第16回ウディコン全作品レビュー - イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~

45. イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~

ジャンル 作者
ノベル うぉじろ(woziro)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.01 読了

良かった点

  • テンポ良く物語が進んでいきます
  • 独特なシナリオを味わうことができました

気になった点

  • 特にありません

レビュー

疾風怒濤の体験記

イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~ は、分岐無しでシナリオが進んでいくアドベンチャーゲーム、ないしはノベルゲームです。
イマジナリーフレンドとそれにまつわるエピソードが怒涛の勢いで描かれています。

圧倒的なエネルギーで綴られていくその物語の特徴は、理解できる範囲の際まで飛躍し続ける流れと、それを軽妙なテンポ感と演出で叩きつけてくるところにあると言えるでしょう。
さながらウルフの意識の流れのごとく、絶えず流れるように移ろっていく観念と主題の勢いの中に呑まれる体験は得難いものとなっています。

そうした物語に込められた情報の洪水とでも言うべき勢いは、迫力と凄味を存分に発しているため、ともすれば気圧されてしまうかもしれません。しかし、素早い場面転換やバックログの用意など、システム的な助けもあるのでゲームとしてはすんなりと消化することができるでしょう。
読後には嵐の後のような感覚が残ること請け合いです。

テンポ良く進む言葉の濁流のような体験に没頭してみてはいかがでしょうか。

感想

センシティブなテーマだなあと思っていたら、余りの勢いに終始気圧されていました。開始1秒で出力する台詞からして馬力が違います。
何より恐ろしくかつ素晴らしいのは、この凄まじい迫力とテンポ感が一切途切れることなく終わりまで続き、何なら登場人物の追加とともに加速していくことです。どんどん加速してるジェットコースターに乗っているような気分。

筆者個人の考えとして、ノベルゲームというかシナリオを読む際は、意図的にせよ無意識的にせよ先読みしていることがあると思っていて、それによって認知負荷を下げていたり、意外な展開で驚いたりしていることが多いんじゃないかと考えています。
しかし、この作品はその投機的先読みが機能不全を起こすので、もはや字面をそのまま受け取って逐次処理していくしかありません。テンポは良いし読み味は軽いのに、読むのにめちゃくちゃ体力を使いました。得難い体験です。

ワードサラダという言葉にも代表される、統合失調系における一つのありうべき特徴として意味が通っているけれど通っていない文章があり、この物語の大半はそれに近いもので紡がれています。
話はほとんど脈絡なく別の箇所にジャンプし、と思えばやたら詳細に話が入るフェーズもあります。話の濃淡がバラバラで、その接続が余りにも唐突なものとなっています。しかし、ともすれば読みにくいという感情を惹起しそうなこれらの特徴を抱えつつ、ここまで読みやすいというか勢いで消化できるようになっている構成は脱帽の域です。
バックログがあったり演出を所々に挟んだりと、細かいところで補助を欠かしていない仕組みも、この読みやすさに大きく寄与していると思います。

どうも上記の特徴を列挙していると批判っぽく見えてしまっている気がしますが、決してそうではありません。念のため。むしろかなり刺激的というか一波乱も二波乱も唐突に訪れる、波にもまれるような体験が得られる良い物語になっています。全体を通した迫力と凄味はなかなか味わえるものではありません。それと同時に、安易に覗いて良い深淵なのかという気持ちにもなってきます。

どうでも良いですが、日本の天使と聞いてフランシスコザビエルが頭をよぎりました。あれは守護聖人。