第15回ウディコン全作品レビュー - 救済少年の終末

46. 救済少年の終末

ジャンル 作者
探索ADV すたーあいす*
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.04 全END

良かった点

  • 予定表とワープによってかなり平易に行動ができました
  • 時間経過で各々の行動が変容していくのが面白かったです
  • ストーリーや世界観にマッチしたグラフィックでした

気になった点

  • アシストが強いので初手でトゥルーに到達しやすくなっています
    • 全END見たいプレイヤーが最後に回収するのがBADになりやすいので若干後味が悪くなるかもしれません
    • この辺りは遊びやすさとのトレードオフな気もしていています

レビュー

滅亡までの数時間

救済少年の終末は、キャラクターに関わることで運命が分岐していく探索アドベンチャーです。
地球最後の10時間の中で、様々な行動を取っていくことになります。

この10時間の中では、プレイヤーはもちろんのこと、各キャラクターもまた時間に沿って様々な場所に移動して最後の時を過ごしています。
その中で各々の行動に干渉していくには、メニューから見ることのできる予定表が便利です。各キャラクターの時間ごとの場所が全て網羅されているため、予定表と突き合わせながら行動を決めていくことができます。
時間と場所と、そこにいるキャラクターを確認し、積極的に関わりに行きましょう。

各々のキャラクターとの関係性を進展させるためには、特定の持ち物を渡さなくてはいけない場合もあります。持ち物の獲得のためには、マップを探索したり、別のキャラクターと話したりといった行動が必須となります。
いろんな場所を訪れ、いろんな人と会話して、それぞれのキャラクターとの関係性を深めていきましょう。

それぞれが個別で過ごすシステムにより、複数のキャラクターが並列に別軸で行動するため、ともすれば複雑に感じられるかもしれません。しかし、予定表によるスケジュールの網羅やワープによる移動の短縮など、あらゆる面でユーザーフレンドリーな設計になっているため、プレイ感としては複雑さを感じにくいデザインとなっています。
快適なゲームデザインの中で色々と試してみて、それぞれの終末を見てみましょう。

感想

凄く遊びやすいADVです。各キャラクターがそれぞれの時間軸で別の行動をするという、結構複雑なシステムの中でエンディングの分岐に挑むわけですが、そうとは思えないほどすんなりと進めることができるように設計されています。

この遊びやすさを担保しているのがタイムスケジュールで、いつでもそれぞれの行動と場所を見られる上、それ以降の行動も知ることができるようになっています。このため、何度も周回してそれぞれの行動を把握するというような工程なしに、エンディングのための最適なルートをあらかじめ考えることができました。
とはいえすべてのことが分かっているわけではなく、お金の管理だとかアイテムの管理などはある程度伏せられていて、スケジュール通りやれば必ず上手くいくということもありません。この辺のバランス感覚が良いですね。
加えてワープ機能もあり、移動という手間も徹底的に省いています。遊びやすさにかなり振っているという印象がありました。

一方で、このワープと予定表のシステムもあり、良かれあしかれ、かなりADVゲームであるという印象が強いものとなっています。システマティックに振っている感じ。
ただ、仮にタイムスケジュール無しで各人の動きを見ようとするとMoonっぽくなりそうで、それはそれで風情はあると思いますが敷居は上がりそうです。

また、初手で全てが分かっているため、最初からトゥルーエンドを目指すのもかなり楽で、実際に筆者は初見で辿り着いています。
このため、残りのBADを見に行こうと思うと、UndertaleでGルート行くのと同じような気持ちを抱えることになりました。じゃあBADを見るなという話ではあるんですが、ここはもう性根がそうなっているのでご容赦願いたいです。

ADVを作ろうとしてプレイヤー体験の導線を引こうとすると、上述のことからあえて不便を与える方向に行きたくなると思うんですが、そこを抑えて徹頭徹尾プレイヤー利益の目線でゲームを構成したのだろうなと感じています。
これは明確に良いところであり、利便性に振っているので結果的に周回も楽ですし、Fキーによる時間経過まで完備されているのは徹底しています。プレイヤーが通る道をこじ開けるのではなくて、通りやすい道を徹底的に整備してあるようなイメージ。
全体的には、ゲーム性よりも遊びやすさを優先して、より物語に没入できるように構築されているような印象を受けました。

シナリオ面で個人的に好きな所を挙げると、主人公が関わる行動は基本的に良い方向にしか向かないというのがあります。
このゲームのBADは救わなかった結果として訪れるもので、救おうとする行動を起こせばおおよそGOODに向くようになっています。これはテーマというか、主人公の善意に対してゲーム側が応えているところなのかなと感じていました。
彼は皆を少しでも救いたいと思っているはずなので、それが反転して呪いになるようなことはプレイヤーの気持ち的にも避けてほしいところがあります。
その分、とりあえず行動しとけば良いENDに行きやすいという性質があることにはありますが、ここもトレードオフでしょう。

後は細かい点だと、大体のアイテムを対象外に渡しても何らかのリアクションが返ってくるのは作り込みが細かいなと感じました。少なくとも観測範囲では、なんだそれ、みたいな定型文じゃないのが良いです。

なお、最後まで通しての疑問として、アルセだけはなんで残ってるのか良く分かっていませんでした。
彼もまた生きづらさを抱えてはいたのかもしれませんが、少なくとも表層的にはあまり動機があるように見えません。思考のパターンが筆者の頭になくて、うまく解釈できていないのかもしれません。