第16回ウディコン全作品レビュー - チリガミの塔

32. チリガミの塔

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG Masaqq
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.2 NORMALクリア

良かった点

  • 緩く協力できるオンラインのシステムが機能しています
  • ボムを基点とした思考を回せる、独特な戦闘システムが楽しいです
  • 武器のサイクルが上手く回るデッキ構築型の仕組みが整備されていました

気になった点

  • 攻撃のアニメーションが冗長に感じました
  • UIの主にドラッグ周りがやや使いにくかったです
    • 現行バージョンでは改善されている可能性があります

レビュー

チリも積もれば何とやら

チリガミの塔は、独特なシステムで構築されたノンフィールドRPGです。
回数制限付きの武器を上手く運用しつつ戦闘を進め、一定階層ごとのボスを撃破していくことになります。

戦闘において雑魚からの被弾を抑え、ボスを効率よく攻略していくためには、その独特なシステムを理解して上手く立ち回る必要があります。

戦闘画面

戦闘は上記のようなヘックスのマスの中からターゲットがランダムに選ばれ、そのいずれかに手持ちの武器で攻撃することで進行していきます。
武器には攻撃力が設定されており、各マスにある数値をこれで削り切ると、その色に応じて敵にダメージが入ります。赤は5、青は3、灰は1ダメージとなっており、加えてそれぞれの色の弱点となる武器属性で攻撃するとより多くのダメージを与えることができます。
さらに武器には攻撃する範囲が設定されており、上記の斧であれば、縦一直線の範囲を攻撃できます。
これらの情報を踏まえ、相手の体力、マスの位置や色などを勘案し、手持ちの武器から適切なものを選択して、効率良くダメージを与えていきましょう。例えば、上記の例では攻撃力6の武器で縦に全てのマスを削り切ることで、17のダメージを与えられますが、相手のHPは5なのでオーバーキルであるとも考えられます。

かてて加えて、思考を複雑にするのはボムの存在です。
これに触れてしまうと敵の攻撃力が上がり、ゲームの難易度によっては追加でダメージを受けてしまいます。ボムを受け入れてでも相手へのダメージを優先するか、ボムを避けてリスクを防ぐべきかどうか、現在の状況と敵の性能を加味して適切な判断が求められるでしょう。

こうした様々な情報が絡み合う複雑な戦闘システムとなっているため、ともすれば全てを把握できるか不安になるかもしれません。
しかし、使用したい武器の攻撃ボタンを右クリックすることで、その武器を使用した時に起こる結果の予測を、上記の画面に示されるような形で簡単に出すことができます。運用上は、こうして出た予測の中から適切な選択を見つけていくのが便利です。

そうしてこちらの攻撃を終えると、相手からの攻撃を受けることになります。この時、敵からのダメージを一番上に置いた武器の使用回数を消費して受けることもできます。
受け性能の高い武器を装備の中に含める、使う予定のない武器を上において消費する、あるいはあえて空にして攻撃を受けるなど、どうやって敵の攻撃を受けるかもまた戦略の一部となるでしょう。

これらのシステムを前提として、どんな武器を手に入れるか、どの武器を残して攻撃を選ぶか、プレイヤーはそういった時々に応じたリソース管理を重ねていくことになります。
このため、雑魚との戦闘であっても気を抜くことはできません。最後に待ち構えるボスを効率良く倒すためにも、道中の戦いにおける武器の選択は妥協せずに、リソース管理を徹底していきましょう。

また、このゲームにはオンラインによる緩い協力要素がいくつか存在します。
特に、他のプレイヤーがクリア時に持っていた強い武器をギフトとして受け取る仕組みは攻略の助けとなるでしょう。序盤から高い性能の武器を獲得できるため、上手く活用すれば戦闘を優位に進められます。
オンラインの連帯を上手く活用し、塔を登っていきましょう。

感想

オンライン要素が好きな作品です。この辺の緩い連帯感、ウディコンという場に上手く刺さっているように感じました。場に向けて設えられた仕組みとして美しいです。
その上で、ただそのシステムだけで勝負するのでなく、ゲーム本体も面白い独自の戦闘設計で構築されているのも良かったです。アイデアが二重に乗っていて、上手く噛み合わせて機能させています。

戦闘のシステム面で秀逸なのが、ボムの仕組みです。ゲームの設計上、ターゲットと火力は一番良いのを選べば一番強いということになりそうですが、ここにボムが入り込むことで判断を一段階深める設計になっています。
これにより、ボムのデメリットを受け入れてでも高い攻撃力を通すのか、相手の被弾を受け入れてボムを避けるのか、リソース管理の面での思考を必要とします。一番攻撃性能の高いパターンを選ぶ、一番ボムを食らわないパターンを選ぶ、許容可能な範囲でボムを受けるパターンを選ぶなど、複数のターゲットがあることに意味を与える良い設計だなあと感じながらプレイしていました。

また、ゲーム全体の設計はデッキ構築型ローグライク風ではあるんですが、相手の攻撃を武器で受ける、という設計もユニークに感じています。
使用回数がそのまま防御なので、何を防御に回すかの選択も考える必要が出てきます。回数の少なくなった武器を上に回して受けに使うのも良いですし、ちゃんと防御用のカードをデッキに組み込んで運用するのも良いですし、色々と戦略の幅があります。
加えて、この仕組みと使用回数の兼ね合いにより、頻繁に装備がリニューアルしていくのも良いところです。ゲーム後半になるにつれ武器が強くなるため、基本的にはサイクルを回した方がアドが取れるんですが、それをプレイヤーが意識せずとも行えるデザインになっています。
その上で、お気に入りの武器があれば合成である程度延命ができる仕組みもあり、ランダム性と新陳代謝のバランスが上手くとれている印象でした。

なお、初見だと武器の性能が分からないので選択が難しい面はあり、基本的には武器は拾ってぶっつけ本番でテストしてみるしかありません。
この影響で、特に終盤は新しい武器に手を出しにくいところはあります。少なくとも序盤の内にある程度武器を触って、バリエーションを把握しておくのが重要っぽいです。もしくは二週目に頑張りましょう。極端に弱い装備は無さそうなので、とりあえず入れておけばなんとかなることもあります。

また、制度設計自体は以上にあるように高い完成度だなあと感じていたんですが、一方でUIの触り心地はちょっと慣れが必要でした。
特に武器順入れ替えがだいぶ直感的でなく、掴んだ位置がやや上にはみ出るくらいだと下の方を掴む挙動を示します。加えて、入れ替えのドラッグが交換の挙動になり、挿入ができません。並び順の変更として、交換というのが微妙に非直感的でした。
ただ、このあたりの使用感はプレイ後のバージョンでも改善が行われたようなので、現在はそんなに違和感があるほどではないかもしれません。

冒頭でも触れたオンライン要素についても言及しておくと、ギフトと共有ポイントという緩く協力できる仕組みであるというのが個人的に好きなところです。ウディコンにおけるオンラインの仕組みは、割とランキングという競争の仕組みに寄りがちなんですが、このゲームでは皆でチリを積らせてエンディングに届かせる連帯が感じ取れる設計になっています。
また、ギフトというゲームを初めてすぐに恩恵を感じられる仕組みと、最後にチリをもって分岐する遅れて分かる恩恵の二段構えになっていることで、初めにも終わりにもオンラインによる協力を感じられる設計であるのも良いところです。ちゃんと皆と緩く協力していたということが印象に残ります。

このあたりの基本的な仕組みのほかにも、オープニングで流れる3Dのアニメーションとか、寒いステージで画面に霜が出てきてドラッグで消せるとか、細かい遊びも個人的には好きなポイントです。
アイデアが惜しげもなく積み込まれた作品という感じがして良いゲームでした。

ちなみに、プレイデータは以下になります。
割とボディを満遍なく使ってますね。武器の新陳代謝が良くできていることがここからも見て取れます。

プレイデータ