第16回ウディコン全作品レビュー - Welcome to タムタムわかめ

62. Welcome to タムタムわかめ

ジャンル 作者
RPG ハネケテス
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 8/1 クリア

良かった点

  • シリアスな物語が良かったです
    • 選択に重みを感じる設計でした
  • 戦闘システムがサクサク進むものとなっています

気になった点

  • 一部ボスの一部挙動が強力すぎる印象がありました
    • HPを充分強化していないとほぼ耐えられません

レビュー

良い意味でタイトル詐欺

Welcome to タムタムわかめ は、スピーディな戦闘が特徴のRPGです。
方向キーを使ったシンプルな戦闘で敵を倒しつつ、様々な場所を訪れていくことになります。

戦闘がシンプルである分、その勝敗はステータスに強く依存することになります。とはいえ、遭遇する敵を倒していけば充分に成長することは可能です。戦闘はサクサクと進んでいくので、連戦しても苦にはなりません。接敵したらできるだけ倒していきましょう。
また、敵を倒すとお金を稼ぐことができますが、これをわかめに与えて育てることもできます。何の役に立つか分からないものにお金を入れるか、強化にお金を使うか、その選択はプレイヤー次第となるでしょう。

そうして敵を倒し、世界を巡っていく過程で、謎の人物の暗躍やその目的、そして主人公であるタムタムの謎が明らかになっていきます。
タイトルや主人公の名前からは想像だにしないシリアスな展開とともに、プレイヤーは重要な選択を迫られていくことになります。自分の意志に従って、正しいと思うことを成していきましょう。

軽い雰囲気とサクサクと進む戦闘、そして所々で挿入されるサブゲームといった要素は、そのタイトル通りの気軽なエンターテインメント然としています。
しかし、その中で描かれていく物語は決してその限りではありません。各地のイベントを経て、様々な選択の果てに待ち構えるその結末を迎えていきましょう。

感想

タイトルからは想像できないくらいにシリアスな物語でした。良い意味でタイトル詐欺みたいなところがあります。
ずっとタムタムという名前の響きが付きまとってくるので、シリアスムード一辺倒になり切らないところもあり、シビアな世界と選択でありながらも軽い雰囲気を同時に感じる作品です。

ひとまず戦闘システムについて触れておくと、サクッと終わるのが個人的に良いなと感じていました。コマンド式に比べて、こういう形式だと決着が早いのは明確に良いです。
その点、毎回逃げるかどうか聞かれるのはやや手間にも感じるんですが、これに救われた面もあったので難しいところです。不要な機能というわけではなく、むしろ場面によってはかなりありがたい機能となっています。ただ、逃げたい時は大体のケースでずっと逃げたい場合が多いので、スイッチング式になってると嬉しかったかもしれません。ポケモンのスプレーの類似みたいなイメージです。

難易度についても、逃げなければレベリングがある程度上手くされていくので、余り意識しなくてもそれほど問題にはなりません。上下左右キーを同時押しして雑に狩れるようになってくると、レベリング自体も捗ってきます。
ただし、エンディングにおけるラスボスはかなり強く、成長が充分でないと最後に777のテラエターナルが飛んでこないかの運ゲーをやる羽目になります。HPアップを買っておくかレベリングできていないと耐えられず、かつ戻ることもほとんどできないので、場合によっては完全に運否天賦に身を委ねることになります。
筆者は二度目の挑戦でたまたま撃ってこないパターンを引けたので勝てましたが、それが想定解なのかは良く分かっていません。

そしてシナリオの面ですが、前述の通りタイトルからは分からないレベルでこのゲームの主眼です。なんとなく分岐があるようにも見え、ずいぶんとシビアな選択をプレイヤーに迫ってきます。
加えて、ゲームの性質上、その選択にやり直しは許されません。選択の結果というものを絶対にプレイヤーに押し付けてくれます。ありえたかもしれない未来を見ることはできません。
殊に2周目封じはかなり凝っていて、セーブデータをどうこうするのでは解決できないようになっています。そもそもセーブの性質も特殊なので、分岐を探るのも最後以外難しいでしょうが。

その分、シナリオの空気やその中での選択にはきちんと重みが乗ります。タムタムという名前が頭の片隅に飛ぶくらいにシリアスです。
筆者はエンディング分岐でウィズダムを選ばない方向で解決しましたが、どっちが良いのかはよく分かっていません。ただ、ウィズダムへの思い入れの無さがそこそこあり、イベント一つの重みではさすがに選択できなかったという面が強かったという経緯はあります。
ありえたかもしれないもう一つの未来を観測する方法は分かってるんですが、別の物語を歩むのはこのゲームにおいてはだいぶ野暮なので手は付けていません。この作品はOneshotなので。

個人的に気になっているのは難易度面を除けば幽霊面の設計で、ここに関しては面倒さがかなり勝つ遊びになっています。全体を通して戦闘以外のミニゲーム的な遊びも結構配され、プレイヤーが飽きにくいように工夫されている印象はあるんですが、幽霊面だけはそこそこストレスがありました。
せめて、鍵の下りとイベントをスキップできるとまだストレスフリーだったかもしれません、リトライ性がまあまあ悪い。

なお、全体的にギリシャ神話モチーフっぽい名前も散見されつつ、ウィズダムはまんまですし、おうさ、まはまた別として存在しています。そも主人公からしてタムタムであり、色んな世界が混ざったような状態となっています。これは、シナリオ要請上も割と良いものだったように感じていました。
それにしても、表題の Welcome to タムタム、桃源郷へようこそ、くらいの意味合いなんでしょうか。

余談ですが、レビューでどこまで触れるか悩んだ部分もあります。最終的にはサムネでそれっぽいシーンがあることも踏まえて、物語について触れることにしました。個人的に物語が好きなので、そこを推した方が書きやすいですしね。