第16回ウディコン全作品レビュー - 神殺しの聖戦
28. 神殺しの聖戦
ジャンル | 作者 |
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RPG | shot.arrow |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
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3時間 | 4.3 | クリア |
良かった点
- リソース制約の中で緊張感をもってダンジョンに潜れました
- ある程度早く魔王のもとにも辿り着けるような自由度のある世界でした
気になった点
- レトロ風のためか、プレイヤーに不親切な仕様が散見されます
- もちもの制約が通知されない、前触れなく宿屋で現金をスられる、などです
- シナリオを自由に進められるため、重要イベントを十全な状態で受けられない可能性があります
- 各イベントが簡素であることも寄与しているかもしれません
レビュー
レトロなオープンRPG
神殺しの聖戦は、レトロ風味なRPGです。
そのゲームの特徴として、かなり自由な順序で攻略できることが挙げられます。プレイヤーは始まりの村の周辺をうろつくでも、いきなり奥地に向かうでも、好きな形で冒険していくことができるでしょう。
ただし、奥まったエリアには相応にやや強めの敵が待ち構えています。
これらに対応するためには、装備とアイテム、そして魔法を整えていく準備が不可欠です。このゲームには基本的にレベルの概念がないため、それらの準備が勝敗を左右します。
装備は回数を消費して敵にダメージを与える消耗品であり、敵からのドロップや店の購入により補充できるものです。強力な装備は高価であったり入手困難なものが多いので、価格などのバランスを取りつつ揃えていきましょう。
また、奥地に向かうには雑魚との消耗戦を戦い抜くことになるので、回復アイテムも欠かすことはできません。アイテムは8個までしか持てないので、こちらもバランス良く揃えておく必要があるでしょう。
しかし、こうした消耗品に頼るだけではジリ貧になりかねません。これを打破するには、魔法の力を借りて活用するのがお勧めです。
魔法は各地で習得でき、MPを消費することで強力な攻撃を浴びせることができます。雑魚散らしにもボスへの痛打にも使えるため、事前に習得しておくと役に立ちます。
これらの準備を上手く整えることができれば、どこにでも行ける開けた世界を思いのままに冒険していくことができます。様々な場所を巡り、世界を旅して各地でイベントを進めていきましょう。
その中で記憶を失った主人公の正体と目的、そしてやるべきことが少しずつ明らかになっていきます。
やがて立ち向かうことになる強敵に消耗戦を乗り越えて挑むためにも、各地を巡って準備を万全にしていきましょう。
感想
この後で感想を書くダーゴラスとはまた違った方向性でレトロの空気感を醸成している作品です。
モンスターの性質もだいぶ違っていて、こちらはなんとなく洋ゲーの敵っぽい印象を受けるモンスターが多めでした。スライム、あの見た目だと強そうですね。実際D&Dでは強かったらしいです。このゲームではドラクエのスライムポジションではありますが。
個人的には、開始1時間で魔王のもとに辿り着けるような自由度のある世界が良くて、いきなりちょっと難しい砂漠越えにも気軽に挑めます。
というのも、このゲームは武器や魔法の概念はあれどレベルの概念が無いので、ある程度の武器と魔法が揃えばそれなりの相手でも戦えてしまうからです。あえて全体的な戦闘バランスをそこそこ均しておき、その分で自由度が確保されている印象でした。
それでも魔王を始めとして関門にはきちんと強敵を配しており、ある程度準備をしないと負けるようにもなっています。良いバランス。
戦闘バランスについてもう少し言及すると、武器より魔法の方がコスパが良い世界です。
武器は攻撃回数が決まっているので、何度か殴ると壊れる消費アイテムになります。一方で魔法はMPを消費すればアイテムの消費なしで行うことができ、HP回復ついでに宿屋に泊まればMPも回復します。さらに威力もおおむね魔法の方が優秀です。
具体的には、魔法はMP全快から11発撃てて、宿屋は20Gなので単価2G未満に対し、武器はグラディウスを最低限度に据えても40Gで15発です。しかも大体火力が二倍くらい違う。
魔法が通りにくいモンスターもいるにはいるんですが、そういう相手は殴ってもコスパが悪いので逃げるのが得策でした。ただ、逃げるのも絶対安全じゃないので、割とヒリつきます。特にリソースが厳しくなりやすい井戸は中々の緊張感がありました。
なお、ラスボスはある意味イベント戦なんですが、割と体力があります。裏ボスっぽいのを倒したおかげでHPが半減していたんですが、それでも結構時間がかかりました。ここだけは魔法より物理をどうにかした方が良かったかもしれない。
話を変えてシナリオについてですが、かなり情報量が少なく、淡々と進んでいくのがレトロっぽくて良いです。長いイベントなどほとんどなく、自由に歩き回っては思い通りにサクサクとイベントをこなしていけます。
その分、ストーリー性というかキャラクターへの記憶はだいぶ定着しておらず、仲間になるキャラに最初どこであったかしばらく思い出せないほどです。最初に会ったところに行こうと言われたんですが、本当に分からなくてだいぶ彷徨い歩いていました。
また、自由シナリオ的な動かし方ができる弊害で、ある程度重要なイベントを後ろ倒しにできてしまいます。これもあって、仲間キャラ加入が遅れ、即座に離脱イベントが始まったので覚悟を問われても感情が追い付いていませんでした。思い入れができるほどには、一緒に旅ができませんでした。残念。
後は、全体的に許容できるギリギリのラインの不親切さをしています。
例えば、もちものを8個まで持てるんですが、これは持てなくなるまで分かりません。今もちものがいっぱいであることは、ドロップや宝箱を開いて初めて分かります。
また、宿屋に泊まるとランダムで金をスられます。3Gで泊まれる明らかに劣悪な宿ならまだ分かるんですが、開始地点近くの宿屋ですら確率でスられます。せめて誰かその情報を伝えておいてほしい。
ほかにも、狭いとはいえキメラの翼もなく、ダッシュしてなおやや遅い行動速度を持ち、聞き逃すと致命傷になる重要な会話がそこそこあります。
この辺は良い意味でも悪い意味でもレトロっぽく感じました。
レトロな雰囲気を味わいつつ、そこそこシビアな戦闘とリソース管理もやれる良い作品でした。魔法を撃ち尽くして辛くも勝利するのが一番楽しいですからね。
しかし、性質が違うとはいえ近い印象のダーゴラスと並んでしまったのは奇跡的ですね。近い作品が出ることは間々ありますが、綺麗に連番で出てるのは中々見ません。