第15回ウディコン全作品レビュー - ウラミコドク

15. ウラミコドク

ジャンル 作者
謎解きRPG なごみやソフト
プレイ時間 プレイVer クリア状況
7時間30分 1.06.1 全エンドクリア

良かった点

  • 状態異常をギミックとした思考を使う戦闘が楽しめます
    • レベルの概念は無いので戦略で勝ち切る必要があります
  • 推理ものあるいは論破ものとしてのシナリオの完成度が高いです
    • ヒントが用意されているので詰まることもありません
  • その時のメンバーに応じた会話の変化など細かいところも作り込まれています

気になった点

  • 最後のオチに関して、ギミックとしては素晴らしいですが展開としては若干強引なものを感じました
    • この辺りは好みだと思います

レビュー

矛盾する言葉を祓え

ウラミコドクは、高い戦略性を備えた戦闘と、正しい証拠を突き付けて事件を解決に導く推理パートが融合した、RPGあるいはアドベンチャーです。二つの異なる方向性で頭を使っていく作品となっています。

基本的なゲーム進行は、会話のやり取りからなるストーリーとマップの探索を経ていくような、アドベンチャー然としたものです。デスゲームめいた展開の中、続発する事件の真相に迫るため、正しい証拠を選び出す推理パートに挑んでいくことになります。
推理パート中は証言の矛盾あるいは発展性を指摘し、その根拠となる証拠を提出する流れで進んでいきます。それぞれの発言を吟味し、既出の情報との矛盾や、より深めていける証言の選出などを通じて、容疑者を絞り込んでいきましょう。証拠はアイテムのみならず、ゲーム中の様々な要素からも選出されます。あらゆる情報に目を配り、推理の糧としていくのが鍵となるでしょう。

この推理フェーズをけん引していくシナリオもまた良質なものとなっており、次々と起こる事件と渦巻く不信感、その中での主人公やバラエティ豊かなキャラクターたちの行動が過不足なく描かれています。
また、そうした多彩なキャラクターは全員プレイアブルとなっており、パーティを組んでダンジョンに連れていくことで好感度を上げつつ主人公との会話を見ることもできます。気になるキャラクターや気に入ったキャラクターがいれば連れ回すのも良いでしょう。

さらに、良質なシナリオからなる推理パートに引けを取らず、むしろ本丸と言って遜色ないのが戦闘パートになります。
ダンジョンはコンパクトながら簡易なギミックも搭載されており、このエリアを進んで雑魚敵を倒していきながら、最奥に待ち構えるボスを倒していくのが目標です。各ダンジョンはストーリーを阻害しない程度に短く収まっていながら、その攻略は一筋縄ではないかない壁としても成立しています。

攻略に重要となってくるのは、状態異常の理解と運用、そして各キャラクターのスキル仕様と敵の攻撃の性質の把握です。
戦略のベースとなる状態異常は基本的なものでも十種を越え、特殊なものを含めればそれ以上となります。敵味方のスキルも状態異常に密接にかかわるものが多いため、状態異常を制したものが戦いを制することとなるでしょう。
状態異常を熟知していけば、一部状態異常が重複しないことを利用して自身にデバフがかかるスキルをあえて多めに運用するなど、トリッキーな戦い方を選ぶこともできます。ボスに挑んで行動パターンや状態異常を捉まえ、こちらのスキルでどう対応していくかを考えていきましょう。
おおよそいつでもパーティーを変更することができるため、どうしても勝てなさそうなら組む相手を変えてみるのも良いかもしれません。

このように、証言と証拠とにらめっこして推理を導くストーリー、強力なボスをいかに攻略するかの戦術、その双方が別ベクトルの頭の使い方を要求するため、思考の交互浴のような体験を得られる作品となっています。
並みいる強敵を打ち倒しながら、事件の真相を解き明かしていきましょう。

感想

ギミックバトルも好きだし推理ものも好きなので、好きと好きが掛け合わさって、すごく好みの作品です。
双方ともクオリティが高いというのがそれに拍車をかけていて、どっち摂取しても楽しいゲームになっていました。

とりあえずギミックバトルの方の話をします。
雑魚戦はダンジョンの賑やかし、あるいはこちらの技を含めた予習としての役割を担っていて、それを完遂する程度のボリューム感で良かったです。多すぎず少なすぎずの良い塩梅。
もらえる巫の総量からしても、全部倒さなくても良いバランスにもなっている印象でした。そもレベルアップがないので、倒さないこともある程度推奨されていそうです。

真打というか真髄はやはりボスとの戦闘で、状態異常を軸とした戦略性の高い戦いが楽しめます。
相手のギミックをつぶし、こちらのギミックを通すための立ち回りを考えて動くのが楽しいわけですが、これは敵の多様なギミックと、それに負けない味方サイドのバラエティ豊かな技構成によって下支えされています。
基本的な概念としては状態異常とフィールドと考えるべき対象は少ないながらも、そこから様々な方向へ広がっていく多様性は相手にしていても自分で使ってみても楽しいものとなっています。

個人的に好きだったのは実際のBGMのテンポも変えながら攻守をコントロールする歌と、こちらの有利を押し付ける天気の制御でした。フィールドの制圧が好みなのかもしれない。
反対に、トリルと鈴による行動制御と回復や、結界術あたりのテクニカルな所は上手く使えなかった印象があります。特にトリルが難しかったですね。結局キヨヒメをトリルパーティーで倒すのは諦めて、慣れていたクルハとユミヤのタゲとって高火力で押しつぶすパーティーで攻略しています。パワーでごり押せる余地があって助かりました。

他のメンバーについても盲目というシンプルな状態異常を最初に持ってきつつ、異常を自身に付与するアタッカーやら回復性能が高いキャラやら特定ターンに強いキャラやら未来に攻撃するキャラやら、それぞれの特徴を上手く使って戦えると楽しいキャラが多いので、こちらから戦略を仕掛けていく楽しさが十分に担保されています。
相手のギミックを攻略するという側面自体ももちろん楽しいんですが、こちらのやりたいことを通すという戦略性もまた楽しく、この両輪が上手くバランスされた戦闘なのが良いです。

相手のギミックという点で言うと、ボスの中で楽しかったのは最終決戦感が強かったのもあってラスボスでした。ほとんど使っていなかったピンキーとマナエを軸に据えて戦わないといけないヒリヒリ感もあって良かったです。下記のリザルトからも分かるんですが、最後ということを差っ引いても一番苦戦している気配を感じますね。
一番難しかったのはキヨヒメで、前述の通り最初に挑んだパーティーで何度か負け、パーティー構成から考え直して倒しています。特にクリティカルがしんどく、相手の残り体力僅かの所でクリティカルが連発しなければ勝ちという盤面までは行けたんですが、クリティカルが連発して負けました。

なお、遭遇率97%なのはなんとなく引っかかるので何とかしようとは思っていたんですが、図鑑から出現個所が推察できなかったの断念しました。
多分敵をスキップできるあの迷宮なんじゃないかとは思うんですが、自信がないです。あの迷宮ならほぼすべての敵をスキップした記憶があるので可能性が高いんですが、いなり寿司の可能性もちょっとだけあります。

ボス 仲間

続いてシナリオの話をします。
設計としては変則的な密室推理もの、あるいはデスゲームっぽい雰囲気です。インシテミルが印象としては近いでしょうか。状態異常や技能を含めた特殊な設定を加味した推理劇というあたりは、折れた竜骨やアンファルを彷彿とさせます。
ともかく、変則密室デスゲーム特殊設定付き推理ものという色々盛りだくさんな内容になっていて楽しめます。

シナリオの運びも綺麗で、 何かしそうなやつを先にどんどん殺していきます。加害者ポジになりそうな奴から潰していっている印象で、被害者が明確に選ばれている感覚を覚えました。作劇が上手い。
ゲームシステム的に推奨というか想定されていそうなメンバーの入れ方とその退場のさせ方も上手いので、メンバー構成をいじらなければキャラクターについて知ることが出来た上で推理に突入することができるようにもなっています。上記仲間の信頼度を見ても分かる通り、大体満遍なく信頼度が上がり、そこから退場していきました。

推理ものとしては徐々に証拠が出そろってくるタイプなので事前に推察するのは難しいか不可能ではありますが、その分論理と共に証拠が出てくるので推理そのものは筋道立てて行いやすくなっています。
さっきまで仲間にしていた彼女、そういえばああいう特性があったよな、みたいな戦闘パートの情報も使えるあたりも面白いです。戦闘で色々触っていたことがシナリオにもつながっている感覚を得られます。

なお、推理システム的にはダンガン□ンパなんだろうなと思いつつ、それほど該当作品を知らないので詳しいことは分かりません。
個人的には祓いと倣いがあるのが良くて、一方的に論理の破綻を突くのではなく、時には論理から発展させていくことも思考に入れる必要があるので、考えに奥行きが出ます。
証拠提出については、おおよそ議論を追っていれば推測できる範囲のもので、ちょくちょく誤解はありましたが大体は一発で通せる納得感があります。誤解と言っても、水の話があったからリアのアクアバレットで穴をあけるんだと思ってた、とか、血の所在を血封居断で血がついたのかと思ってた、といったレベルで、そうでないなら別の方に思考を飛ばせる程度の勘違いです。

とにかく全体を通して先が気になる謎をちょくちょく撒きつつ、一つ一つの事件を完成度高く組み立てることで各シーケンスのレベルでも満足感の高いシナリオとなっています。その情報がそこにつながるんですね、と膝を打ちながら楽しんでいました。

ここからは個人的なシナリオに対する感想になるので、蓋然性も客観性もへったくれもない話になります。
インシテミルやそして誰もいなくなったといった作品に触れていた影響もあって、頭の片隅にジュジュが残り続けていたゆえに最後の展開を十全に驚けなかったのが若干心残りになっています。あの辺の記憶を消せればもっと楽しめたはず。
あとは、最後の最後のシステム的な大オチは凄い好みで、叩きつけるべき対象が明瞭であり、かつそれは第4の壁を壊してみれば違和感しかないものである、というのはかなり良かったです。一方で、物語の展開としては第4の壁を登場させる導線が弱い印象で、やや唐突な感じを受けていました。

最後に、ゲーム全体の話をします。
ゲームとしては戦闘パートとADVパートがある程度明確に分かれていて、ADVパートから戦闘パートを参照することはありますが、基本的に関わりはありません。技能についても、説明だけなら戦闘パートが必要とも限りません。
そういう意味では、分岐としての意味はあれど、それほど密接なつながりはない設計という印象を受けます。

しかし、それぞれのパートが独立して完成度が高いゆえに、戦闘パートをやって頭を使ったギミックバトルを楽しみ、それが終わったらADVパートで別の頭を使った推理劇を楽しむという交代浴みたいなことができて、これが個人的には好きな体験でした。
どっちもやり続けると飽きか疲れがきそうなんですが、適度に交互に楽しむことでずっとプレイし続けるモチベーションが継続します。双方高いレベルで完成されているからこそ成し得る技なので贅沢ではあるなと思いつつ、RPGにシナリオがあると嬉しい理由の一つなんだろうなと納得していました。

ボスを攻略していく戦闘が楽しめる方ならお勧めですし、推理もの好きな方にもお勧めですし、両方好きなタイプには間違いなくお勧めできる作品です。