第16回ウディコン全作品レビュー - 魔女にお菓子を届けましょう

12. 魔女にお菓子を届けましょう

ジャンル 作者
魔塔 ちぃ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.02 全END

良かった点

  • 1周30分程度で気軽に遊べます
  • やや平易ながら程良いバランスの難易度でした
  • HPとSPの二重リソース管理が上手く機能しています

気になった点

  • ☆3装備の有用性が薄い、あるいはピーキーに過ぎるように感じました
    • デメリットが強すぎる、あるいはメリットがその割に実感できるほど強くない印象があります

レビュー

当意即妙にルートを決めよう

魔女にお菓子を届けましょう は、魔塔系と呼ばれるパズル的なRPGです。
ランダムで生成されたマップをパズル的な戦闘を経てクリアしていき、塔の頂上を目指すことになります。

ただし、戦闘と言ってもその戦いは触れただけで終わる簡単なものとなっています。双方の攻撃力と防御力をもとに相手のHPが削り切れるまで殴り合い、その分のダメージを受けて戦闘を終えるという流れです。このため、3回の攻撃で倒せる敵と戦う場合は、その敵の攻撃力2回分のダメージを負うことになります。
そうして敵を倒すと経験値が得られ、一定以上蓄積するとレベルアップでステータスが上昇します。また、マップ上にあるアイテムを拾うことでもステータスを上げることができます。ステータスを上げることで、より強い敵を相手にしても被弾を抑えて戦えるようになっていくことでしょう。
これをひたすら繰り返し、HPなどのリソースが枯渇する前に塔を登り切ることができればクリアとなります。

リソースを使い切ることなくクリアするためには、敵をどの順番で倒し、アイテムにどの順番でアクセスしていくのかが肝要です。
塔の一つのフロアは5x5のマスで構成されており、全てのマスは敵やアイテムなどの何らかのオブジェクトで埋まっています。これらをどう巡回するかをパズル的に考え、最適な動きを取っていきましょう。時にはあえて戦わない選択肢を取ることも必要になるかもしれません。

ただし、HPだけに気を配っているのではクリアは覚束無いでしょう。このゲームにはもう一つ、SPというリソースもあるためです。SPもまた、枯渇するとゲームオーバーです。
SPは階層ごとに消費され、主にアイテムの取得で回復していきます。また、敵に対して先んじてダメージを入れることのできる魔法を使う際や、一部の障害物を破壊する際にも消費することになります。
有利状況を作るためには、ためらわずSPを消費する方が良いこともあります。しかし、場合によってはHPを犠牲にしてでもSPを回復しに行った方が良い場面もあります。双方のパラメータを注視し、最適な行動を選択する必要があるでしょう。

25マスで構成される一つの盤面を効率良く回るためには、短期的な視点で思考を巡らせていくことになります。その一方で、頂上に到達するためには、成長戦略を含めたやや長期的な視点に基づいた思考を必要とします。
こうした、短期の戦術を積み重ねて長期の戦略へと積み上げる作品でありながらも、一つ一つの盤面が短いゆえに頂上まで気軽に遊べる作品ともなっています。軽く思考を回して、頂上まで駆け上がっていきましょう。

感想

WWAあるいは魔塔系です。説明文に沿って、ここでは魔塔系と呼ぶことにします。
いわゆるこの手のゲームはあらかじめ見えている事柄から、中長期的視点をパズル的に突き詰めていくことが主眼になります。このため、最後の状況からの逆算と局所的最適解を見つける技能の双方が求められるゲームになりがちです。
これはこれで楽しいんですが、めちゃくちゃ頭を使うのと、大体一発で上手く通すのが難しいというのがネックでした。

このゲームでは、毎回ランダム生成される階層を攻略し、66Fを駆け上がるというものなので、最終的な状況というものは見えません。
プレイヤーが分かってるのは、敵がだんだん強くなっていくであろうことと、現在のフロアの配置だけです。このため、ぼんやりとリスクを取って進める中長期的視点と、現在のフロアのルートを考える視点だけが必要になってきます。
先ほどの例で言えば、極めて狭い局所的最適解を考えることに多めのリソースを使い、中長期的視点はなんとなくでもカバーできるようになっています。
このため、かなりカジュアルに魔塔系を楽しむことができます。

その分、難易度は恐らく低く、筆者は負けイベントを抜けばどれも一発で最後の階層まで到達しています。途中HPやSPが危ない状態にはなれど、ある程度ゲーム性を理解してさえいれば、上手く回避できるレベルでした。
ただ、そもそもランダムなのもあって、あんまり難しくはできないでしょうし、カジュアルに楽しめる点を踏まえても、個人的にはこれくらいの難易度が好みです。ちょっと頭を使って気持ち良くクリアできるレベルです。

また、クリアの度にローグライト風に能力値の向上や初期装備の取得もできるため、どんなに失敗してもいつかはクリアできるようにもなっています。
この辺のサポートもあるので、余りこの手のゲームをやったことが無い方でも遊びやすいんじゃなかろうかと感じています。

なお、個人的には装備のバランスだけはそこそこ尖った印象を受けました。特に☆3の最高レアリティの装備の癖が強く、正直☆2の装備をデメリットなく使った方が優秀なんじゃないかなと思いながら使っていました。
このゲームは長期的なプランが余り正確に立てられないので、そこそこプランが固定化される制約を持つ☆3を採用するのは中々勇気がいります。そのリスクに対してのリターンも実感を得られる程に高くはないので、結局☆2の装備に落ち着きがちでした。
完全上位互換を出すのは芸がないというのは凄く良く分かるんですが、装備レアリティを上げやすくする装備がある以上、もう少しご褒美的な強さがあっても良いのかなと感じていました。

装備についてもう一つ付け加えておくと、いつでも装備を拾えば付け替えられるのも面白いところです。その時その時に強い装備を選んでいくこともできるため、フル装備状態でも宝箱を空けるかどうかの葛藤が生まれます。
序盤は魔法出力を上げて体力を温存したいとか、後半は体力を増やして逃げ切りたいとか、その時々に有効そうな装備が用意されているのも好きです。

システム面でもう一つだけ言及すると、リソース管理としてHPだけでなくSPがあるのが、このゲームをやや複雑にしつつも、奥深さを出しているところです。
階段を下りるごとに減るため、ステージ内を歩き回ってSP回復アイテムを取得するモチベーションがちゃんと出ます。このため、できるだけ敵を倒す導線が自然に生まれていました。加えて、後半に行くにつれ宝箱のSP回復量が多分上がっていくため、鍵の価値が後半に上がっていくというのも面白い点です。どこまで温存するかのチキンレースができます。

その上で、どこでHPを犠牲にしてでもSP回復アイテムを取りに行き、どこでSPを犠牲にしてでも魔法を使ってメリットを享受するか、という駆け引きが生まれるというのが良いポイントです。
この時、SPはおおむね先行投資として機能していて、特に序盤はこれで本来取りにくいアイテムにアクセスしやすくなります。また、その敵を突破すると手に入る諸々のリターンも加味して後半でも振ることはあり、残HPとの相談も含め、思考に一段階奥行きが増す要因となっています。良くできたシステムですね。

最後にシナリオについて触れるんですが、だいぶふんわりとしたものなので、かなり解釈によるところだと思います。
割とスムーズに攻略したせいなのか、目に思い入れができる前に亡くなったのはちょっと残念でしたが、それ以外はある程度キャラクターも把握できて良かったです。
記憶の断片とEND2から一人分の魂と思っていたものが二人分の魂であることくらいは分かるんですが、そこもだいぶ曖昧なので解釈に迷っています。だからこそ干渉を受けないんでしょうか。
ENDについてもう一つ追記しておくと、光のおかげで勝てたようなもんだと思っていたんですが、光単独で挑むと相打ちになるのが意外でした。主人公の果たしている役割があるということでしょうか。謎は尽きません。

難易度に物足りなければチャレンジもあるので、カジュアルに楽しみたい場合もある程度ちゃんとやりたい方も楽しめるんじゃないでしょうか。

なお、筆者のクリア状況は以下の通りです。
3回目については、休息の宝石の効果でSPがみるみる減っていった時はだいぶスリルがありました。諸刃のパワーでアイテム回収をごり押してなんとか薄氷の勝利です。
4回目はさすがに慣れたのか安定していて、装備を割と雑にとっかえひっかえしていてもなんとかなりました。HPもだいぶ余っています。

END1 END2