第16回ウディコン全作品レビュー - 不思議な世界の観光日記Ⅱ

27. 不思議な世界の観光日記Ⅱ

ジャンル 作者
オムニバス nananana
プレイ時間 プレイVer クリア状況
5時間 1.06a クリア+全隠し実績

良かった点

  • 多種多様なゲームが遊べます
  • 個々のゲームに良い意味で突っ込みどころが満載です
  • 比較的高難度なゲームには救済措置がありました

気になった点

  • 続編のためか、キャラの名前やストーリー進行でやや追いてかれがちです
    • 必要な範囲では情報が開示されるので致命的ではありません

レビュー

吹き荒れるオマージュの嵐

不思議な世界の観光日記Ⅱ は、様々なゲームジャンルのごった煮となっているオムニバス形式の作品です。
ミニゲームや音ゲー、レース風ゲームからアクション、果てはクリッカーまで多種多様な形式のゲームをクリアして進行していくことになります。

各々のステージをクリアしていくためには、それぞれのジャンルのゲームに適応することが肝要です。各ゲームの特徴を捉まえ、プレイを通して学習していくことで、適切に対処できるようになっていきましょう。
そうしてあるゲームに適応してクリアできたかと思えば、次から次へと全く異なるジャンルのゲームが矢継ぎ早に現れていきます。新たなゲームにどんどん対応し続けていくような、めくるめくゲーム体験を味わうことができるでしょう。そこには、たくさん遊び、たくさんクリアしていく楽しさがあります。

また、そのいくつものゲームを遊ぶ中で出会うことになる、様々なところにまで散りばめられたオマージュは、このゲームの最大の特徴と言えます。
あるいはオムニバスとなっている多様なゲーム群よりもさらに高い密度で繰り出され続けるオマージュと、それに合った個性的なキャラクターたちが織り成す物語のテンションにより、常にピークを記録するようなノリの良さが続いていきます。
こうしたノリに感化され、オマージュネタの宝庫に浴した最高潮のテンションをもってプレイし続けられること請け合いです。

加えて、それらのオマージュは細かい言い回しにとどまらず、ゲーム性そのものであったり、グラフィックであったりにも強く影響を与えています。
オムニバスにより七変化し続けるゲーム性同様に、そのオマージュに基づいてゲームの雰囲気そのものもまた多種多様に変容し続けることになるでしょう。絵柄の統一感をある程度崩すことなく、オマージュ元を想起させる手腕は見事の一言に尽きます。

様々なゲーム性、そしてオマージュの嵐に身を委ね、怒涛のゲーム体験を味わっていきましょう。

感想

オマージュに次ぐオマージュの雨霰が降り注ぐゲームです。キャラクターのインパクトの強さもあって、常にハイボルテージが維持され続けていて、オマージュに対して○○じゃねえかと突っ込み続けられる活力も得られます。
各ステージにおいて様変わりし続けるゲーム性もまた良く、次は何が来るのかずっと楽しみにしてプレイできるゲームでした。

ゲームセンターCXもやるし、メイドインワリオもやるし、ロックマンもやるし、Papers, Pleaseもやるし、パワプロもやるし、Undertaleもやるし、ほかにも色々なものが詰まっています。多分拾えていないオマージュも大量にあると思います。悪魔城ドラキュラっぽいのも多分あった。
よくもまあこれほどまでに詰め込んだなあというレベルのパッケージであり、いつ何が出てくるか分からないドキドキ感はなかなかのものがあります。
加えて、グラフィックのレベルが高く、きっちりとオマージュ元に寄せ切っているのも良く、それぞれに対して安心して心の中で突っ込むことができます。絵柄の幅が広いというか、その絵柄に寄せつつ作者さんの画っぽさを出すのが上手いというか。

ゲームの難易度についても、幅広いながらそこそこ難しいものと平易なものが上手くバランスして配置されており、ここの緩急の付け方についても完成度は高いです。
難易度が高いものが連続しないように、アクション性の高いものの後は別種のもので味を変えるように、そして最後に向けてはきっちりテンションを上げられるジャンルのもので固めるように、上手くデザインして巧妙に配されたステージ構成に感じました。
なお、個人的には最初にクリッカーをもってきているのだけ解せないところはあります。メイドインワリオの方が、ゲームの雰囲気的にも尺的にも導入っぽいんですが。いきなり1時間近くクリッカーをやらないと始められないゲーム、とも言える状態にはなっています。

それではせっかくなので、各ゲームについて触れてみようかなと思います。

クリッカー、筆者はクッキークリッカーを手焼きで恒河沙枚焼く程度の嗜みなのであんまり玄人ではありませんが、良い感じに拡大を楽しめるようにはなっていました。
とにかく客単価を上げてぼったくり続けるのが楽しく、店が完全に軌道に乗ると異様なペースでお金が膨れ上がっていきます。
前述の通り1時間くらいで全実績達成できるレベルで、クリアだけならもう少し短縮できるとは思います。これはクリッカーとしては短く、オムニバス形式としては割とちょうど良いかなと思うんですが、筆者がクリッカーに毒されているきらいもあります。時間だけ見ると、最初に遊ばせるゲームとしては長いような気もします。どうなんだろう。

音ゲー、だいぶ苦手だったんですが、判定が中心でなくて前にあることを理解してからは割とスムーズに進みました。また、ボタンの対応に慣れる必要もあって、Xと書いてあるところでZを押す能力が求められます。脳みそバグりそう。
また、音ゲーだけでなく釣りゲーでもあるんですが、こちらはこちらで変なものが釣れて楽しいです。正直最高レアよりも、その一つ前の方が釣りにくいんじゃなかろうかという気がしていました。単純に出現率が低いんだろうか。

メイドインワリオ、このゲームらしさであり、ここの主役であるリョーさんらしさが存分に出ていて好きなところです。このゲームのステージで好きなところのトップ3に入るかもしれません。
オムニバスゲームの中にオムニバスゲーム入っているが入れ子構造を作り上げ、その中でもちゃんと完成度を担保しているミニゲームが矢継ぎ早に出されるのは贅沢だなという印象がありました。

元ネタが分からないアクション、ここはシンプルにアクションとして楽しいところです。ここまでのゲームジャンルの流れから、ちょうどアクションがやりたくなりそうなところに差し込まれるアクションというのが良いポイントです。給水所みたい。
難易度についても、後半のステージの難度を考えるとステージ4に相応しいちょうど良い塩梅になっていました。ここで詰まるのは時期尚早ですが、簡単すぎても面白くはないところ、その中間をきっちり抑えています。

Papers, Please、元ネタ通りにやらねばならないポイントが増えていくあたりのオマージュが光ります。単純なトレースでもなく、逆側というか元ネタとは別種のポイントで判断することを増やしているのも、ただのトレースになっていない感じがします。
なお、筆者は「昨日のセジカ様」と言われて、5-3の情報を聞かれてるのかなと思って1回誤答しました。不覚。

パワプロ、適度に攻略しがいのあるRPGとしても面白いです。ステータスを上げたり能力を取得したりして挑み、足りない部分を補強してまた挑み、を繰り返して突破口を見極めていく様はローグライトっぽさもあります。
この建付けで1本ゲームが完成しそうなレベルで完成度が高く、個人的にも全ステージでトップクラスに好きなステージとなっています。適度に運ゲーなのも本家っぽくて良い。

単純作業、難しいというよりは大変です。ミスると厳しいので。筆者は隠し実績を継続していたので詫び石を使わなかったのですが、多分使えるなら使った方が楽です。
それでも人間は慣れるもので、なんとか条件反射が完成した後に来るリバース30という設計も巧妙というか嫌らしいというか良くできています。実は難易度はそれほど高くないんですが、パブロフの犬を押さえつけてやるのが結構大変でした。

ここで再びアクション、これ以降はクライマックスに向けて、だいぶアクション性の高いステージが続きます。締めがアクション性の高いステージで構成された上で、きっちり難易度を右肩上がりにしていくことで、ゲーム的な盛り上がりも作られている綺麗な構造になっています。
また、ひとつ前の単純作業の繰り返しで疲労していた脳みそをアクションで活性化させることにも繋がっていて、交互浴みたいな感覚で挑むこともできました。配置の妙としても、このステージは割と好きです。

SIBLINGSっぽい何か、そこそこ難易度は高いものの、慣れれば突破できるラインに収まっています。連続切りを二連続で出されると、スタミナが足りないんじゃなかろうかとは思っていますが。
きちんと覚えて対応できればクリアはできるけど、そう易々とは突破できない絶妙な調整のおかげで、最終戦に向けて良いテンションで攻略できます。

Undertale、筆者はGルートをやらないことを決めているのでサンズ戦は詳しく知らないんですが、ほぼサンズ戦です。ちゃんと短時間の切り替わり行動までやってきます。
ここは最後の山場だけに、さすがの難易度になっていて、オマージュ元を考えてもさもありなんという苦戦を強いられます。とはいえ恐らく本家ほどは難しくなく、冷静に対処すれば突破可能になっているのは親切なところです。

以上、これらのオムニバスがそれぞれ手抜かりなくクオリティ高くお出しされ続けるのは、楽しい体験でした。

シナリオ面にも軽く触れておくと、前作引継ぎのキャラがいるからなのか、細かいところはちょくちょく置いていかれるような展開は多めになっています。とはいえ、全体のノリはコメディーなので、その勢いに乗れるのであれば細かいことは気にしなくても楽しめます。
なお、隠し実績ヒントで知らない名前をクリックしろと言われた時はさすがに焦りましたが、ちゃんと名乗ってくれたので事なきを得ています。
せっかくだし、前作のSteam版もやろうかな。