第15回ウディコン全作品レビュー - 未来よ心のままに

47. 未来よ心のままに

ジャンル 作者
戦闘メインRPG ケイ素
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.09 全Ex撃破

良かった点

  • プレイヤー側が場をコントロールできる良い戦闘システムでした
  • シナリオは良い人間賛歌でした

気になった点

  • アイテムの性能が高く、かなりプレイヤー有利なバランスに感じました
    • 1ターンの使用アイテム数には上限があっても良かったかもしれません

レビュー

場をコントロールして敵を倒せ

未来よ心のままに は、陣取りのような戦闘システムが特徴的な、戦闘をメインとしたRPGです。
敵を倒すごとにシナリオが進行し、ボスの撃破をもって一つの章が完結していく形式となっています。

戦闘画面

立ちはだかる敵を上手く撃破するには、独特な戦闘システムを利用しつくす必要があります。
プレイヤーが行うことになる基本的な操作は、中央にある3カ所のスロットの中から、SPを消費して1マスチャージするというものです。このチャージを繰り返し、スロットの5マスが埋まるとスキルが発生します。重要なのは、敵もまた同じスロットから選んでチャージしてくるということです。
互いにスロットを選んでチャージし、双方のチャージを合算して5マス埋まるとそれぞれのスキルが起動するという流れになります。

そうして発動するスキルの種別は、埋めたマスの数に依存します。概ね多くのマスを埋めるほど強いスキルが発動するため、より多くのマスを埋められるようにチャージしたり、反対に相手の大技を防ぐために邪魔する意味でチャージしたり、ということも可能です。
相手のチャージ段階ごとのスキルは常時確認できるため、受けても良い技とダメな技を確認しつつ、適切にチャージを割り振っていきましょう。例えば、こちらの物理防御が高く、特殊防御が低いのであれば、物理攻撃を積極的に受けるように立ち回ると被弾を抑えられます。

そうして敵を撃破していき、シナリオを進めていくことで素材値が手に入ります。この素材値を使うことで、いつでもステータスの編集やパッシブスキルの獲得、アイテムの入手などができます。加えて、プレイヤーが使えるスキルもまた、いつでも変更可能となっています。
特にボスなどの強敵に挑む際は、相手に合わせたステータスやスキルを選び、戦略的に相手を封殺することを目指していきましょう。

操作は陣取りだけでありながら高度な戦略性を持つ戦闘と、合間に挟まれるコンパクトながら要点を得たシナリオが両輪となって楽しめる作品です。
敵の性質やチャージ段階ごとのスキルを鑑みて戦略を立てて戦うことができれば、相手の攻撃を誘導し、こちらの通したい攻撃だけを通すことも可能です。戦闘をコントロールして、強敵を撃破していきましょう。

感想

戦闘システムが面白い作品です。プレイヤー主体で駆け引きを楽しみつつ、適度な戦略性をもってバトルを進行できます。
バランスとしてはかなりプレイヤー優位なので、上手く戦闘を進めることができれば強敵相手でも一方的な試合展開を演出できるのが楽しいところです。

相手も自分も同じ盤面でマナを取り合うというゲームシステムが秀逸で、こちらの行動指針を考えるのに加え、相手の妨害まで一手で行える面白いシステムとして完成されています。
これは、相手の各コストの技を見て、どのコストの技に警戒し、どのコストの技なら打たせても良いかを考え、上手く盤面を制御して勝利できた時の達成感が強いシステムとなっていました。相手のしたいことを潰し、こちらのやりたいことを通すのは非常に楽しいですね。
一方で、エンジェルグレイスで回復しなかったり、精度不良でもなく命中100回避0でも稀に外したり、スキル面で微妙に不安定なところはありますが、把握できれば対処はできます。

筆者の戦略は相手に意味のないバフデバフを撃たせて、超攻撃力の物理で押し切るスタイルでした。
少なくとも3章の強敵までは十分通じますし、4章で物理押しがちょっと封じられはしますが、アレンジを加えていけば最後まで押し切れるポテンシャルを持っています。体力を削り切ったところでバーサク+エーテルが強いですね。TP取れてるなら突撃もアリ。
裏ボスもこのスタイルで突破できていて、1 ,2を起動させることなく上手く盤面をコントロールすることで勝利をもぎ取りました。物理主体なのもあり、本当は5でハメたかったんですが、割と賢いのでちゃんと4で止めてきます。そうは問屋が卸さない。

こちらが場を制御しやすいこともあり、上述の通り戦闘バランスは明らかにプレイヤー優位な傾向を持っている上、特にアイテムを使うとより優位な行動を取れます。ずっと俺のターンができるので。
これまでの作品が相手の攻撃に対応するプレイングが必要なバランスだったのに対し、この作品では相手の攻撃を管理するようなプレイングができるようなシステムになっていました。ここを理解し、相手の行動をコントロールできれば大分有利に働きます。
難易度がどうしても上がらない仕組みではあると思いますが、個人的にはこちらの方が戦闘を上手く制御できている感覚があって楽しかったです。

また、シナリオも良く、機械目線による人間賛歌の群像劇に近い構成となっており個人的に好きでした。
構成としては掌編を連ねつつストーリーを進めるもので、それぞれの掌編の起承転結がきっちりついているので読んでいて安心感があります。
そして強く思うこととしては、やっぱり独特の美学を貫く悪役っていいなということです。共闘する元悪役も出てくるのでよりどりみどりという感じです。良い悪役のバーゲンセール。

返す返す、やることはシンプルな配置だけで、考慮事項はこちらの通す択と相手に通させる択という重なりを持っているこの戦闘設計は非常に秀逸なものです。テンポ良く戦闘を進められるにもかかわらず、非常に戦略的に戦ったような感覚を覚えることができます。
攻略して上手く型にはめる楽しさが味わえる作品でした。