第17回ウディコン全作品レビュー - Ayaのホームページへようこそ!

28. Ayaのホームページへようこそ!

ジャンル 作者
謎解き 苺いちえ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 + 30分 1.03 全END + 4

良かった点

  • 当時のホームページを強く想起させる優れたデザインでした
    • 質感の再現度が異次元に高いです
  • 良質な謎解きを楽しめました
    • 導線や流れが丁寧です

気になった点

  • 特にありません

レビュー

蘇るあの頃

何はともあれ、まずはサムネイルをご覧ください。
ここに言葉では言い表せないときめきみたいなものを感じたのであれば、是非ともプレイしましょう。

Ayaのホームページへようこそ!は、とあるホームページに隠された秘密を探っていくARG風味の謎解きゲームです。
ゼロ年代の雰囲気漂うホームページを軸に様々な情報を引き出していき、推測を重ね、ある謎を解いていくことになります。

この作品における特筆すべき点は、当時のホームページの質感を高いレベルで再現していることでしょう。
単色を背景としてテーブルを多用したシンプルなサイトの質感から、フレームを使った凝ったデザインを嗜む個人サイト、あるいは学校の素朴な公式サイトの質感まで、その空気感がすぐそこにあるようにすら感じられるクオリティで描かれています。
まるであの頃にタイムスリップしたような感覚を味わえることでしょう。

そうした個人ページにある在りし日のBBSやバナーリンクを辿っていくことで、プレイヤーはAyaについての情報を少しずつ知っていくことになります。サイトに隠されたものとは何なのか、そこから導き出される物語の結末はどこに向かうのか、それを知るためにもハイパーリンクとテキストの世界を巡っていきましょう。
謎解きの難易度は決して高くはないものの、推測して考えること無しでは辿り着くことは困難なものとなっています。サイトから得られた情報を整理し、もしも詰まってしまったらヒントを使って、その真実へと到達していきましょう。

そうして謎を解くことで紡がれていくシナリオは、個人ページを能動的に巡って情報を集めていくというその過程も含めて完成されるものとなっています。謎を解くために拾い集めた情報がそのページの先にいる誰かを知る一歩となり、やがてそれがエンディングに繋がる一歩となります。
積極的に個人ページの世界に潜り、その世界を体験しつつも謎を解き明かしていき、全てが明かされるエンディングへと辿り着いていきましょう。

感想

ARGめいた謎解きが良い作品でした。メールの部分さえどうにかすれば割と現実的にARGでもできそうです。ウディコンにおいては外部プログラムの利用が禁止なので、どこまでが外部プログラム扱いになるかのチキンレースにはなりそうですが。同梱せずに適当なページに誘導したうえで、JavaScriptを実行させるのはセーフなのだろうか。
こういったゲーム性は難しくしようと思えばDs試験のように際限なく難しく出来るジャンルだと思うのですが、この作品の難易度はかなりカジュアルめなので楽しんでプレイするのにはちょうどいい作品となっているのも良いところです。コンセプトというか、誰が作った謎という設定なのかということにも整合しています。

そして特筆すべきは何と言ってもホームページの完成度です。2000年代の亡霊かのごときクオリティをしています。自作ホームページとしての質感が異常に高いです。学生の頃の課題でこんな感じのページを作った記憶が蘇りました。
個人的に最も質感の再現度が高いと感じているのは、それぞれの制作者に応じたWebサイトのデザインです。やたら凝ったページを作る人はBGMを流したりframesetを使ったり、文字の詰め方を変えたりと良く分からないこだわりを込めがちです。学校のホームページの質感も高く、簡素なつくりと青丸のような選択要素のデザインになぜか見覚えがあります。どこの学校もこんな感じだったのかな。
もちろん、メインとなるAyaのホームページもそういう雰囲気が強くあります。一昔前のWebマンガを連載しているページとかこんな感じでした。うろんなページとか侠とか、あの辺の質感があります。
また、ブラクラやらスクリーンセーバーやらの要素も当時の雰囲気を表していて良かったです。マウスカーソルが砂時計になるのには感動をすら覚えました。そう言えばいつからか見なくなった要素です。こういう記憶の端にあるけど引き出せない絶妙な要素が次々と引き出されていくことで、強く懐かしさを覚える作品となっています。

そうしたインターネット老人にはキャッチ―な見た目で引きつけた後、ゲーム性というか謎解きは非常に丁寧かつ面白いのでそのまま引き込まれてしまいます。
とりわけ導線がかなりうまく機能しており、段階を踏んでエンディングに到達できるようにきっちり整備された謎解きを楽しむことができました。特に情報の繋げ方が上手く、出席番号順などの情報の出し方や、そこからの確定要素の揃え方であったり、ソリスト、吹奏楽部、事故死のような推測のための流れまで、全体設計の完成度が高いです。前述した通り、いたずらに難しくするのではなく、情報をまとめて少し考えると分かる難易度に抑えられている点も優れていました。

そうした謎解きに付随したシナリオの塩梅も良くできています。シナリオそれ自体を語る文章はほとんどないものの、ホームページという静的なものを読み取っていく過程でそのパーソナリティを垣間見ることができます。それがそのままシナリオへと接続し、見た情報に応じたエンディングへと繋がる構成となっていて無駄がありません。謎を解くために情報を見て回り、それらを一字一句確認することで、より強く印象に刻み込まれていきます。
さらに、シナリオあるいはエンディングとしての転換も上手く行われているため、次のエンディングを見ようとするモチベーションを常に高いものにしてくれます。このホームページにある秘密とは何なのか、それが真実なのか、本当に起きていたことは何なのか、興味駆動でゲームをどんどん進められる魅力がありました。

ちなみに、筆者はゴミを4つ見つけています。後6個もあるらしいです、本当ですか。探索要素が好きならこれを集めるというのも面白いかもしれません。ヒントが無いのでこっちの方が難しい。こういうおまけ要素が十全に搭載されているという点も、このゲームの完成度の高さというか余裕、あるいは奥行きの広さを感じさせてくれます。

古式ゆかしきインターネットに見覚えがある人がホイホイと来る誘蛾灯であり、謎解きのゲーム性という蜜でホイホイ来た相手をつかんで離さない作品でした。ハートキャッチだ。
余談ですが、ホームボタンが他人のホームページに繋がっているの、冷静に考えておかしい気がしてきました。変人なのか何か意味があるのか。