第16回ウディコン全作品レビュー - 優しいごはん
44. 優しいごはん
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | mashiro |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
17時間 | 1.08 | 全END |
良かった点
- 作業的なメインループが良く回っていました
- 料理と素材の関係が良く循環しています
- 戦闘のテンポもちょうど良いものでした
- ご飯を軸としたシナリオの空気感が良かったです
気になった点
- お使いクエストが作業的に過ぎました
- 終盤のギミックはやや理不尽です
レビュー
ご飯を食べて活動しよう
優しいごはん は、美味しいご飯を食べて進めるRPGです。
自然豊かなミノリ島を訪れた若者たちを操作し、収穫や交流を経て成長していく物語を体験していくことになります。
RPGと言っても、攻略に血道を上げるような戦闘はほとんどありません。
基本的にプレイヤーのやるべきことは、収穫のために食物と戦ってその素材を獲得し、それを元手に料理を作っていくことです。料理があれば体力などを適時回復できるようになるため、より多くの戦い、ひいては収穫が見込めるようになります。
そうして、ひたすら収穫と料理を交互に繰り返し、少しずつ行ける場所や作れる料理を増やしていくことになるでしょう。
料理のバリエーションが増え、行動範囲が広がるにつれて住民との交流も盛んになり、それぞれのお願いごとを聞くことも出てきます。積極的に交流を行って依頼を叶えていき、ご飯をごちそうになりましょう。
このような緩やかなルーチンの中でイベントをこなしていく中で、物語はちょっとずつ進展していきます。様々な場所で様々な食材を収穫していきながら、緩やかにこの世界と物語に身を委ねていきましょう。
感情を激しく揺さぶるような戦闘をするわけでも、思考を強く要求するパズルをするわけでもありませんが、素材をひたすらに狩り、料理をたくさんこさえていく過程は確かに没入することのできる作品となっています。
無心で素材と料理のサイクルを回し、たくさんご飯を食べていきましょう。
感想
説明に違わぬ作業系RPGでした。とにかくルーチン通りに色々作業をこなし、ひたすらご飯を作って食べるゲームです。
最初の作業からしてルーチン行動になっていますが、やることが決まってくると、さらに動きがどんどん決まってきます。その中で少しずつ進展するものもあり、変化するものもありはします。ただやはり全体を通して見ると固定的な行動を繰り返していくことになるので、そういった作業に抵抗がないと楽しめる作品なのかなと思います。
筆者はこのレベルでちゃんと固定ルーチン化させるモチベーションがあるなら好みなので楽しめました。クリッカーとか工場系ゲームみたいなイメージ。
攻略にあたってのルーチンというか行動パターンについて触れておくと、序盤をおにぎりとナス丼でしのぎつつ色々な場所を巡り、徐々に足りなくなっていく回復量を補う形でグレードアップさせていく方針で進めていました。ナス丼は畑の収穫物で賄えるので、序盤はかなり有用な料理に思えます。回復量も充分高いですし。
ただ、どこかでHP1500回復では心許なくなってくるので定食系やオムライスに鞍替えしています。これを活用している間にウシタマを狩れるようになってくるので、それを元手にステーキ定食を作る形に移行しました。
一方、MPの回復はカボチャプリンがかなり優秀で、こちらも畑と乳製品でカバーできるので作りやすくなっています。MP700が不十分になってきたあたりでパンプキンパイを作るようになっていました。こっちも結構作りやすい。モンブランやアップルパイの作り置きもしておきましたが、MPの消費量はHPほど激しくないので、割とパンプキンパイだけでも行けます。
勝負飯に関しては、物語最終盤以外はほぼ不要なので余り試していませんが、適当に作り置きしていた海鮮丼でHPはほぼ持ちました。
MPはイチゴを荒稼ぎしてショートケーキを量産していましたが、そこまでしなくても作り置きだけでも充分カバーできるレベルです。やはり、MPよりはHP回復に比重を置いて料理をしておくのが良さそうな印象があります。
最終的には1100回も料理を作っており、よくこんなに作ったなあという感慨に浸っていました。単純にこの量の料理を作りまくっているクルミが凄い。
そして、これだけ料理を作りまくるモチベーションとして、戦闘システムがきちんと設計されていたのが個人的に好きなところです。
基本的にHPを消費してスキルを発動するのが効率的なので、とにかく雑魚狩りでもHPを消費して全体攻撃をぶっ放し続けることになります。こうなると、たとえ被弾していなくてもHPはみるみるうちに減っていきます。MP消費型の場合もほぼ同様です。このため、継戦するなら料理によるHP回復が不可欠なので料理を重ねることになり、そうして得た戦利品からまた料理を作り続けられるという良い循環が回っています。
自然と作業的な戦闘がループを生み出しており、没頭していると食材の循環が自然に行われていき、時間を忘れて無心で食材を狩ることになります。いつのまにか食材を99個持ってることがザラにあります。
最大所持数が99個なのはやや手間のかかる面もありますが、あんまり素材を貯めずに料理に変換しようというモチベーションを生むので、総合的にはかなり良い仕組みだと思っています。
確かに、コメなんかは99個をすぐにあふれさせますが、これが余りに多いと、そもそも食材を狩っている時間にも終わりが来なさそうです。適度に終わらせるためにも、99個という区切りはかなり機能しています。
また、料理もバリエーションを要求するとともに、おにぎりを1000個作る、みたいな面倒なことをさせない抑止力にもなっています。グレードの低い料理をいつまでも使い続けるより、グレードの高い料理に移行する方が総合的に楽であり、自然にそちらへ移行するためには制限が必要になるという寸法です。
上記のような作業的循環にマッチするかどうかがプレイを楽しめるかどうかの分かれ目になっている節はあり、その辺で好みが分かれそうな作品ではあります。
加えて、1時間30分くらいかかるチュートリアルもまあまあ関門であり、40分のインターンのあいさつ回りや雑草狩りの10分強など、ふるい落とす能力が高い構成だなあという印象はあります。インターンのロールプレイとしては凄い適切なんですが。
また、お使いクエストや終盤のギミック神殿周りはそこそこしんどく、ここもふるい落としの能力が高い構成になっています。美味しいごはんを作って渡す話はまだ分かるんですが、それを連続で配り歩くのはかなりしんどい気持ちになります。特に同じような場所を巡って置いておくのは、ルーチン外の作業的な感覚が強く、余りマッチしていない印象を受けました。
神殿のギミックもまた手間がかかるものが多く、かなり面倒なものが取り揃えられています。料理を大量に使わせようという設計である気もするんですが、それ以上にこちらのモチベーションがだいぶ奪われてしまいました。個人的には氷神殿が一番しんどい。
一方で、サブイベントで料理を振舞ってもらえるようになる展開はゲームタイトルにもマッチしていて、かなり好きなイベントです。
上手くイベントをこなしていくと、HPとMPを使い切ったあたりで全回復させることができ、1日の間に際限なく行動することも可能になってきます。筆者は人の家でご飯を頂きまくることで終わらない9日目をやり、2時間くらい9日目を堪能したことがありました。ただ飯は偉大。
そうして色々なことをしていると探索範囲が広がっていくのも良くて、その度に敵に出会い、新たな料理に出会うことができます。メインルートそれ自体のルーチンはかなり良いように感じました。
戦闘についても軽く触れておくと、作業の名に違わず、おおむね考えることなく終わらせられるものになっています。
現時点で強すぎる相手に挑む時や、強力なソウルに挑む時はさすがに戦略を考えることもありますが、それ以外の作業と言って良い戦いはちゃんと作業的です。そして、スピーディーに戦闘が終わるので作業に没頭しやすくもなっています。
こうした中に前述したようなソウルといった特殊個体が混ざることで、たまにちゃんと戦う必要が出てくるのもアクセントとして良いです。
また、終盤の強敵も当然思考が必要な上、ここからは勝負飯が必須のレベルになってきます。この辺の段階というかランクはちゃんと分類されている印象がありました。
なお、実はシロシリーズの技が、ちゃっかり重ね掛けできるんですが、上3つのアイコンが同じなので認識は凄く難しいものになっています。しかし、重ねると火力が割と上がるので強い行動ではあります。強敵相手にはターン経過を覚えて効果的に活用できると、かなり優位に立つことができました。
続いてシナリオなんですが、どう解釈すべきか迷うあたりもあり、最初の印象よりは複雑な感じでした。
序盤に関しては、職業体験の余りものグループという珍しい取り合わせから始まり、かなりリアリティのある失礼さをもってスタートします。誇張された失礼さというか、物語的な失礼さではなく、本当に失礼なムーブをする人間という嫌な現実味があります。ハル君がだいぶアレな性格っぽい。
そんな彼らが少しずつ交流して意識を改めつつ、成長というか感化されていくという物語のベースラインは分かりやすいものです。
ただ、明確な分岐から始まる一連の流れと、その分岐を見ると、急に世界観が変化していきます。
あの表現をそのまま取ると、今際の国のアリスみたいな話になりそうな印象を受けますが、実際のところどういう解釈をすべきかは判然としません。実際、世界観的にそういうものなのかと受け入れていたそれらは変な話ではあるので、そういう世界であると受け取ることも充分可能です。
そうであるなら、そこで死ぬというのはどういうことなのか、そこから旅立つとはどういうことなのか、そもそもあの二人はどういう存在なのか、と色々考察の余地はありそうですね。
余談になりますが、この作品もまた今ウディコン飯テロ作品の一つとなっています。今回多くないですか。
しかも料理のバリエーションが一番多く、料理を食べる時間に一番時間を割いている作品でもあるので、おなかの空き具合で言えばダントツでトップかもしれません。本当に美味そうに食べますからね。