第16回ウディコン全作品レビュー - LIGHT OF MANA

02. LIGHT OF MANA

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG LAKO
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.8 クリア

良かった点

  • グラフィックは素晴らしいの一言に尽きます
    • 演出もまた良く、高品質なグラフィックが最大限活用されていました
  • 麻雀をベースとした斬新な戦闘システムが楽しめます
    • ある程度の運に翻弄されつつ、準備と状況判断で打ち勝っていく楽しさがあります
  • ゲーム設計、シナリオ、UIから演出と全ての面で高い完成度のゲームでした

気になった点

  • 選択について、前半が選択後キャンセル不能、後半が選択後キャンセル可能なので、ごくたまに前半をミスってキャンセルできないことがありました
  • こちらの手牌に干渉する敵が多いため、大技にあまり価値が無いように感じました

レビュー

役を揃えて一発逆転

LIGHT OF MANA は、麻雀ライクな戦闘システムで戦うノンフィールドRPGです。
雑魚戦とイベントがミックスされたステージを攻略し、最奥のボスを撃破する流れで進行していくことになります。

このゲーム最大の特徴である麻雀をベースとした戦闘システムは極めて独特なものとなっており、運に左右されつつも戦略を練っていく面白さを包含しています。

戦闘画面

まず、色と数字が描かれた牌がターン開始時に配られます。続いて、これを単独で使う前半フェーズと、いくつかの組み合わせで使う後半フェーズの二つを行うことになります。
単独で使う場合、威力は抑えめになりやすいものの、色に応じて攻撃や回復、ドローなどの行動をその牌に書かれた数字ぶんの強さで行うことができます。組み合わせを作る必要がないため、ここでは柔軟な行動が選択しやすくなっています。例えば、上記の赤9を選択した場合、高い攻撃力で通常攻撃を仕掛けられます。
一方で組み合わせにおいては、連番や同色など、一定の法則で牌を揃えることで単独よりも強力な効果を発動することができます。その分、揃える難易度は高く、消費する牌も多いため、ここぞというところで使いましょう。

この時に使える組み合わせのパターンは、攻略の過程で手に入るスペルと呼ばれる役を装備すると増やすことができます。例えば上記の例では、同色3つを揃えるだけで威力3の攻撃が発生し、それが赤3つなら威力5の攻撃が追加で発動します。
一ターンに複数の牌を消費して多数のスキルを発動することはできますが、ターンの開始で引ける牌や、ドローできる牌は限られます。加えて、雑魚との戦闘の場合、牌の状況は引き継がれてしまうため、あまり使いすぎると後の勝負に尾を引く可能性もあります。
敵の体力などを見ながら、どの牌を単独で使い、どの牌までを組合わせで使っていくか、それぞれの牌の切り所を考えることが重要となるでしょう。

また、こうした独自なシステムを採用しているにもかかわらず、操作は驚くほど直感的に行うことができます。これは洗練されたUIの巧みさによるものであり、この作品が持つ高品質なグラフィックがなせる業の一つと言えるものでしょう。
オリジナルの様々なグラフィックで彩られた画面全体は常に華やかさに満ちており、短編ながらも完成されたシナリオを引き立てるイベントの数々も、素晴らしいスチルで構成されています。
このハイレベルなグラフィックもまた見どころの一つと言えるでしょう。

斬新な戦闘システムを圧倒的な完成度で仕上げつつ、高いレベルのグラフィックにより遍く要素のクオリティをも引き上げている、全体を通して高い完成度を持つ作品となっています。
特殊なゲームが遊びたい人にも、堅実に良くできたゲームが遊びたい人にも、どの需要にも応えること請け合いのゲームと言えるでしょう。

感想

グラフィックと良い演出といい、ゲームUIの洗練され具合といい、異常なまでに高い完成度を誇っている作品です。Steamのディスカバリーキューに流れてきたら目を止めるレベル。フリーゲームにこれを言って賞賛になるかは分からないんですが、良い意味で商品レベルのクオリティというものに達している作品であると言えます。

殊にグラフィック面は終始高いクオリティのまま最後までずっと画面を豪華に彩っており、ゲーム全体に華やかさをもたらしています。
単純な画力の高さ、アセットの圧倒的なクオリティもさることながら、それらを効果的に運用する演出や、煩くならないように配置するセンス、動と静のバランスなど、使いこなす腕前もまた一流のそれとなっています。
個人的にはステージ入りの演出が好きです。

その上で、戦闘システムはかなり斬新であり、かつ楽しいものにもなっています。
麻雀ベースではありますが、上手く揃えて攻撃を通していく、どこまでをキープに回して先を見通すかを考える、といったあたりの戦略性も高く、単なる運否天賦に留まらない奥行きがあります。
その上で特殊役をスキルとして用意することで、大枠の戦略の方向性を自分のやりたいように組み立てられるようにもしています。

とはいえ、個人的な所感としては、大きめのスキルは発動条件が難しいので厳しいところはあります。さすがに手元の牌の数は心もとなく、ちまちま集めていくよりは、少しでも殴った方がトータルの効率は良くなりがちです。
特に、早めに決着をつけつつ消耗も抑えたい雑魚戦も戦い抜く上では、大技を振る機会はほぼありませんでした。
加えて、中盤くらいから敵の行動にこちらの牌への干渉を含むものが出てくるため、なおのこと状況をキープし続けることが難しくなっていきます。このあたりの理由もあり、長期的な戦略の目線に比べて、短期的な目標の立て方の方が重要になってくる印象があります。

ただ、それでも消耗戦になりがちな雑魚戦を勝ち抜いていくためには、牌のバランスを考えたスキルの戦略は必要であり、ここに関しては長期的な視点も必要になることが大いにあります。
あんまり単独で使わない1の役目として、1から成立するスキルを用意して上手く消費していく、色を固めることで強力なスキルを出せるようにしておき、消耗戦に備えたり、ボスへの初撃として温存しておいたりする、といったようにスキルを軸にある程度のプランは立てられます。

個人的には回復が強いなと感じていて、最終的にはほとんど回復ビルドのような構成になりました。なんでも緑6つ、緑3つ組による回復力で継戦能力を高めていくことで、ラスボス以外には回復薬を消費しないレベルの運用が可能になります。
一方で、相手の回復がある場合はジリ貧にもなりがちなんですが、そこは1の刻子などの火力となる手段を用意しておき、その分の上乗せで押し込むことを目論んでいました。

なお、装備はマナの腕輪が最強です。他を大して使ったわけではないんですが、ノーコストで1ターン3枚引きできるのが弱いわけがない。かつてはサイバー・ブレインが殿堂でしたからね。
牌が攻撃にも回復にも使える以上、その手数が単純に増えるという効果は絶大であり、これを使うだけでぐっと戦闘が楽になってきます。
このマナの腕輪のおかげでスキルや回復も安定するようになり、回復ビルドはだいぶ動きやすくなりました。

こうして、最終構成は以下の通りになりました。
順子と刻子はさすがに汎用性が高いので入れていて、1が3つは前述の通り余らせがちな1を上手く運用するのに取り回しが良かったので入れていました。そして、単純に回復能力の高いスキルを二つ入れることで、緑さえ安定して供給できていればほぼゾンビみたいな立ち回りができます。
単独で使う場合は、高火力の赤がない限りはドロー安定で、そこから順子や刻子で殴る形がメインでした。

最終構成

また、戦闘システムのみならず、道中にある薄っすらローグライトっぽいダンジョンも楽しさに寄与しています。
ノンフィールドとして戦闘をメインに楽しみつつも、ミニゲームとしてきっちりミニなサイズのゲーム性を持つ遊びが加わることで、適度に空気を変えてくれました。ダンジョン限りの効果についても、個々人の戦略性に基づいた決定ができて良い。
オマケとしてローグライクも用意されており、戦闘システムとの噛み合いが良い設計だなと感じていました。

加えて、これらの様々なシステムを補助するUIの素晴らしさも良いところで、かなり独特なゲーム性をしていつつも、すんなりと操作を飲み込めるデザインとなっています。
恐らくもっとUIが洗練されていないようなデザインであれば、これほどすんなり楽しむことはできなかったであろうなと感じさせるものに仕上がっていました。情報の配置が上手い。
たまにどっちのターンか分からずに3つ使うつもりの牌を普通に攻撃で使ってしまうことはありましたが、これはだいたい筆者の凡ミスと言えるものです。個人的には、片側がキャンセル可能なのにもう片方がキャンセル不能な非対称性は若干気になりもしますが、設計上避け得ない部分なんだろうなとも思います。

シナリオ面についても軽く触れておくと、短編として起承転結の定まった良いものとなっています。伏線っぽいのもある。そしてどうしても入れたいのであろう、ケモノとスケベもある。そういうもの。
この容姿でドワーフとエルフの種族に分類されるパターンは初めて見たと思いますが、よく考えたらドワーフやエルフをああいうものと捉えているのも現代的な作品に慣れすぎたせいかもしれません。トールキン的にどうかは知りませんが。
閑話休題。物語展開自体は比較的王道であり、道中の様々な交流もあってゲームを進行させるための動力として機能しているように感じていました。

しかし、最終的にやろうとしていたことを鑑みると、坑道を塞いだのは彼の仕業ではないということで良いんでしょうか。焦って報告をしていたようですし。姉がそこにいた理由がそっちという可能性もあるかもしれませんね。
後はどうでも良い話なんですが、この世界、どこでもドアがある世界なんですね。この世界で放映されているドラえもんはどんな姿なんだろう。独眼竜みたいな野暮な話ではあるんですが。