第16回ウディコン全作品レビュー - At End of the World

25. At End of the World

ジャンル 作者
RPG エルトン
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間+1時間 3.4 クリア+

良かった点

  • 技を入れ替え己の戦略を追求していくハクスラが楽しめました
    • 新陳代謝が終盤まで充分に続くバランスとなっています
    • 戦闘システムそのものがシンプルなため、技のデッキ構成だけに注力できます
  • 手に入れた技が無駄にならないシステムが完備されており、安心して技を集められます
  • 終末的な世界観が印象的に表現されており、シナリオに良い影響を与えています

気になった点

  • スキル構成について、簡単なソートや保存がしたい気持ちがありました

レビュー

技を組み立て自分なりのビルドを作り上げよう

RPGというジャンルの戦闘における楽しみの一つとして、用意した戦略が上手くはまって敵を倒す楽しさが挙げられるでしょう。戦略を練り、手札を準備し、それが上手く運用されて敵を圧倒していく達成感は格別のものです。
At End of the World は、技をハクスラで集め、その技のみで戦闘を行うゲームです。ゲーム中のステータスの強化は限られているため、プレイヤーはほとんど技の構築だけを考えることになるでしょう。それゆえに、そうした戦略を準備し、練り上げて攻略していく楽しさを十全に味わえるゲームとなっています。

戦闘画面

このゲームの戦闘は、ランダムで4個の技が配られることから始まります。
この技の中から消費するHPやSPの許す限り技を選択し、攻撃を繰り出し続けることになります。そうしてターンを終了したら相手から攻撃を受け、これをどちらかのHPがゼロになるまで繰り返すというものです。
例えば、上記の戦闘の例ではSPが10あるため、消費SP1のダガー、SP3のスラッシュ、SP2のソードの全てが発動可能です。HPを消費して良ければ、ナイフを発動することもできます。
SPはターン毎に一定値だけ回復していくため、最後に残るSPや残りHPに気を配りながら、各ターンで適切な消費量に基づいた技選択をしていく必要があるでしょう。

ただし、戦闘に出てくる技は、あらかじめ自分で構築した20個の技のみから選出されます。このため、戦闘は事実上戦う前のデッキ構築から始まっているとも言えるでしょう。どういったプランで戦いを進めていくかを考え、持っている技の中から選りすぐりの20個を決めていきましょう。
ここで選び出す技を決める上で重要になるのは、その技に付与されたオプションです。状態異常の付与からカードのドローまで、技には様々な性能がランダムでいくつか付けられています。例えば上記の画面のうち、ダガーは防御力を上げるバフを持ち、ナイフは回復できるバフを持っています。
バフを盛って戦いを有利に進めてみたり、デバフで相手を封じたり、ひたすら同一ターンで回せるようにドローを積んだり、戦略は様々です。自分が思い描く戦略を実現するためにも、様々なオプションが付与された技を集めて構成を練っていきましょう。

なお、技に付与されるオプションはレアリティが上がるほど強力になっていきます。このため、プレイが進む度により強力な技へと入れ替えられていくため、常に新鮮なデッキで戦いに臨むことになります。技を常に更新していき、戦略の理想を追い求めていきましょう。
とはいえ、そうして手に入れた古い技も無駄にはなりません。合成の素材として別の技の生成に用いることもできますし、オプションが気に入っているならアイテムを消費してレアリティを引き上げれば前線に復帰させることも可能です。
あるいはデメリットだけが目立つ技でさえも、そのデメリットを変質させ、別のデメリットに変えることもできます。いまいちだった技が化けることもあるわけです。
どんな技を手に入れても無駄になることは無いので、ガンガン技を手に入れていき、デッキをどんどん進化させていきましょう。

このようにデッキ構築を進めて強敵と相対せるようになっていくと、より奥地へと足を進めることができるようになります。
そうして次々と探索していくことになるマップはどれも終末感の漂うものであり、そこで描かれていくシナリオもまたどん詰まりのような暗さを抱えています。そんな終わりの世界の空気の中でも歩みを止めず、強敵を打ち倒して最奥まで進んでいきましょう。
また、マップには時折NPCがいるので、積極的に話しかけてクエストを行ってみるのも良いかもしれません。報酬となるアイテムは便利ですし、この世界の終末的な空気感に触れることもできるでしょう。

技を手に入れ、デッキを強化し、さらなる強敵に挑んではより強い技を手に入れていくハクスラを楽しめる作品となっています。
たとえデッキが完成したと思っても、オプションの吟味や安定性の向上、あるいは別の戦略の試行など、ブラッシュアップの余地はいくらでもあります。技を入れ替え最強の戦略を目指していきましょう。

感想

筆者は軽戦士を選んでいたので、ずっと俺のターンができるゲームでした。最初にゲームシステムと、職業のデザインを見た時から使おうと思っていたので、上手く運用できて楽しかったです。上級者向けとか関係ない、この手のゲームは行動回数が正義なんだという思想があります。
手に入る技を吟味し、理想に一歩ずつ近付けながらデッキを構築していくのは大変に楽しかったです。

このゲームのメインはやはり戦闘システムと、それを左右する技の数々だと思うので、そこに触れていこうと思います。
まず、戦闘システムは状態異常の多彩さ、技の豊富さをいったん考えないでおくと、かなりシンプルです。特殊な行動はそれほど多くなく、シンプルにHPの削り合いの勝負に終始します。
特殊な戦闘システムで戦うところはさておき、基本的な設計がごくシンプルであるがゆえに、状態異常とそれを操る多様な技にじっくりと目を向けることができる設計でした。ベースの簡単さから戦闘自体は飲み込みやすく、すぐに特殊な異常仕様への慣れや、各種技性能の強さの吟味に注力できます。

また、20枚というデッキ構成のサイズ感、ハクスラで手に入る技のランダム感がちょうど良いために、クリアに至るまでかなり新陳代謝が激しいのも好きなところです。
筆者はほぼラスボスに到達するくらいまでは頻繁に技を入れ替え、理想に向けたビルドを行うことができていました。方向性の完成は中盤くらいにある程度整っていましたが、事故率を下げたり、細かいところをブラッシュアップしたりと意外とやれることは多く、終盤まで強い技を追い求められます。

そして最終的には、ラスボスだろうと裏ボスだろうとワンターンキルできる圧倒的な手数の多さを手に入れることができました。HPの続く限りほぼ無限に行動し続けるマシーンの完成です。
そんな最終構成は以下の通りになりました。
オメガは余り使わず、ドローソースを大量に仕込みつつ、威力増加と鋭刃で単価を引き上げ、手数でごり押すスタイルです。SP消費技の数を抑えてHP消費技主体で戦うため、HPさえ持っていれば絶大な火力を叩き込むことができます。道中の雑魚にすらHPを消費しないといけないのは若干ネックですが、回復をちょっとだけ混ぜて保険としていました。
そして、強力な技に必要となるデメリット効果はどうせワンターンキルするならと、毒や傷をふんだんに癒しています。どうせ相手のターンになることはほとんどないので。よく考えれば、傷を避ける必要もなかったかもしれません。
これでも色々と妥協して組んだ部分も多く、まだまだブラッシュアップの余地はあります。ドローソースが初動に関しては100%安定するわけではないですし、SP技についても強力なものは残ってしまっているので、この辺も可能ならHP消費技に切り替えたいところでした。

ついでに、以下のスキルの中でも特に強力でお気に入りだったものをピックアップしてみようと思います。
まず、問答無用でナイフドローは強いです。消費HP2程度でドローソースになってくれます。このため、カタストロフと一段階落ちてはいますが採用に至っています。もう少し時間を遡ると、普通にブレスでも採用されていることがありました。
続いて、ドロソ+威力増加+鋭刃を全て兼ね備えたサイズが強力です。SP消費無しでやりたいことが全部できます。しかもデメリットが弱い。
また、ドロソではないものの、威力増加9+4、鋭刃6のソードや、威力増加合計17のソードは手数の多さで戦うこのデッキにはかなり刺さっています。後者に至ってはハザードのレベルですが採用されています。
ただ、ソード/スラッシュ共にSP消費対象ではあるので、できればナイフ、あるいはサイズあたりで揃えたい気持ちはあります。また、ドロソだからという理由だけで入っているブレスのソードなど、やはりまだまだ改善の余地は残されていますね。

最終構成

閑話休題。この辺の技のハクスラを進める際に、合成やアイテム消費による上書きである変性、あるいは進化など、技を余すところなく活用できるシステムについても上手くできています。
全く不要な技は合成に投げ込むことで二回目のチャレンジを獲得できますし、ある程度強いけどデメリットや一部スロットが気になるような技は、変性で最強の技に生まれ変わらせることもできます。序盤に拾って性能と使い勝手が良いために愛用していた技を、進化を繰り返して常に最前線にレベルアップし続けることも可能です。
どんな技であっても何らかの方法で活用したり、上手く使っていたものをそのまま継続させられたりと、無駄がありません。このおかげで、技を取得した際に残念な気持ちになることがありませんでした。

一方で、技はかなり手に入ることになるので、適時整理していかないと、だぶついて調整が難しくなります。せめて、デッキの種別ソートくらいはしたい気持ちもないではないですが、ソートすべき対象の多さを鑑みると難しそうです。種別、コスト、あるいは効果スロット、レアリティ、いくらでもソートしないといけないものがあります。
一応保有スキルはレアリティソートされていて、これは結構便利なので、このままでも良いかなという印象はありました。かなり過積載気味のソート機能がないと満足に使えなさそうなので。

シナリオ面というか、世界の空気感も素晴らしく、まさしく世界の終わりといった退廃的な世界が強く演出されています。
NPCの数は決して多くありませんが、世界を物語るに足るようにはなっており、各々のクエストも良い味を出しています。やればやるほど人が死んでいく。何だったら何もしない方が良かったのかもしれない、と感じたところからの最後です。

そういう意味でも、ラストバトルは本当に清々しい気持ちで挑めるものであり、これまでずーっと暗かったぶんを全て吐き出した晴れやかさを感じることができるものでした。
廃村はちゃんと村になり、最終ステージの元あった黒々しい靄が晴れ、ここまで澄んでいたのかと感じさせる青空をバックにラストバトルです。演出としては完璧と言って良いでしょう。
この明るさを取り戻すための物語として、綺麗に結末まで導かれています。

なお個人的に気になっているのは、アルフォンソが狂ったのかそうでもないのかといったところです。プレイヤーというか主人公ですらも、何度か終わらせてしまおうかということが頭をよぎり続けているので、これの果てがアルフォンソであるということなのかもしれません。あるいは主人公になれなかったものとしての位置付けなんでしょうか。
そこに至るまでの物語が詳しく描写されることはないので、真実は闇の中です。

余談ですが、筆者は初見時に完全に教団エリアを見逃していたので、いきなり始まった教団の話には若干ついていけませんでした。それがヒントになって発見できた側面もありますが。
まあプレイヤーはともかく、主人公はこの1000年で色々と見てきたのでしょう、多分。

ともあれ、ずっとスキルを入れ替えて、己の理想を追求しつつ、現実として手に入った性能も強いなこれと思いながら使っていく、非常に楽しいハクスラ体験ができる作品でした。
ここではあんまり触れていませんが、変な戦闘システムの中で戦える場所もいきなり用意されていて、ただ戦うだけでなく、制限の元戦いに挑む楽しさも担保されています。奥が深い。手数ゲームしていると特殊ルールには相性が悪いこともあり、遊んでいる最中は複数のデッキを登録できる仕組みが欲しくなっていました。