第15回ウディコン全作品レビュー - 竜と黄金の梨と焼け残り
11. 竜と黄金の梨と焼け残り
ジャンル | 作者 |
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ローグライク | スミスケ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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5時間 | 1.07 | クリア |
良かった点
- 細部にまで凝られたグラフィックが素晴らしいです
- ステータスなどがファジーに表現される仕組みも相まって、緩い世界観が醸成されています
- 体力を雰囲気で管理しているので緊張感もあります
- ローグライクとして安定した作りとなっていました
気になった点
- すべての演出が丁寧に作られている分、テンポ感が悪い印象を受けました
- 毎回ちょっと待つなあくらいの温度感です
- ※アップデートで対応が入った模様です
- 製作について、適当に作ると何もできない上にかなり嫌なSEが鳴るのでモチベーションを削ぎます
レビュー
ゆるグラローグライク
竜と黄金の梨と焼け残りは、微に入り細を穿った高品質なグラフィックが特徴のローグライクです。
3Dで表現されたダンジョンを進み、敵と戦ったりアイテムを拾ったりしながら階段を探して最下層を目指す、オーソドックスなローグライク体験が楽しめます。
戦闘画面 |
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ただし、ダンジョンで遭遇する敵との戦いは、自分のキャラクター達と敵がぶつかり合う一風変わったものとなっています。
3人のキャラクターにそれぞれ指示を出しながら、にぎにぎしく動く様を眺めていきましょう。折を見て石ころなどの投擲物を活用したり、厳しい相手には逃走を図ったりと、柔軟に対処をしていくのがダンジョン攻略のカギとなってきます。
また、ダンジョン攻略においては各キャラクターのパラメータも重要になりますが、その全ては曖昧に表現されています。
戦闘やイベントを経て成長していくパラメータは何となくの強弱をつかめる文章によって、キャラクターの体力はそれぞれのグラフィックのやられ具合によって判断できます。感覚的にパラメータを俯瞰して、直感的な判断をもとに選択していくことになります。
ボロボロになったグラフィックを見つつ、どのタイミングでどの回復までを必要とするかを見切ることも重要となってくるでしょう。
とにかく、全体を通して高い品質のグラフィックと、ぶつかり合いによる見目の楽しさに裏打ちされたローグライク体験が楽しめる作品です。
適度に敵を倒しつつ、アイテムを活用してダンジョンの深くまで下っていきましょう。
感想
常に画面が愉快なゲームです。特に戦闘画面が愉快で、左右でぶつかり合っている見た目も愉快なら、良く分からないキノコが爆走しているLIVE中継がなぜか流れているTVも愉快でした。
この辺の見た目が飽きない絵作りは高いグラフィック力に裏打ちされていて、ずっと楽しい感じの画が作られ続けていました。ダンジョン挑戦中に3人が色々とリアクションを取っているのが好き。
ローグライクとしてみるとオーソドックスな作りで、前半である程度強化して後半は逃げ切り体制に入ると楽なタイプです。
序盤のダンジョンならそのまま進めても良いかもしれませんが、後半は普通に敵が強いので上手く成長させていない限りはとっとと下るのが正解なのかなと思っていました。
作りや遊び方自体はそういう普遍っぽさがあるんですが、3Dダンジョンとぶつかり合いの戦闘という特殊な仕組みもあって、その一方で印象としては結構特殊なゲームだなというものにもなります。
ここから先は全体のテンポ感の話をするんですが、アップデートで改良されている雰囲気があるので、現バージョンでは問題ないかもしれません。予めご了承ください。
良く言えばすべての演出が丁寧、悪く言うと毎回ちょっと待つなあというのが全体の印象です。例えば、拠点に入るとしばらく待ってから選択肢が出ますし、拠点からエリア選択に行くとフェードアウト、しばらく暗転、地図画面でしばらく待機してようやくひよこが現れて動けるようになります。このように、全体を通して操作できるようになるまでの時間が長めに取られている印象です。
特に拠点や地図の、要素としてはすべて見えているにもかかわらず何も操作できない時間、というのがそこそこ辛く、ロード待ちでもなければ画面上の変化も大きくないので何で待たされているのか分かりにくくなっています。
インゲームというかダンジョンで言うと、3Dダンジョンの操作は非常に軽快です。簡易マップや向き固定移動も完備されていて、かなり動きやすく階層を周れます。通路でダッシュも可能ですし、ちゃんとその場合は敵にエンカウントするリスクも背負います。
その一方で、戦闘面ではこちらも演出が丁寧な分、テンポは遅めです。戦闘開始と同時に「まあまあちょうどいい相手だ」のような文字表示に、Ready Fightまでちょっとだけ時間を取ります。倒すとスローが入り、その後SEが何度か鳴る時間があって、勝利のマークが出てから戦闘が終わり、敵の消滅演出が入ったのちに「敵をねじ伏せた」文字表示が出て動けるようになります。場合によってはここでキャラクター強化の文字列も順繰りに表示されます。
ダンジョン1階層ごとに敵とのエンカウントは2~4回程度あることが多く、20Fあるとだいたい60回くらいこれをやることになります。重要な演出や意味の感じられる間ならともかく、何度もやることになるこの要素で待ちがそこそこ発生するのは若干辛くはありました。
個人的な印象としては、スローは演出的に好きで、勝った感覚を得られるので良かったように思います。SEを鳴らすタイミングをスロー中に混ぜて文字表示もやってしまう、最初のテキスト表示もReady Fightに混ぜつつ命令操作くらいはできるようにする、敵の消滅演出中についでにテキストも出す、みたいな感じでまとめてやると多少待ちが少ない印象を覚えるかもしれません。
ただ、順繰りにやることのメリットもあって、それぞれのテキストがプレイヤーにちゃんと読まれるし、それぞれの演出がちゃんとプレイヤーに見られることになるんですね。この点も踏まえると、どこを単独で見せたくて、どこまでは複合的に見られても良しとするかの線引きの話になるのかなと思います。演出も大事だし強くなったことも分かってほしいなあというオーダーなら、今の形がベストっぽいですね。
なお、罠を踏んだ時の一瞬待つ演出は個人的に好きです。あ、踏んでしまったヤバい、みたいな間があるのでドキドキします。演出としての間って難しいですね。
さらっと流してしまった3Dダンジョンの操作の軽快さについてもう一個触れておきたいんですが、個人的に好きなのは敵が近づくとSEが鳴るところです。
3Dダンジョンゆえに敵を見つけられないことは必ず発生し得るんですが、この仕組みのおかげで近くなったら必ず分かるようになっています。この辺の配慮が素晴らしい。これに命を救われたこともありました。
ランダムイベントについても結構面白く、ゆるゆるとしたグラフィックにあったゆるゆるとしたイベントが色々とあります。
容量拡張が一番嬉しいところはありますが、地味に食料をもらえると有難くなります。10F連続で食料を拾えず、クタクタの状態でイベントで食料をもらえた時は中々感動しました。
パラメータのファジー表現についても触れておくと、個人的にはおおよそ好きでした。
特に体力がファジーなのは良くて、今はどのくらいの回復をしてやるべきなのか、今戦闘にどの程度耐えられるのか、といったものが常にファジーな状態で進めることになるので結構緊張感があります。
もともと体力は結構ファジーに見て管理することが多いパラメータなので、こういう表現と相性が良さそうに感じます。グラフィックによる表現というのも、高いグラフィック力も相まって可愛らしくて良いですし。
一方で、あらゆるものがファジーであるがゆえに、厳密にやりたい部分も曖昧で良く分からなくなっている、というのもありました。
個人的には所持数制限がこれに該当していて、例えばプレイ中に何かを拾ったら急に制限がかかり、この後に4つほど作るでぶっ壊しても解決されませんでした。各アイテムに重量パラメータが設定されている故なのか、それともまとめて持てるアイテムがあるのか、といったようなことが不明瞭なため、解決法が見えないのが辛かったです。
体力と違って所持数制限はギリギリを攻めるのが一番強く、そうしたいが何をもってそうできるかが分からない、というのが厳しかったのかなと思います。
この辺の何を厳密にやり、何を曖昧にやっているか、というのはゲーム側でコントロールできるものなのかもしれませんし、個人によって変わり得るものなのかもしれません。もし前者ならファジー表現を采配するのが良さそうですが、後者ならトレードオフになるのかなと感じています。
なお、その辺のデメリットを考慮しても、ファジーにいろいろ表現されているのは、そのテキストの面白さも含めて結構好きでした。
製作というシステムについてもちょっとだけ話します。
製作それ自体は、いらなくなったアイテムを良い感じに処分したかったり、ダンジョン中で分解と共に上手く活用して生き残りやすくしたりと応用の利くシステムで楽しかったです。
ただ、SEが本当に辛かったです。めちゃくちゃ悪いことをした気持ちになりました。しばらく我慢してたんですが、後半からはもう辛くなったので製作せずに全部売ってました。これは多分個人的な好みです。
最後に何度か言及したグラフィックの話をするんですが、本当に良いグラフィックです。
タイトルを見れば大体察するところだとは思うんですが、キャラクターが上手いのみならず、背景とかその辺の質感までもが調和しています。ここ読んでいてタイトル見てない人なんていないとは思うんですけど、とりあえずタイトル見てください。
あとは焼け残りの「り」のフォントが焼け残りっぽく煤なのか何かが零れ落ちているのも細かくて好きです。
キャラクターもそのグラフィックのおかげでゆるく魅力的に描かれていて良い雰囲気を作っています。
食料の略奪が平然と行われるくらい資材不足が深刻そうな世界なのに、コーヒーを飲んで落ち着いている几帳面な人が好きです。そのコーヒーはどこから仕入れたんだ。
後は言わずもがなにひよこが良くて、あらゆるメニュー画面のフレーバーとしても出てくるので、常に画面がこのゆるさで固定化されています。一番好きなひよこは中断周りのひよこです。あなたの好きなひよこは何ですか。
しかし怪しい洞窟、クエストは受けたけど遠征先に見つからなかったので結局挑戦できずじまいでした。交流を始めたら、特にイベントも発生せずに情報だけ出てきてしまっていたのが、もしかしたら不具合だったのかもしれない。