第16回ウディコン全作品レビュー - グッドバイ

35. グッドバイ

ジャンル 作者
サウンドノベル 睦涼(むつみ りょう)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10分 1.02 クリア

良かった点

  • 不安感を掻き立てる良質なグラフィックとアニメーションでした
    • 短い中でも強く印象に残ります

気になった点

  • 特にありません

レビュー

グッドバイは、精神的ホラーに類する要素を含んだ短編のノベルゲームです。
ゲームはいくつかの会話とアニメーションで成り立っており、そのいずれも短い時間でプレイできるものとなっています。

しかし、短いからと言って流して見ることのできる作品ではありません。
むしろその短さがゆえに、描かれた表現は心を不安定にさせ、恐怖ともとれない居心地の悪い不安感を掻き立ててくれることでしょう。

ごく短い作品となっているため、多くのことを語る必要はありません。気になったら是非プレイしてみましょう。

感想

マトリョーシカみたいなゲームです。作中作の存在とその演出をもって、その作品自体のエンディングが定まっています。
短い間に感じた違和とか不気味さは凄まじく、この短い間にここまで不安感を掻き立てられるものなんだなとグッドバイを眺めながら感じ入っていました。

sessionを分けているのもこのマトリョーシカの感覚をより強くしていて、地続きと言っても良い会話をあえて分断することによって、作中作の外側がまた作品であることが分かりやすくなっています。
また、これはシステム面でもアニメーションを差し込むタイミングとしても上手く機能している上で、リセットボタンを押しやすい構造にもなっているのが良いところです。
このレベルで短いとはいえ、全部やり直すハードルは思いのほか高いので、明らかにそうだろうなと思っていても、本来は安易にF12キーは押しにくいところです。しかし、sessionを分けることでその負担をだいぶ抑えてくれているなという印象がありました。

また、アニメーションの不気味さが本当に絶妙なのも良いところです。ギリギリ教育番組に有るか無いかで言ったら無さそうなラインを突いてきます。コラージュなどを使うような、わざとらしいほどに不気味なものでないのが逆に不安感を覚える要因となっていました。
よりホラーっぽくするなら目のバランスなどを変えるといったこともしそうなものですが、そのようなあからさまなことは行わず、ただ白黒であることと、奇妙な間を作って強制的に見つめ合わせることで、何となく怖いという感情が引っ張り出されるようになっています。

シナリオ的には結局意図は何だったんだという話ではあるんですが、あるいは作中で言われているようにそれ自体には意味が無いのかもしれません。
人々の記憶の中にはグッドバイのような子供の頃に朧気に見た記憶のある、何らかの恐怖を抱いた番組のワンシーンがあって、そういう原体験を呼び起こすためのグッドバイである、あたりの解釈をしています。筆者の例でいうとストレッチマンが該当しますね。
あるいは砂嵐の中に少しだけ映った番組、のような都市伝説の類型とも捉えられるかもしれません。