第16回ウディコン全作品レビュー - 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~
54. 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~
ジャンル | 作者 |
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闘技場育成シミュレーション | カザ&ソロー |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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30分 | 1.08 | 腕っぷしEND |
良かった点
- 成長のシステムの塩梅が良いです
- 自由度、制約、イベント性のどれもがバランス良く組み立てられています
- 主人公のキャラが良かったです
気になった点
- 特にありません
レビュー
自由気ままに鍛錬を積もう
放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~ は、自由に育成し戦闘に勝利していくシミュレーション的なゲームです。
訓練やイベントを通じて能力値などを強化していき、徐々に強くなる敵に勝利を収めていくことを目的としています。
プレイヤーが主にやることは試合までの間に訓練を選択し、ステータスを育成していくことです。
筋トレをすれば攻撃力が上がり、ダッシュの訓練なら敏捷が上がり、イメトレをすれば防御力などが上がっていきます。自分の伸ばしたい方向にステータスを育成していきましょう。もちろん、満遍なく上げていくという手もあり得ます。
また、日数の経過や会話に応じて起こるイベントを通じて、ステータス上昇などの恩恵を得ることもあります。イベントは積極的に起こしていきましょう。
そうして一定日数が経過したら、育成したステータスを武器として戦闘に挑むことになります。
戦闘は攻撃と防御から成るシンプルなシステムとなっており、防御はHPの回復を兼ねています。高い攻撃力を活かして速攻で決めたり、防御を厚めにして持久戦に持ち込んだりと、育成に応じて戦略は多様に広がります。育成の方向と、敵の性質に応じて柔軟にバランスを変えていきましょう。
様々な育成方針で戦いを楽しめる、良質なバランスを享受することのできる作品となっています。
天然なようでいて頼りになる主人公と周りのキャラクターの掛け合いを楽しみつつ、自分なりの育成方針を武器に次々と立ち塞がる敵をなぎ倒していきましょう。
感想
きちんとデザインされた短編という印象を受ける作品です。勢いのままに作られる短編も良いんですが、バランスや設計がシステムとして完成されている短編もまた良いので、この作品も良い作品です。
中でも、割とカスタマイズ要素が強めで、その枠組みの中で筆者はピーキーに調整したつもりなんですが、かなり良い勝負になり続けるあたりが特に凄いなと思っています。作者さんの掌の上にいる。
まずは、クリア時の進め方というかビルドに触れておきます。
筆者は攻撃回数を重点的に上げて、蹴り倒すビルドにしていました。命中率はある程度ブートの薬で担保しつつ、とにかく蹴りを進化させることで圧倒的な攻撃力をもって戦える方針です。
序盤こそ命中率と攻撃回数の運ゲーっぽくなりますが、割とビルドが安定してくる中盤はやや危ない場面がありつつも上手く切り抜けられる程度には強くなります。最後の二戦に至っては、防御コマンドを押すことなく突破できています。火力は正義。
ほかのパラメータもある程度は振っており、状態耐性や回復力も後のために上げていたところはあったんですが、状態異常系統の敵の初撃を食らってしまったので、あんまり意味は無かったかもしれません。
ただ、HPと回復力をセットで上げようとすると勝手に状態耐性も上がっていくので、気休めというかおまけくらいに思うことはできます。これで状態耐性だけ重点的にポイントを割り振る仕組みなら無駄になったなと思うところですが、そもそも総合的に上げているので、あんまり意味無かったなと思う程度で済んでいます。システム設計の妙です。
そうして得られたリザルトは以下になります。
上述の通り、防御力の4倍近い攻撃力、パンチの5倍のキック数、明らかに少ない防御回数あたりが特徴的です。序盤のうちは手探りだったのでパンチを使うなどしていたこともありました。
なお、このやり方はHPで攻撃を受ける想定のビルドなので、HPがある程度高くないと破綻します。そういう意味で、看守と会話し続けて差し入れてもらわなければ危なかったかもしれません。看守がMVPかもしれない。
リザルト |
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閑話休題。このあたり、シミュレーション内容に応じてプレイヤーの好きなプレイングを選べるのが良く、自分の得意あるいはやりたい構築で戦うことのできるデザインとなっていました。ゲーム全体が短いので、ほかのビルドを試したい場合も割と気軽にできそうです。
また、単なる強化以外の面でも選択肢があったり、イベントがあったりして、成長に波を与えるようになっているのも面白いところです。このおかげで、パラメータをただ上げていくような単調さが無くなり、ゲーム全体にメリハリがついています。
特に好きなのは、パンチを使っていればパンチの強化がもらえ、キックを使っていればキックの強化がもらえる設計です。プレイヤーのやっていることに沿って順当に強化する恩恵が得られるというように、プレイヤーの意図にぴったりと沿ったメリットを享受できます。
このシステムはプレイヤーが思考することなく、プレイヤーのやりたいことに合わせた補助が入る仕組みなのかなと思っています。こういう設計ばかりだと遊ばされている感があるかもしれませんが、このゲームはアクセント的にしか使っていないので良いです。ここでもメリハリがついています。
シナリオ面にも軽く触れると、短編でありながらも主人公のキャラクター性で強く引っ張っていく良いものとなっています。
悪役の三枚目っぽさも絶妙なラインで、まあまあの悪事をしているし、そこそこに報いは受けているものの、シナリオ全体が暗くなりすぎないようにコントロールされている印象を受けました。
余談ですが、最初は徹底的にモブに名前を付けない方針の作品なのかと思っていましたが、状況に即した名前が適宜つくタイプの作品でした。コメディー調っぽくて良い。
さらにどうでも良い余談ですが、説明文で触れられているほどランディスが宿敵っぽくないのは気になりました。通りがかりでついでに倒したくらいの空気感っぽいんですが。ブートにとっての宿敵という扱いなのかな。