第16回ウディコン全作品レビュー - イルシェラート

09. イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi-

ジャンル 作者
アクションRPG わたえもん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.13 クリア

良かった点

  • 手触りの良いアクションが楽しめます
  • 合成システムを始めとした、自分なりのビルドを構成する楽しみがあります

気になった点

  • エフェクトと攻撃判定間の納得感が薄めでした
  • ゲーム規模に比してシステムがかなり複雑です

レビュー

自分なりの戦い方を模索しよう

イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- は、二人のキャラクターを切り替えて戦う見下ろし型のアクションRPGです。
攻撃やジャンプ、スキルを駆使して上手く立ち回っていくアクションを楽しむことができます。

敵と対峙するにはそれらのアクションを上手く扱うことはもちろん大事ですが、それ以上に重要となるのは様々なビルドの構成です。
とりわけ、レベルアップで得られるポイントから習得することになるスキルをどう構成していくかは、その要となります。パッシブスキルに振って立ち回りを強化するも良し、攻撃スキルに割り振って早期決戦を挑むも良し、特殊なスキルを習得してトリッキーに戦うも良し、自分なりの戦い方を構築していくことができるでしょう。

さらに、敵を倒したり、マップに落ちているものを拾ったりすることで得られる素材を集め、それらを基に装備やアイテムを合成することもできます。
こうして得られた素材にはランダムでそれぞれエンチャント効果が定められているため、素材の組み合わせ次第では強力な装備を作り出すこともできます。エンチャントの種類はステータスの強化のみならず、詠唱速度の加速やHPの吸収などの特殊な効果の付与にまで及びます。
自分の戦い方に合わせて、最適なエンチャントを持つ装備を作ることができれば、戦いを優位に進められるでしょう。

そうして組み上げたスキルと装備を活かし、シナリオ進行の障害となる強力なボスに挑むこととなります。ボスの攻略法もまた様々であり、敵の行動を見切って的確に攻撃を当てていくプレイングで挑んでみたり、装備を固めてハメてみたりと、好きなやり方で挑むことができます。
自分なりの戦い方とビルドを基に、マップを縦横無尽に駆け巡り、ボスを打ち倒していきましょう。

感想

割とずっと言っているんですが、ジャンプで飛び回って戦うのが楽しい作品です。でも多分、一番強いのは法陣を敷いて殴り続けることなんだろうなとも思っています。事実上のゾンビアタックなので。
マップの段差がちょうど良い感じにあるのもミソで、とにかく飛び回りたくなります。そして、だいぶ奥まった所にもちゃんと素材が落ちてるので、適当に飛び回りながら深いところに入り込んでは、ここにも落ちてるんだと拾い集めている時間が長めでした。おかげですぐにアイテムがいっぱいになります。

アイテムの所有限界については結構大変で、本当に拾えなくなるまで何の警告もしてくれない上、捨てることも原則できないので、最悪ケースだとボスのドロップが拾えなくなります。筆者はこれで滋養のために二回倒す羽目になりました。無念。
多分、強制的に帰還させるための仕組みだとは思うんですが、せめて残りちょっとになったら警告が欲しいところではありました。こんなに一杯拾い集めている奴が想定外と言えば、そうなのかもしれません。

アクションについては、おおむねヒットアンドアウェイや回復からのごり押しも通じる幅のあるデザインです。
装備とかビルドによっては色々とやれることはあって、上手く作ると延々回復しながら殴ってくる永久機関みたいなキャラクターが出来上がります。でも、たまに毒にやられて戦闘不能になる。
筆者はヒットアンドアウェイが好きなのでチマチマ殴ってましたが、回復能力を相手取ると持久戦になりがちなので微妙ではありました。短期決戦には脳筋戦法が良いのかもしれません。

アクションの手触りは上記の感じで良いのですが、エフェクトと攻撃判定の関係の納得感の薄さや、マップ上にある引っかかるオブジェクトの多さや分かりにくさなどが、若干ストレスを生んでいるようには感じました。
特にエフェクトはほぼ消えていても判定が残っていることがあり、そういうエフェクトのある大技が総じて火力が高いのもあって、理不尽な戦闘不能につながりがちでした。片側が戦闘不能になるとぬるっと相方が出てくるのも相まって、あれいつの間にやられたんだろう、みたいな状態になることが多かったです。
引っかかりは主に雑魚戦で致命的で、マップのオブジェクトの物理衝突を理解できていないと、ジャンプの判断が遅れて袋叩きになるケースが間々あります。慣れるまでは割と初見殺しみがある。
また、扉系の場所も結構引っかかりやすいポイントで、1マス幅しかない所に急いで入ろうとするとそこそこ失敗します。1.5マス幅なら救われる命も多分ありました。

また、システム面で言うと、プレイ時間に比してかなり重厚なシステムが構築されています。
スキルの付与から始まり、装備合成、それによるエンチャントの厳選、継承、といったようにかなりカスタマイズ性の高い仕組みとなっています。これ自体の完成度は高く、色々と自分なりに作る楽しみはあるんですが、その楽しみが十全にできる頃にはほぼクリア目前になりがちでもありました。
10時間くらいあるゲームのシステムが3時間のゲームに積まれている印象で、尺があればもう少し色々工夫して楽しめたのかなと感じています。性質を理解するための時間があんまりありません。

なお、個人的に好きなビルドはHP吸収メインで、回復のハードルが若干高いところに効いてきます。上手く戦えば、少なくとも雑魚相手には敗北しにくいところもあり、好んでエンチャントするものの一つとなっていました。

個人的に気になった点としては換金アイテムがほぼないところで、本を買うためにはある程度素材を売ってやる必要があります。
ただ、素材一つ一つにエンチャントがあり、それぞれの効能がテキスト上でしか示されず、良く分からないうちから取捨選択を迫られるので、このあたりの換金作業が非常に手間でした。一発で売り切ってしまうのが思考的には楽なんですが、レアっぽいアイテムもちらほらあるのと、合成に必要なアイテムがあったりするのが難しいところです。
足切りが簡単にできればもう少し考える時間を減らせそうなんですが、かなり複雑なのですでにあるソートでも如何ともしがたいところです。いっそレアリティくらい分かりやすい概念がないとどうにもならない気もします。

シナリオ面では分岐がそこそこ中間のところにあり、見事に外したために正史ルートには入れませんでした。終わってそうな出来事がずっと残り続けていたのでそういうもんかと思っていたら、一つだけちゃんとルートにかかわることができていなかったようです。凡ミス。
シナリオ自体はアクションゲームとして考えるとかなりボリュームがあり、町で色々とイベントを起こすこともできるので楽しかったです。意味もなく、シナリオが進行していそうなタイミングで町に戻って色々と話しかけるなどしていました。