第16回ウディコン全作品レビュー - 霧の街の迷宮譚

34. 霧の街の迷宮譚

ジャンル 作者
3Dダンジョン系RPG abon
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 8/4 クリア+彫像

良かった点

  • シビアな難易度も、ある程度の無法を許す難易度も双方楽しめる作品でした
    • 一部武器の強さが光ります
    • 状態異常の優秀さもありました
  • 3Dダンジョンの中で上手くギミックを構成していました

気になった点

  • 霧システムがあまり有効に機能していないように感じました
    • 弱い霧を引くまでステージに入り直すのが丸く思えます
  • 基礎的なシステムの説明も宿屋の会話に任せているため、プレイヤーによっては知るべき情報が手に入らないということが起こりそうです

レビュー

深い霧の中を歩む

霧の街の迷宮譚は、3Dダンジョンを進むRPGです。
いくつかのステージに分かれた3Dダンジョンを充分に探索してから、ボスのいるダンジョンへと向かうという流れとなっています。

3Dダンジョンを探索していく上で気を付けるべきなのは、特定の位置に触れることで発生する戦闘です。戦闘の外の回復手段が宿屋などに限られているため、上手く消耗を避けないとゲームオーバーが見えてきます。
その戦闘におけるシステムは、ターン開始時に充填されるSPを消費してスキルをいくつか発動していくものです。装備によって使えるスキルは変化していくため、消費SPの少ないスキルで行動回数を増やすか、消費SPは高くても性能の高いスキルで殴るか、バランスを取るかはプレイヤー次第となります。なお、良い装備であるほど良いスキルとなる傾向が強いため、戦闘に勝利するには良質な装備を集めておくのが重要となるでしょう。
また、戦闘中は基本的に敵の行動予測が見えるようになっているため、これを参考に使用するスキルを組み立てていくのも肝要です。

ただし、ダンジョン内には霧がかかっており、この霧の深さによって戦闘の難易度は大きく変わっていきます。
というのも、霧が深くかかるにつれて敵の行動が見えなくなったり、敵の種類が分からなくなったりといった不利な状況に陥るためです。敵が剣士なのか魔法使いなのか分からなければ、スキルで防御を上げるべきか魔法防御を上げるべきかが分かりません。霧が深い時は、あまり戦わないようにするのが良いでしょう。

そうしてダンジョンを進んで出口に辿り着くと、それまでに探索した量に応じて探索度が上がります。この探索度を一定以上貯めることで、ボスのいるダンジョンに挑めるようになります。
各ステージのボスは、いずれも特殊な攻撃を使ってくる難敵揃いです。装備を適切に集め、相手の行動を観察してスキルを上手く運用していかなければ勝利は難しいでしょう。何度も挑戦して傾向を掴み、装備に付随するスキルで上手く対処することが肝心です。

それらのボスを撃破し、さらにダンジョンを進むにつれて、主人公は霧の街という異変の正体に迫っていくことになります。
その謎を解き明かすためにも、何度もダンジョンに挑んでレベルを上げつつ装備を集めていき、立ちはだかるボスを倒していきましょう。

感想

個人的にいろいろと好きなところのある作品です。序盤は割とシビアなデザインとか、そうは言っても整ってきたら色々無法できる仕組みとか、大仰な言い回しとか、諸々です。
3Dダンジョン形式とマッピングの中で出来る限りギミックをやろうとしているステージ構成とかも好き。

一方で、全体の設計的に見ると、霧はあんまり機能していないような気がしていました。
プレイヤー側にとっては、霧4で探索するメリットは無く、基本的には霧1で探索するのが楽です。加えて、脱出にデメリットがない以上、ステージに入った時に霧が深いなら、リセマラして霧1を引くまで粘る方が後々楽になります。
こうなると、ステージ中で霧の変化が起きるまでは霧1ばかりになるため、あんまり霧がある意味がありませんでした。
なんとなくイベント周りに霧が絡むものがありそうではあったんですが、デメリットがそこそこ大きいので、安定する霧1を選びがちな側面があります。ネームド武器の売り出しが霧4だと多い、などがあればチャレンジする意味はあるかもしれません。

また、カルマについてもデメリットが宿屋の会話を見るまで良く分からず、それを見てなお取得するデメリットが不明瞭であるがゆえに、わざわざやりにいくのは難しいように感じました。襲われるというのがどういうレベルで不便なのか分からないので。
なお、ここに限らず、作中のシステムの説明は、かなり思い切ったところまで宿屋の会話に集約しているので、初見だとシステムの把握はまあまあ難しめです。夜システムに関してはほぼ終盤にようやく理解しました。
手探りで進めている感じは霧の中というテーマにマッチしていて好きではあるものの、さすがに基礎的な判断に使う範囲は説明してほしくもあります。難しい。

ついでに言うと、泉の回数制限の存在意義も微妙なところで、序盤以外では戦闘中の回復手段で事足りるので活用することはありません。そして序盤においては、この泉をどれくらい使うか分からないので、おちおち使うこともままなりません。
この辺における、全体的なシステムのアンバランスさは気になるところが多かったです。

ただ、そういう細かい点は抜きにしても、全体を通したゲームデザイン自体は好みで、難易度のカーブも好きな作品でした。
序盤がだいぶギリギリの戦いで、HPの回復が間に合うかの瀬戸際くらいのヒリヒリした戦いになるんですが、ネームド武器が揃い、SPが増えてくると、かなり余裕が出てきます。
特にSPが増えてくると行動回数で無双するようになり、ほとんど雑魚敵には負けることが無くなってきます。

ネームド武器が思い切った強さなのも良くて、状態異常の圧倒的な性能でごり押せるレベルの性能をしています。氷柱の短剣がお気に入りで、初見のローレイネをほぼ完封する性能をしていました。強すぎる。
全身をネームドで固めた強さは絶大で、雑魚はともかく、ボスにすらかなりの有利を取って戦いができるバランスとなっていました。
ただ、マントだけはずっと粗末で、終盤にダンジョンに入り直し続けてなんとか揃えたという状態です。

これは裏ボスにも通じていて、裏ボス自体はきっちり強いんですが、こちらの武器も相当強いため、強力な技の応酬となります。
攻撃手段さえそろっていればローレイネ以外にはほぼ負けないんですが、ローレイネだけ氷が通りにくいっぽかったり、強力な魔法攻撃を打ち込んでくるので場合によっては相打ちにされたりと、一筋縄ではいきません。
専用の戦略として、紅蓮の弓に切り替え、魔法防御をちゃんと上げる方針にして撃破しました。ちゃんと裏ボスで一番強いのは良いですね。

なお、最終的な装備の構成は以下になりました。
霧裂きは全体攻撃として優秀で、前述の通りお気に入りの氷柱の短剣は最強の状態異常である凍傷を連続攻撃でカジュアルに与えられるので優秀でした。アイスガードで守りの方からも凍傷を与えられるので、上手くいくと一方的な戦いにできます。
前述の通り、ローレイネだけ紅蓮の弓を持ってきて対処しましたが、こっちはこっちで威力が高いので矢筒さえあれば充分に戦力になります。

装備

シナリオ面でも霧の町という世界観が上手く表現されていて良かったです。個人的にこういう言い回しが好きなのもあって、満足感は高めでした。それぞれのステージの空気感の違いも良い。
また、裏に入ると三女神のキャラが崩壊するという点についても面白いポイントでした。黒塗り、真の姿をさらけ出していないことを指していたんですね。

なお、想定プレイ時間については4から6時間とありますが、筆者は3時間で裏まで終えています。装備が上手いこと手に入ったのか、何か噛み合ったのか。
一つ一つのステージについても決して長くはないので、書かれてある印象よりはサクッと遊びやすい作品でもあるとは思います。