第16回ウディコン全作品レビュー - 魔王復活物語
23. 魔王復活物語
ジャンル | 作者 |
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メタ謎解き | かげろう |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 1.5 | クリア |
良かった点
- 常に発見のある良い謎解きの体験でした
- ゲーム内のらしさの完成度が高いです
- ヒントの塩梅がちょうど良かったです
気になった点
- 特にありません
レビュー
あんまりネタバレしたくないのでここに書くことが無い
初めに断っておきますと、この作品を十全に遊ぶ上では、あまり情報を入れずに起動することを強く推奨します。
もしもあなたが謎解きを好んでいたり、発見を伴うパズルを気に入る性質の方であれば、ここから先を読まずにプレイしてください。素晴らしい体験になることだけは保証できるでしょう。
とはいえ、事前に情報を仕入れても楽しめることもまた確実ではあります。そういう方のためにも、少しだけレビューを書き留めようと思います。
魔王復活物語は、メタ的な要素を活用して進むパズル的な謎解きを主体としたゲームです。
ゲーム内ゲームを進める上でぶつかることになる、主に不具合を起因とした障害に対し、あの手この手ですり抜けてゲームを進行していくことを目的としています。
様々な形で発生する障害を上手く回避するために必要となるのは、プレイヤー自身の閃きと発想です。
ゲームシステムを上手く運用するなり、最終決戦前にあるデバッグ用のセーブデータを上手く活用するなり、あるいは注意深く周りを見渡すなり、様々な要素を隅々まで観察し、思考し、使い尽くすことによって、初めてその問題を解消することができます。
物語中のイベントから示唆される導線を上手く使い、時にはヒントシステムにも頼って思考を補助しつつ、適切な手段で対応していきましょう。
そうして謎解きを進めてゲームを進行させる毎に、回想の形でそのゲームの作者とのかつての交流が描かれていきます。ゲーム内の展開とも密接にかかわり続けるそれらの記憶は、やがてシナリオの本流へと回帰していきます。
謎解きの秀逸さもさることながら、そうして語られたゲーム製作にまつわる物語もまた良質なものとなっています。その誘引力は間違いなく、最大の難易度と呼ぶにふさわしい最後の謎を解く原動力となってくれることでしょう。
あらゆる困難を発見を伴う知恵と工夫で打破し、ゲーム内の要素を全て拾い上げ、その物語のエンディングを迎えていきましょう。
感想
最後があまりに綺麗に作られているので、それだけでも最高のゲームです。おまけに、そこに至るまでのメタ的なパズルの設計も秀逸なので、全体を通しても最高のゲームでした。
第四の壁のないメタゲーとしての新鮮味と、それだけに頼らない謎解きというかパズルの強度の点において、ここしばらくやったメタゲーの中では指折りに好きな作品です。OneShotとかアトペス以来くらい。
最後がどう良いかを追々記述していくので、まだやってないのに感想を読んでいる人はとりあえずやってからお願いします。何ならやったら以下の感想は読まなくても良いです。
いったん別の話をすると、ゲーム内ゲームのらしさを突き詰めているのも良くて、確かにこういう作り方しますよね、というところを適切に突いてきます。
バグ発見ゲーム系は割とあるあるのバグを出すためのバグというパターンが共感性のためにか強めになりがちなんですが、このゲームのバグは本当にそうなっていそうな印象があります。ちゃんとエミュレートされた不具合という感じ。
加えて、そういった不具合以外においてもゲーム内の要素がきちんとそろっていて、魔法復活物語そのものが活きた作品のように思える出来となっています。ちなみに、ここで言う魔王復活物語はゲーム内ゲームの話です。
そして圧巻であるセーブデータを活用した謎解きというパズルの設計は絶妙であり、常にそういう視点もあるのかという発見に満ち満ちています。
つづきからというギミックから出来得る全てのことをやったんじゃないかという程にバリエーションに富んでいて、そこから生み出される発展性とどこまでも伸びていく斬新さは10点以外何を付ければ良いのか分からないレベルです。これだけは迷うことが無かった。
終わりから始まる物語、バグを活用したクリア、みたいな系譜のゲームの先例は様々にあれど、ごり押しによる突破、存在しない情報の活用といった異なる視点からの活用を主眼としたパズルというのは目から鱗のシステムでした。
そしてこれは何度でも擦るんですが、最後の謎解きは完璧です。
連携、レベルによって到達する奥義、武器による技の追加、全ての説明された要素を余すところなく活用した上で、タイトルを叩きつけるという設計はあまりにも美しく完成されています。カタルシスがある。
筆者は王復活を構成した上で、それぞれを探し出していくという理想ルートの体験を通ったというのもあるかもしれませんが、とにかく得難い体験だったように思います。発見をベースに置いたパズルの体験の美しさという面において、The Witnessをやった時のレベルで感動を覚えました。
その分、とりわけ最後の謎解きの難易度は充分に高いようには感じています。分かる人には一瞬で分かりそうですが、筆者は30分くらい彷徨っていました。どうやらプレイ前のバージョンではタイトルのヒントもなかったようなので、世の中には勘の良い人もいるのだなと思っています。
連携+タイトルと了解してさえ、タイトルがタイトルそのものなのか悩みながら進めていたところもあり、迷走してこねくり回してルーズソックスを作ろうとしている時期もありました。とはいえ、王復活が見えるあたりでほぼ確信が取れるので、野暮にならない範囲では絶妙のヒントだとは思います。
ヒントについてもう少し触れておくと、最後以外のヒントについてもかなりちゃんと作られています。
筆者はあまり見ないで進め、大体分かった後に聞くようにしていたんですが、かなり良い塩梅の情報となっていました。雪のヒントは特にちょうど良い塩梅であり、戻るアイデアへの導線も、戻った後に何をすれば良さそうかの導線もきちんと完備されています。
一方で、エニムへのミスリードは若干ズルいところもありそうには感じました。筆者はなんとかして一番下の街を消す方法を探していました。
また、システム面においてはセーブが限定されているのも良いところです。おおむね、ここであなたをハメますよという意思表示になっています。その上で、ボスの前に置かれているなど、あまり作為的になりすぎないようになっているため、このあたりのバランスもとられています。
謎解きによっては明確に詰みもありうる中、そこを上手くカバーしたデザインになっている印象がありました。
セーブデータを残さないタイプの人向けにも塞がれているなど、細かいところのケアも良く整備されており、謎解きに集中できるような環境が完成されている作品となっています。
筆者はパズルだけで感動できるんですが、そういうタイプでない人向けにも、シナリオもまた良いものであったということも付記しておきます。
ずっとノリの良いコメディ調のストーリー展開で明るめにテンポ良く進めつつ、終わりに向かっては制作にまつわる熱をもって物語の強度を補完してきます。
殊に、筆者の記憶している限りでは往年のRPGの主人公よろしく一言も喋ることのないヒロが、最後に語りかける演出が良いです。それまではあくまでもヒロとしてのロールプレイであり続けたところに、最後にhiroとしてというかその人そのものとして作用することで、物語が綺麗に着地していました。パズルもそうなんですが、構造的に秀逸なところがあります。
加えて、個人的に好きなのは、魔王がエアロブラストを使ってくるし、ブラインもやるし、何なら形態変化後はちゃんとマオになっているあたりです。
別段それが強くシナリオで主張されることは無かったと記憶していますが、このゲームそれ自体の持っている意味をシステムで上手く主張しているあたり、これもまた物語の一つなのだろうと思います。
返す返す最後が秀逸なんですが、最後が秀逸であることを説明しようとすると強烈にネタバレになるので、とりあえずやってと言う他無い作品です。
最後に至るまでの謎解きも当然素晴らしく、やるたびに新たな発見があって好きだったんですが、あまりに最後が美しすぎて、そっちのインパクトにだいぶ持っていかれつつ、この感想を書いています。