第16回ウディコン全作品レビュー - 鬼童-oniwarawa-
39. 鬼童-oniwarawa-
ジャンル | 作者 |
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ホラー探索ADV | ゆらもり |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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1時間+2時間 | 1.03 | 全END |
良かった点
- 良質なホラーの雰囲気が醸成されています
- 演出、シナリオ、トラップのそれぞれが上手く作用していました
- 謎解きの質が高いです
- 作業だけでなく思考も求められる良い塩梅でした
気になった点
- ほぼ周回前提ですが、周回はやや手間です
- 慣れれば1周30分程度ではあります
レビュー
良質和風ホラー
鬼童-oniwarawa- は、ホラー系の探索アドベンチャーです。
和風の屋敷の中に迷い込んだ主人公を操作して、様々な障害を突破していくことになります。
障害は主に謎解きの形として表れており、その謎を解くには文言を読み解き、マップに配されたオブジェクトを注視することが重要となってきます。
探索範囲はさほど広くはならないので、余さず調べつつ、提示された謎を解き明かしていきましょう。
謎解きとしての難易度はちょうど良いものとなっているため、適度に頭を使いながら挑めること請け合いです。
また、そこかしこに遍在する和風のホラー要素も見逃すことはできません。ジャンプスケアと違和感を絶妙に交えつつ展開されるホラーは良質なものとなっています。
適宜挟まれるそうした演出に肝を冷やしつつも、冷静に対処して逃げおおせることが肝要となってくるでしょう。
そうして恐怖を乗り越え、謎を解決していくことで屋敷の先へと進んでいき、それに合わせてシナリオもまた展開していきます。
この屋敷は一体何なのか、襲い来る怪物は何者なのか、それを知るにはエンディングに辿り着くしかありません。加えて、異なる分岐に至れば、また異なった事実を知ることもできるでしょう。
あらゆる謎を解き明かしていき、真のエンディングへと到達しましょう。
感想
完成度の高いホラー探索アドベンチャーという印象の作品でした。ホラーの雰囲気とか、開示する情報のペースとか、謎解きの難易度やひねり方とか、それぞれが良い塩梅で構成されているので、体験として非常に良質です。
やり残したことがあるなと思ったら、即座に別ENDのために戻ろうと思えるレベルには完成されていました。追加で2時間かかってるんですが、色々やるべきことを考える時間でもあったので良い時間を過ごせたなと思います。
特に個人的に好きなのは謎解きがちょっと捻ってあるところで、解けた時に良くできているなあという気持ちにさせられます。四方向から見ているとか、晴れの掛け軸とか、よく考えればすんなり分かるけど、初見でちょっと惑う程度の仕掛けの塩梅が絶妙です。個人的にはクイズが一番好き。
さらに真エンドに行くために必要な要素として追加でひねっているのもあり、かなり謎解きというか探索要素をしっかり遊ぶことになる作品となっていました。
筆者は大体の謎は自力で解いていましたが、千代紙の順番だけごり押したので、後でヒントを見て理解するなどしていました。生贄の順番かなと思って色々試していたんですが、どうやら八の部屋のものだったらしいです。確かに最後が橙で締められるので、さもありなんといった感じですね。
それ以外の謎についても、元あった謎を発展させたものもありつつ、ちゃんと探索する必要があるのも散見され、調べていく楽しさがありました。
初見でTrueに行けない設計ではあるなと感じてはいますが、きちんと遊べばそれなりに分岐も納得がいくところではあります。ED1なら初見でもワンチャンスありますしね。ED0は多分無理。情報が後出しなので。
また、ホラー要素としてはブービートラップの設計も個人的には好みです。
好奇心猫を殺すといった雰囲気で配されているものに触れに行くと、問答無用にゲームオーバーにされます。このあたり、余計なものに首を突っ込んでいる自覚はあるので、全く理不尽さを感じません。ふすまが開いたらヤバいと思いつつ見に行きたくなりますし、それでゲームオーバーになるのもまた当然です。
加えて、こういう緊張感がそこかしこにあるので、実際には意味を持たないようなオブジェクトにも敏感に反応し、恐怖を増長させるようにもなっています。良いホラーの雰囲気が醸成されています。
ホラーの雰囲気については鬼がちゃんと怖いのも良く、適宜ちゃんとビビらせてくれます。追いかけっこの難易度が適度に難しいのも良い作用をしていて、恐怖を煽る設計となっていました。
一方で、鬼神までくると怖いよりも気持ち悪い形状ですねの気持ちが勝るデザインとなっており、ラストイベントで対峙する対象としてちょうど良い落とし所にもなっています。立ち向かう対象なので、不気味が勝つくらいが気分に沿っています。サイズ感も大きいですしね。
シナリオ面はホラー探索アドベンチャーの常として断片的にしか語られない歴史と、それに巻き込まれていく形に収斂するものではありますが、最後の対決を含めて大オチがきちんと用意されているのが良いところです。
エンディング分岐にもよりはしますが、そこそこの惨劇があり、犠牲があった話であっても、最後にある程度清々しく終われるのはこの終幕があったからにほかなりません。こういうタイプで、ちゃんと解決するパターンは逆に珍しいかもしれない。
しかし主人公、頭に角生えた何かに対して最初にやるのが「声をかける」なの、なかなか肝が据わってますね。そりゃあ好奇心に殺されかねない。