第17回ウディコン全作品レビュー - あねさがし
42. あねさがし
| ジャンル | 作者 |
|---|---|
| ADV | テッコウ |
| プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
|---|---|---|
| 15分 | 1.0 | 全ENDクリア |
良かった点
- 曖昧かつ不穏な雰囲気が上手く演出されています
- 解釈の余白が程々にあります
気になった点
- 文字を隠す表現が使われ過ぎている印象があります
レビュー
さがしもの
あねさがしは、一本道を進みながら道中の兎に話しかけていくアドベンチャーです。
兎に話しかけることで断片的に情報を得ることができ、その物語の輪郭が少しずつ顕わになっていきます。
兎からアクセスできる情報は、警察の情報といった外部から見た情報から、周辺の人物の声といった雑多なもの、絵本という媒体で表現されるメタファーのような物語、あるいは完全な外野の憶測など玉石混交なものとなっています。
しかし、一本道を進んでいくにつれて増えていくそれらの情報を丁寧に拾い、少しずつ組み上げていくことで、徐々に一筋の物語が浮かび上がっていきます。二人の姉妹の身に起きたことは何だったのか、その事件の顛末はどういったものだったのか、情報を整理して推測しながら読み進めていきましょう。
エンディングによっては情報が概ね開示されるため、何もかもが分からないという状況になることはありません。最後に判明した情報を整理しさえすれば、おおよその顛末は想像できるでしょう。しかし、その中でも解釈の余白が残されている部分はあります。それらを想像で埋めてみるのも、また一興かもしれません。
様々な情報に触れ、物語を明らかにし、考察を深めていきましょう。
感想
割に曖昧な物語で展開していく作品でした。文字を隠して不穏描写をしていくあたりが曖昧さに一役買ってる印象はありますが、そこそこ濫用されているきらいもあります。ちょっと読みにくい。もっとも、おぼろげな記憶を巡るコンセプトの都合上、所々の記憶が欠落しているということを表現しているのだとは思います。
以下はネタバレ込みで記載していくので、遊んでいない方は先にプレイしてみましょう。15分くらいで終わるので。
曖昧な雰囲気を醸しているとはいえ筋立て自体には説明があり、ちょっとした真相の推測要素もあるため、何もかもが分からないという状況にはならない作品でもありました。ただし、いくつかの文章と様々な情報から得られる情報をつなぎ合わせて真相を当てにいくのは、少し難しいです。情報を追う場合、父親がぽっと出に近いのも難しさに拍車をかけています。筆者は初め教団関係者を疑っていました。
深層もとい真相フェーズは答えそのものがある程度記載されていて、ここに関しては曖昧な点はあまりありません。主観から見たほとんどすべての答えが書かれています。個人的に気になっているのは、現場にナイフがあったとはいえ、子供の膂力で大の大人を殺害せしめることが可能なのかというポイントであり、そのあたりの解釈はやや穿って見ているところはあります。とはいえ、真相フェーズでミスリードしているとも考えにくく、大人を殺害するための条件を可能な限り揃えた状況だったのではないかと解釈していました。実際、母親には抵抗されてしまっているので。
なお、あねさがしというタイトルではありますが、妹が姉を探している建付けなのかと考えるとこれも微妙です。プレイヤーが動かしているキャラクターがどちらなのかは最後まで言及が無さそうなので、そのあたりは曖昧なままな気がします。
シンプルに考えれば妹と見なすのが自然ではあり、情報としても徘徊について触れられているので状況にもリンクしています。一方で、各エンディングの状態や語りを見ると、姉だったと解釈する方が飲み込みやすくなります。その場合、あねさがしとは、あねがさがしていると解釈することもできるかもしれません。
あねがむしろ妹を探しているのであれば、諸々の解釈を通しやすいところがあります。エンディングでも探すかどうかを迷う描写があります。
その場合気になってくるのは絵本の描写と実体に恐らく食い違いが存在する部分である、母親に落ちたいのりのちからのところです。真相側のエンディングと特定の発言を考えると、これはほぼ間違いないく妹の手によるものだと解釈できます。あるいは、殺害後に刺された複数の刺し傷もまたそうなのかもしれません。
このケースでも、妹に向けた最後の言葉であろう約束、そのよすがっぽい持ち物、それに恐らく紐づいているであろう助けの声あたりは解釈に迷うところがあります。ミステリなら実際の凶器の入った何かというのが定番な気がしますが、あまりしっくりきません。いつの間にか失われたリュックの可能性もありますしね。
ともあれ、雰囲気で解釈していくタイプの物語かと思えば、ある程度はちゃんと説明が入るので本筋自体は読み解けるタイプの作品でした。この手の作品は匂わせるだけ匂わせて何も明かさないパターンも割とよく見る印象があるんですが、そのあたりは誠実というか優しい作品となっています。
一方である程度の曖昧さは残っているので、それなりに解釈を楽しむ余地もあるのが嬉しいところです。こういう余白はほどほどにあると良い。