第16回ウディコン全作品レビュー - アルバトロス新聞社

31. アルバトロス新聞社

ジャンル 作者
アドベンチャー みずゆ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 8/6 終了

良かった点

  • 独特な世界観がシニカルに描かれています

気になった点

  • 特殊な用語を検索できますが、そこそこ対応していないものがあります

レビュー

ただ何もせずとも低きに流れる

アルバトロス新聞社は、記事編集を繰り返す日々を送るアドベンチャーです。
プレイヤーは記事を編集し、就寝するという一連の流れのみを行って日々を過ごすことになります。

記事の編集においては、ほとんどプレイヤーの意思が介在する余地はなく、ただそこにある悪意へと流れ続けていきます。
そうしてひたすらに流れていく日々と時々に起こる時事を眺めつつ、気になるものがあればちょっとだけ外の反応を伺ったり、検索することができたりするだけです。
無為の中の悪意に身を浴しつづける、奇妙な体験を得られることでしょう。

多くの時事ネタはどこかで見たようなものでもあり、それに対する反応もまたどこかで見たようなものとなっています。
どこかで見たようなその何かを、改めて眼前に晒してはみませんか。

感想

毎度のことながらこれはゲームなのかと思いながらプレイしています。やりたいことと胡乱な情報を詰めて、一定の法則で飛び出すようにした装置なんじゃないかという気すらしてきました。
飛び出してきたそれに意味を見出して物語を構成しても良いし、そのまま漫然と受け入れて咀嚼することなく飲み込んでも良いような作品です。筆者はこれを後者で解釈したので、追体験のようなゲームだと認識しています。

タイトルなどを見た印象はHEADLINERっぽいのかなと思ってはいたんですが、実態はだいぶ違っていて、時事を操作するというよりは時事を眺めるゲーム性をしています。時事ネタ盛り盛り。日本に住んでいれば分かる時事ネタだけで構成されている、と言っても過言ではないかもしれません。
一応チャンネルを変えることによるルート分岐などもありはしますが、おおむね単純に日々を消化し続けることになるゲームでした。選択肢はほぼなく、どっちのルートに入ろうとも、ほとんど分岐することなく進行していきます。
情報の空虚さや行為の無為性をもって表現された世界観という感じです。

時事の取り上げ方は皮肉っぽいというかシニカルな感じで、冷笑系に近い温度感が表現されています。これは何もゲームの主張そのものが冷笑系というわけではなく、ゲーム内でトレースする世界が冷笑系という話です。
そうした世界を鋭くえぐって批評するでも、声高に批判するでもなく、その行為やそれを行う人々をひたすらトレースし続けることで表現しているのかなという印象でした。有体に言えばTwitterの悪意の再現度が高い。

なお、ちょくちょく特殊な用語が出てくる上に、全部がちゃんと検索で出てくるわけではありません。イノチの木って何ですか。また、検索したら検索したで、知らない言葉を知らない言葉で説明されることもあります。Wikipediaの解説みたいですね。