第14回ウディコン全作品レビュー - MoonCaliz -ムーンカリス-

63. MoonCaliz -ムーンカリス-

ジャンル 作者
ADV/シューター 氷瀬るん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間+2時間 1.03 全END(Another以外)

良かった点

  • グラフィックが美しかったです
    • 加えて、美麗なグラフィックをいかんなく活用した演出でした
  • 感情の描写密度の濃い物語でした

気になった点

  • シューターパートで処理落ちが目立ちました
    • 特にトリガー時に顕著です

レビュー

美しき青の世界で

MoonCaliz -ムーンカリス-は、シューターが楽しめるアドベンチャーゲームです。
謎の世界に迷い込んだ二人の少年が、過去のトラウマを模したようなエリアを進んでいくことになります。

この世界はいくつかの扉で隔たれたエリアに分かれており、それぞれのエリアをクリアしていくことで次の扉に入ることができるようになっています。
扉の中に入り、主人公の記憶に紐づいた小景の中、何者かと戦っていきましょう。

戦闘においては、シューターアクションをこなすことになります。
ひらひら舞い落ちてくる花びらを、マウスの場合は照準を合わせてトリガーし、キーボードの場合はタイミングよくキーを入力することで撃っていきましょう。そうして何回か撃つと弾切れになるため、適宜Cキーでリロードする必要もあります。
キーボードのが簡単に思えますが、マウスの場合はリロードと意識を分離できるという利点もあります。使いやすい方で挑戦していきましょう。

そうした戦いを乗り越えた先で、この世界における二人の物語は結末を迎えることになります。
その結末がどう分岐するかは、道中の行動がカギとなっています。探索をしたり、積極的にパートナーとかかわっていくことが彼らの運命を左右することでしょう。

そして、この耽美な物語を彩るのは圧倒的に美麗できめ細やかなグラフィックです。物語の中で顔をもたげる危うさが、繊細さを感じられるイラストにより存分に表現されています。
全体としては青を基調とした世界の中で、様々な演出も含めた圧倒的な表現能力をもって物語が彩られていきます。

この世界に閉じ込められた二人の物語を読んでいきましょう。

感想

画力が高いのはもはや言うまでもないことなんですが、演出というか表現能力も高いです。
個人的には最初のOPは何よりも良いと感じているかもしれません。演出面でも画力の面でも突き抜けて良かったです。

物語の話をすると、まずはステージ構成の話になるんですが、ROOM4だけやたら強いというか難しいのは、精神世界的な強度というかトラウマとしての力を表しているんでしょうか。レベルカーブ的には厳しいんですが、表現としては良いように感じました。

また、前作に比べて登場人物が少なく、かつ両方とも喋るおかげで、感情がより直截的に描写されるようになったと感じています。有体に言えば大きい感情の描写密度が上がっていました。
ただし、BADだけだと、感情の重々しさとかベクトルへの理解が不十分なまま終わってしまいます。
そのため、Normal か True を見ないと色々と物語に対して正しくない理解をしそうなんですが、これを見るにはそこそこ厳しい条件を満たす必要があるので若干ハードです。

ちなみに、筆者はプレイ時間2時間でBAD回収をして、残り2時間でNormal系のENDを回収しました。
全部見た印象としては、Trueまで見ないとクリアっぽくない感覚を覚えるので、ちゃんと物語を見たい人はTrueまで見ましょう。Anotherはウディコン版ではロックされているらしいので見えないですが。

なお、内容は軽度というか中度くらいのボーイズラブ要素を含んでいるので、その辺は理解して臨んだ方が良いかもしれません。
筆者は特にどこも気になりませんでしたが、そもそも全年齢向けくらいの緩さなら何でも抵抗なく読めるので、あんまり参考になりません。

ゲーム性としては、シューターあるいはリズムゲームです。感覚的にはリズムゲームが近いんですが、音ハメしているわけではないので、説明するならシューターが適切そうです。
花弁というノーツがひらひら落ちてきて、そのためにタイミングを取るのが難しいという面白いゲーム性をしているんですが、成功演出のせいなのかちょくちょく処理が重めになります。
こうなると、長押し判定が怪しくなったり、そのほかの判定も不安定になったりするので、やや厳しくはなります。ただし、それを入れてもクリアしやすいレベルのバランスはしているので、何ともならないということはありません。

なお、キーボードとマウスどちらでもできるんですが、キーボードでやるとよりリズムゲームっぽさが増して、マウスでやるとシューターっぽさが増します。
感覚的には2周目でやったマウス操作のほうが楽だったような気がしますが、慣れていたせいもありそうです。ただ、リロードを完全に別の感覚に逃がせるという点では強みがあると思っています。

グラフィックについてはどこを切り取っても美しくなっています。
特に基本は青く統一されたデザインだからこそ、途中のステージの異質な色合いが強く印象に残るようになっています。
また、ゲームパート中の背景ですら結構凝っています。惜しむらくは、ゲームパートは忙しくて満足に背景を見ている暇はないということです。何となくの印象しかありません。

また、主人公たちのグラフィックも綺麗に描かれていて、特に一枚絵はかなり綺麗です。
線が細いというか、微に入り細を穿ったというか、とにかくきめ細やかな印象を受けます。ホロロンの精緻さとはまた違う精緻さがあって、こちらはこちらで美しいものです。
会話中の口パクアニメーションのコマ割りが2つじゃないおかげで、ちゃんと喋っているように見えるみたいな細かさもあります。

そして演出的なイベントにおける画の表現能力はさらに突き放された感覚を覚えます。その情景や持つ意味が美しいと呼べるかはさておいても、印象としては綺麗を振り切れて美しいとすら感じた作品でした。