第15回ウディコン全作品レビュー - SIBLINGS

22. SIBLINGS

ジャンル 作者
剣戟アクション 九乃頭虫(ここのずむし)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.0.4 クリア

良かった点

  • アクションの差し合いだけを抽出したような楽しさがあります
    • 殊に弾きのSEが良く、上手く防げると気持ちよくなれます
  • 演出が美しい上にテンポが良いため、戦闘のテンポの良さを少しも欠いていません
    • スピーディーで息詰まる戦闘が楽しめます
  • 特にボス戦では専用の攻撃シーンも含めて、極めて高い完成度の演出を享受できました

気になった点

  • 3面ボスより2面ボスのほうが強い印象を受けました
    • 個人の慣れの問題かもしれません

レビュー

スピーディーに差し合え

SIBLINGSは、アクションにおける差し合いの美味しい部分が詰まった剣戟アクションです。
相手の攻撃を見切り、パリィを重ねていくことでクリアへの活路が見い出せるゲームとなっています。

基本的なゲーム性は強くアクションに寄っていますが、戦闘システムの内実はあくまでコマンドバトルです。
こちらが「斬撃」か「整える」のいずれかのコマンドを選んで実行した後、相手の攻撃ターンが始まるターン制のアクションが楽しめるようになっています。
ターン制であるが故に、相手の一連の攻撃を受ける前に一息ついて心の準備ができるでしょう。

ターン制コマンドバトルの形式

こちらのアクションが完了した後に相手のターンで行われる攻撃は、いくつかの固有モーションの中で特定のタイミングにダメージを与えてくるというものです。
ここでプレイヤーが取れる行動は、防御、回避、そして防御の特殊例としての弾きがあります。

防御は、特定のキーを押し続けている間に常時成立しています。基本的な攻撃を全て防ぐことが可能ですが、攻撃を受けるたび戦意に傷が付いていきます。
戦意ゲージが溜まり切ると大きく隙を晒すことになるため、全てを防御で済ます訳にもいきません。相手へ攻撃する斬撃の代わりに整えることを選択して戦意をある程度回復するという手もありますが、それを続けるのではジリ貧です。

これを避けるため、相手の攻撃の瞬間に防御ボタンを押すことで、弾きと呼ばれる行動ができます。タイミングはそこそこシビアですが、成功すれば相手の戦意を削り、こちらの戦意が回復する恩恵を得られます。
ただし、弾きは少しでも遅れるようならダメージが直撃するハイリスクハイリターンの選択です。狙いどころはプレイヤー自身の腕と相談して決めましょう。

また、強敵の繰り出す一部の攻撃については防御も回復もできないことがあります。この時は左右キーによる回避、上下キーによる前進と後退で対処することになります。
どの方向に避けるべきかは相手の攻撃によるため、相手のモーションを見極めて適切な方向へ回避していきましょう。

これらの行動を適切に選択し、各フロアに存在する敵やボスを攻略するには、それぞれが備える独自のモーションと攻撃タイミング、攻撃方法を知悉することがカギとなります。
防御だけではジリ貧になりますし、回避できる行動を見極めることができなければ確定でダメージを負ってしまいます。
モーションとタイミングを学び、弾きを増やして戦意の喪失を防ぎ、回避を反射で出せるようになることで勝利がぐっと近づきます。どうしても苦手な行動は防御でしのぐ、というのもまた良い選択でしょう。
戦闘のテンポは非常に良く、一戦が適度な長さで片付くためリトライ性は担保されています。たとい敗北したとしても何度でも挑み、戦い方を学んでいきましょう。

加えて、スタイリッシュで美しい演出もまたこのゲームの見どころの一つとなっています。
攻撃モーションの作りは素晴らしく、タイミングを取りやすいダイナミックさと戦闘が素早く進んでいくスピーディーさを兼ね備えたものとなっています。攻撃を弾くと鳴る小気味良いSEもあって、爽快感をもって戦えることでしょう。
さらに圧巻となるのは、ボス系統の固有行動を食らうことで発生する演出です。この演出は一見の価値があり、このためだけにあえて受けてみるのも一興かもしれません。
戦闘のテンポの良さを一切損なうことなく、カットインの妙で高速に演出される様は芸術的とすら言えます。

とにかく、アクションにおける気持ち良い部分だけが抽出されたようなゲームとなっています。テンポ良く戦闘に挑んでは行動を観察し、そうして相手のモーションを完全に見切って弾き続けられた時の爽快感は格別のものです。
強敵に何度でも挑み、見事打破していきましょう。

感想

世の中にはいろんなゲームがありますが、ノンストップで楽しい所だけ入ってるゲームは中々に稀です。このゲームはその稀なゲームの一つであり、雑魚戦一つとっても楽しみ続けられる作品です。気付いたら1時間30分経っていてクリアしていました。キングクリムゾンだ。

特筆すべき点が多いんですが、とりあえずテンポの話をします。
戦闘がメインとなりますが、とにかくあらゆるところのテンポが物凄く良いゲームです。戦闘という繋がりで見ても、負けるにしてもすぐ負けるし、勝つならかなり短く勝てます。
ただでさえスピーディーで息詰まる戦闘ゆえに時間を短く感じるのに、加えてちゃんと敵の耐久もそこそこ低めに設定されてそうな気配を感じます。

ここに加えてコマンドが極限まで単純化されていることで、コマンドバトルだということを忘れるレベルでアクションの感覚で戦えます。慣れてしまえば整える必要はほぼないので、本当にアクションゲームっぽくなってきます。
この手のゲームならスキルとか回復が入っていても不思議はありませんが、そこが削ぎ落とされているがために思考がシンプルに研ぎ澄まされていきます。下手にそういったコマンドが入ると、それを使うかどうかの判断に思考が取られますからね。このあたりの選択性の無さはわざとやっていそうな感じがします。

さらに、そのテンポを一切欠くことなく、最大限に強い演出を魅せてくれます。カットの切り方が完璧に近く、ゲームに合ったスピード感で素晴らしい演出を叩き込んでくるのには感動を覚えるレベルです。
ボス戦におけるつかみ攻撃に関しては、モーションとアニメーションが格好良すぎるので、何ならわざと食らいにいきたくなるまであります。そうでなくても初見はとりあえず食らっておきたい。
その上で、3面ボスでひょろい方を倒そうとするとでかい方が庇う演出を見せるなど、細かい配慮も完備しています。隙が無いですね。

そして何よりも、戦闘における差し合いの感覚が極めて洗練されたデザインで用意されているというのが素晴らしいポイントです。
殊にボス戦は圧巻で、ずっと緊迫感のある戦いを楽しむことができます。
一度戦いを通してしまえば、そのモーションから行動を一意に定められるようになってくるので、そのパターンを体に覚えさせて弾き続けましょう。そも、SEから敵のモーションまで納得感の塊なので大体は初見で弾けますし、 そうならなくても被弾に納得できます。
後半ボスになってくるとさすがに初見で防げるかは50:50という感じですが、慣れれば完封はできるはずです。

筆者は2面ボスにまあまあ苦戦し、ラスボスにそこそこ苦戦したのちクリアとなっています。
ドラゴンについては、最初はその突破ですらひーこらやっていたにもかかわらず、クリア直前は一発でも被弾したらミスったなというレベルにまで至りました。慣れの力は凄い。
アイはクリア時点でもなお結構難しく感じていて、どこまでいっても択一をミスることはありましたが、何度もやることで択一の成功率を上げられ、それ以外の攻撃でミスりにくくなったので薄氷の勝利をつかめました。「卓越とは技ではない。単なる慣れだ。繰り返し行うことで体得する。」というやつです。

また、筆者の戦闘スタイルほぼ弾きで戦うものでしたが、弾きが難しい技には守り続けるという戦略も有効という裾野もあります。回避を合わせるという択もありますし、場合によってはそっちの方が強いこともありました。
筆者は払い行動をガードで割と誤魔化しつつ、覚えられたら適宜回避を混ぜる方針で進めていました。

この弾き主体の戦闘は本当に楽しく、弾きのSEが良いこともあって非常に気持ち良く戦えます。
前述の通り敵のモーションについても無駄がなく、素早い中で無理筋にならない絶妙なラインを攻めているのでテンポよく攻守交替して進められるのが良いところです。
敵のあらゆる攻撃を完全に弾き切って仕留められるようになると、得も言われぬ快感がありました。

また、色々なものをそぎ落として極力シンプルに作られたゲームではありますが、さりとて世界観まで置き去りにはしていません。プレイヤーが必ず見るところでは多く語りはしませんが、好きな人は触れられるようにしっかりと導線だけは用意されています。そして筆者は文字が好きなので全部読んでいます。
コンフィグですら世界観になじませようというコンテキストの妙は強く、ここまで徹底することで描ける世界観というのがありました。

とにかく、差し合い好きなら間違いなくやったほうが良い作品でした。そういうのが好きな方が丁寧に作ってるような印象を持ちます。
アクションゲームの差し合いのトロの部分だけ楽しめるゲームですよ。