第14回ウディコン全作品レビュー - 陰都見聞録

12. 陰都見聞録

ジャンル 作者
ADV/RPG ハッピーエンド過激派
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.07 クリア

良かった点

  • 3Dの技術が素晴らしいです
    • また、その3D空間を活かしたマップでした
  • 陰都という世界観が良いです
    • ぶらぶらと歩き回りたくなります

気になった点

  • 3D空間を活かしたギミックは少なかったです

レビュー

3Dの陰都を巡ろう

陰都見聞録は、陰界と呼ばれる場所を巡り、色々なものを見て回るアドベンチャーあるいはRPGです。
陰気に満ちた遺跡に存在する謎の都市、陰都を訪れたソラを操作し、陰界の色々な場所で冒険することになります。

このゲームにおいて注目すべきは、陰都を含め、全てのマップが3Dでレンダリングされていることです。このため、奥行きも高さも活かされたマップ構成の中を探索することができます。
カメラも比較的自由に回すことができるため、3Dの世界を堪能することができるでしょう。

この3Dで構成された陰界には様々なロケーションがあり、それらを調査することで物語は進んでいきます。
この調査の過程で戦うことになる敵とは、体力のような陽気を消費して戦っていくことになります。陽気を無駄遣いしないように心掛ける必要があるでしょう。
一方で、陰界は陰気に満ちているため、ただ歩いているだけでもこの陽気を消費してしまいます。適度に拠点に帰って陽気を回復しつつ、様々な場所を探索していくことになります。

そうして陰界を巡るうちに、この場所で起きたある事件、災厄について知ることになります。
災厄とは何か、その原因は何だったのか、それを知るために物語を進めていくことになるでしょう。

魅力的な3Dの都市、陰都を巡ってはみませんか。

感想

3D空間を歩いている感覚が味わえるゲームです。
半端に3D化しただけじゃなくて、高低差とか段差とかを意識して作られているので、ちゃんと3D空間を探索している気分になれます。
景観という意味ではかなり3D空間を活かした構成になっていたように思います。分かりやすく上層と下層を分けたり、高い木を立てたり、色々とこの表現でなければ成しえない設計になっています。
3Dであることを最大限活かした巨大機械のロマンが良い。

個人的に好きなロケーションは酒場前で人が往来しているあたりです。
ああいう生活感ある表現が存在すると、世界の広がりを感じます。見聞している陰都の数少ないエリアだけじゃなく、もう少し広がった世界が存在していそうな感覚が良い。

ただ、3D空間を活かしたギミックあるいは探索だったかというと、その辺はグレーです。
マップは最大限活かされているので探索的な楽しさはあるんですが、様々なギミックや表現はある程度2D的なので、それほど3D感はありません。
3D表現ギミックの最たる例はカメラだとは思いますが、攻略必須ギミックではないので。
かなり趣は落ちるとは思いますが、全てのマップを2Dで書き下ろすこともできそうなラインだと感じました。

あとシステム的に気になるのは陽気の扱いで、体力兼MPみたいな扱いなのは結構面白いと思うんですが、何分陰都の中でも減るのは辛めです。
ダンジョンで減るのはそういうものとして、陰都で見聞したい身としてはうろつきにくくて困りました。常にせっつかれている感じがするので、気ままに陰都を巡りにくくなっているなあという印象です。
せっかく陰都は良い場所なので、意味もなく住人に話しかけながら彷徨いたいです。陰都だけ陰気が弱いからこれで遮断できるよアイテムとかあると嬉しい。

変わって3D的な技術の話になるんですが、よくウディタでここまでやったなあという気持ちになります。単純に板ポリをぺっと貼り付けただけでは表現できない凹凸とか、色々やった上でここまで動作が軽快なのは凄まじいです。
裏面描画は半透明になるあたりの細かさとかも好きです。単に見えなくなるよりは分かりやすい。

RPG要素についてはオマケに近いと思っていますが、最後の敵だけ思いのほか強かったです。初めて全滅の危険を感じたので入れ替えを発動しました。
それ以外はちゃんと戦っていれば倒せるレベルで、探索の阻害要因にはなっていません。

物語は陰謀っぽいものを匂わせながらああいうオチにしつつ、そのままシリアスな展開に雪崩れ込ませるのが上手いです。
個人的には終わり方が好みで、この物語が正しく陰都見聞録であったという形式の取り方が、まとまりがあるなあと感じていました。

しかし最後の方の展開、前作の感じを思い出しました。人と人ならざるものというか、生きる境界の違うもの同士のそういう展開。はっきりと好意を伝える系でもあります。
これはピューイ君がヒロインでしたね。

また世界観も結構好きで、蛮族呼ばわりしている人々も元をただせば蛮族なあたりは皮肉が効いていて良いです。
世界観をちょっとだけ説明しつつキャラクターのコメントが見れる資料も良くて、コメントが楽しいからちゃんと見るようになって、その上で世界のことを少しだけ知れます。

最後に、領域型セーブはなんとなくオートセーブのイメージがあって、最初に一回セーブせずにゲームオーバーになって初めからになりました。
皆さんは気を付けましょう。