。

また、このゲームにはオンラインによる緩い協力要素がいくつか存在します。
特に、他のプレイヤーがクリア時に持っていた強い武器をギフトとして受け取る仕組みは攻略の助けとなるでしょう。序盤から高い性能の武器を獲得できるため、上手く活用すれば戦闘を優位に進められます。
オンラインの連帯を上手く活用し、塔を登っていきましょう。

感想

オンライン要素が好きな作品です。この辺の緩い連帯感、ウディコンという場に上手く刺さっているように感じました。場に向けて設えられた仕組みとして美しいです。
その上で、ただそのシステムだけで勝負するのでなく、ゲーム本体も面白い独自の戦闘設計で構築されているのも良かったです。アイデアが二重に乗っていて、上手く噛み合わせて機能させています。

戦闘のシステム面で秀逸なのが、ボムの仕組みです。ゲームの設計上、ターゲットと火力は一番良いのを選べば一番強いということになりそうですが、ここにボムが入り込むことで判断を一段階深める設計になっています。
これにより、ボムのデメリットを受け入れてでも高い攻撃力を通すのか、相手の被弾を受け入れてボムを避けるのか、リソース管理の面での思考を必要とします。一番攻撃性能の高いパターンを選ぶ、一番ボムを食らわないパターンを選ぶ、許容可能な範囲でボムを受けるパターンを選ぶなど、複数のターゲットがあることに意味を与える良い設計だなあと感じながらプレイしていました。

また、ゲーム全体の設計はデッキ構築型ローグライク風ではあるんですが、相手の攻撃を武器で受ける、という設計もユニークに感じています。
使用回数がそのまま防御なので、何を防御に回すかの選択も考える必要が出てきます。回数の少なくなった武器を上に回して受けに使うのも良いですし、ちゃんと防御用のカードをデッキに組み込んで運用するのも良いですし、色々と戦略の幅があります。
加えて、この仕組みと使用回数の兼ね合いにより、頻繁に装備がリニューアルしていくのも良いところです。ゲーム後半になるにつれ武器が強くなるため、基本的にはサイクルを回した方がアドが取れるんですが、それをプレイヤーが意識せずとも行えるデザインになっています。
その上で、お気に入りの武器があれば合成である程度延命ができる仕組みもあり、ランダム性と新陳代謝のバランスが上手くとれている印象でした。

なお、初見だと武器の性能が分からないので選択が難しい面はあり、基本的には武器は拾ってぶっつけ本番でテストしてみるしかありません。
この影響で、特に終盤は新しい武器に手を出しにくいところはあります。少なくとも序盤の内にある程度武器を触って、バリエーションを把握しておくのが重要っぽいです。もしくは二週目に頑張りましょう。極端に弱い装備は無さそうなので、とりあえず入れておけばなんとかなることもあります。

また、制度設計自体は以上にあるように高い完成度だなあと感じていたんですが、一方でUIの触り心地はちょっと慣れが必要でした。
特に武器順入れ替えがだいぶ直感的でなく、掴んだ位置がやや上にはみ出るくらいだと下の方を掴む挙動を示します。加えて、入れ替えのドラッグが交換の挙動になり、挿入ができません。並び順の変更として、交換というのが微妙に非直感的でした。
ただ、このあたりの使用感はプレイ後のバージョンでも改善が行われたようなので、現在はそんなに違和感があるほどではないかもしれません。

冒頭でも触れたオンライン要素についても言及しておくと、ギフトと共有ポイントという緩く協力できる仕組みであるというのが個人的に好きなところです。ウディコンにおけるオンラインの仕組みは、割とランキングという競争の仕組みに寄りがちなんですが、このゲームでは皆でチリを積らせてエンディングに届かせる連帯が感じ取れる設計になっています。
また、ギフトというゲームを初めてすぐに恩恵を感じられる仕組みと、最後にチリをもって分岐する遅れて分かる恩恵の二段構えになっていることで、初めにも終わりにもオンラインによる協力を感じられる設計であるのも良いところです。ちゃんと皆と緩く協力していたということが印象に残ります。

このあたりの基本的な仕組みのほかにも、オープニングで流れる3Dのアニメーションとか、寒いステージで画面に霜が出てきてドラッグで消せるとか、細かい遊びも個人的には好きなポイントです。
アイデアが惜しげもなく積み込まれた作品という感じがして良いゲームでした。

ちなみに、プレイデータは以下になります。
割とボディを満遍なく使ってますね。武器の新陳代謝が良くできていることがここからも見て取れます。

プレイデータ

33. 怨御霊 -URAMITAMA-

ジャンル 作者
探索ADV 餓鬼郎党
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.01 全END

良かった点

  • キャラクターのアクが強かったです
  • 程よく脅かしのあるホラーでした

気になった点

  • 渡り廊下の扉の演出がやや冗長に感じました

レビュー

本当に怖いのは

怨御霊 -URAMITAMA- は、ホラー要素を含む探索アドベンチャーです。
主人公は雨の中辿り着いた不気味な屋敷の中で、様々な現象に巻き込まれることになります。

館もののホラーとしてはオーソドックスな仕上がりであり、適度な脅かし要素やイベントを交えつつ進行していきます。探索要素もシンプルであり、適宜セーブを推奨するシステムの存在もあり、それほど詰まることなく進めていくことができるでしょう。
そうして屋敷の中を探索することで、シナリオは少しずつ進行していきます。その中でも特筆すべきはヒロインに位置していそうなキャラクターのアクの強さであり、そのキャラクターの強さでもってシナリオを終わりまで牽引するものとなっています。

彼女に振り回されつつも屋敷の探索を進め、その屋敷に隠された真相を突き止めていきましょう。

感想

よもや続編が出るとは思いませんでした。相も変わらずミサオのキャラクターが強いです。しかしミサオ、カメオ出演も含めると、ウディコンでの登場は3回を数えることになるんでしょうか。4回かも。

ホラーゲームあるいは探索ADVとしてはかなり真っ当な作りで、キャラクターの奇抜さに反してかなり堅実な設計によりできています。
中でもON/OFF可能なセーブ促し機能は割と助かるところで、探索していたら急にイベントなりに遭遇してセーブの機会を逃すというようなことはほぼありません。この作品の性質上、そういったこと自体があんまりないというのはあるかもしれませんが。
渡り廊下の扉の演出がややもっさりしているくらいで、探索やイベントのテンポ感も良く、マップサイズも短編規模としてかなりちょうど良いものとなっていました。この演出についても、何となく渡り廊下が一つの境界であることを示しているのかなと感じています。

どうでも良いですが、プレイ当初は普通の家なのにトイレが男女で分かれているものなのかなと思っていましたが、作中でも言及がある通り、鳥居の幻覚がむしろ正しい姿であるあたり、恐らく神社由来の設備だからという解釈で通りそうです。
神社に風呂があるかは定かではありませんが。ある設備を流用して、無い設備は作り上げているんでしょうか。神様の力は凄い。

シナリオ面はオチを用意しつつ、やはりというか二段のオチとしてミサオが活用される上手いものになっています。二段オチをやる上でミサオというキャラクターが強すぎる。神様をも利用しようとするの、普通に取り壊してリゾートホテル建てるより悪辣じゃないですか。Win-Winっぽいから良いんだろうか。
二回目になるんですけど、こういった行先を教えてくれる先輩はミサオの指金じゃないかと疑ってかかりたくなります。

また、ジャンプスケアがホラーサイドではかなり弱く、むしろミサオで強くやってくるあたりも面白いところです。神様は基本的に善性の存在なので、その脅かし方は雑というか手慣れていない感じがあります。神様よりよっぽどミサオの方が怖い。超常の存在にジャンプスケアで勝利を収めるヒロインだ。

しかし、ウディコンのバナーでウディコン規約上アウトなものを隠すネタはこのコンテストでしかできない味だと思うんですが、余所の媒体に投稿するときはどうするんでしょうか。そのサイトのバナーで隠すのかな。

34. 霧の街の迷宮譚

ジャンル 作者
3Dダンジョン系RPG abon
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 8/4 クリア+彫像

良かった点

  • シビアな難易度も、ある程度の無法を許す難易度も双方楽しめる作品でした
    • 一部武器の強さが光ります
    • 状態異常の優秀さもありました
  • 3Dダンジョンの中で上手くギミックを構成していました

気になった点

  • 霧システムがあまり有効に機能していないように感じました
    • 弱い霧を引くまでステージに入り直すのが丸く思えます
  • 基礎的なシステムの説明も宿屋の会話に任せているため、プレイヤーによっては知るべき情報が手に入らないということが起こりそうです

レビュー

深い霧の中を歩む

霧の街の迷宮譚は、3Dダンジョンを進むRPGです。
いくつかのステージに分かれた3Dダンジョンを充分に探索してから、ボスのいるダンジョンへと向かうという流れとなっています。

3Dダンジョンを探索していく上で気を付けるべきなのは、特定の位置に触れることで発生する戦闘です。戦闘の外の回復手段が宿屋などに限られているため、上手く消耗を避けないとゲームオーバーが見えてきます。
その戦闘におけるシステムは、ターン開始時に充填されるSPを消費してスキルをいくつか発動していくものです。装備によって使えるスキルは変化していくため、消費SPの少ないスキルで行動回数を増やすか、消費SPは高くても性能の高いスキルで殴るか、バランスを取るかはプレイヤー次第となります。なお、良い装備であるほど良いスキルとなる傾向が強いため、戦闘に勝利するには良質な装備を集めておくのが重要となるでしょう。
また、戦闘中は基本的に敵の行動予測が見えるようになっているため、これを参考に使用するスキルを組み立てていくのも肝要です。

ただし、ダンジョン内には霧がかかっており、この霧の深さによって戦闘の難易度は大きく変わっていきます。
というのも、霧が深くかかるにつれて敵の行動が見えなくなったり、敵の種類が分からなくなったりといった不利な状況に陥るためです。敵が剣士なのか魔法使いなのか分からなければ、スキルで防御を上げるべきか魔法防御を上げるべきかが分かりません。霧が深い時は、あまり戦わないようにするのが良いでしょう。

そうしてダンジョンを進んで出口に辿り着くと、それまでに探索した量に応じて探索度が上がります。この探索度を一定以上貯めることで、ボスのいるダンジョンに挑めるようになります。
各ステージのボスは、いずれも特殊な攻撃を使ってくる難敵揃いです。装備を適切に集め、相手の行動を観察してスキルを上手く運用していかなければ勝利は難しいでしょう。何度も挑戦して傾向を掴み、装備に付随するスキルで上手く対処することが肝心です。

それらのボスを撃破し、さらにダンジョンを進むにつれて、主人公は霧の街という異変の正体に迫っていくことになります。
その謎を解き明かすためにも、何度もダンジョンに挑んでレベルを上げつつ装備を集めていき、立ちはだかるボスを倒していきましょう。

感想

個人的にいろいろと好きなところのある作品です。序盤は割とシビアなデザインとか、そうは言っても整ってきたら色々無法できる仕組みとか、大仰な言い回しとか、諸々です。
3Dダンジョン形式とマッピングの中で出来る限りギミックをやろうとしているステージ構成とかも好き。

一方で、全体の設計的に見ると、霧はあんまり機能していないような気がしていました。
プレイヤー側にとっては、霧4で探索するメリットは無く、基本的には霧1で探索するのが楽です。加えて、脱出にデメリットがない以上、ステージに入った時に霧が深いなら、リセマラして霧1を引くまで粘る方が後々楽になります。
こうなると、ステージ中で霧の変化が起きるまでは霧1ばかりになるため、あんまり霧がある意味がありませんでした。
なんとなくイベント周りに霧が絡むものがありそうではあったんですが、デメリットがそこそこ大きいので、安定する霧1を選びがちな側面があります。ネームド武器の売り出しが霧4だと多い、などがあればチャレンジする意味はあるかもしれません。

また、カルマについてもデメリットが宿屋の会話を見るまで良く分からず、それを見てなお取得するデメリットが不明瞭であるがゆえに、わざわざやりにいくのは難しいように感じました。襲われるというのがどういうレベルで不便なのか分からないので。
なお、ここに限らず、作中のシステムの説明は、かなり思い切ったところまで宿屋の会話に集約しているので、初見だとシステムの把握はまあまあ難しめです。夜システムに関してはほぼ終盤にようやく理解しました。
手探りで進めている感じは霧の中というテーマにマッチしていて好きではあるものの、さすがに基礎的な判断に使う範囲は説明してほしくもあります。難しい。

ついでに言うと、泉の回数制限の存在意義も微妙なところで、序盤以外では戦闘中の回復手段で事足りるので活用することはありません。そして序盤においては、この泉をどれくらい使うか分からないので、おちおち使うこともままなりません。
この辺における、全体的なシステムのアンバランスさは気になるところが多かったです。

ただ、そういう細かい点は抜きにしても、全体を通したゲームデザイン自体は好みで、難易度のカーブも好きな作品でした。
序盤がだいぶギリギリの戦いで、HPの回復が間に合うかの瀬戸際くらいのヒリヒリした戦いになるんですが、ネームド武器が揃い、SPが増えてくると、かなり余裕が出てきます。
特にSPが増えてくると行動回数で無双するようになり、ほとんど雑魚敵には負けることが無くなってきます。

ネームド武器が思い切った強さなのも良くて、状態異常の圧倒的な性能でごり押せるレベルの性能をしています。氷柱の短剣がお気に入りで、初見のローレイネをほぼ完封する性能をしていました。強すぎる。
全身をネームドで固めた強さは絶大で、雑魚はともかく、ボスにすらかなりの有利を取って戦いができるバランスとなっていました。
ただ、マントだけはずっと粗末で、終盤にダンジョンに入り直し続けてなんとか揃えたという状態です。

これは裏ボスにも通じていて、裏ボス自体はきっちり強いんですが、こちらの武器も相当強いため、強力な技の応酬となります。
攻撃手段さえそろっていればローレイネ以外にはほぼ負けないんですが、ローレイネだけ氷が通りにくいっぽかったり、強力な魔法攻撃を打ち込んでくるので場合によっては相打ちにされたりと、一筋縄ではいきません。
専用の戦略として、紅蓮の弓に切り替え、魔法防御をちゃんと上げる方針にして撃破しました。ちゃんと裏ボスで一番強いのは良いですね。

なお、最終的な装備の構成は以下になりました。
霧裂きは全体攻撃として優秀で、前述の通りお気に入りの氷柱の短剣は最強の状態異常である凍傷を連続攻撃でカジュアルに与えられるので優秀でした。アイスガードで守りの方からも凍傷を与えられるので、上手くいくと一方的な戦いにできます。
前述の通り、ローレイネだけ紅蓮の弓を持ってきて対処しましたが、こっちはこっちで威力が高いので矢筒さえあれば充分に戦力になります。

装備

シナリオ面でも霧の町という世界観が上手く表現されていて良かったです。個人的にこういう言い回しが好きなのもあって、満足感は高めでした。それぞれのステージの空気感の違いも良い。
また、裏に入ると三女神のキャラが崩壊するという点についても面白いポイントでした。黒塗り、真の姿をさらけ出していないことを指していたんですね。

なお、想定プレイ時間については4から6時間とありますが、筆者は3時間で裏まで終えています。装備が上手いこと手に入ったのか、何か噛み合ったのか。
一つ一つのステージについても決して長くはないので、書かれてある印象よりはサクッと遊びやすい作品でもあるとは思います。

35. グッドバイ

ジャンル 作者
サウンドノベル 睦涼(むつみ りょう)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10分 1.02 クリア

良かった点

  • 不安感を掻き立てる良質なグラフィックとアニメーションでした
    • 短い中でも強く印象に残ります

気になった点

  • 特にありません

レビュー

グッドバイは、精神的ホラーに類する要素を含んだ短編のノベルゲームです。
ゲームはいくつかの会話とアニメーションで成り立っており、そのいずれも短い時間でプレイできるものとなっています。

しかし、短いからと言って流して見ることのできる作品ではありません。
むしろその短さがゆえに、描かれた表現は心を不安定にさせ、恐怖ともとれない居心地の悪い不安感を掻き立ててくれることでしょう。

ごく短い作品となっているため、多くのことを語る必要はありません。気になったら是非プレイしてみましょう。

感想

マトリョーシカみたいなゲームです。作中作の存在とその演出をもって、その作品自体のエンディングが定まっています。
短い間に感じた違和とか不気味さは凄まじく、この短い間にここまで不安感を掻き立てられるものなんだなとグッドバイを眺めながら感じ入っていました。

sessionを分けているのもこのマトリョーシカの感覚をより強くしていて、地続きと言っても良い会話をあえて分断することによって、作中作の外側がまた作品であることが分かりやすくなっています。
また、これはシステム面でもアニメーションを差し込むタイミングとしても上手く機能している上で、リセットボタンを押しやすい構造にもなっているのが良いところです。
このレベルで短いとはいえ、全部やり直すハードルは思いのほか高いので、明らかにそうだろうなと思っていても、本来は安易にF12キーは押しにくいところです。しかし、sessionを分けることでその負担をだいぶ抑えてくれているなという印象がありました。

また、アニメーションの不気味さが本当に絶妙なのも良いところです。ギリギリ教育番組に有るか無いかで言ったら無さそうなラインを突いてきます。コラージュなどを使うような、わざとらしいほどに不気味なものでないのが逆に不安感を覚える要因となっていました。
よりホラーっぽくするなら目のバランスなどを変えるといったこともしそうなものですが、そのようなあからさまなことは行わず、ただ白黒であることと、奇妙な間を作って強制的に見つめ合わせることで、何となく怖いという感情が引っ張り出されるようになっています。

シナリオ的には結局意図は何だったんだという話ではあるんですが、あるいは作中で言われているようにそれ自体には意味が無いのかもしれません。
人々の記憶の中にはグッドバイのような子供の頃に朧気に見た記憶のある、何らかの恐怖を抱いた番組のワンシーンがあって、そういう原体験を呼び起こすためのグッドバイである、あたりの解釈をしています。筆者の例でいうとストレッチマンが該当しますね。
あるいは砂嵐の中に少しだけ映った番組、のような都市伝説の類型とも捉えられるかもしれません。

個人的得点表

No タイトル 熱中度 斬新さ 物語性 画像/音声 遊びやすさ 加点 総合
01 勇者不適伝 9 8 9 7 9 3 45
02 LIGHT OF MANA 9 10 6 10 7 1 43
03 Revive 2 5 5 4 2 18
04 るぐれて 6 4 6 6 6 28
05 ラピッドスティール3 8 6 6 9 7 2 38
06 デスペレートホープ 7 7 6 6 7 33
07 イマジナリーディストピア 6 6 7 8 5 32
08 チーターは無理ゲーを走る 7 7 6 7 7 34
09 イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- 6 7 6 7 5 31
10 ±0 -Black Rain- 6 6 7 10 5 34
11 水底の記憶 7 6 7 9 6 2 37
12 魔女にお菓子を届けましょう 7 7 6 6 6 32
13 アンブレラブレイバー 5 6 6 7 6 30
14 Inifis 7 6 8 6 8 1 36
15 箱庭ドールメーカー 6 9 6 7 8 36
16 瓶詰の誕生日 6 6 5 6 6 29
17 魔族倒しFINAL 6 6 6 5 5 28
18 赤の騎士と青の魔法使い 6 6 7 5 5 29
19 鶏空を舞う 4 7 5 8 4 28
20 装甲断姫_肆_デュアルタスク 6 7 4 6 7 30
21 ジャンクエデン2 9 8 6 7 6 1 37
22 雪山道 (途中点数参考値) 10 6 10 9 7 42
23 魔王復活物語 8 10 7 6 7 6 44
24 なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる? 6 5 7 6 6 30
25 At End of the World 10 7 7 6 7 4 41
26 カニハザード~カニ滅外伝~ 5 4 4 6 4 23
27 不思議な世界の観光日記Ⅱ 8 5 6 8 6 33
28 神殺しの聖戦 6 4 5 7 5 27
29 ダーゴラス 7 5 6 7 8 33
30 早咲飛立Presents ウルファールの短編集 6 7 4 5 6 28
31 アルバトロス新聞社 4 6 3 4 5 22
32 チリガミの塔 7 10 6 8 5 2 38
33 怨御霊 -URAMITAMA- 5 4 5 6 6 26
34 霧の街の迷宮譚 7 6 6 6 5 30
35 グッドバイ 6 6 6 7 6 31
36 翠玉郷のオリヴィエ 7 8 6 7 7 35
37 エリスと悪魔の書 6 6 5 6 6 29
38 ぐぅたら少年の七転八起 5 7 6 6 6 30
39 鬼童-oniwarawa- 7 5 6 6 6 30
40 作者が1日で作ったRPG 1 1 2 2 1 7
41 デモクラシア演義 4 7 5 4 3 23
42 パーソナル戦記 Memories 4 4 4 3 4 19
43 少女大猩猩 -ゴリラvsデカヘドロン- 6 6 6 6 6 30
44 優しいごはん 7 7 7 6 5 32
45 イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~ 6 7 6 6 6 31
46 日替わりフルーツ 5 6 3 4 5 23
47 「■」の多いダンジョン 6 7 5 6 6 30
48 屍の仔と死返しの竜 3 4 5 7 2 21
49 暴れんぼアリスちゃん 5 4 5 6 5 25
50 POV 8 6 10 9 2 1 36
51 迷宮郷まよろば 8 6 6 10 7 4 41
52 記憶のあらいかた 7 7 6 9 7 1 37
53 通り雨 3 2 5 2 2 14
54 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~ 6 6 6 7 8 33
55 デス ウエスト トレイル 6 6 5 6 6 29
56 リーフの1人花屋営業 5 6 5 7 5 28
57 真の自由はわが手にあり 6 4 5 5 6 26
58 綺羅星の射手 7 7 7 8 6 1 36
59 勇者の苦難 7 4 5 6 7 29
60 モダレスクエスト 6 7 5 5 5 28
61 やけくそ料理人と不良債権 10 9 6 9 10 7 51
62 Welcome to タムタムわかめ 6 6 7 6 5 30
63 異世界転生(即死) 6 6 5 5 5 27
64 QUEST RPG 3 4 4 4 2 17
65 モンスター・レプリカ 7 6 5 8 6 32
66 マルクと4つの封印石 5 3 5 4 1 18
67 かわいいヒヨコの大冒険 6 3 4 5 6 24
68 ネクロマンサーの迷宮 5 6 5 6 4 26
69 食料品店 5 5 3 4 5 22
70 今世 6 5 7 6 6 30
71 夢幻ノ迷宮 6 5 5 5 5 26

結果発表を受けて

1位 箱庭ドールメーカー

かなり特殊なシステムをすんなりと飲み込ませる高い完成度であり、1位もさもありなんといった作品でした。
また、クリア時間10時間程度、あるいはそれ以上にやり込ませる作品である長編が優勝を飾ったのは個人的に嬉しくもあります。個人的にアクアリウムスとか悠遠物語みたいな長編が好きなので。
普通に合計点もそこそこ高いあたり、長時間遊ぶタイプの作品にもかかわらず、プレイ率、あるいは投票に向かわせるまでのプレイ継続率が高い作品であったことも伺えます。正しく10時間以上遊ばせるゲームだったと言えます。
個人的には戦闘システムが発明的に感じていて、ゲーム全体のシステムとの親和性も含めてここ数年の内でも出色のものであったように思いました。

2位 やけくそ料理人と不良債権

どうして毎年面白いデッキ構築ローグライトを作れるのか分かりませんが、今作も面白いです。面白すぎて、クリアしたら次のゲームやろうかなと考えていたのに、終わったらおもむろにハードを始めていました。これ去年もやったな。
ギリギリを突くことで辛うじてクリアできるような気にさせるレベルデザインはずっと秀逸の一言に尽きるもので、その上でやり込んでいくと次の難易度もまたギリギリクリアできるラインに乗ってくるカーブの良さもまた秀逸なものとなっています。とにかく難易度設計が絶妙。
個人的には優勝レベルに感じていましたが、様々な分野で競った中での2位ということで、殿堂入りは先送りになりました。惜しい。いっそ殿堂入りにならずに、ずっと参加してくれませんかね。

3位 迷宮郷まよろば

表現の怪物というか、表現と演出で全部殴ってくる作品でした。そりゃあ画像音声が強い。
探索アドベンチャーあるあるの何もない袋小路であっても、そこに表現と演出を込めさえすれば探索の一部となりますよね、というのを地で行っています。表現力が高く意匠が優れているのであれば、何もないこともまた美しいということが脳髄に分からされます。
筆者は総合的に6番目くらいにつけてますが、画像音声を上限突破して良いならまだまだ上に行く作品でした。10じゃ足りない。

4位 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~

ウディコンは完成度高く、短い時間で満足感を与える作品もまた同様に高く評価する場であり、この作品はそれに相応しい完成度の高さを誇るものとなっています。
ある程度自由に上げられつつ、絶妙な難易度の中繰り広げる戦いのバランスは極めて良く、ピーキーな振り方をしても意外となんとかなるようになっています。プレイヤーのやりたいように極めて戦えるのは良い作品です。

5位 LIGHT OF MANA

圧倒的グラフィックと斬新さでもって、新たなプレイ体験を運んでくれる作品でした。
ある程度凝った仕組みを設計したとしても、商業レベルの洗練されたグラフィックとUIがあれば、かなり自然に飲み込むことができるということの証左でもあります。目で見て理解できるとはこのことですね。
個人的にも4番目くらいに置いているので、この高順位も納得の作品です。

6位 勇者不適伝

割と個人的には好きで2番目あたりに置いていたため、もう少し上かなと思っていましたが、ストーリーメインのRPGの宿命っぽい点の伸び方もあってか、この位置となっています。
とにかく、ストーリーとの親和性が高いシステムであったり、諸々用意されている差分であったり、聖人を聖人のままにしないシナリオだったり、色々と好むところが多い作品でした。
中でも特筆すべきが半裸差分がいたるところに用意されているところであり、何でそこにそれほどの熱量があるのか分からないところも含めて良い作品だなと思っていました。

7位 魔王復活物語

ゲーム構造の活かし方が抜群に上手い作品でした。
ただ斬新であるのではなく、そこに思考を与え、常に発見と驚きを提供してくれるあたりの設計はただひたすらに脱帽です。斬新であるという強い驚きと、けれどそこにある確かな納得感の両立という面において、並ぶもののないものとなっていました。斬新1位は当為と言えるでしょう。すみません、斬新2位でした。あまりに良くて幻視していました。
個人的にも推している作品であり、もう少し上位にあってほしい気持ちはありましたが、ものすごく偏る部門点数比によってこの位置にある次第となっています。いやしかし、真っ当に遊びやすくありませんでしたか。

8位 「■」の多いダンジョン

個人的な意外度が最も高い作品です。しかし振り返って考えてみれば、上記にも触れた高い完成度で遊びを提供する短編枠として、かなり完成された出来となっているのでむべなるかなといった気持ちになりました。
それを裏付けるように、全体的な得点は満遍なく高く、全てにおいて高いクオリティで作られたがゆえになせる業となっています。
また、システム面でも短編故に割り切った斬新さを提供できる戦闘システムとなっており、ゲーム全体の規模感との親和性も高く、30分を遊ぶという観点で見ると最後まで遊びたっぷりの作品となっていたのだなと感じていました。

9位 ラピッドスティール3

個人的には7番目くらいに置いてるのでもう少し上だろうという気持ちもありつつ、シューティングがこの順位にあるのもあんまり見ないので凄いなという気持ちもあります。TRIくらいまで遡ることになりそう。
ストーリーをこなしつつ適度に楽しめるモードは初心者でも無限リトライで楽しむことができ、物足りない上級者はハイスコアを取るなり、強化ボスに挑むなりで楽しめる、どちらにとってもお得な作品でした。
個人的にはボスのパーツから背景の演出、カーソルのちょっとした挙動まで、細部にわたる様々なこだわりが好きな作品でもあります。

10位 水底の記憶

個人的短編枠トップの作品です。結局良くできたシナリオの短編の探索アドベンチャーに弱いのかもしれない。
情景を描きあげるスチル群もさることながら、個人的には分岐そのものがめちゃめちゃ好きな作品なんですが、それについて語るにはこの余白が足りないので感想に放流することにします。
ウディコンに夏祭りの作品があるというのも、ウディコンという祭りにちょうど良く、そういう気分のバフも乗っていたかもしれません。夏にやると良いのかも。

11位 ジャンクエデン2

ゲームサイクルが人をはまらせる形をしている作品です。取り込んでその輪の中に入ってしまったら、もう抜けられなくなります。
とりあえず一拠点探したらやめようかなと思っていたら、あれよあれよという間に奥地にまで侵入してしまう中毒性の高さを持っています。気づいたらジャンクをいっぱい抱えている。
また、この広大さをもって、負荷を抑えて実装しているシステム面に思いを馳せることもありました。どうやってカリングしてるんだろう。

12位 Inifis

マルチエンド短編としてのあまりの完成度の高さに、何も考えずにプレイして気付いたら全END制覇していました。
別のエンディングを見たいと思わせるシナリオと世界観の強さ、別の行為をしてみたいと思わせる様々な選択肢の提示、それらを簡単にできそうだなと思わせるサポートの充実、全てがプレイヤーをマルチエンドに誘ってきます。逃れられるプレイヤーはいません。


ここからは個人的に気になった作品を取り上げます。


15位 ダーゴラス

レトロRPGという形式を取りながら、ここまで遊びやすく作ることができるんだという感動がある作品です。
所々の現代化の手腕は見事というほかになく、それによって感じられる現代的な空気の面を、上手くセンテンスの強さでレトロ側に押し戻すテキストの妙もまた見逃せないものとなっています。
この形式で遊びやすさ5位を取っているあたり、その設計の秀逸さが分かるというものです。

16位 記憶のあらいかた

個人的に今ウディコンで最も鮮烈に印象に残った作品です。20分という短い時間に込められる最大の情報量が頭に叩き込まれるような感覚でした。
ゲーム性そのものも充分高い強度を誇っているにもかかわらず、ボイスと作者をヒロインとする圧倒的なまでの天下無双さがそれらを忘れ去るほどに作品を遥か高みへとぶち上げています。
紹介とか感想を書いたり読んだりするよりも、プレイしてもらった方が直感できると思うので、何も考えずにやってください。

19位 チリガミの塔

今ウディコンにおいて、個人的な斬新さにおいてトップの作品です。ウディタというツールにおける、フリーで可能な分のオンライン要素を最も上手く活用したゲームであると強く思っています。
このアイディアをゲーム性にまで昇華させた段階で勝ちと言って良いレベルのデザインであるにもかかわらず、そこに加えて戦闘面でも斬新なシステムを組み込み、斬新さに斬新さをかけ合わせて凄いことになっています。10点じゃ足りない。

21位 綺羅星の射手

これをメトロイドヴァニアと呼んで良いかは分かりませんが、メトロイドヴァニアに脳を焼かれた人間として楽しむことのできる良い作品でした。
アイテムを探して津々浦々を探索する体験は楽しく、そうして強くなって挑む個性豊かなボスの攻略もまた楽しめる作品です。探索系統のアクションゲームの良いところが全部詰まっています。
初期に不具合が割とあり、その辺が遊びやすさに響いた気がしないでもないので、そこが改善された現在はもはや欠点なく遊べるんじゃないでしょうか。

At End of the World

個人的に最も乖離を感じている作品です。筆者はこれを5番目に置いているので、よもや圏外とは思いもしませんでした。ハクスラの醍醐味ともいえる厳選をひたすら繰り返し、自分の理想の戦略へと漸近していく楽しさは随一です。
序盤のバージョンだと、アイコンで説明されているものが文字情報だったようなので、その辺のとっつきにくさによる脱落が響いたんでしょうか。現在はアイコン化されており、かなり分かりやすくなっているので、やるなら今です。やりましょう。

翠玉郷のオリヴィエ

乖離を感じている作品その2です。ここまで完成度の高いアクションを作っても圏外になるの、魔境が過ぎやしませんか。
Bomb Chickenしかり、ワンアクションに複数の意味を持たせることで完成されたデザインとしての美しさは素晴らしいものであり、この作品もその例に漏れずステージデザインも込みで非常に高いクオリティを提供してくれます。
難易度についてもヴァーミリオンよりはだいぶ軟化したと思うんですが、もしかして高難度の方が場合によっては有利だったりするんですかね。

優しいごはん

こういった長編がウディコンにおいては難しいなというのはカヤミセツナの頃から思ってはいたんですが、それにしても圏外なのは悲しみがあります。
様々な食材を効率よく狩って料理を作り上げていく一連の流れは作業の流れとして良くできていて、準備のために無心で肉を狩るのも乙な感じの作品でした。
プレイすると色々なものを美味しく食べようという気持ちになってきます。タイトル通りだ。

POV

これが圏外なのは理性では納得できて、感性が納得せず、総体としてあんまり納得していない自分が中央に居座っています。
このゲームをどう評価すべきかは本当に難しく、筆者が総合的に14番目に置いているのが妥当なのかそうでないのかの判断は自分自身の中ではできませんでした。理性と感性が一番相談して点を乱高下させたゲームであり、遊びやすさ以外においては喧々諤々の議論を脳内で交わした末にこの状況に落ち着いています。感性はお前は夜更かししてまでクリアを模索したんだから熱中度10点だろうと叫び、理性はゲームやらずに不具合を調査した時間が4割近くに上る作品の熱中度を10にするのは健全なのかと諭してきます。全てがこの調子でした。
万人にお勧めするつもりは毛頭ないんですが、そのゲームを良いと感じたのであれば、数多の不具合とAバグを潜り抜け、進行不能を全て回避してクリアルートを見つけ出す巻戻士みたいなメンタリティでゲームができるような人にはとりあえずやってみてほしいです。良いと感じたのであれば、きっと後悔はしません。

モンスター・レプリカ

モンスター200種以上を、色違いっぽいのがいるとはいえど、ここまで揃え切って各地に上手く散らばせているというだけで素晴らしい作品なんですが、なんで圏外なんですか。これが分かりません。
自分なりのレプモンを駆使して色々と戦略が立てられるのも面白く、お気に入りのレプモンを軸に戦うのでもよく、何かテーマを決めて揃えて行くのでもよく、プレイヤーの好きなように遊ばせてくれる度量のある作品でした。

後記

執筆中……

感想

以下はもはや文章になっていないかもしれない感想です。ご笑覧ください。

今回は海外旅行と帰省にもろに被ったので、適当にスケジュールを立てて40から50作品程度に留める予定でした。しかし、帰省がキャンセルになったので、それならと詰め込んだ結果、ほぼ全作品クリアと相成った次第です。
ほぼ、と言うのは全作品をプレイしている方なら分かると思うんですが、2作品ほど回避できない進行不能があるので、クリア不能と判断したためです。ちなみに、進行不能がありはしますが、POVはクリアできるのでクリアしています。というかクリアさせる力がありました。

今回のウディコンで一番好きな作品を挙げろと言われると、雪山道と答えたくなるところではあるんですが、エントリー停止作品を挙げて良いのか微妙なところではあります。ただ、雪山道は良かったというこの気持ち自体は間違いなく、気付いたら滅ぼし姫をウィッシュリストに突っ込んでました。風が吹いた。
そのせいで、今ウディコンの最大の心残りとしてAnotherに行けていない、というのが残り続けているわけなんですが、プレイスキルが無さ過ぎて行ける見通しがあんまり立っていません。もっと貪欲な戦略の見直しが必要そう。

今ウディコン、ゲームの面白さという面ではやけくそ、印象に刻み込まれたという面では記憶のあらいかた、なんか良く分からないところにぶっ刺さったという面ではPOVが強く心に残っています。
やけくそは何も考えずにやると軽率にベリーハードを起動し始めるので、全作品をクリアするには強い自制心が必要になります。こんな面白い作品を出されると困る。
記憶のあらいかたはフリーゲームというものが持つフリーさをぶっちぎっていった作品であり、もう忘れることあたわずといったものになっています。完全にこげとなってしまった。
POVは定期的に来る何故か己に刺さってくるタイプの作品で、過去ウディコンだと死後の世界に触れた彼女はとか、僕らのスイソウとか、緋色の研究所とか、hereとか、このあたりの作品に該当します。そして、これらの中でも一番自分の中で処理に困っている作品でもあり、心のどこに置くか決めあぐねている状況にあります。どうやってラベリングすべきなんだろう。

年々感想を書く時間が取りにくくなり、それに応じてウディコンから時期が離れるごとに感想をしたためるのが難しくなっていき、よりモチベーションが低下していく負のスパイラルがある気がします。社会人でゲーム作ってる人凄いなと改めて感じる今日この頃です。感想書くだけで、ここまで時間かかるわけですからね。ゲーム製作は言わずもがな。

前半書き終わるまでにここまでの時間がかかっていて、もう旬も過ぎている感じもあるんですが、感想は半分くらい自分の備忘録として書いてるので良しとします。ここまでで大体11万字くらい書いて校正してきたので、残りのレビューとか校正とかやっていこうと思います。目指せ11月上旬。