第16回ウディコン全作品レビュー - やけくそ料理人と不良債権

61. やけくそ料理人と不良債権

ジャンル 作者
デッキ構築型お料理ローグライト なす太郎
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間+α 1.01 Hard

良かった点

  • 良く設計され没入できるゲームの流れが構成されています
    • 各リソースの扱いや強化要素の仕組みが秀逸です
  • 能動的にシナジーを生み出せるゲームデザインの裾野の広さがあります
  • 認識しやすく扱いやすいUIでした
  • 絶妙な難易度設計となっています

レビュー

時間泥棒

目指すべきやることの明瞭さと、無限のごとき一期一会の体験の広がりは、共にデッキ構築型ローグライトにおいて重要な観点です。しかし、その両者は一見すれば相反する存在に思え、その両立は困難を極めることは想像に難くありません。
やけくそ料理人と不良債権という作品は、類稀なるゲームデザインの妙と絶妙なバランス感覚のもとに、双方を高いレベルで完成させたゲームとなっています。

その設計は、デッキ構築型ローグライトと料理を混ぜた独特なものです。制限時間をターンに見立て、その時間内で勝利点のような評判を一定以上勝ち取っていき、最後に待ち構える審査員の求める料理に到達できればクリアとなります。
道中で評判を稼ぎつつ、審査員を唸らせるためには、ゲームルールを捉まえてビルドを思うままに強化していくことが重要となるでしょう。

ゲーム画面

そのルールを端的に説明すると、カードを駆使して食材を集め、お客さんに提供して評判を稼いでいくというものになります。
例えば上記の画面では、お客さんはハートの合計値が4以上、写真映えが1以上、2品の料理を要求しています。これを満たす組み合わせはいくつかあり、例えば「生ハム」と「ムニエル」、「サーモンサラダ」と「アクアパッツァ」などが考えられます。
これらの料理を作るには、その料理に示された食材が必要です。例えば「生ハム」を作るには肉を4つ必要とします。これらの食材を用意するために、画面下に示されたカードを使って対応する食材を獲得していくことになります。
上記のカード構成であれば、肉料理と肉・野菜料理を実行すれば肉を5つ確保でき、「生ハム」が作れます。加えて、プラスワン実行後に魚料理を使えば魚を3つ確保でき、「ムニエル」も作れます。これら二つを提供すれば、お客さんは満足するでしょう。

ここで注意したいのは、同じキャラクターが描かれたカードは特殊なものでない限り、同じターンには1回しか使えないということです。このため、野菜料理と魚料理は同時に行うことができません。
また、クリーンアップを選択して1ターンを終了させると、時間が経過し、食材もまたリセットされます。料理にしていない食材は無駄になるので、余った食材はできるだけ料理にしてキープしておきましょう。

こうしてお客さんの要望に応えることで、評判を稼いでいくことができます。お客さんをどんどん呼び込んで、評判を集めていきましょう。ただし、お客さんには各々の制限時間があり、その堪忍袋の緒が合計3回切れるとゲームオーバーです。このため、キャパオーバーにならない範囲で適切に取り回していくことが肝要になります。
そうして評判を稼ぎつつも時間が経過していき、12:00から18:00になるまでの間に評判を100まで上げることができればひとまずの目標は達成できるでしょう。

ただし、時間の進行とともにお客さんの要求のハードルは上がっていきます。加えて、最後には高いハードルを持つ審査員の要求に応えなくてはいけません。これに対応するためには、より良いカード、より良い料理を構成し、ビルドを強化していくのが重要になってきます。
評判が10の倍数に達する度に、カードの追加であったり、人員の追加かレシピの強化を選べたりといった強化を手に入れることができるので、これらを上手く活用し、よりお客さんのニーズに合わせられるようなデッキを構築していきましょう。

構築にあたって重要なのは、人数と料理のバランスです。カードを使うと、上記の通りキャラクターの行動を消費してしまい、同じターンで同じキャラクターのカードを使うことはできなくなります。このため、行動回数に直結する人数は重要です。
しかし、どれだけ人数がいても手札に来なければ意味は無く、料理が既定のレベルに達していない場合も意味がありません。適度に人を増やし、適度に料理をレベルアップさせる、そのバランスを探っていくのが攻略のカギとなるでしょう。

このように文章で説明してみると取れる手段のバリエーションの多さから複雑そうに見えますが、やることそれ自体は明瞭です。簡潔に言えば、目的を達する料理を作るためにカードを駆使して食材を集めていくゲームと言えるでしょう。
また、ゲーム画面は整理されたUIにより直感的に操作して理解できるようになっているので安心です。チュートリアルもあるので、ひとまずプレイしてみることをお勧めします。

全体を通して、その時々の手札の構成、お客さんの要求の性質の違い、手に入るカードや加入するキャラクターの性能、あらゆるものがランダムに立ち現われ、プレイヤーに選択を迫ってくるローグライトの楽しみを十全に味わうことのできる作品となっています。
加えて、そのランダム性に反して難易度設計は絶妙な完成度となっており、難易度によってはクリアできるかどうかの瀬戸際のバランスを楽しむこともできます。
直感的で分かりやすく遊ぶことが出来ながら、そこに込められた無限の広がりの魔力に支配されてしまい、ついつい次のプレイに手が伸びてしまうことは間違いありません。お料理ローグライトの世界に没入して楽しんでいきましょう。

感想