第16回ウディコン全作品レビュー - イマジナリーディストピア

07. イマジナリーディストピア

ジャンル 作者
RPG/ADV 銀ノ薺道
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間 1.03 クリア

良かった点

  • 個性的なキャラクターによるシナリオが楽しめます
  • RPG要素が上手く演出に絡んでいました
  • 世界観を表現するグラフィックが良かったです

気になった点

  • 特にラスボスにおいて、リトライ性がやや悪いです
    • イベントスキップか戦闘直前でリトライしたい気持ちがあります
    • また、リトライ時については前回選択したセーブ位置に戻っていると助かります

レビュー

[イノル先生]を始末せよ

イマジナリーディストピアは、シナリオがメインのRPGです。
アドベンチャーゲームのようなイベントパートとRPGのような探索と戦闘のパートが交互に行われることで、シナリオが進行していく流れとなっています。

そのシナリオの軸となるのは、舞台である空想世界と、主人公である先生たちです。とある事件をきっかけに混乱に陥った世界の中で、生徒を救うためにもそれぞれの思惑と共に行動していくことになります。
その特殊な世界観と、生徒も含めた個性的なキャラクターたちがシナリオを盛り上げてくれることでしょう。

ただし、その物語を進めるにはRPGとしての戦闘を避けて通ることはできません。この戦いで勝利を収めていくには、キャラクターの編成とそれに伴う各々のスキルの使い方が重要になります。
ボスの性質を見極め、その攻撃手段や弱点を踏まえつつ、上手くスキルを使って戦闘を有利に進めていきましょう。
なお、レベルの概念がないため、無理に雑魚と戦う必要はありません。シナリオに集中したい場合は、適度にシンボルエンカウントの雑魚を避けていくのも良いでしょう。

世界観を上手く表現するグラフィックから、RPG要素である戦闘まで、全てを演出へと組み入れたシナリオは最後まで目が離せません。
主人公、そして生徒たちの行方を見届けるためにも、歯応えのある戦闘に打ち勝ち、シナリオをエンディングまで導いていきましょう。

感想

RPGなんですけど感覚的にはだいぶアドベンチャーでした。所々避けられない戦闘を乗り越える必要はありますが、雑魚戦はおおむねシンボルから逃げるのが安定なのと、シナリオパートの尺がしっかりと長いので。
その分、色々と世界観を広げたりキャラクターごとの特徴を描写していたりと、シナリオ重視感のある作品になっていました。

ひとまず戦闘面に触れておくと、キャラクターの入れ替えが激しいのもあり、そこにある手札で上手くいなす戦闘をやることになります。
アドベンチャー主体とは言っても戦闘は意外と歯応えがあり、適当にプレイしているとまあまあピンチに陥りやすいです。バフデバフや弱点、回復周りは注意深くケアしておく必要があり、なかなか気の抜けないレベルデザインになっています。

特にラスボス戦は初見殺し度合も高く、そこそこ難易度は高めでした。一応セーフスペースにおける会話にヒントがあるとはいえ、それだけで戦略を組み立てるのは難しそうです。筆者は二度目で通しました。
そういうこともあり、ラスボスのリトライが結構長いのは地味にしんどいところはあります。メンバー選択直前から始めるか、せめてイベントスキップがあると助かるだろうなとは思います。ラストイベントが結構長いので。

ちなみに、本当の意味でのラスボスで挑むメンバーがああなるのは割と好きな演出ではあり、それぞれのスキルを上手く活用するのも面白そうだなと思っていたんですが、ヘッドショット一発で沈めてしまいました。これが運を天に任せたということでしょうか。
直前のボスにも何度か一を引きに行ってはいたんですが、まさか最後の最後に一回で決まるとは思っていませんでした。豪運なのかそうでもないのか。

シナリオの面はむしろこのゲームの主眼ともいえるところであり、前述の通りかなり尺を取っています。
筆者はウディコンを遊んでいる都合上、前々作にあたるゲームはプレイ済みで、そこから拡張された世界を味わっていました。前々作はぷるあに焦点が当たる都合上、ほかのキャラクターたちはフレーバーくらいの印象しかなかったんですが、今作ではそれぞれのキャラクター性が割と掘り下げられていたのが良かったです。
ただ、前々作をやった記憶も相まって登場人物の把握ができたきらいもあるので、初見でこの人数を把握するのは割と難しいかもしれません。各々特徴的なキャラクターをしているので、プレイしているうちに覚えていけるとは思いますが。

キャラクターの個性もさることながら、世界観とそれを活かしたシナリオも良く、様々な場面で山場もあって盛り上がりもします。
この手のゲームとしては宿痾に近い、序盤のほのぼのパートに尺を取らねばならない問題についても、おおむね30分程度で収めているのでなんとかなっていました。
世界観については前々作をやった経験で多少なりとも世界への理解がなされているから把握できた側面を否定はできませんが、ある程度説明もなされているので多分理解はできるものだと思っています。

しかし、ラスボスの末路はまあそうなるだろうとして、真相を知って消されたっぽい3人は気になる上で、どうしても後味の悪さは拭えないではいます。かなりどうしようもない事態に陥っていた側面はあるんですが、微妙に主人公側の手落ち感が否めない幕引きになってる気もします。
まあそれも含めた人間臭さは、フィジカルつよつよメンタルよわよわの先生らしいところではあるんですが。