第15回ウディコン全作品レビュー - STARCHILD

30. STARCHILD

ジャンル 作者
精密アクション 朝倉くもり
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間30分 1.002 クリア

良かった点

  • グラフィックも相まって良い雰囲気を醸成していました
  • ステージ構成やギミックのアイデアが面白かったです

気になった点

  • ジャンプが最後まで感覚的でなかったので、ゲージなどがあると分かりやすくなるかもしれません
  • 地形判定が移動する軌跡を加味していなさそうなので、クラゲの移動時にすり抜けることがありました

レビュー

精密アクションに挑戦

STARCHILDは、独特なジャンプ挙動を上手く操って攻略する精密プラットフォーマーです。
様々なギミックから成るいくつかのステージを突破していくことで、クリアを目指します。

挑むことになるステージは、落ち着いた不思議な雰囲気を醸すグラフィックで構成されています。しかし、その穏やかな見た目に反して難易度は高めです。正確かつ素早いアクションが要求されるでしょう。
そのアクションの中でもとりわけ重要となるのは、足場を正確に渡り歩くためにジャンプのコツをつかむことです。その挙動はジャンプというよりも、次の着地までに一定時間得られる浮力が押下中だけ作用する、といったような制動を示します。このアクションを使いこなすこと無しに、上手く足場を乗り継いでいくのは難しいでしょう。
殊に最終盤の精密アクションをミスなく突破していくためには、かなり繊細な操作スキルが求められます。何度も遊んで慣れていきましょう。

ステージごとに様変わりするアートと、各ステージのギミックの特異性もあり、次に何があるのかを楽しみにしながらステージを攻略できる作品となっています。
ジャンプの挙動を熟知し、上手く動かしてラストステージをクリアできた時の達成感はひとしおです。何度も挑みクリアを目指しましょう。

感想

見た目に反してなかなかシビアなアクションでした。最終ステージをやっている時の気分は、壺をやっている時と相似です。そこそこ序盤から精密操作が要求されるタイプなので、難易度を下げて挑んでも相当難しい部類だと思っています。

グラフィックの雰囲気は良くて、トランジションと言い独特の空気感が醸成されています。効果音やBGMの音量が小さいきらいがありますが、静かな世界の印象とも相まってむしろ良い没入感が得られるかもしれません。
世界観が特殊なので最後まで解釈に惑うことはありましたが、美しい空気を感じるだけでも割と楽しめます。

各ステージの構成やギミックのアイデアも多様で、面白いクリアの仕方をしていくステージが多い印象でした。ステージの情景に合わせていることもあって、各ステージのどこも印象が被っていません。
中でもとりわけ印象が強いのは、やはり最高難度で立ちはだかる最終ステージです。ジャンプタイミングを誤って落下していって着地したあたりで、何か良い音楽が聞こえそうな気すらしてきます。あれは心を折る長さをしていました。

一方で、精密重視のアクションとしては若干操作性に厳しいところがあります。細かいところで言えばトゲの当たり判定がやたら大きい割に扉の下入力判定が狭かったり、水面の亀に代表されるような足場から足場への正解がやや不明瞭なレベルデザインは気になるところです。ラストステージにおいて、一度画面内から消えた共鳴が先行する箇所に効いてくる初見殺しはかなりしんどかった思い出。

システムの面で言えばジャンプの挙動がかなり特殊で、このとっつきにくさも操作精度を要求するゲームとしては難しいところがありました。
プレイした印象では、見えないゲージみたいなものがあって、Zを押すと消費して浮力を得るみたいなデザインをしている気がします。本当のところは分かりませんが。このジャンプ仕様がかなり曖昧なので、精密にクリアすべきプラットフォーマーとの相性はあまり良くない印象です。せめてゲージなどで可視化されていれば納得感はありそうです。
例えば、筆者は最初はデフォルトっぽいキャラを使っていましたが、溶岩の二段ジャンプで抜けるっぽい地帯を全く抜けられないので、最初に戻してゆるいジャンプのキャラに変えています。今ならジャンプの仕様が何となく分かっているので抜けられるような気もしますが、初見しばらくでの適応は相当難しいのかなと思います。

物凄く細かいシステム面で気になる所で言うと、恐らく地形判定が移動を考慮していません。具体的に言えばクラゲの移動中に乗ろうとすると抜けます。
多分プレイヤーの落下速度が速く、ちょうどAABBが抜けたのだと思っていて、移動するAABB vs 移動する球に対応していないのかなと感じました。上下にしか動かないならAABBを拡張して、球は移動を加味したカプセルにすれば抜けなさそうです。斜めは難しいので諦めても良さそう。
そもラストステージでは若干処理落ち気味ではあるので、これ以上判定を正しくすると不味いかもしれません。精密アクションと処理落ちはだいぶ相性が悪く、画面内にガスっぽい攻撃が出てきてFPSが落ちることで操作性に割とクリティカルな影響を与えていました。

このあたりのアクションのさわり心地の話はあれど、全体として見ればステージの構成や見目も変わるギミックの多様さが楽しいタイプのアクションです。ここでは何に出会うことになるんだろうと思いながらステージを進められます。
アクションの精密性が求められるので人は選びそうですが、ラストステージをクリアした時には達成感が得られる作品となっています。