第15回ウディコン全作品レビュー - Alkersas

23. Alkersas

ジャンル 作者
RPG 逃げ足
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.07 ED2

良かった点

  • 攻撃優位で設計された良い戦闘バランスでした
  • ネームドを倒した痕から情報を能動的に拾えるシステムが面白かったです
  • ボス解説部屋のおかげで初見でも戦略を練ることができます
    • 対象ボスの解説の前にワープしてくれる細やかさもあります

気になった点

  • 最初の名前入力のフォントが小さいように思いました
  • ボス解説部屋自体はありがたいのですが、盛大なネタバレともなっています
    • エリアごとに区切られた解説部屋があるとネタバレにならないかもしれません

レビュー

短く良質なRPGを

Alkersasは、短い中でバランスの取れた戦闘が楽しめるRPGです。
シンボルエンカウントの雑魚敵がはびこるフロアを進み、ボスを攻略していくことになります。

全体を通して戦闘メインで進行するゲームとなっている中、戦闘におけるバランスは攻撃優位なものとなっており、サクサクと進めていくことができます。こちらの火力が高いため雑魚をスピーディーに処理できる反面、逆に手痛い反撃を受けることもあります。気を抜かずに戦いましょう。
ただし、戦闘に敗北してしまったとしてもゲームオーバーにはなりません。代わりに、即座に拠点へと返されます。この拠点では、敗北前に得られたリソースでアイテムを手に入れたり、永久強化を行ったり、従者と呼ばれるメンバーの編成も行うことができます。
敗北した場合は十分に準備してから、再度フロアに挑んでいきましょう。

そうして十分強化して歩を進めた先で出会うことになる、各フロアの最後で待ち構えるボスは強敵です。その攻略には入念な準備と、多彩な装備を上手く組み合わせることが肝要となってきます。
ある条件を満たせばボスの情報を事前に見ることもできるため、その情報を活かして、敵のギミックを上手く攻略できる装備を考えるのも良策です。攻撃優位なレベルデザインを利用し、あるいは徹底的に弱点を突いてギミックごと叩き壊すという戦略も取れるかもしれません。

敵のギミックを上手く攻略して、ボスやネームドの敵を倒すことにより、その痕からシナリオの一片を得ることもできます。この回収は任意となっており、クリアには影響がないので戦闘を重視するなら無視しても構いません。
しかし、物語を補完して理解しようとするのであれば、余すことなくチェックするのをお勧めしたいです。シナリオの裏にある世界観を堪能できること請け合いです。

たとえフロアに挑んで敗北しても、拠点で強化しつつ引き継いで進むことができるため、何度も挑戦すればいつかはクリアできます。
戦略を立てて最小回数の挑戦で倒すも良し、万全の状態を整えて力で押し切るも良し、好きなスタイルで攻略していきましょう。

感想

個人的にテンポの良い戦闘が好きなので、大分攻撃偏重なレベルデザインが好きな作品です。武器を揃えて、耐性を整えて、それでも受けに回るのではなく攻めをどう組み立てるかを考えるべきデザインが良かったところになります。
全て整えてちゃんと戦うことができれば相手のギミック発動前に倒すことができる、といったレベルのかなり攻撃優位なデザインはやりすぎなきらいもあります。ただ、攻撃偏重とはいえ状態異常はそれなりに怖いので、どこまで攻めに徹するかを考えないと痛い目に遭うというあたりでバランスを取っている印象です。

装備の数がゲーム規模に対してそれなりに多彩なのも好みで、ボスに応じて色々つけ変えていく遊びができました。その多様さもあっていくつか機能していない武器もありそうですが、純粋に武器を集めていくのもそれなりに楽しいので個人的には好きです。
ボスと戦う前の装備の吟味もまた、戦闘と同じくらいの醍醐味がありますからね。

また、ボスと戦う前にボスの説明が見られる解説部屋は非常に便利で、戦う前から戦略を練ることができます。解放要素なので縛ることもできるのが良いですね。ちょうど戦おうとしていたボスの説明の前にワープしてくれる細かい仕様も嬉しいところです。
一方で、本棚の存在自体が大きくネタバレになってしまっているのは若干気にはなっていました。知る気が無くても規模感で大分わかってしまう懸念があります。ボスごと固有の部屋とか、最低限エリア単位で区切ってあれば丁寧な気もしますが、まあまあコスト高そうです。
なお、このシステム自体は武器を上手く組んで敵のギミックを攻略して戦うゲーム性とかなり相性が良かったなと感じている次第です。

そして、ボスもそうですが、ゲーム全体の戦闘バランスも良い作品です。
雑魚がちょうどいい塩梅で、さっさと倒せるけどそれなりに強い時もある、くらいなのでテンポ良くそこそこの緊張感が味わえます。場合によっては周回が必要なデザインをしているので、このあたりのサクサクと進む感覚はゲーム性に合っているなあという印象でした。

シナリオの面では少ない情報で語るタイプで、より深く物語を理解するために能動的に散らばったピースを集めていける構造が好みです。ネームドボスを倒した痕から物語が得られるので、大ボス以外を倒す動機にもなり得ます。
痕の主張がかなり弱いのもあって、最初の方の中ボスは見逃していたんですが、これくらいの主張の弱さの方が強制感がなく自らの意思で物語を補完させている感覚を得られるので良いのかなとも感じています。分かってしまえば回収の旅に出られますしね。

なお、プレイを通してみれば戦闘面でもシナリオ面でも完成度を高めてあるRPGだなという感想に落ち着くんですが、その一方でタイトルがウルファールのサンプルゲームのままだったり、Dataが圧縮されていなかったり、名前入力の文字がやたら小さかったり、序盤に得られる情報が割と警戒心を上げるものだったのがもったいない印象がありました。