第15回ウディコン全作品レビュー - その日暮らしの冒険補償
19. その日暮らしの冒険補償
ジャンル | 作者 |
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自転車操業系保険会社経営SLG | ハッピーエンド過激派 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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40分 | 1.06 | ノーマルクリア |
良かった点
- 保険というシステムを上手くシミュレーションに落とし込んだ作品でした
- 操作性が簡単かつ良好なのでサクサクと進めます
- パラメータだけの文字情報しかありませんが、それぞれに対して徐々に感情が湧いてきました
気になった点
- 実際に結果が分かって補償が確定するのが数ターン後のため、どの判断でミスったのか分かりにくいと感じました
- 現在進行中の冒険者のデータがどこかに出ていれば分かるかもしれませんが、情報の優先度を鑑みても入れられる箇所はあまりなさそうです
レビュー
保険を与えてリスクヘッジ
その日暮らしの冒険補償は、冒険者に補償を与えて経営を上手く回す自転車操業系保険会社経営シミュレーションです。
遊ぶことで保険の仕組みのその一端が分かることでしょう。
ゲームのシステムは保険をシミュレーションに落とし込んだものとなっています。回復薬を満額で買うことができない先立つもののない冒険者からあらかじめ安めのお金をもらい、もし必要になったら回復薬のコストをこちらで負担する、といったシステムを運営していくことになります。
確率的に怪我しなさそうな相手には安めのお金をもらえば割に合いますが、明らかに無茶した冒険者には多額のお金をもらっても割に合わないこともあります。確率的に見極めて、適切な対処をしていきましょう。
保険内容の一例 |
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そうして保険の成約をし続けていくと、保険の中身は拡充されオプションが追加されていくことになります。冒険内容を鑑みてオプションの付け外しをしたり、どうしても無理そうなら拒否したりと、得られるお金とリスクを天秤にかけ続けていきましょう。
ただし、オプションの割り振りや拒否には気力が必要なので、何度も拒否したり割り振りをむやみに変えると気力が枯渇してしまいます。そうなるとどんな依頼でも受けざるを得なくなるため、相応のリスクを背負うことに繋がってしまいます。場合によってはある程度のリスクを受け入れる覚悟をしつつ、どこまでのリスクを受け入れ、どこまでの利益を確保していくかの判断が重要となってきます。
例えば上記の例なら、パーティに対してダンジョンが難しく、結果平均保証額が高い割に前払い金が少ないため、あまり進んで契約したくはありません。一見拒否したいところですが、オプションで装備レンタルを付ければパーティ強化により平均補償額を抑えられ、かつ前払い金も高くなるので契約する価値が出てくるかもしれません。気力に余裕があればその手段もあり得ます。
このように、気力と保険内容とを常に見極めながら判断を連続でこなしていくゲームとなっています。
こうして保険内容を見て連続で契約を成功させていくと、ストーリーが進行していきます。保険の後ろ盾を得て活発となった冒険者活動の一端を、合間のパートで短めのシナリオとして楽しんでいきましょう。また、契約の冒険内容を眺めることでも冒険者活動の広がりを感じることもできるかもしれません。
連続して契約を成立させるためにはある程度不利な条件を飲む必要があるため、リスクをケアしきれるように資金に余裕がある時に挑戦してみてください。
シンプルで分かりやすく、それいでいてサクサクと進むUIも相まって、ゲーム進行は非常にスムーズな作品となっています。
保険を上手く与えてリスク管理をして、大きく損をしないように自転車操業を続けていきましょう。
感想
保険というシステムが綺麗にゲームシステムに落とされていて、遊んでいて感動を覚えていました。経営シミュレーションっぽくまとめられるものなんですね。保険会社も経営しているのだから、当然と言えば当然なんですが。
加えて、保険というシステムが持つ、確率的に安全であるときに前もって支出を共用してリスクを上手く分散するという、発明的な設計が伝わってくるシナリオでもありました。リスクをとれるようになると活動的になって、全体的にはある意味リスクが低下しているので上手い設計ですね。
ゲームとしての操作性も良好で、サクサク保険をかけながら進められます。カーソルで説明が出る仕組みもあるので、初期のルールが分からない内も遊んでいれば大体理解できていくのも良いです。最初はチェックをポチポチ切り替えて気力を一気に落とすみたいなこともしていたのですが、説明が出るおかげで早めに原因を理解できました。
演出も最低限度で、文字と数字を相手にどんどん進めていけるテンポの良さも良いですが、個人的には遊んでいるうちにこの辺の文字情報にも一定の感情が発生するのが好きでした。
その貧弱な装備で火山に行くのはやめなさいとか、子供が一人で危ない森に入らないでくれとか、素晴らしい装備でずいぶん危険な賭けに出ますねとか、そのメンバーでこのダンジョン行くの保険要らないんじゃないですかとか、慣れてくると情報から色々考えることが増えます。
一方で、シナリオとしてのネームドはリヴと勇者くらいですが、リヴは無理な提案を蹴ったのもあって固有イベント見そびれました。
それ故に追加イベントは知らないのですが、勇者のパートを見る限りでも、最低限シナリオや世界観のフレーバーは担保しつつ、あくまでゲームを阻害しない程度に調整された良い塩梅のイベントとなっていると思います。
フレーバーはないと寂しく、ありすぎるとゲームのメイン体験を阻害するので配分が難しそうですが、ちょうどよく世界観に浸れる良いデザインだったように思います。
ゲームシステムの話をすると、実際に結果が分かって補償が確定するのが数ターン後なのはドキドキして良かったです。判断が即時に下されないので、資金をだぶつかせつつちょっと自転車操業っぽいことをやっている気持ちになれます。
その反面、大量のお金が消費されたであろう演出が来た時に、どの判断でミスったのかは分かりにくいなと感じました。所詮ある程度は運ではありますが、どこのリスク管理を失敗したかが良く分からないので、反省のしようは無い印象です。そもそも、いっぱいお金をもらってそこそこ払ったなら、トータルプラスと見る向きもあります。
とはいえ、現在冒険中の冒険者がどこかに出ればいいのかと言えば、UIを入れるスペースもなければ基本余計な情報でもありますし、このテンポ感を損なうくらいなら現状のほうが良いのかなとも思っています。
ゲーム全体の話をすると、ハードモードじゃない限りは、よほど変なことをするか悪運を引かない限り何とかなりそうなバランスです。装備や護衛を押し付けつつ、平均的に得になるように組んでいけば、よっぽどのことがない限り資金に余裕は出ます。
筆者は割と拒否してえり好みするスタイルで、契約290に対して拒否90くらいのバランスになっていました。最後の評価でも慎重に分類されていたので、想定ではもう少し冒険してもクリアできそうです。
この最後の評価システムも良くて、自分のプレイが客観的にどういう特徴を持ったものだったのかを知ることができます。
別の視点というのは得難いもので、少なくとも一人でプレイしているうちには与えられにくいものでもあります。これがゲーム側から提供されることで、自分では気づけていない傾向を知ることができて楽しいです。
前述した慎重さについても、筆者はそこまで気を付けていたわけではなく、ある程度心の赴くままに進めていたら自然とそうなっていました。ある意味、性格診断に近いのかもしれません。