第17回ウディコン全作品レビュー - Rewot.16ーリワット イチロクー
40. Rewot.16ーリワット イチロクー
| ジャンル | 作者 |
|---|---|
| ノンフィールドRPG | 植物の灰 |
| プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
|---|---|---|
| 3時間30分 | 1.04 | 全ENDクリア |
良かった点
- 極めて優れた演出によりゲームへの没入感が高められていました
- 高品質なグラフィックやシナリオもそれをサポートしています
- 毒をベースとした戦略性のあるボス戦が楽しめました
- 付加的情報を能動的に拾えるようになっています
- シナリオだけを楽しむならシンプルに、深く知りたいなら色々と調べられるようになっています
気になった点
- 毒を集めるための雑魚戦がやや作業的でした
- アップデートにより緩和されている模様です
レビュー
塔の逆位置
ゲームという娯楽は、総合芸術としての側面も持っています。
総合芸術とは一つ一つの分野をめいめいに作り、それらをつぎはぎに構成すれば良いというものではありません。ある指向性をもって一つの集約点へと向かうがゆえに、総合的な芸術足りうるものへと仕上がっていくことでしょう。
そうして一つの指向性の元、グラフィック、シナリオ、演出、戦闘システム、そういった搭載し得る全てが混ざり合い、それぞれの要素が極めて高い完成度で構成されていくことで、より高度な総合芸術と言うべきものへと昇華されていきます。Rewot.16ーリワット イチロクーは、その条件を高い水準で満たしている作品と言えるでしょう。
そのゲームシステムは、オーソドックスなノンフィールドRPGの形式を取っています。進むことで戦闘が行われ、階層ごとのボスを倒すと次の階層へ進み、そうしてシナリオも進行するというベーシックなものです。
ただし、レベルや装備といった概念は存在せず、進行に応じてHPが成長していく要素は存在しますがそれほど大きなものではありません。このため、階層ごとの攻略に際してはステータスよりもボスのギミックをどう攻略するかに焦点が当たるものとなっています。
そうした攻略の上で重要となるのは、毒をベースとした独特な戦闘システムです。回復を阻害し継続ダメージを与える出血毒、行動を阻害し必中効果を付与する麻痺毒、混乱を与えダメージを増やす錯乱毒の3つを上手く使いこなし、戦いを有利に進めることが求められます。
敵の回復行動を出血毒で潰したり、相手の大技を麻痺毒を用いることでタイミングをずらしたりといったように、敵の行動を上手く制約するのが攻略のカギとなるでしょう。
また、敵味方ともにTPと呼ばれるパラメータが溜まることで使える切札も重要です。ボスごとに切札の性能は異なっているため、この特殊な技に対して上手く対応することもまた攻略の上では肝要なものとなっています。様々な毒やアイテムを活用していき、相手の行動に対応していきましょう。
なお、そうした毒を与えるアイテムは、雑魚との戦闘などで得られる素材から調合可能となっています。毒が足りなければ、雑魚との戦闘をこなすと良いでしょう。調合を繰り返すとより高位のアイテムが調合可能になっていくこともあり、積極的に調合を進めていくことを推奨します。
ただし、一度に持てるアイテムには限りがあるので、稼ぎ一辺倒で楽をすることはできません。あくまでも与えられた手数の中から、最適な行動を探していきましょう。
そうして毒を集め、毒を活用してボスを倒していき、階層を進めていくことで物語は進行していきます。
物語の中心となるのは、徐々に悪化し、やがて患者皆が失踪する不治の病、悪魔病です。その治癒を目的としていた薬師アセビは、患者を名乗る謎の少女シキミとペアになって、回想という形で過去を断片的に思い出しながらも歩みを進めていくことになります。
そうした回想の中で、悪魔病にかかわる患者との交流の数々、悪魔病の研究にかかわる家族との関係、それらの追憶に向き合っていくこととなります。
今いる場所は何なのか、悪魔病とは何なのか、その治療法は存在するのか、そしてシキミは何者なのか、それらを明らかにするにはひたすら進むしかありません。様々なボスを打ち倒しつつ、苦しく暗い記憶と向き合っていきましょう。
そして、そうした暗くも美しいシナリオ展開を支えているのは、時には戦闘システムをも巻き込んだ高い演出力です。戦闘からシナリオ、フィールドからちょっとしたやり取りまで、全てが高いレベルの演出によってシームレスに接続された体験により、止め時無く最後まで没頭できること請け合いの作品となっています。
毒を活用してボスのギミックを攻略し、その暗く苦しい記憶と共に、是非とも最後の階層まで到達してください。
感想
各要素どれをとってもクオリティが高い作品でした。戦闘システム、シナリオ、演出、グラフィック、何から何まで完成度が高いです。とりわけ個人的に推したいのは演出面であり、最初から最後まで一貫して一分の隙も無い良さをしています。おかげで、ノンフィールドRPGという不純物の入りにくいゲーム構造も相まって、始終良質な雰囲気を醸成することに成功していました。ずっと良いプレイ体験という得難い経験が得られる作品です。
どれについて言及しても良いんですが、まずは戦闘システムもといゲーム性について触れておこうと思います。
まず毒をベースとした戦闘システムが面白いです。毒と言えば継続ダメージがイメージされますが、それはこのゲームにおいては出血毒としてカウントしており、それに加えて麻痺毒と錯乱毒が入っています。この状態異常を活用しない限り勝つのが難しいため、常に思考を巡らせて先々まで考える戦いが楽しめました。
それぞれの効能に追加効果があるのも面白く、回復行動を出血毒で潰したり、大ダメージ行動を錯乱で強化したりといったように、拡張的に戦略に組み込めるのが秀逸です。
さらに加えて、バフデバフが重要なデザインともなっています。筆者はらんだむダンジョンなど色々なRPGを遊んだ結果、バフデバフや異常が強い作品は良い戦闘システムが多い傾向にあるという偏見を抱いているのですが、この作品も例に漏れません。
また、難易度設計も絶妙です。雑魚であれば火力はそれなりに高いもののミスしない限りは負けないバランスとなっていて、ボスはちゃんと強いので考えないと負けるバランスになっています。さらにボスの間にも中ボスと大ボスのグラデーションがあり、階層が進むごとに難易度が上がるグラデーションもあります。この辺りの緩急もまたちょうど良い。
とりわけ、各階層ごとにボス側にユニークな行動形式があるのが面白く、それぞれに対して攻略する楽しみがあります。上述したような毒によるメタという概念はそのままに、相手の取ってくる行動に対して柔軟に対応する要素が上手く刺さることで、戦闘に奥行きが生まれているように感じました。
こちらの回復手段が限られていることもあり、闇雲に戦っているとジリ貧になりがちな設計もまた良く、早めに倒すために積極的にアプローチを仕掛けることが求められるものとなっています。そのため、待ちや耐え一辺倒で削り切る消耗戦ではなく、ここぞというところで毒を活用して最大化して倒す攻めのプレイングが必要になり、結果として同じような行動を取ることなくアドリブを効かせ続ける楽しさが生まれていました。
そうした思考を必要とする戦闘設計でありながら、難易度それ自体は決して高くはありません。筆者は逆位置で進めていましたが、ちゃんと観察を行い、戦略を立てて、毒を通すべきに通せば勝利はそれほど難しくはありませんでした。一方で、きちんとメタを取れないと一方的に攻撃されたり回復されたりして圧倒的な不利状況に陥るので、適切な攻略自体は必要になってきます。この辺の塩梅がちょうど良く、適度に達成感を味わえるデザインに感じていました。
ノンフィールドRPGというゲーム性を効果的に使ってシナリオを組み立てているのもまた特筆すべきポイントです。
マップを探索するタイプのRPGと異なり、ノンフィールドRPGはその性質上プレイヤーの進行度合いのコントロール性に長けています。有り体に言えば、一本道を叩き込みやすい構造をしているとも言えます。この性質を上手く活用し、完全にコントロールされた演出力でもって最後まで一切手抜かりの無いシナリオ展開をプレイヤーに叩き込んでいました。掌の上。
加えて、回想ベースの物語での情報開示の時期や内容もまた綺麗に制御されており、ノンフィールドRPGをプレイヤーに進めさせる牽引力ともなっていました。この辺りは相乗的に奏功している印象です。
また、小話をCキーに押し込んでいるのも嬉しいところで、こういうのが好きな人だけが回収できます。ログを活用した演出もまた同等で、より深く見たい人にはちゃんと深く見せておきつつ、そうでない人には表のシナリオだけでも十分満足できるようにデザインされていました。
そして、個人的に白眉だと感じているのは、これらのシナリオや展開をプレイヤーに効果的に刷り込んでいく演出力の高さです。再三演出が素晴らしいとは上記に書いているところですが、それではまだ書き足りないので書いていきます。
まず、全体を通して演出が首尾一貫しています。途切れの無いBGMを筆頭に、雰囲気を中断せしめることなく良質な演出が続いていきます。エンカウント、霧が深くなると出てくるボス、回想までが淀みなく繋がっていました。シナリオ自体がかなり重苦しい話であるにもかかわらず、するすると読み進められてしまうのは、このあたりの切れ目の無い雰囲気の醸成が効いているように感じました。
また、戦闘に絡めた演出も優れています。イベントを戦闘に落とし込んでいるおかげで、殊にラスボス周辺はかなりシームレスな体験ができました。その戦闘システムの中でしかできないことをも取り込んだ演出の妙は見事で、プレイヤー側の没入感を強く高めていました。
筆者はとりわけエンディング周りの演出力の高さとシナリオのまとめ方の美しさが好みで、この辺りはノンストップですべて回収していました。ここで止められる人間がいるのだろうかという気持ち。テリアカが必要なことに気付けずに別のものを調合したからというのもありますが。
また、シナリオの面も含めてですがリフレインが効果的に使われているのも好みです。最初に諸々書かれていた言葉が、後々の階層で拾われていく伏線回収的なところもありますし、言葉として綺麗に回収するところもあります。個人的に一番好きなのは、手をモチーフとして多用していき、最後に握手で終わる所になります。そもそもが最終イベント戦が手を伸ばすところで締めることから含めて、この辺の流れはかなり綺麗でした。
システム面では手には穢れの印象があって、強化システムが自傷ベースであること、攻撃手段として掲げられるものが手であることあたりから、そういう立ち位置のものと捉えていました。これらの印象を演出面で上手く反転させてくる点は良かったです。
ついでにシナリオの面についても触れておくと、先立って触れた通りまあまあ暗い話です。しかし、演出の繋ぎ目の無さに加えて、シキミという存在がかなり読み味を爽やかなものにさせてくれているように思います。彼女という清涼剤が無かったら、もう少し読み進めるのにカロリーがいる物語になっていたでしょう。
もちろんシキミという存在そのものにもシナリオの闇はあるんですが、本心や目的はともかくとして、語り口の明るさや牽引力は明らかにプラスの方向に傾いています。センセイがややマイナス気味なのもあるので、この辺りで上手くバランスがとれている印象がありました。どっちも同じく良い性格をしてはいるんですが。
また、繰り返しになりますが読み解けば読み解くほど色々な情報が出てくる仕組みも面白いです。背景情報も拾えますし、その時々の心境も拾えます。そのことに気付けるのはだいぶ後なんですが。
なお、メインシナリオはともかく世界観やその周りの情報はやや断片的で、あまり整理できていないので考察はできていません。女神とかそのあたりは考えればいろいろ出てきそうなものですが、その辺のメモを怠りました。ゲームに夢中になっているばっかりに。
全体を通して出てくるモチーフは多分アルカナと仏教のちゃんぽんなので、どの辺に意味を見出すかはプレイヤーによりそうな気がします。塔はかなりあからさまかもしれない。テリアカについては不勉強で知らなかったんですが、そういう万能薬のようなものが中世にあったそうです。
加えて、強いストレス下に晒されることで罹患し、死を願うことで取り込まれる悪魔病のモチーフは適応障害やそのあたりだとは思います。希死念慮も出てくるので。ただ、悪魔病そのものはこのゲームの本質からは少し外れたところにある気がしていて、本質的にはその治療に向き合っていたアセビとその周辺の物語にフォーカスされているようには感じました。悪魔病はどちらかと言えばシキミの物語なのかもしれない。
そうなると主たるテーマはやはり回顧であり、回顧している対象を鑑みると悪魔病を中心にして壊れたアセビの家族の物語であるようには思います。ベラドンナはベラドンナで決して良い母であるとは言えないし、そのあたりを薄々理解していそうでありながらも、薬師のバッジは持ったままその意志を継いでいるという二面性あたりに見るべき点があるのかもしれません。ベラドンナ、名前からしてそういうことではありそうなので。これもまた毒ですか。
そういう意味では、薬師のバッジを捨て、悪魔病が消えたことも相まって特にやることもなく、シキミの復讐道中に連れ立つことになった終わりは美しくもあります。双方の楔から解放されているので。
もう少し深いところまで読み取りたい気もしますが、そのあたりを読むにはイベントを読み直さないと厳しそうなのでここまでとしておきます。後は任せた。
とにかく全体がハイクオリティ、それに尽きる作品でした。ウディコンのノンフィールドRPGはロードライト・フェイス、いばらのうみ、Megalopolisと名作が多いんですが、この作品も間違いなくそれらに名を連ねるものとなっています。
高いレベルのグラフィックとそれを効果的に使った演出から繰り出されるプレイ体験に浴したいのであればお勧めの作品です。