第16回ウディコン全作品レビュー - るぐれて

04. るぐれて

ジャンル 作者
探索ADV ディッシェ大関
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 2.0.4 全END

良かった点

  • 細やかな演出で雰囲気を作っています
  • 身近なものを想起させる良いシナリオでした

気になった点

  • 森の探索面の因果関係がやや分かりにくく感じました

レビュー

るぐれての話

るぐれては、遊びに行ったおばあちゃんの家の周囲を舞台とした探索アドベンチャーです。
毎年恒例のはずだけれど、やや様相の異なる世界を探索し、物語を進めていくことになります。

この作品が描いている世界はまさに夏という季節を余すことなく描写しており、色々な演出やイベントも相まってその空気感を存分に感じ取ることができるようになっています。
描かれる物語も併せて、夏という季節と帰省というイベントをプレイヤーに強く想起させることでしょう。

また、全体を通して短編に相応なボリューム感であるため、探索すべきマップはそれほど広くなく、気軽に遊ぶことができます。
アイテムを見つけたり、イベントを起こしたりして、どこかがおかしい場所で目標を目指して歩き回りましょう。

感想

ウディコンは夏に開催されるのもあって、夏を感じさせる作品が良く出展されるんですが、この作品もそのタイプに属しています。他にもいくつかあるんですが、帰省という行為の卑近さもあって、個人的には一番夏を感じさせるものでした。

全体を通してみると、細かいところも含めて、諸々の演出面が凝ってるのが良いところです。
タイトルからシームレスに開始する演出から始まり、季節を感じさせるゴッドレイや、雰囲気を感じさせる森といったその場の空気感の演出がしっかりと行われていました。ゴッドレイは暗転時に残るので、うっすら気になりながらプレイしてはいましたが。
個人的に好きな演出というか手法は、散歩のタイミングで犬の操作に切り替わるところです。散歩は犬に連れられるものでしかなく、人間主体のものではないということが強く表現されていました。そもそも小さい子が主人公なので制御するのも難しいんでしょうね。

また、マップ自体は決して広くないんですが、狭い所では寄った画面にすることで上手くカバーしているのも面白いです。画面に映る対象が減るだけでも、結構世界が広く感じました。
マップが狭いおかげで探索面もそれほど探し回る必要がなく、短編としてちょうど良いサイズ感の探索要素に収まっているというメリットもあります。

シナリオ面は作中でも言及されていた通りに、バッドルートを基軸にした世界が中心になっているように感じました。これは悪い意味ではなく、グッドエンドルートがかなりとってつけたような幸福で良かったです。ベオグラードメトロの子供たちの終わりとか、シンフォニック=レインのグランドエンドとか、あの辺りにおける、でもそうはならなかったんだよという感じのエンディングが個人的に好きなので。
そもそもオマケを経由させている以上、そこからどういうエンディングを迎えても良いところなので、諸々を振り切って最大限のグッドエンドに到達するのは良いことな気がします。筆者はバッドだけでも満足しますが、グッドがある方が多分読後感は良いでしょうしね。

そして、全体パート的に、おばあちゃんが会いに来てくれたのに見ず知らずの子供たちとかくれんぼしてる時間の方が長くなってるのは、ある意味では不幸な話なのか、おばあちゃん的には遊んでいる姿が見れて嬉しいのかどちらなんでしょう。後者だと良いですね。
後は振り返ってみると、あれは未来の自分の墓参りまで幻視したという解釈になるんでしょうか。ここまでくると、過去も現在も未来も他人も肉親もごっちゃになった結構カオスな世界だったのかもしれません。