第15回ウディコン全作品レビュー - DayDreamDreamer

28. DayDreamDreamer

ジャンル 作者
RPG Rentalize
プレイ時間 プレイVer クリア状況
12時間 + 3時間 1.017 - 1.031 トゥルーエンド

良かった点

  • 冒険していると感じられる雰囲気の良いJRPGでした
    • フィールドは世界を感じるほどに広大で、探索できる要素も散りばめられています
  • 後半になるにつれて歯応えのある戦闘が楽しめます
  • 選曲が素晴らしかったです

気になった点

  • 戦闘のUIについて、色々な要素があるために最初は取っ付きにくく感じました
    • 特にリング式の選択UIについて、横の切り替わり時に見た目が変化しないのもあってやや使いにくかったですが、アップデートで改造が入りました
  • 状態異常周りのアイコンについての説明が奥まったところにあります
    • 強く戦略に直結するので、可能であれば戦闘中に説明が見られると嬉しかったです

レビュー

JRPGの原液

DayDreamDreamerは、RPG然としたRPGです。何よりもRPGというジャンルが似合うゲームとも言えるかもしれません。
広大なフィールドを思うがままに探索し、エンカウントする雑魚や立ちはだかるボスをサイドビューの戦略的な戦闘システムのもとで打倒していく王道的な設計となっています。

探索することになるフィールドは広がりを感じられるようなデザインとなっており、かつロケーションに合わせた変化がふんだんに盛り込まれているものとなっています。かてて加えて、この様々なロケーションのほぼ全ては地続きで存在しており、歩き回るだけで世界を巡っているという感覚を強く覚えることになるでしょう。
このロケーションの変化と確かな接続性が、RPG的な冒険をしているという空気感を印象的に演出しています。

加えて、そのフィールドはただ広いだけの殺風景なものではありません。各ランドマークにおいては、物語の進行はもちろんのこと、サブイベントなども充実しており、各地を巡る原動力がそこかしこに散りばめられたものとなっています。
探索しながら戦闘していくことになる広大なフィールドの疎性と、イベントのある各地点の密性の塩梅がちょうどよく、冒険する楽しさもシナリオ駆動で先に進む魅力も同時に感じられることでしょう。

そうして進行することになる本編シナリオ、あるいはイベントの中で避けては通れないのが強力なボスの数々です。
そのボス戦における戦略性を語る前に、このゲームはいささか特殊かつ戦略的な戦闘システムを抱えているため、まずはそちらを説明します。

戦闘画面

戦闘の基本システムはCTBに近く、左下の歯車にある待機時間とそれが示す順序でターンが回ってきます。この待機時間はスキルによって決まっており、強力なスキルほど次の行動が来るまでの待機時間が長くなりがちです。また、スキルによっては詠唱時間が別途あるため、発動までにラグがある場合もあります。
この行動順を上手く制御し、補助のタイミングや回復のタイミング、敵の攻撃の対策のタイミングなどを考慮して戦略を回していくのが重要となってきます。

また、各キャラクターは戦闘前にも戦闘中にもその立ち位置を変えることができます。立ち位置には主に二つの効果があり、その一つとして前衛か後衛かによって攻撃性能や防御性能が変化することが挙げられます。
前衛なら攻撃性能が上がって防御性能が下がり、後衛ならその逆です。このため、強い攻撃をする時だけ前に出る、相手の強力なスキルを受けるため全員下げるといった戦略もあり得ます。
加えて、必ずしもその影響を受けないキャラクターやスキルもあるため、それぞれのキャラクターの特性に合った位置に動くこともまた大事になってくるでしょう。

第二に、立ち位置は効果範囲に影響を及ぼします。多くの範囲攻撃は一定の大きさのサークルで表されるため、密集していると全てのキャラクターがダメージを受けてしまいます。一方で、分散していればダメージを受けるのはサークルに含まれる一部のキャラクターで済みます。
それと同様に、回復も範囲が決められているため、こちらは密集したほうが有利となるでしょう。
性能の上下や次に来る行動などを十分に勘案して、適切に移動を挟んで立ち位置を柔軟に変えていくのが攻略の上で重要な動きです。

この、行動順を管理し、移動により効果範囲をコントロールする戦略的な仕組みの上で、プレイヤーは戦い方を練ることになります。加えて、強敵として立ちふさがるボスに至っては、さらにもう一段ギミックが用意されていることも多いです。
ボスのギミックを攻略して勝利を掴み取るには、行動順や位置に応じた柔軟な選択と、活用するスキルが肝要になります。スキルは、各キャラクターの固有スキルに加え、事前に装備によって構成を変えられるものもあります。これらの組み合わせが、重要なウェイトを占めることになるでしょう。
使ってみたことのなかったスキルを採用するだけで、ボスに楽勝することもあり得ます。相手に対して有利を取れそうなスキルを考えて、戦略を嚙み合わせてボスを蹂躙しましょう。

そうして様々なボスを打倒していくことで、ゲームのシナリオは進行していきます。広大なフィールドを冒険し、仲間を増やし、ボスを撃破していくそのJRPG的な過程の先をぜひとも体験してみてください。
また、サブイベントも色々と存在するため、以前訪れた場所を再訪するのも一興です。何か新しい発見があるかもしれません。
ぜひとも世界中を巡って、色々な場所を訪れてみましょう。

広大な世界というフィールドを周り、装備を集めたり仲間を集めたりしつつ、強力なボスを戦略的な座組で打ち破っていく、その体験はまさにRPGそのものとも言えます。
JRPGに飢えている人にお勧めの作品です。

感想

一言で言うなら、まさにやりたかったJRPGです。こういうJRPGを遊びたいというJRPGの具現であり、RPGの原体験という琴線に触れる作品でした。
このゲームに対して筆者が非常に好意的であり、都度都度において感動しながらプレイしていたのはこういった個人的な事情もあるので、DayDreamDreamerなんでも褒める妖怪だと思ってご了承ください。やりたかったRPGをそのままお出しされたら楽しいのはそれはそうなので。

まずはフィールドのことに言及します。
かなり広大であり、何よりも地続きであることから冒険しているということを強く感じられるマップとなっています。
真の序盤はともかく、かなり最初の方から色々なところに行けます。関係ないダンジョンに乗り込むこともできますし、いきなり変なところに行くのも可能です。かなり高い自由度を備えています。
その一方で高い難易度のものは色付きで表現されるなどのケアもなされているので、実力から離れたところで深追いすることもありません。細かい配慮。

その高い自由度のもと、各地のロケーションは大きく様変わりし、雪国から腐敗した土地、遺跡から都市まで、見目という面でも大きく印象を変えてきます。
地続きでロケーションの変化を感じ取れるマップを歩き回っていくことで、より広い世界を巡っているという印象を強く覚えることになります。この体験は非常にRPGとして良く、常にわくわくした気持ちで世界を周りつくすことができました。

この地続きであるという体感はそのまま冒険しているという感覚に強く結びついていて、歩き回って実際に冒険しているんだという印象をダイレクトに感じ取ることができるようになっています。
ファストトラベルや鉄道という要素はあれど、各地点は確かにつながっていて、実際に歩いてそれをつないでいくことになるため、一切分断された印象を受けません。

そうした地続きで広いフィールドを有していながら、要所要所には探索する価値のあるものを配していたり、訪れた先にはシナリオ進行の他にもイベントを用意していたりと、小さな面でも大きなくくりでも程よく要素が散りばめらています。
この塩梅が非常に良く、広大なフィールドを歩き回っているという意識を失わない程度にはまばらで、何もないなとは感じない程度に密であり、ワンパターンだなと思わない程度に緩急がついています。

そうした探索要素の幅が広いのも良く、新しいダンジョンが顔をのぞかせたり、強力なアイテムがあったり、変なイベントが起きたり、仲間が増えたり、ファストトラベルの解放まであったりと、より取り見取りです。
様々な主要要素をクリアした後ですら、ウルカノを仲間にしていなかったり、もう一人の管理人がいたり、その他の細かいイベントがあったりと、いくらでも探検できる裾野の広がり方をしています。世界を冒険する楽しさは尽きることがありません。

こうした実際の広さと要素の充実さが合わさり、世界の広大さと奥深さの乗算によって圧倒的なまでのゲーム的な体積を擁している作品となっています。

続いて、シナリオの話もします。
ファンタジー風の世界観に対し、適度に現代的な銃器なども入った混合した世界観を形成しています。これは割と都合の良い世界観となっており、ファンタジー要素やテクノロジー要素で良い塩梅に物語を転がせますし、びっくりするほどユートピアのような変な要素を入れても、そこそこ親和性があります。

そして、この世界観にもきちんとシナリオ上の意味があるというのも素晴らしいですが、それに加えて各要素をきちんと拾って構成しているという点も優れています。
魔法や銃器、種族といった存在をただ設定するのではなく、実際にプレイアブルで魅力的なキャラクターとして配し、イベントやシナリオで上手く描写をしています。文字上の世界ではなく、表現として活き活きした世界が描かれていました。

加えて、展開は変則的ながらも王道的でもあり、ノーマルのラスボスは言わずもがなで気持ちがある意味では最高潮に達しますし、トゥルーはもはや言葉に表す必要すらありません。筆者の弱いところが全て狙い撃ちされているような展開です。というか多分、JRPG好き全員の弱点です。
展開に必要な要素自体は中盤あたりから匂わせているため、そこから終盤にかけての展開はある意味では予想できるものと言えますが、それ以上に求めていた展開と言えます。ラーメン屋のラーメンみたいなものです。

またシナリオを回すキャラクターも良く、それぞれが個性的で魅力のある性質をしています。
個人的にはウルカノを推しています。ウルカノ、ウルカノって見た目をしている上に、ウルカノという感じの性格をしているのが凄いです。これは因果が逆で、ウルカノっぽいキャラクターにウルカノと付けたセンスが凄いのかもしれません。
サブキャラだと思っていたので、仲間にできた時は嬉しかったですね。

続いて、戦闘の面白さについても話しておこうと思います。
歯車のUIで表されたCTBっぽいATBであり、行動順や戦闘フィールド上の位置を勘案して戦略を練っていくタイプです。
まず敵の状況まで観測できる行動順制御がある時点で戦略的ですが、ここにフィールド上の移動があることで、別次元の戦略性も生まれています。

フィールド上に散らばっていると相手の強力な範囲攻撃の影響を最小限にとどめられますが、バフの範囲に入れなかったり、一斉に回復できなかったりというデメリットもあります。また、場所によって性能も変化するので、そのキャラクターのやりたいことに合わせた立ち回りや位置調整も大事になります。
このあたりのメリットとデメリットを考慮しつつ、行動順を上手く使うことでメリットだけを享受していくこともできます。
ここを考えて行動を組んでいくのが楽しく、上手く戦略がはまり最大火力を出したり、ギリギリで立て直せたりすると非常に気持ち良いです。

戦闘バランスは、こちらの能力も強けりゃ相手も強いタイプのバランスであり、どちらが強みを押し付けられるかで勝敗が変わります。
このためバフデバフはもちろん大事であり、頑張って鋼糸を24つけて光輪で最大強化してぶっ放せばとんでもないダメージが出ます。どれくらい付ければワンキルできるか分からないからちょっと余分に付けすぎるのもご愛敬。
一方で、バフデバフしてたら波状攻撃に沈むことも多々あるので、それより殴ったほうが良いケースもあります。状況や相手によって適宜戦略を切り替えていくのも肝要でした。

とにかく、どんな行動が強いか、どんな組み合わせが強いかを考え、その上で、敵の強みを退けるための戦略を立てないと勝てないバランスです。そして、そこが考え所であり楽しいポイントとなっています。
どういったスキルを付けて対策とするのか、メインウェポンは何で攻めるのか、相手の強行動に対してどういった戦略をとって安定化させるか、事前の準備とその場のアドリブ双方で楽しめる戦闘となっています。

この戦略性はもちろんボスに顕著であり、魔女を始めとして割とギミックボスが多い印象を受けます。
例を挙げれば、アンチマレフィキウムのボスは回復行動を反転させてくる腐敗で場を混乱させてきます。これに対策を立て、その上でそれ以外の行動にも回答を用意する必要があります。
筆者は???の二回目に永久にメイクシフトされるなど、色々なボスに初見で敗れていますが、その経験をもとに戦略を立てて撃破しています。魔法を見直して火力を伸ばす、耐性を考慮して枠を整理する、技に対抗して使うキャラクターを変えたり位置を変えるなど、色々と戦略を立てて挑むのは楽しいです。

個人的に戦っていて一番楽しかったのはノーマルエンドのラスボスでした。
とにかく足が速く、火力も十分の強敵でした。少なくとも密集していると即座にやられるので、できるだけ離しておいてもなお強かったです。
味方サイドでは特定ケースで大活躍していた魔法の分捕りや無限魔法がこちらに牙をむき、改めて異常に強い能力であることを分からされます。ヒュギエイアを分捕られた時は軽い絶望を覚えました。

真のラスボスの攻略にあたっては魔女のスープが刺さっていて、強化解除手段として異様なまでに優秀だなと認識を改めていました。アイテムも有効活用すれば強力な武器になります。
このラスボスは強制睡眠+睡眠という初見殺しをやってはきますが、それ以外は結構まともなので、正直ノーマルラスボスのほうが強く感じています。ランダム魔法のどれを引かれるかも結構寄与しそうではありますが。

また、戦闘から少し離れますが、武器にスキルが割り当てられ、これを何度か使うと習得して外してもスキルが使えるようになるというシステムも秀逸です。感覚的にはFF6の魔石みたいな感じ。もっと近いシステムもあった気がする。
どんなスキルでもまず一定回数使ってみる動機になりますし、その中で何となくスキルの使いどころを学習できます。新しいスキルを触る導線、それを何度か使って把握するタイミングの提供の双方を兼ねており、色々なスキルを上手く使って攻略するゲーム性とも噛み合っていました。

このように、このゲームの良さの10割はフィールドの設計で、あとの10割はシナリオで、残りの10割は戦闘の面白さで構成されています。つまり300%良いゲームです。何ならキャラクター性の良さなどもこのゲームの楽しさの一つなので、300%では済まないかもしれません。シナリオに包含されそうですが。

それ以外にもいくつか細かい好きな点があるのですが、それを挙げるとキリがないので、いくつか紹介するのにとどめます。

まず、フィールド上のアクションでアイテムを回収できるシステムが良いです。オブジェクトに干渉できるという体験が、間をつなぐ要素としても機能しています。
これ以外にもワイヤーアクションができるなど、ただ歩き回るだけでないフィールドギミックが散りばめられ、マップに変化を生み出していました。

後は、村の到達不能領域で家を見切れさせていることで、村としての奥行きを演出しているのが好きです。プレイヤーが移動できる範囲が全てではなく、それ以外にもちゃんと営みがあり、そうして世界が成り立っているという感じがします。

さらにごくごく細かい点として、リベイアを竜の巣で呼ぶとちゃんと本体が動くなどの芸が細かいところも良いです。局所的な例外処理にも手抜かりはありません。

そして最後に、選曲が素晴らしいです。
あらゆる場面の曲がシーンに合っており、かつそのシナリオと共に印象に強く残るものとなっています。
殊にボス戦闘曲は非常に良く、仕事中に頭で勝手にリフレインするくらいには好きなものになっています。URL知りたい。

ここまでおおよそ良い所しか書いていないので、バランスをとるために気になったところについても触れておきます。
まず、戦闘のUIは割とごちゃごちゃした印象を受けます。慣れてくれば情報がまとまっているのですが、初見ではどこを見るか判然としにくいデザインになっているように感じました。
例えば、初見でチャージで増えたものを見逃していたり、リング式の選択UIを横で切り替えた時に変化に気づかなかったりしていました。

特にリング式UIの横切り替わりについては、切り替わった先のリングと形が一致していること、アイコンの色など分かりやすい点で差異が無いので形で見分ける必要があることなどから、そこそこ難しいものになっています。
なので、個人的にはアップデートで更新された押し込められている設計のほうが好きではあるんですが、それはそれで要素が多くて分かりにくいというのも分かります。分離式のほうが総合的なキー押下数は減りそうですしね。

後は、即死とのイベントバトルを越えないとセーブできない幽霊船や、なんとなく勝てそうになる負けイベントなど、若干厳しいイベントバトルがありました。
負けイベント自体は展開上アリだとは思っているんですが、時間の都合上、数ターン経ったら強制的に敗北くらいのバランスが嬉しいです。何となくいけそうだけど絶望的な技もあってジリ貧で負けるという体験それ自体は何だかんだ良いなと思うところはあれど、徒労に感じる面もあります。

このあたりの不満点はあれど、後からこの感想を書くために無理やり引っ張り出した程度には感情に残っていないものとなっていました。恐らく、他のプレイ体験が良すぎて消えたのだと思います。強烈なプラス要素は、多少のマイナス要素を押し流しますからね。
最終日手前でトゥルーを目指している時、更新に気づいて入れてみたらリングUIに改修が入ったところで、そういえば使いにくいと思ってたなとようやく感じたレベルです。個人的には良いアップデートだなと感じていました。

本当にやりたかったJRPGがやれたので、個人的にはウディコンはこのゲームをやれただけでも十分満足しています。そして、そういうゲームがいっぱいあるからウディコンは楽しいですね。