第17回ウディコン全作品レビュー - ガレキノシップ
38. ガレキノシップ
| ジャンル | 作者 |
|---|---|
| カードゲーム | Masaqq |
| プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
|---|---|---|
| 40分 | 1.02 | ベーシッククリア |
良かった点
- 基本のルールはそのままに、二つの異なる遊び味のゲームが遊べます
- それらが密接に関わり合っている点も良かったです
- FEVERの仕組みのおかげで、カードを回す際の戦略性が生まれています
- 先々を見据えた戦略性と、アドリブ力が求められるランダム性の塩梅がちょうど良かったです
気になった点
- UIの遷移が分かりにくいことがありました
- 一例として、ヘルプ表示からTIPSへ向かうと階層が一つ進んでいますが、それがUI上に反映されていないため、キャンセルを二回押さないと元に戻らず直感的ではありません
レビュー
一粒で二度美味しいカードゲーム
ガレキノシップは、カードを選択して宇宙船を建造し、完成した宇宙船で航行して帰還を目指すカードゲームです。
そのプレイ感はボードゲームに近いものもあります。
プレイヤーはまず初めに、航行するための宇宙船を建造することになります。ターン開始時に配られる5枚のカードを上手く活用してキューブを集めて建造を進めつつ、資源を集めて航行に備えることになるでしょう。
カードは原則ボイドと呼ばれるユニットと紐づいており、カードによってはボイドの行動を消費します。消費した場合はそのユニットのカードを同じターンでは使えません。このため、どの順番でカードを使っていくかによって建造効率は大きく異なります。適切なカードを選択し、効率よく建造を進めていきましょう。
なお、同一ターンで5枚以上カードを使うとFEVERに入ることができ、そのターン内での効率を著しく向上させることもできます。ただし、次のターンの効率が落ちるBURNOUT状態を招く諸刃の剣であるため、運用には注意が必要です。たくさんカードを使えそうであればFEVERを狙い、5枚を超えてもそれほど使えなさそうであれば、あえて4枚で止めるなどの戦略も必要になってくるでしょう。
こうして建造を進め、ボイドを最大5名まで新たに雇っていき、時折発生する様々なランダムイベントを乗り越えていくと、宇宙船が完成します。ここからは、作り上げた宇宙船を活用して進む航行パートに入ることになります。このパートでは99マス先にある地球に向かって、すごろくのように宇宙船を進めていく流れとなっています。
しかし、宇宙の旅路は危険で満ちています。このパート中は建造中に貯めた資源がターンごとに目減りするほか、様々なアクシデントが襲い掛かってきます。これらに柔軟に対処するには、またしてもカードの力を借りることになります。
資源の確保や壊れていく船体の修理をカードで行い、作り上げた宇宙船を使い潰しながら広大な宇宙を一歩ずつ進んでいきましょう。資源が尽きるとゲームオーバーのため、適切な状況判断がクリアの鍵となってきます。
なお、この二つのパートには共通したターンの制限があります。このため、建造にかまけていると航行時間が足りなくなりますし、建造を手早くやりすぎると航行時の資源が底を尽きやすくなってしまいます。適切なバランスで両パートをこなすこともまた重要になってくるでしょう。
二つの異なるゲームパートを擁しつつも、同じカードゲームのシステムで統一し、しかし全く異なるゲーム性として仕上げている非常に完成度の高い作品となっています。その分、独自のシステムが多くなっており、上記のゲームの説明ではややわかりにくいところがあったかと思います。しかし、ゲーム内のヘルプが充実しているため、実際にプレイすれば非常にすんなりと理解できること請け合いです。
まずはプレイして、その独特なゲーム性を確かめてみましょう。
感想
建設パートと航行パートに分かれていて、それぞれ異なった体験が得られるのが良いゲームでした。同じようなカードを選ぶというシステムにすることで学習コストは最小限にしつつ、発生するイベントや目標の変化を付けることで、綺麗に差別化して全く違うゲーム性を生み出しています。ゲーム設計が上手すぎる。
ひとまず、建設パートについて。基本的には資材を効率的に集めて、良い宇宙船を作り上げていくということが目標になっています。
あんまり時間をかけすぎると後ろに響くので、それなりに手早く建築しつつ、資源の確保も行っていくバランスが良く出来ています。建造が早すぎると資源が不足するし、資源の貯め込みをやりすぎるとターンが足りなくなります。とはいえ、筆者は大分余裕を持ってクリアできたので、ベーシック難易度ならそれなりの効率でやれば問題は無さそうでした。
個人的に好きなのはFEVERの仕組みです。こういったゲーム性の場合、基本的に大量に手札を使いまくって回せる状態にするのが強くなります。ボードゲームとかでもそうなんですが、キャントリップが正義になりがちです。
しかし、FEVERがあるおかげで、あまり使いすぎると次に響いてしまいます。このため、場合によっては行動回数が残っていてもPLAY4で止めておく、という戦略が取れます。一方で、ぶん回せる状況にあるなら、そのターンに限ってはFEVERをする方が格段にアドバンテージを得られるようになっています。
これにより、回せるときは極限まで回す、回せない時は最低限に抑えるか次への布石とする、といったメリハリのある行動選択を自発的に取るように自然となっていきました。毎回だらだらとそのターンの最適解を選ぶのではなく、次を見据えた戦略を練りながらカードの選択ができる面白い仕組みでした。
また、ランダムなイベントも良い味を出していて、それぞれのタイミングで微妙に初期条件に変化が発生することもあるため、その時々で変化した選択を取らざるを得なくなります。これはとりわけ航行パートでより顕著なんですが、それは後段に譲ります。
ともかく、各ターンごとに同じような戦略を取ってマンネリする、と言ったことが無く、常に先々のことを考えながらバランスを取っていきつつ、アクシデントにも対処していくというアドリブを利かせる面白さのあるゲーム性をしていました。
そして、航行パートについては、このアドリブ性をさらに突き詰めたようなゲーム性をしており、これもまた面白いものとなっています。
先述した通り、基本的なゲーム性にはほとんど変化はなく、そのためシームレスに移行できます。その上で、資源が尽きると負け、ランダムイベントの性質が変わる、常に船体のダメージという負のイベントと向き合う、という付加要素によって遊び味は完全に変わっています。
建築パートで溜めた貯金を使い潰して何とか航行を最後まで進めていく緊張感が良く、ボロボロになっていく船体を騙し騙し運用して最後まで駆け抜けられると達成感があります。
直前の建築パートで積み上げてきた船体とボイドの力をフル活用していくゲーム性のおかげで、ともすればマイナスイベントが多いという、プレイヤーにとってややストレスに感じる部分にすらなりかねないパートであるところを上手くカバーしています。これが同時に来ていたら、多分ストレスが勝っていた気がします。分離しているのが上手い。
むしろ、マイナスイベントをどう手持ちの札で乗り切り、時には目を瞑りながらも進めていくかという判断の連続へと昇華させているとすら言えるかもしれません。
ちなみに、筆者は火属性のボイドを引かなかったせいで、ずっと消火活動に追われていました。ちゃんとバランス良くボイドは選ぼう。
また、この辺のゲーム性に対するヘルプも充実していて、独自の用語が多く使われていてもあまり気にならないのも良い所です。分からないことがあればいつでもヘルプを見て確認ができます。ルールがそれなりに多く、かつまだ見ぬ航行パートに向けて設計しなくてはいけない側面もあるので、この辺りが完備されているのは非常に助かりました。
なお、コメントにもある通り全体的にはボードゲームの文脈も感じています。ドローソースが強いのはボードゲームあるあるであり、すごろくはサイコロを強化するゲームであるというのは桃鉄をやっていれば常識です。この辺を抑えておけば、ベーシック難易度ならそれほど難しくはありません。
ともかく、二つのゲーム性をまとめるべくはまとめ、変えるべくは変えて構成している完成度の高いゲームとなっていました。最初の3Dの演出やBGMなど、諸々の雰囲気が優れているのも良いところです。
ちなみに筆者はアビサルとターン0以外の実績は獲得しています。ベーシックで一度に獲得できました。ターン0も併せて取れなくもなさそうなんですが、かなり運が絡みそうなのでやめています。現状の手札だと、安定させる方法があんまり思い付いていない。